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召喚  作者: 黒龍藤
第四章   道中に当たり  色々、準備します
228/239

228 世の常は今です






 「ふ、ふふふふ… いや、そーか。 そーかそーか」


 顔を落とす。

 両手を握る。


 妙に震える…


 寝そべった状態を維持。

 そこから徐に両肘を使って身を起こす のに、気付いた金魚達がゆら〜〜っと離脱していく。が、『待って、あとちょっとー!』とばかりに食べ続けるのが二匹ほど。


 「にゃぁあん」


 俯きに籠るアズサの低い声に膝上のシロさんが反応、尻尾がぴんとなる。そして、別の尻尾も反応する。


 「ぐうーる」

 「あ」


 ダッ!

 ぴょん。

 

 可愛く飛んで〜 一、二で接触(ワン、ツー  どーん)


 「みぃ ぃいいっ!?」

 「おー」


 シロさんの頭突きに敢え無く轟沈したのを見届けた。アーティスが逃げ出したのも見届けた。あんな声で言うから、もう。


 自分が叱られたと思って、可哀想に。





 「うやあああ、もー かわいーんだけどー」

 「良かったね」


 「いえ、違います。痛いですよ、わかりますか」

 「うんうん、大好きだって」


 シロさんの好き好きアタックに敗れた俺です。予期できないじょーたいでしたので惨敗です。しかも、ほんとに痛かった。なので、いきなりの突撃はやめましょうと言い聞かせてるんですが… シロさん、俺の顔の周りをぴょんぴょこぴょんのくるっくる。ボディを寄せてはすりっすり。ぴんした尻尾も表情も『うんうん、聞いてる聞いてる。いやっふー!』な感じでほんとに何にも聞いちゃいねー感しかしない。


 でも、まじかわいー。


 「ほらほら、アズサが起きれないよ」


 そして、小さな舌でぺろっちされると怒れない。

 しかも、この舌ざりざりしない。

 んで、べとべともしない。

 唾液がない。


 どんだけぺろされてもフェルトが当たるよーな感じで〜 見た目も舌も本物のふわ猫のよーなのに違うんですねえ。


 俺の顔面にハグしてくる真っ白ボディにやられます。覗き込むオッドアイにもやられるです。これがクロさんよりも強めでハージェストよりも明るい。


 誕生とゆー変化に応じて、こんなに鮮やかになるとは思いませんでした。いい誤算です。そんで確かに俺より、ちょーっと小さい んだよな、これがぁああ〜〜。


 そんなボディに負けるとは。

 違う、生まれたての子の好き好きアタックに負けない俺にならねば!


 そんで、この子に『もうちょっと、お手柔らかに』と教えたいので飼育書が欲しい。完全にナニかを脱していますし。


 「おいで、シロさん」


 呼ばれて嬉しそ〜うにぴょぴょんと膝帰りしていくシロさん… 後ろ姿もかわいーが、やはり教えとゆーのは説得か強奪か。二択問題か。そーか、それが正解か。


 は、違う。


 違うから!


 確かに、そこの…  そこの〜 にーくーのーばーしょーはー 俺のだとゆー気持ちが 気持ちがぁあ〜〜 なにきしもあらずの現状の何かを を〜 をををを〜〜 あ〜〜 難易も何にもなーいーよー。


 あ、金魚ちゃん。


 「ありがとねー」


 揃って、しゅーりょーの舞い踊りをする金魚達にお礼を言って起きようとした。


 「はい、ちょっと待つ」

 「え、どわっ」


 また倒された。




 「これは? これ」


 執刀医ではない方が俺の足を指でぷすっとして金魚ちゃんに再度確認しています。指でつつつんされると、くすぐったあー。



 「…よし、これで問題なし!」 ベチッ!

 「だあ!」


 最後に叩いたですよ、この人!


 「あ、ついー」

 「本当か」


 「だいじょぶ、だいじょぶ、俺の手形だから」

 「だいじょばない、どの手形でも痛いものは痛い!」


 腕立て要領で起き、があっと怒っておきました。こいつはへーき、問題ない。


 「はい、まだ起きない」

 「へぶっ!」


 また倒された。

 舌噛むかおもたです。


 「お待たせしました。どうぞ、ご確認をお願いします」



 なんのこっちゃと首を捻りましたらば、駱駝さーまのごしゅつじ… いえ、お出ましです。お立ちになられるとハージェストを見下ろす圧が酷い。それを素肌?で感じるのか金魚達が逃げ泳ぐ。固まってたらヤラレる!とばかりに見事な散り逃げ、バッラバラ。


 怖いなーと他人事のよーに見てたら、駱駝様と目が合った。



 『ひぃ、叱られる!』


 俺には柔らか視線になると思えば大間違い。これっぽっちもガン圧は下がりませんでした。


 『なんで!? 俺、被害者で!』


 反論を胸に押し込め、直感に従って両手を真っ直ぐ伸ばして突っ伏して、顔面埋めて知らないです。ベッドの上の鯉になってされるがままです。


 …? 鼻息とか?


 終了コールが聞こえるまで姿勢を維持してた。




 「誠にありがとうございましたー」

 「本当にお手数をお掛けしました」


 安全確認が終わったので駱駝様がベッドの上、所定の位置にお戻りになられます。


 「すいません、お待ち下さい。まだ、お話が」


 透けてる駱駝様がベッドに足を乗せるのを見ると、何とも言い難い絵面です。でも、土足厳禁カンケーないし。


 「あの、ほんとにまだお話が〜 君も止めてよ」

 「あ、はい。すいませえー」


 俺への低音に慌ててコールするも振り返られない。乗り上げも止まらない。堂々とベッドを踏みしめられ、向きを変えられ、よいせっと膝を折られる。そして、その透明感に溢れるお体が… わぁ、小さくなられたですよ。


 「…うわ、そっち。そうきますかあー」

 「駱駝様、かっこいー」


 すごーいと二人して感嘆してます。小さく拍手もしましたら、気持ち視線が優しくなったよーな気もしま す?



 「恐れ入ります、では改めてご説明を。 居よう、入れ」

 「は」


 ハージェストが振り向いて呼び入れる先、現れたのはクライヴさん。ドアの前でキビッと一礼、カチッと姿勢でご入室。お控えなすって、ご苦労様です。



 先程の騒動が起こった一連の顛末を語って下さる内容に、うやー。俺がばったりした後の人様の状態に、ひええ。


 「未確認も含め、現状の報告は以上であります」


 ぜんしんにー こくてんがー でーちゃったあー  なおるか、なぁあああ??



 あの人、今そんな感じだそうです。

 実際、黒点かどうかもはっきりしませんが似たよーなものと思われます。


 何やら色々と厳しいお話でハージェストの顔も厳しいままです。他のお仲間さんはなんたらやって初期モードがどーので執行猶予期間があるみたい? しかし、それはそれで時間の問題?な、感じ?


 こーなると全身やっちゃの人を思い出す。元気だろうか? あの人と比べると、やっちゃ文字でないだけましな気もする。でも、どっちもどっちな感じですよね。どっちの精神もやられてるし。


 一人は自己崩壊系で、もう一人は見た目からしてリアル呪われ系の… あ、びょーきを疑われそーな後の人の方が不利っぽい〜。



 ぐーぱー。ぐーぱー。

 自分の手をにーぎにぎ。


 この手と爪で元気になったお人の笑顔を思い浮かべる ん、だ、け、ど〜。

 

 どう考えても、この不幸に寄せた不憫な形は俺の救助の為ですし? そこに重点を置きますと、やーっぱり『うちのがすいません』は違いますでしょう。あの人の目的が駱駝様で固定されてても〜〜 そんなん、こっちにしたらわかりませんしぃ?


 過剰防衛とは。

 過剰なる防衛とは。


 避難もできない者のぼーえーラインのうにゃらっぱ?


 ま、防衛装備品も未着用な俺が考える事ではないですね。大体、駱駝様がお出ましになられるとゆー保証なぞありませんでしたし。


 そうそう、受付さんの所で話が滞ったどーこーゆーのも俺には関係ありません。それが嵐の余波だとか正体不明の赤光による緊急措置による勧告がどーしたで駱駝様を指しての『みたいなもの』が跋扈する噂話が騒動を呼んでガード強化のご苦労とかとか知りませんしぃぃい??


 その結果、取り次ぎが可能な… 実力誇示で縋り付ける方に縋り付いたとゆーのはわかるんです。寧ろ、当然って感じ。残りの人生、病みに包まれるなんて嫌ですよ。


 でも、その結果がこーなのです。



 それらを聞く駱駝様の反応は薄い。

 シビアとゆーより敵対理由以外興味なさげ。 …どっかにキレイキレイでも落ちてないですかねえ? あわあわ泡のあわわわわ〜〜。




 「それ以上の他意はないと判じます。また巻き込まれだと言い募るに完全な否定はできず。どうか一度ひとたび、あれらを哀れと思し召されて頂けませんか」


 不調とわかって尚、続けられる交渉はやはり不調です。

 小さく可愛くなられても駱駝様は哀れと思う可愛らしい精神とは遠いよーで高ランクのモブさまは助けられないよーです。かーわいそー。


 可哀想と言えば、今のハージェストの体勢も可哀想。

 駱駝様が定位置に座っちゃった後、近くで話す為にベッドに上がったは良いものの靴を脱ぐパターンに至らず… 痛そうなんだな、これが。


 「捨て置くに利はなく、また悪しくにありて」




 駱駝様のスルーをスルーして続けられたハージェストの粘り強い交渉により面会可能になりました。もちろん、毛布モードではありません。


 「感謝します。 聞いたか、伝言を」

 「は、直ちに。折り返し、ご連絡を」


 クライヴさんが出ていくのに、ちっちゃくお手振りしてお見送り。今はドアを完全に閉めない逆用心。


 駱駝様は目を閉じてしまわれ、シロさんは我関せずと既に室内を探検中。金魚達は部屋から出たそうで出たくなさそう。



 目を閉ざした駱駝様の前から、そっと辞するハージェストはベッドからグッバイ。お疲れ気味の後ろ姿を追い掛けるよーに俺もベッドから離脱します。静かにね。


 テーブルに向かう背中。

 気付いたシロさんが『終わり?』みたいな顔して、こっち見た。




 かあ〜〜〜〜、参ったあー。

 時間の掛かる真剣な交渉を寝台の上でやった事なんかないっての。願うにしても座りが微妙で締まらない上に靴裏が腰に当たって、もう!


 「えーと〜」

 「あ?」


 アズサが隣にしゃがんで、俺の足を。 足を。


 「…痺れてはいませんよ?」

 「ちぇーっ」


 なーに、やってんだか。

 ちょっと呆れたら、そそっと知らぬ振りして立ち上がる。


 「えー、この度は大変な気苦労を… させ? いや、えー」

 「仕事が三、私情が七で頑張った。だから気にしない」


 「へ?」

 「まぁ、俺が動かないとってのはあるけどね。君が気にする事じゃないよ」


 「いや、いやいやいや。苦労させてる。それに騒動の中心がコールを打てば〜 とも、思いは してる」

 「そりゃあ、君の一声で動いてくれそうだけど。それを頼むのは筋が違うからね」


 あっさり苦労を享受した。

 男前!と思うが何か違う。ありがとうと乗っかりたいが何か違う。乗っかった方が楽なんだろうが… 何かが違うと。


 何かとは。

 そうだ、これは役割分担ではない。


 明らかに違う。


 違うから俺が引け目を感じる、感じている。事実、『俺が動かないと』始末がつかないと言ってだよ。


 「? 何か小難しく考えてる?」

 

 分担でない負担は単なる面倒。この先、同じよーな事が起こったとして。こちらに正当性があったとしても、その後始末を全てハージェストに任せ続ける?


 「どうした?」


 適材適所、ハージェストに任せるのが… 一番 間違いない、と思われるが そうなると俺は荷物から荷物へとチェンジした?



 それは嫌だ。

 ラッピングしてもハートが痛い。


 そんで『かーわいそー』で終わらそうとした高ランクモブさんに対しても俺のチキンハートは反応してる。自業自得と思えない事がハートに塩胡椒を効かせてくる。



 俺を見捨てた。

 そこに舟板は歌うのです。


 溺れる二人、板は一枚一人分。争った結果の生存は殺人事件であって違うのだと…


 対して簡単に救済できる立場の俺が動かず、人にやらせる。


 人の俺が 人を 見捨てて助けない。

 駱駝様は 生きて心もあるけど 人じゃない。


 しかし、心があるなら汲まないと。

 板と胡椒とハージェスト。


 価値価値価値価値、相棒の価値が勝ちを収めるしゅーのーばこで!



 「ああ、だからそんな顔をしないって。所詮、三の仕事だよ」

 「ふ?」


 「ほら、『俺は 君を 肯定します』 そう言いましたでしょ?」

 

 思わず、ガン見しましたよ。


 「倫理を覆す、完全なる肯定者(yes-man)は難しいですが君が比重を傾けたい方向は見てるつもり。此処で手を伸ばさないと、またあんな顔をしそうだし?」

 「…あんな あんな  え、どんな?」


 「買い物帰り、最後に行きたかった場所」

 「ぅあ」


 自分でもどーかと迷った末に最後になったリクエスト、やっちゃの人の〜 あの子達の墓参り。思う事がありまして、行ってみたいと〜〜  言いましてん。


 ハージェストの顔を見ると口がうにゃる。


 「俺もできる奴(スパダリ)には、まだ遠くてさ。あは」


 ペロった事を茶化す実力者が眩しい。





 「あ」


 話が終わったと判断したか、シロさんが膝に飛び乗った。ご機嫌なシロさんを撫でると手に頭を押し付けてきて、可愛い。二度三度と撫でてからアズサを見たら  表情が一転、再び形容し難い顔をしてた。


 …ま、まさかね?


 そう思うものの固定された視線が怖い。

 指摘を口にするのも怖い。


 しようものなら、尊厳の問題が勃発する。


 目を泳がせ、ついシロさんの頭をまた撫でた。らぁ〜、今度はアズサの背後に群れる金魚が圧を放ってきた。文句と言うより陳情が強く感じられるので場の雰囲気を変えようと〜 にっこり。


 「色々話したし、喉が渇かない? 茶を淹れるよ」

 「それは違う」


 席を立とうしたら、これまた静かなる高圧を放たれた。思わず、ひええと座り直した。



 



 「ちゃーっぱ、ちゃーっぱ、これ使おー」


 機嫌、戻りました。

 ええ、ちょっとだけ目測を誤って薬缶の縁に当たった水飛沫(ビチャ!)に理性を引き戻されました。水は強い。


 増えてた茶っ葉をそれなりに犬やって選んでみた。

 自分の効き鼻に期待です。


 「んじゃ、カップはと〜」


 茶っ葉を片付けるのに、ちょいと背伸びをしましたら「ん?」何かを感じた。ので、首を回せばハージェストが覗いてた。腕に抱いたシロさんの顔も半分なってる。


 「… 」

 「… 」


 「どうされました」

 「いえ、何か心配で」


 「平気ですよ  あぇ?」

 「うわあー!」


 入れて片付け、足を下ろすと足にキた。片足、ガックンです。




 金魚治療はへたるのか?


 俺のドクターフィッシュは綺麗に治療を あ、剥ぎ取り式だ! なんてこったい、何気にHP喰われててもおかしくないのか。


 「ん?」


 危険だからと台所から連れ出され、パスされたシロさんが伸びをする。胸に手を置き、近付く顔が 不安そう? あ、優しい子。


 「心配ないよ」


 にゃっと口開け、嬉しそうに頭を擦り付けるのが〜 これまたかわいーんだな〜。これが世の常か。




 「シロさん、あれは痛かったんでもう少し優しく。そうそう優しく優しく突撃回避、ぶつかると痛い痛いなので」


 にゃ、にゃっとゴキゲンな顔で返事をくれますが理解できたんでしょーか? できてない気がします。ってか、教えるのに指を向けたら両手でタシッと捕まえ遊びになるんです。


 この状態で座学なんて無理じゃね?


 しかし、わからせるものはわからせておかないと…  そうか、実践あるのみか。



 「… 」


 己の聞き耳の高性能さを信じると〜 存外、時間はありそーな? なくてもなったもん勝ちに持ち込めそう。


 「…にゃん、ぐる、「はいはい、椅子から降りて何やってんの」 み、ぃぃい〜〜」


 はい、アウトー。経験が足りない聞き耳です。


 「油断も隙も全くもう」


 茶汲みさん、お盆片手にお戻りです。悪魔の降臨予測に透かさずシロさんを盾に持ち上げ、へへ〜〜っと誤魔化しておきました。


 そしたら空気を読んだシロさん、巻き添えは嫌だと元気よくジャンプしてスライディング遊びに駆けてった。たはー。




 「はい、どうぞ」

 「ありがとー」


 カップを手にすーんと効き鼻、そうっとごっくん。 …うむ、うむ、うむぅ。


 茶の感想を述べよーと目を合わすとモノ言う目があれもこれも告げているので、ワンクッションにさっきの失敗談を語ったら誤魔化しが成功。あー、水はすげー。




 「失礼致します」

 「はーい、どうぞー」


 ヘレンさんでした。

 下げた頭を上げたら『あ、それ私のお仕事ー!』な顔したけど、もう遅いって。






 「まぁあ」


 金魚に囲まれたリリーさんは絵になりますねえ。


 綺麗に結い上げた纏め髪に改造制服の上着、華美を抑えた銀鼠色のドレスとハイヒール。事務服には遠いですが、お仕事モードでいらっしゃいます。


 それでも金魚に向かって片手を差し出す立ち姿は、仕事と無縁のファンタジーなワンカット。見惚れて感動してたら、あれえ?


 手乗り金魚に感動してるリリーさん、は いーんですけど〜〜  おねーさまの ドレスの裾の辺りで〜 背泳ぎ キメてる金魚は 何やってんの? ねぇ、そこ そこの金魚 お前、まじで何やってんの??



 金魚。

 金魚の年齢。


 ネギちゃんの年なら、まだ許される? 


 まだ許容範囲とゆーか〜 真実、性的興味に目覚める年齢層(思春期)というものはあ〜〜 あ〜〜 あの金魚、絶対ネギちゃんじゃねえぇえ〜〜〜〜〜。


 「ああ、なんて… これが魂の形であると」


 感動してるおねーさまの足元のたましーが不健全な形してます。しかし、生への執着で顕現したよーなのが金魚ですから? 現在進行形で言えば、あれは健全体なのか?


 どっちにしろ、下を向かれたら危険です。俺まで怒られてしまいます!



 「姉さん、良かったら」

 

 危険領域の直前、同じ視界を共有し、目と目で通じたハージェストが長椅子へとご案内。難を逃れた。直後、ドレスの裾がゆらりん。その揺らめきをしつこく追い掛ける背泳ぎ金魚(高確率で♂)に地団駄踏みたい!


 ってか、そこのフリーダムきんぎょー! 金魚しりょーになってもエロレベルを上げようとすんなあーー!!





 …ま、まさか ね?


 そう思うものの泳ぎ方が怖い。

 口にするのも怖い。


 しようものなら、尊厳の雷光が炸裂する!


 背泳ぎに飽き足らずドレスの海に逆潜水しそーな冒険金魚に気が遠くなったら、ツインボディアタック喰らって勢いよく床にベシャ!った。



 終了のお知らせにグッジョブ。


 ほう〜と安心安堵に目を上げる。そこに不審な金魚が、もう一匹… やっぱり、あいつも同じかよ! おねーさまの後ろから項をチラッチラチラッチラ見ながら行ったり来たりしてるのがおりまして!


 もう、まじ何やってんの?状態。


 幸いと言って良いのか、後方専門なだけあって気付かれてない。他の金魚にも気付かれてない。もじもじしたり妙に飛んだり跳ねたり上空に舞い上がるから、カモフラージュが効いている。そんな所に背泳ぎ金魚との違いを感じるが、危険な事には変わりない。


 おねーさまの着席に吸い寄せられるよーに、ヒョロ〜っと降下して〜  狙い所です。


 「こんなにもはっきりしているものなのね…」

 「驚きですよね」


 ハージェストが会話で誘導してくれてる内にキメなければ。忍び寄り、腕を伸ばして両手を広げ〜 蚊を叩く要領で〜〜 はい、ぽふっと捕獲しまー!


 せい、こう!


 驚きに捕獲金魚が手の内でくるっくる〜 したがってるけど、狭いのでね。指の隙間を広げて、『見ーてたよー』と覗き込む。


 バッと顔を逸らして、うおーさおーの恥ずかしげ。尾鰭がふるぷるしてる。これはときめきとゆー名の衝動的行動にラッキースケベ映像が重なって止まらなくなったやつでしょうか? 


 君、前科無し? 春が来たの?  …金魚に?



 「そうよ、ノイちゃん。もう体の方は落ち着いて?」

 「はい、へいきでーす」


 こちらを向いたおねーさまに、にっこー。

 捕獲した両手を横にして、含みも何にもなーいーよーの笑顔を向けた ら、あ〜〜 れ? リリーさんと一緒に入ってきてたのか、二人の間に伏せしてるアーティスが変。


 「へ?」


 驚きに指檻崩壊、金魚がすいっと逃げてった。





 すすす、すーう ごっくん。


 ヘレンさんが移動させてくれた茶を座って飲みますが、話の内容に頭がくるっくる。落ち着けません。前の長椅子に座る二人は落ち着いてます。そんで長椅子の後ろに隠れたアーティスの姿は見えない。


 ロトさんの証言によりアーティスのカチコミ 違う、駆け込みは偶然ではないようです。俺の危機を察知しての駆け込み、それは俺と繋がってるからだ言われても… 自覚も何もございません。


 「上手にできなかったから叱られたんだと思ってるよ」

 「え、そんな」


 「アーティス、怒ってないようよ。ほら、おいでなさいな」

 「 (クゥ)


 呼べば答えど現われず。


 現在、アーティスの背中に増毛と減毛が見受けられます。増毛は文字通り、部分的にもふあっと毛が増え… 減毛は、それこそ薄毛… いや、禿げ…  どっちにしろ、一つの体に両極端な状態です。


 どうしてそんな事にと思うでしょう?


 そしたら二人が声を揃えて「考えなかった?」と言うんです。


 それは確かに… 確かにぃ〜 あの時、アーティスがつるりんじゃなくてもふ毛だったらあ〜〜 と、チラとも思わなかったと言えば嘘になり。だって、流行りはもふでしたし。


 でも、アーティスはアーティスのまんまでかわいーと思ってます。なのに、どーして… や、俺がしたんじゃなかったら誰がしたと言われても… ぬぅ。


 俺とアーティスの繋がりは育てたハージェストとの絆よりも強いのが、はっきりしたと言われると何だか微妙。自慢より申し訳なさの方がですよ。


 しかし、変身させた生みの親と言われると〜 うーんん…


 アーティスの元である白と黒の斑らの獣は王都より北方にいる種でレアでもなんでもなく、毛並みもどっちかって言うと〜 もふ毛寄りだそうな。


 「あれの変貌と考えると」


 アーティスの方がレアである…


 「部分的な発毛量を考えるに」


 元が出た?


 そうなると俺の気持ちが反映されてるとゆー言い分に無理がない。だから、今の状態も反映されて〜 と、考える方が 自然  なのか? ほんとにぃ?



 「私にとってもアーティスは大事ですもの、じっくり考えさせてあげたいのだけど」

 「状況的にね」


 「あ、はい」

 「食べながらね、ふふ」


 栄養補給に摘めと言われるので菓子箱に手を伸ばす。美味しいお菓子を頂きながら、めんどいお話が始まるよーです。あまり聞きたくありませんが、あの後どーなったんでしょう?




 「えええええ〜」


 怪我がなくて幸いですが、坊っちゃん『大きなわんわん怖い』状態だそうです。まぁ、そうでしょうね。でも、アーティスは噛み付いてないです。「伏せ!」と言われて肉圧でぎゅうしてたのは確かなよーですが。


 でも、怖かったんでしょうね。トラウマなっちゃったかな? かわいそーに。


 で、おねーちゃんが激おこです。ペットの不始末、飼い主の責任。この落とし前にアーティスを寄越せと言ってるそうです。


 『獣一匹で済まそうと言うに… こちらの気遣いを無にされるか! 寄越さねば納得できませぬな!』


 この場合の寄越せには、その場でのビシバシに殺処分が含まれるそーな。それを眺めていろだそーな。



 「ご要望は丁重にお断り下さい」

 「もちろんよ、元々何しにきたの?と言いたくなってよ」


 綺麗な笑顔で『拒否よ、拒否』と言ってくれるリリーさんに、ほっとします。金魚達が賛同に舞い踊りしてるのにも、ほっとします。


 「しかし、血の正統性から言い続けてる訳だ。まぁ、その辺はこちらとしても理解しますが」

 「そこなのよね、それは聞かなくてはならないところ。でも、何もなかった事にできない事もないのだけど」


 俺への傷害罪では相殺にならないよーです、辛いです。ですが、領民の生活と期待を背負ってるのが坊ちゃんです。生活費も稼いでない俺が背負ってるのはアーティスと金魚ですし… でも、俺の方がより酷い目に遭ってんのにー。


 「でも、そんな話よく兄さんが聞いてるなぁ」

 「それなのだけど、面白いところでオリヴィアちゃんが追求してね」


 なんでも貴族の法律には女性へのなんちゃらってのがあって、それをおねーちゃんが持ち出した所オリヴィアちゃんが「それ、改訂入ってますーっ!」って突っ込んだらしい…


 それも鞄から学校の教科書引っ張り出して「改訂が入った理由は、今、貴方様がおっしゃられた内容と酷似したもので」と臆せず発言を続けたそうな。なんとゆー面目躍如。その勢いで「そちらがお雇いの方は、ちゃんと更新なされてますか? 更新時の改訂書は大事ですよ? もしも、お持ちでない方なら  あの、教えられる範囲が」なんて言ったらしい。



 「改訂書にまで言及するなんてねぇ… ふふ、立派だったわあ〜」

 「…やり過ぎな感もする、気付いてないのかな」


 こちらの家庭教師、全てではないが免許更新制度があるらしい。


 「年齢を考えると仕方ないわ、真っ直ぐに突き詰めちゃっただけだもの」

 「…家の存続を願ってたし、頑張っただけか」


 オリヴィアちゃん、駆け引きなしの子供の正義の御旗を振るった模様。好印象ですが評価の程は〜 どうなんでしょう? セイルさんが止めてないなら良いのかな?

 

 「でもその後、あちらが他領の方の名を出されてね」

 「へえ、それって隣じゃない?」


 「そうなのよ、安直よね」


 …脅しでしょうか、回避に全振りしない方でいらっしゃる。怖い。


 「それでね、ノイちゃん。困った話ではあるけど正当な方法でもあるの」

 「はい?」


 

 なんとゆー恐ろしい話でしょう。

 問題を起こしたペットはタイマン勝負なんて、どこのコロッセオ? そこに諸々ぶっ込んで俺も出場可能だそーです。寧ろ、そこで晴しとけって。


 え、どうやって?



 「私としては向こうに合わせる必要も感じないのだけど、正式に叩いておける事は良いと思うの。お兄様もノイちゃんの意見を聞きたいと言われているわ」

 「は」


 突然のバトル展開に引いてます。

 アーティスと一緒に障害物競走でタイムを競うなら、まだ頑張れるんですが。


 「あの、晴らすとはボコですか?」

 「もちろんだよ」


 清々しさが痛い。

 金魚達が意気揚々のやったれー!がんばれー!な興奮泳ぎを披露する。心配しないってどゆこと? 


 「アーティス、挽回の機会がきたようだ」

 「待って?」

 「クゥン?」


 アーティスが長椅子の影から顔を出した。体も出した。 …どっちにしろ、断毛式は必要ですな。ですが、あの。


 「今、片足がですね?」

 「ああ、そうだった」


 「まぁ、足をどうしたの?」


 足ガックンを説明してたら、「歓談中に失礼します」ヘレンさんのお伺い。顔を向けるとクライヴさんのお顔が見えた。



 「恐れ入ります、入り口にて待機させております。こちらに通しても宜しいでしょうか?」



 ここでピンと来ましたよ。

 そうですそうです、ですからハージェストが焦らず騒がずゆったりなのです。


 見よ、飛んで火に入る生贄が やって来たぞー!



 弱きから強きへ流れる、それが世の常今生の世(現実路線)です。高ランクモブさーん、お助けしますので代理闘争してくださあー。







はーい、改めてルビ振りまーす。


【それがの常、今生の】です。


では、此処で問題。

”よ” と ”せ” 

読みの違いは言葉の意味を違えるでしょうか?


違えると思う方、手え上げてー。

違わないと思う方、お顔の前で手を振ってー。


答え合わせは動作を決めてからどうぞ〜、にゃーふふふふふ。



舟板。

リアルは某時の経済面において引き合いになったとかなんとか。

カルネアデスに今を提起するなら『迅速なる通報』と『証拠動画』の二択ですかね? ふふ。


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