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召喚  作者: 黒龍藤
第四章   道中に当たり  色々、準備します
227/239

227 ある、今世の話

ひいなの日に間に合ったー!





 画面に寄り過ぎ、近寄り過ぎ。

 離れなさいとゆーのに言う事を聞かないから、もう。うん?


 「…うーっ!」

 「…これ、やめなさい」


 そんなにしても何も変りゃしないって。


 「早く… 早く、起きるのです!」

 「いや、無理だろ」


 寝てる子に非情な事を言うなよ。


 「無理が通れば道理の形成パターンが増えるのです!」

 「…爆睡してっから、休ませてやりなさい」


 「そんな! では、少しだけなら宜しいでしょうか?」


 ちょいちょいと指を曲げ、少しを誇示する顔は止まりそうにない。


 「影操りでもする気か、お前は。そんな事を  いや、そうか。 そうかそうか」

 「はい?」


 「お前に自己犠牲の精神が育つとは。夢にも思わなかったよ、偉いなー」

 「…はい?」


 「あの子に『お前が犯人かーっ!』と飛び掛かられたいんだよな? うんうん、お前寄りの力を使ってるし上手く誤認するだろ。お前が尊い犠牲になれば、どっちに取ってもいー感じで助かるわー」

 「…やめておきまーす」

 

 褒めてやったら止めるとさ。

 しかし、憎まれ役を買って出るなんて経験ないからな。押してみよう。


 「そーなの? 試しに一回やってみればあ〜? 道理の形成パターンでしょー」

 「え、だって」


 今度は真顔で返してきた。


 憎まれ役 = 物事を上手に回す役所 + マイナス値に全振り = 苛める子 = 相対する苛められる側の必須 = 不愉快 ← その上で遣らせ ← 真面目に考えても思考がおかしい


 「どれだけ物事が上手く進むのだとしても虚偽認定から成り立つものは目的も手段も破綻してます。また認識がこちら側だけなら尚更です。目先の取り繕いは二度手間で、時間の無駄です。そんな無駄、受け入れられません。無駄な遊びは遊びの内で遊ぶが良いのです」


 うむ、経験がなくて当然よな。


 「でも、起こしたいのです」



 精霊達のバージョンアップ。

 子供に関わるイベントでしか得られない成長ステージ。


 あれを設置した時に想定していたステージパターンと現状は違い過ぎて、どこに修正を入れるがいーのか悩ましい。


 「…聞いてないですね?」

 「あ、こら」


 「ちゃんと見て下さいってば!」


 引っ張りに目を向ければ、あの子が伏せの姿勢で尻尾を振り振りうにゃってる。耳を澄まさなくても聞こえてる『出てきたら退治』『許さないから退治』『偽物は爪ご飯!』愚痴は、さっきと変わらん。ちょっとアレな事も言ってるけど、気分だな。


 「どし「ほらあ!」  あ」


 周囲を警戒し、目を走らせる。すくっと立ち上がり、何やら決意。振り返る。じいっと寝てるうちの子を見て見て見… !


 決意溢れるあの目、あの顔。

 しかし、あれは!


 あああああ!!



 「絶対、あれは一緒に寝たいんですよ!! うちの子、起きなさいよーーーー!!」


 隣で叫ぶ。

 聞こえなくても叫ぶ。


 「幸せが目の前にあるのに寝ていてどうするの!? 腕の中に抱き込んでの幸せに、一挙両得の幸せ! 増幅する暖かさで共に精神値が一気に回復する絶対領域が発生する状況にあって何を一人寂しく寝てるのか!! 今、起きよ。動け、動くのだ!」

 「だから、影操りはやめなさい」


 要らん事をしようとするからペチッと叩いてやめさせた。ら、「憎まれ役なんかお呼びじゃないし、幸せ役をしよーとしてるだけなのにー!」盛大に文句を言われた。


 「いやいや、既に手を出して疑いの芽を出したでしょ」


 突っ込み不可避の言動に、よいよいと抑え込む。


 あれがなかなか起きないのも道理。

 影猫として降りた際、どーうも調整が上手くできずに力を余計に撒いちゃってる。焼きが強かった弊害だろう。今世の子には出なかった影響をまともに受けて、うちの子、一時的にちょーっと鈍って考えられない頭になってた。あのまま寝落ちしたほーが良かったのかもしれん。


 これ以上、とゆーより。

 今だ、今。


 今、影響を与えるのは良くないんだよ。



 「いいえ、今こそ力を使う時! 家の子の為に使う力は絶対正義、時はきたのだ!」

 「なに言ってんの」


 「うちの子有利の正義を見逃すようではシリーズの名折れなのです!」

 「は?」


 「小さなあの子を腕に抱き込む、それは有利! 腕の中の安心にメロってあの子が落ちる、それは有利というのです! メロった方が負けだと知ってます」

 「…あのな、抱き込む方がメロって落ちる事も忘れてないか?」


 「だから、今なのです!」

 「ほう?」


 「あの子は起きている、うちの子は寝ている。起きてる方が危険なのです。そう、意識があるから。今なら、あの子だけが落ちる可能性が高い!」

 「うわ、ちゃんと考えてた」


 「もちろんです」

 「偉いなー。でも、起きたら寝てないよ?」


 「大丈夫! そこは寝「あ」 あ! あ〜〜 いやあー もう! 我らが主の決断が遅いからあ〜〜〜」

 「え、俺?」


 「ノリが悪くてダメなのです」

 「うわ、ノリかよ」


 あの子のコールで色々終了。

 うちの子、良かったな。助かったぞ。




 「キープ、部分拡大。今、ブレたろ。そっち確認して」

 「はぁ〜い」


 投げやりな返事と態度に『早よ、やれ』と手を振って仕事モードに移行。

 コール出現のランウェイを捕捉。


 自分の部屋へと駆け込んで行くのを良い感じに観測。ててっと駆け上がる可愛さよ! そこで弾かれた光に、転落防止策も兼ねてそーな陽炎。


 映像を解析しながら別画面を開き、位置情報を確認。


 「…ふむ、部屋の移動はなしと」


 捕捉済みの子供部屋、駆け上がった時間。そこから割り出す短縮距離に陽炎を足して圧を計算。


 「現在、歪みは見られません。計測に値は出ず。出現時に発生したと見られるブレは影響を与えるズレでもなく優良に分類できます」

 「そうか、よしよし。ま、それくらいやってくれないと困るが」


 部屋に入っちゃったんで、今度はリプレイを回す。


 散ったり散らなかったりする星屑。

 ランウェイの縮地スキップ


 ワンターンを切り取って構成をモノクロで透かし見る。ちょっとばっかし手間な事をしてんなぁと感心する。それから子供の足跡と星屑が消える時間を計測するが思考があっちに流れ出す。


 これは、あれか。

 裏に仕込んだエアーをキュッキュと鳴らして歩く子供靴か。


 「うーん、うーん」


 子供の為の何か。

 それが俺を押してくる。


 「我らが主よ、先ほどの微細粒子が最も多く飛んだ一範囲辺りの総量値が出ました」

 「おう、どうよ」


 「見栄えほど高くもなく想定を下回り、基準値をクリアしております。燃焼で双方を抑えているかと」


 やっぱり、このランウェイ。

 子供靴っぽいなあ。


 ランウェイ自体あの子が喜びそうな感じだし、星屑は他への威圧や見せ付けよりも子供が自力で使ってますアピール感が強い。小さな子向けの商品を使ってますアピールが酷い。なんの安全策だ、これ。


 「うーん、そこまで狭量なつもりもないが… いや、ヒトの家で遠慮なくガラガラ回されても…」

 「こちらが片道分の全総量から割り出した含有量です」


 「どら」


 予想通りの有量だった。

 この程度なら代謝でイケる、うちの子そんなに弱くない。だが、至近距離での長期間摂取となると考えもの。基礎抵抗値の倍加設定どうしてたっけ?


 「…まぁ、一回の測定値じゃなー。過去のランウェイ確認して、この計算式から数値出ししといてー。んで、免疫設定数値の一覧表からあ〜 これとこれ。割り出した平均数値がこの二つの設定数値内に収まってるかどうかも見といて。その後は年単位での予測割り出しも頼む。そっちの計算式は一覧の備考に記載してっから」

 「わかりました、手分けして行いますので会議室を押さえますね。どちらにせよ、数値が判明後の観測は如何いたしましょう?」


 「あー」


 あの子、スキップドア持ってないんだろか?


 ランウェイもいーけど、お手軽なドアはどーした? バックのおヒトなら普通に持ってそー  って、うちへの配慮か。だよな。んでも、あの『一生懸命走ってます』な姿を見ちゃうと〜 スキップドア、作ったげよか?な気分にはなる。


 あげたら、すんごく喜びそー。

 嬉しい嬉しいって頭を俺の足に擦り付けて喜ぶ姿が浮かぶんよなー。


 持ってたら初めからあげる気にもならんのだけど。


 あげたら大喜びでわちゃわちゃする姿が浮かぶと〜 かわいーんよなー。子猫がぴょいぴょい出入りを繰り返す姿なんて、大いに作ったげよかあ〜な気分。


 うちの子への影響その他、手間暇考えると俺が作ってやった方がいい。それなら、観測の必要も影響の懸念もない。


 でも、やったからランウェイを使うなとは言えんし? 子供の内は使いたいのが子供なんだし? 使わなくなるとゆーか楽をしたくなるのが大人だしぃ? それに可愛いし。うん、あの走りは可愛いからあ〜。


 …どんどん、あげる方向に傾いてんな。どうした、俺の思考。おかしいぞ。


 持ってないが、あの子の強みになっている。その上で、あちらの配慮があの子の為に作れと言ってるよーな気がしないでもない。いや、寧ろする。それが正解なんだろう。家の為、あの子の為、調和の為にはそれが良い。


 良いんだが、どうしてだろうな?

 すっげえ嵌められてる気がしてならねえっての。


 それでも、するが最良。

 こうなると真面目に先手を取りたかった。それで  あ〜〜〜 そっかあ、名札を所持していないあの子がうちの子の隣にいるのを夢想するからかあ〜〜〜。


 

 がっつり引き摺ってる感情に頭をガリガリ。


 あの子の為にと作った着ぐるみも、ヌイグルミも、この感情を後押しする。普通、ヒト様の家の子に与えるもんなんてネタだ。ネタ以外のなんでもないって。


 『ざまぁねえな』


 まじでそんな気分だわ。

 あーあ、目付き悪くなってそーで やっだなー は。


 「我らが主よ、思案に暮れますならば観測は継続と致しましょう。後、ご報告が遅れて申し訳ありません」

 「ん?」


 「還るべき我が家の子らが、あちらに拉致監禁された事実が判明してございます」

 「うん?」


 「哀れにも我が家を襲撃した力の犠牲になったばかりか… 無遠慮にも我が家の壁紙を傷付けた爪に引っ掛けられ、連れ去られたとの目撃情報が複数上がっておりまして。裏付け調査をしましたら事実でした」


 ギラ付く怒りの眼差しに管理どーぶつへのヘイトが溜まってた。




 「…食うと?」

 「食べていたら燻り出して狩りですね!」


 楽しそーな楽しそーな顔と声、破壊活動従事者が仕事に勤しみたい口調を丸出ししてて困る。いや、それがこいつの仕事なんだが。


 「腹の足しと考えるには足りぬでしょう。であれば嬲りか洗脳か、擬態を模せば不和を投じるに最適な一石」

 「うーん〜〜」


 「一番取り込み易い状態で危険です。時を争う事態です。アンプルの可能性も考えられますが目的を考えると狙いは絞れます。絞り込めても不確定なのが変態ですが」


 セキュリティースイートとしての正しい意見に、『そうかな?』なんて言ったら怒りそう。



 「我らが主よ、見捨てますか?」


 こいつが態々『見捨てる』なんて言葉を使うとは思わなかった。シリーズとしても、そんな事例を熟してきただろに。家中である事が響いてるかと考えるが、さっきのあれやこれやに比べるとなんと楽な話かと笑えてくる。


 「…どうなされたのです?」

 「大丈夫、管理どーぶつは馬鹿じゃない。食べられたりしないよ」


 「…目撃が上がる馬鹿ですよ」

 「子供の環境を維持する為の添え物が愚かでは、ね」


 「…酷い事にはならないと?」

 「利用されても、あの子の立場を考えぬ悪辣さを発揮してどうするって? そんな事しても失敗だろう?」


 「失敗の基準が違えば、どうとでも」

 「それは確かに」


 うむ、この思考よ。

 まずは定義が成り立つ前提を考え、据えられる基準を以てミスを防ぐ。フールプルーフ(愚かに耐える)の出来に良しと笑ったらムッとする。その顔もフェイルセーフが活きてる訳で。


 「失敗の基準は多々あれど存在意義が問われる事こそ失敗だろうに。違うかい?」

 「それはそうですが…」


 「そんな程度なら普通に抹消案件だよ」


 理解に納得しても口を尖らす可愛さに、頭を撫でる。


 「…抹消なら一発ですよね? それはそれで可哀想なので、ここはやはり警告に一発やった方が良いと思います」

 「これ」


 「だって、やっぱりおかしいんですもの」

 「フェイルソフトがおかしいってのもなー」


 「絶対イカれた思考です」

 「イカれ切りのフォールトトレランスはしてるって」


 「柔軟性が見えないのです」

 「爪を出してる時点で自由頻度に柔軟性は高い」


 高い代わりに、どっちに重点向けた安全設計フールプルーフしてんのか怪しくて堪らんのだがな。子供の成長に合わせた設計なら修正が必要だ。それを って、まさかリモートメンテナンス!?


 待てや、こら。

 俺の家でリモートなんて好き勝手の乗りホーダイは! …って、あ〜 あの子、回線持ってたわ。いや、でも結局は。うん、前と同じよーな酷いノイズは遠慮したい。


 「サクッと切り替えができれば、まだ」

 「いやいや、子供部屋にフェイルオーバーなんて置かねえよ」

 

 「あれでなければ…!」

 「同等品がコールドスタンバイしてるとか、やめろって」


 「…それでは立ち上がりが遅いのでは?」

 「この場合のホットスタンバイとか、もっとやめろや」


 「それはそうでした。確認の為にも、やはり一発!」

 「もう、この子は」


 宥めても宥めても破壊する気満々で聞きやしねえ。セキュリティーの最上位に位置する自律型が憐れみを逆手にごねてごねてごねて意見を押し通そうとするパターンは初めてだな!

  


 「バックドアは気を付けて」

 「はい、要らぬ置き土産は全て抹消! 現在のさんの遊撃レベルを維持し、一段階上の使用も許可し、発見次第やってやります!!」


 「…花火の暴発はやめてね」

 「不審物は全て抹消!!」


 「…うんうん、頼もしいよ。そもそも入れ違いになってて悪かったな」

 「はい?」


 「え? 報告に俺を探してたんじゃないの?」

 「いいえ」


 「ああ?」

 「生物実験室の方が近かったものですから。元々は薬品を取りにですね」


 「何があったよ?」


 生物実験室に置いてある薬剤は種類に偏りがある。それを考えると問題だ。何処かに把握の抜かりがあったかと自分を疑えば、良い顔で笑った。


 「ちょっと薬剤散布でもしてやろうかと勢いでえ〜」


 あそこ、とあの子の部屋を指す。


 「おい」

 「目指せ、どーぶつの駆除!」


 虫コロリの強力なヤツが欲しかったと。


 「あのな、全体散布は問題でしょ」

 「巣を退治できればスッキリなのです」


 清々しい笑顔に頭が痛い。


 「…子供の部屋への悪戯はやめなさい。大体、管理どーぶつに向けたら連れていかれた子達も一緒くたになってやばい事になるでしょー?」

 「私の行動でそうなりましたら、それはそれで正しい行いかと」


 連れ戻せないのなら。

 還れないのなら、この手で。


 キリッと任務遂行を言い出す、この変わり身よ。

 しかし、否定するものではないのが困る。今は困る。大体、薬剤散布なんてして清掃だけでなくリフォームの請求まできちゃったら、どうすんのよ? めんどいでしょ?



 連れてかれた総数聞いても、ほんとーにどうでも良い数。切り捨てる端数にも満たないっての。それでも家の隙間に嵌って掃除しないと取れなくなってるのはどーでも家の中の地外法権とゆーのもどーかな場所に持ち込まれての放置は〜 まぁ、面白くない。


 欲しけりゃやるよと言えない訳ではないけれど。

 今後の交渉にも使える手ではあるけれど。


 道具とそーでないモノの違いを崩すコトが揺らぎの始まりなんよなー。直ぐに消える波紋か、忘れられなくなる汚点か。


 こいつにしたら汚濁だな。

 だからこそ、阻止したいのはわかるんだが。

 

 「そっちは俺がやるから、お前達はあの子の… あの子の… うん?」

 「? どうされました?」


 あれ、あの子の能力ってなんだっけ?





 弱そげで大人しい他人様の家の子。

 だから気にも留めなかったが大前提が崩れたなら確認すべきだ。


 んで、うちの子の召喚理由もなんだっけ。喚んでたシーンは、ばっちり見てるが呼び出す理由はなんだった?


 うちの子は寝てる。

 あの子は子供部屋に入ってる。


 今の内に、もう一回。


 そう思ったが、怒ったあの子が「フシャーッ(かくほーっ)!」と飛び出てきそーで怖い。『引っ掛かったな、犯人め!』と冤罪を掛けられそーで嫌。あの子の安心の為には引っ掛かってやったほーがいーんだろうが、それだと後々めんどくさい。




 なので召喚リストに頼る。


 「おおう」


 リスト全集にアクセスしたら、誇るよーに一番前に打ち出してる総数にちょっと引く。



 【成立

 【不成立

 【次回、呼び出し候補

 【引受中

 【絶賛、再審中!

 

 【……


 新規受付停止中。ダメダメです。

 手空きの者は再審のお手伝いをよろしく!



 

 この画面から、とりあえず【引受中 をぽち。

 一枚、見てみる。


 引受日を見て、うーん。

 希望どーぶつ名に、? 


 これは書き方で損してないか?と思いながら、二枚三枚と見て日付の区切りで大体わかったので継続は仕方なしと戻す。


 それにしても本当に頑張って探してる。

 あるふぁ達の生き甲斐になってるのを実感する。


 最初は『序でに』で始めたのだろうが、何時しか全体的にそうではなくなっていったのが透けて視える。


 ここにあるリストが露と消えたあるふぁ達が残した存在の証と〜 思った〜 らあ〜 あ〜〜 これ以上の逸脱が破綻を呼ばないよーに本気で設定変更しとくか、許容の遵守に据え置くかしないと あー、許容範囲はごねそう〜。



 一旦保留で、【成立 をぽち。

 出てきた検索欄に、うちの子の名前を入力。ぽぽぽんと該当カードが複数枚出た。


 「へ? あー」


 曖昧検索機能が似てる名前の子を引っ張ってきてた。 …俺のせーれー達が何の為に、この機能を設定したのか考えると〜〜 ちょっと怖い。しかし、ミスを防ぐ目的には適っているから良し。


 こーゆーのは住民基本台帳と繋げてたら間違えようもないんだが、こんな一部署のプロジェクトが勝手に台帳と繋げてたら泣かすけどな。


 「さてさて」


 カードの記載内容に目を通せば、『お祈りメール』とある。


 「…書式を変えた?」

 

 とりあえず、タップ。



 「お」


 リストの向きが縦から横へ。

 リストを土台にホログラムが起動。

 ミニチュアなうちの子が現れ、動き出し、祈りを紡いで  過去が始まる。



 願う姿に、へー。

 背景その他に今時の召喚てこーなってんだと、ほー。


 うちの子の視点だと見えもしなかった箇所とか見えて、ふんふんと感心しながら鑑賞。終了後は担当者記述を読む。



 【召喚相手への希望


 一、力の増量。

 二、力の増強。

 三、力の補強。

 四、力の補助。

 五、生活費と食費をあんまり圧迫しない。  ←かわいー感じ?

 六、受け入れられる姿で。   ←かわいーが早い?

 七、大き過ぎるのは、ちょっと。   ←やっぱり、かわいーが早い?


 性別の希望なし。


 上記の希望から、支援系でかわいー感じを狙います!】


 

 あるふぁがリクエストを『かわいー』で括ろうとしてるのが何とも言えんが、まぁ間違いではない。内容も外れてないし。


 どこまでも力に拘った子だったが、その程度なら特に問題でもない。それから接触中の経過観察等をきっちり読んだ上で、あの子の能力評価を読む。


 【能力査定と総評。


 目が良い。

 見分けできてる。

 

 ご飯量、多くない。

 食生活、うちの子の方が良さげ。

 生活実態、無理なく当家に馴染めそう。

 造形、似てる。

 大きさ、過ぎるにならない。


 攻撃性、薄い。

 力の親和性と好感度、高い。  ←やったあ!

 

 希望に対して花丸です!



 備考:出生地の文明圏は主様の一番のお友達のお家寄り。でも、あちら程ではない】



 他にも備考がないか突っついてみるが、そんなものはない。

 わかり易く書いてるが、この時点で第一能力は視力。第二が親和性。これでうちの子の増量ができるとな?



 見える。

 教える。


 見えて取れる?


 取れたなら渡せる。又は潰せる。


 連想ゲームが可能性を示唆するが一人辛いのは嫌だから、「おーい」「はい、何をしましょう」手伝わせる。




 二手で確認。

 この前、全取りできなかったモノを再生。


 ガーーーーーッと高速送りで見てなかった日常生活や力を使ってる姿を見続ける。このデータの取得時の発熱と取得速度を思い出すだけで予感的中の予感がバリバリしてる。


 「我らが主よ」

 「お、引き当てたか?」


 「はい、こちらに。ですが、あの…  この子、かなりの問題児では?」

 「あ?」


 「どうぞ、ご覧下さいませ」

 

 ずずいと画面を差し出す顔が それだけで当たりって見えるう〜〜〜。


 


 「うわあ」


 向かい合わせた小さな手の内、なかなかのモノを構築してた。没頭する真剣な顔は完成に近付くにつれ、少しの興奮を孕んで〜〜 良い顔してんなあ、こいつ。


 もう少し、もう少し、もう少しでかーんせーい!


 の、一歩手前で『キュッ』となった。なったから耐えられずに倒れる。


 訳がわからない。


 そんな顔で口が開き、顎が上がり、『何が』『どうして』を繰り返す。声なき声と目が紡いでも喉が紡ぎ出すものはない。


 

 周囲に誰もいない所で子供が一人、バッタリと〜。やべえよ、誰かはよ来いやと思ったら今世の子がダッシュしてきた。膝を着き、顔に触れ、ぐわっとした顔で抱き抱え、大声で人を呼ばわりながらこれまたダッシュしていった。


 過去だけど、よかったよかった。


 「我らが主よ、如何でした」

 「なかなかな感じな」


 「あの年で、どうしてあんなモノを構築しようとしたのか? なんという問題児!」

 「まぁ、それはそうだけど」

 

 「感覚的にもおかしいですよ」

 「いや、それは言ってやるなよ。できるに賭けた浪漫だよ」


 「え〜〜〜〜〜」

 「浪漫、浪漫」


 「浪漫で倒れては」

 「あー、それな。いやもうほんとガチ嵌めじゃねーの、あれ! だはははははは!!」


 うっかり笑ったら「主様!」と怒られた。


 「いやいや、だって。あー、こうなると今世の子の正解札は  あっちだったかあ?」




 うちの子の日常生活で特異と呼ぶなら一つだけ。

 倒れた結果の『何故?』の維持。

 それだけだ。


 未練と言って良いそれは使命感に通じる。想いを抱き続けて『あの時』を取り戻そうと突き進む、あの根性。あの精神力。


 あれが今世の子であれば、元に戻ろうとしておかしくはない。


 合理性と優先性が一部の感情の欠如を招いたよーだが、振り幅が少ないだけで相応の感情はある。普通にあって歪んでいない。事実、あの子が帰った後には大泣きしたし。イカれてない。


 そう考えると優秀だ。

 そして俺のも優秀だ。


 「俺の安全設計、最高だわあー」

 「それはもう主様の安全性は確かですもの!」


 「そーだろ、そーだろ、あっはっは!」

 「ですが、我らが主よ。あの子は真、今世の子ですか?」


 「ん?」

 「感覚おかしいし、頭もおかしそうですよ?」


 「これ、言い方」

 「えー、でもあれをウォームスタンバイと言うのもどうかと思うんですけどー」


 「そっち?」

 「じゃあ〜  現在、今世の子と目している子の方が適合値が高いです。それに、もしそうだとしても今更でしょう。真実を知ったとて、それで誰の心が癒されますのか」


 理性を持って慈しみを示した闇の子に驚き。『それで誰が得をする』とでも続けそうなものなのに下の子を庇う姿勢に感動。


 「大体、真実の開示とは混乱を誘うもののはず。そして混乱するのが我が家でなければ、もっとやれ!なのです」


 うん、もっと感動。

 俺の精霊だわ。


 しかし、あの子の能力はだよ。




 「こちらでしょうか」

 「そうそう、それな」


 うちの子のキュッを掴んで伸ばして引っ張ってえ〜〜 あ、そうか。うちの子、もうとっくにゲロられてんじゃねーの。あっはっは、次にゲロられても今更だぁな。


 そんで俺のあれを手掴みしてんよなあー。手掴みできた事実だけに目がいきそーだが、どうしてできたかってほーが大事でえ〜〜。


 「主様、これは先に約束がなされたからでは」

 「そうだなあ… しかし存在感で言えば加護だよな」


 「…不愉快ですわ」

 「全くなぁ」


 嵌まったあれは年月を経て同化している。それを引っ張れた時点で〜 うーん〜〜。



 「解放になるのでしょうか?」

 「切り落としも外せもしてないよ」


 「今世の子が交代するのであれば…  下の子達の動向は」

 「交代劇があれば、あの子はうちの子に釣り合わなくなる」


 「え?」

 「あー、『俺んちの子』なんてのが有り難い物になるとか腹立つわ」




 あの子が完全に外せたら、そら凄いわ。驚くわ。うちの子の願いも叶うから? 結果、それで家に出る影響なんぞ俺がどうとでもしてやるわ。


 しかし、それができたからあの子の能力がそれだとゆーのはあ〜〜  そんで他への応用が一人でできるかとゆーと〜〜〜  やがて力の在り方を うちの子と繋ぐ形の変化を嫌でも理解するだろう。その時、あの子は その形を嬉しいと思えるだろうか。


 周囲の目が、環境が、あの子にとって望ましくならざると。



 その回避方法は幾つかある。

 しかし、今更。


 それにチェンジで済ますのは早いがカスっぽい。




 「しーがらみ〜 の、ない じょーたぁい〜〜」


 夢と理想と現実と。


 今世はなんと賑やかである事かと そっと目を閉じる。


 



 ゆるりと画面を見遣ると。

 うちの子が頭にクッションを乗せてた。そこにあの子が飛び降りた。


 …そうだなあ、この程度で楽しくやれるのがいーんだろうな。


 そう、やんわりと微笑んでやれた。




 うん? 待てよ?


 あの子が引っ張ってこーなって。んじゃあ、あれが伸びたままかとゆーとそーでもなく… しかし、それを前提にすると〜〜  あの子が鍵となるが…   もしや、うちの子 現状維持で第二形態になれるんじゃ??


 まじか、それ!?





 『こちらに御座すは、お子様である。当方の大事な大事なお子様である。この身を御使いとして贈り賜うた御方のお子である!!』

 


 二人が二人で織り成すかもしれない壮大な浪漫を夢想してときめいてたら、ぶっ込んできやがった。ちょっとムカついた。


 

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