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召喚  作者: 黒龍藤
第四章   道中に当たり  色々、準備します
206/239

206 希望です、と?



 三匹の金魚をお供に天界るーむを出ますと、下界ルームは騒がしかった。しかし、下界を吹き抜ける風は涼し… いえ、にゃまぬるーい風が吹いて…


 「流れたな」

 「は」


 「ですが、今暫くは閉ざさぬ方が宜しいかと」


 そんなお言葉を耳にして、その場で今一度、白ちゃんの冥福を祈ります。透明感のある白ちゃんが胸鰭をヤッとあげ、良い魚笑顔で世界に泳ぎ出してグッ バーイ。


 そうです、世界は金魚鉢。

 金魚鉢とは次への希望に溢れてる、魔法の魔法の鉢なのです!


 適当な事を語感で言っておりますが感動の物語に猫、滂沱。落涙とゆー洗い流しに、気分すっきり〜。



 再び下界を覗くとヘレンさんが俯き加減で座り込んでた。ロトさんは歯ぁギリギリしながら体を壁にぴったりさせてた。


 …そんなに衝撃映像だったのでしょうか?


 ちょっと申し訳ない気もしてくるので、湿っぽい雰囲気をぶち壊すべくシャイニングカーペットを猫手ぺっちでスタートさせて滑り降ります。


 「にゃっふーう!」





 「で、あれは何かな?」

 「んにゃっにゃ、にゃにゃにゃん!」


 …セイルさんには通じません、残念。

 膝の上で可愛く話しているのですが、セイルさん猫の可愛さにデレてくれそーにない。無念! ちび猫が小首を傾げたんだから、ナデナデしてくれてもいーと思うんですけど?


 なんで膝上の猫の魅力に落ちないのか?


 「擬きとは違って、なかなかの演出と言えば演出であったが… あれは出てきたら直ぐに割れる仕様か? 調整はできんのか? 流石に還ると言えど、あの様に広がられては視認性が問題でな」

 「にゃう〜」


 「言ったであろう? 人の目は騙され易いと」

 「なー」


 叱られる感覚で厳重注意処分を受けております。


 「子供騙しの驚きで終わる者と終わらん者が出る。現に、今、出た。防止対策に時間を設けて欲しいものだ」

 「にうー」


 皆さん、ソウルイーターには興味なく色白も問題ではないよーです。盛大に見送ったニャンダ船の航海は大変短かったので、ある意味失敗だった模様。次の白ちゃんの見送りは、よーく考えねばならないよーです。でも、最後に皆さんに「わーっ」と言って貰えたほーがいい気がするんですけど…  ダメですかね? そりゃあ… 突然のホラー映画の開催は俺も嫌だけどー。でも、『お葬式は突然に』でしたから。


 しおしおと、お膝から降りて反省。


 エンターテイメントではないし、そうする気もないですが… 野辺の送りは野辺でひっそり… それが正解でしょうか?


 「心構えよな」


 お手が猫頭をよしよししてくれると、ちょっと気分が上がり。


 「なぅん」


 今度は、わかるよーに黒の葬列をお外に伸ばしてみよーかと思います。はい。 …あれ、俺って喪主ですか? いえいえそんな恐れ多い、他人です。 んじゃあ、司会進行役の葬儀社で? いやいや金魚は俺のモノ。えー。


 一猫二役、頑張ります。




 では、気を取り直して参りましょうー。


 放心から青白い顔で静かにぶるってたヘレンさんは、お茶のカップを両手で持ってあったまってた。視線は隣のギルツさんに固定、頬には赤みが差して回復の兆し。あー、よかった。


 んで、お供の金魚を確認すると〜 一匹がB地点(ロイズ)からC地点(クライヴ)へと向かってた。もうニ匹はD地点に陣取ってる。ちょーーーーっとロトさんが危険かもしれない。しかし、あれは話せてるんだろか? 元、同僚ですしねぇ?


 「にゃーーん」


 自由行動は終わりですよーと声を掛けたら、すい〜んと泳いで帰ってきた。


 「にゃなん(ご挨拶)


 横並びした三匹がセイルさんに対して順番に右回り、右回り、右回り。うむ、こうしてみる金魚芸はいいものです。


 「…ああ、二人は初めてだな」


 なんと!

 セイルさんてば、わかるんですか! そりゃ、ジュリちゃんは羽衣金魚で目印ですけど他と区別がつくですか!


 「なーん??」

 「ん? まぁ、何となくな。色味や形よりも違うモノがな?」


 うにゃー、猫びっくり目のどっきりさん。戻ったら、独自の見分け方を聞いてみよう。


 猫、うんうん頷いて終わり。

 そんで、まずはヘレンさんから。


 「なーん、にーん」


 ほんのり頬っぺのヘレンさんに招き猫をすると体がビクつかれるも、ギルツさんがお手を伸ばしてカップを回収。その際、こそっと耳元で何か一言。直後、シャキン!と背筋伸ばしてできるメイドさんに早変わり。


 ススッと前にお越しです。


 顔色も良さげで何よりですが、ギルツさんは何を言ったんでしょう? まぁ、いいや。


 

 「なーあ」


 ヘレンさんを見上げ、猫はギルツさんを見ます。「に、に」とお手のカップを指差します。 …理解がちょっと追い付きません? うーん。


 猫、ジェスチャーを捨てアクティビティをを選択。


 肉の木の服に爪掛け、登ります。驚きと硬直が入っても気にしません。カップにぺしぺしタッチして、ジャーンプ。からの〜 再びの木登りと腕渡りをしてタッチ。


 タッチ、タッチ、タッチ。


 「あの」


 ずびし!とカップを指す。

 一匹の金魚ちゃんが一緒にヘレンさんのお手回りでアピールする中、ジュリ金魚ちゃんが泳いでカップにin。もう一匹がヘレンさんのお手にinできてないin。


 「ああ! こうですね、両手を揃えて」


 うむ、猫より金魚がわかり易かった…


 ヘレンさんのお手周りで仕事が始まると、もう猫の仕事はございません。ロトさんの元へ行こーと思いますが猫は一度キョロキョロします。セイルさんのお指が膝上でタタンッと動いたのを猫は見た。見た!


 目敏く見逃さないのが猫なのです。


 シュタッと方向転換、猫クライマーはベッドの壁を登り切り。狙い定めたお指を狙撃手張りに〜〜〜  うにゃったー!


 ぽすん!


 …うにゃう? うんにゃー!





 ふ、スニャイパーは引き際を知っていますから。ちぇーっ。

 

 猫エアロビからベッドにごろんしてたら、お疲れなヘレンさんを発見。立ちっぱで水を受ける格好を続けるのがしんどくなってきたよーで腕が落ちてる。ニ匹が手の上を滑って何やらしてるのですが、ちょっと時間が掛かってる。おぉう、肘を体に密着させて維持したあー。


 涙ぐましい努力を前にベッドで寛ぐ猫、ダメっぽい。


 ので、スフィンクスに体勢を変更。しかし、楽をしよーと位置も変え。人様の足を横壁に〜 うむ、良い感じの人肌熱に尻尾ぺち。


 ぬ? なんか… これは…  ええと…   暑いですね、やーめよっと。


 「あ」

 「に!」


 ぽすぽす歩いて離れたら、きんきらりーん!と光の構築が始まりました。


 


 じわじわと広がる光は上と横。眩し過ぎない光がどんどん厚みを増していく代わりに、構築したニ匹の黒金魚はへにゃーんと床へ降下中。ジュリ金魚ちゃんは上から様子を観察中。戦闘中でも決して戦闘には参加しない報告機のよう。


 そして、我らはその様子を見守り中。

 

 ヘレンさんの手にぴーったりの手袋じゃなくて器ができていきます。光度が一定になったので完成かと思ったら、違うっぽい。軟着陸した二匹が泳ぎ出し、ヘレンさんに向かって鰭でぺしぺしぐるぐるコマンド出してた。


 でもヘレンさん、理解不能でおろおろろ。


 「お前も力を出せ」

 

 セイルさんが意訳してくれた。


 「わ、私には読み解けません」

 「読めずとも良い、流せ。求めるは器、お前が力。お前自身も寄り添わねば」


 「は、はい!」

 「…そうだ、流すだけで良い。その程度でも緩和となる。学んでおろう? …ああ、使わねば忘れたか?」


 「あ、いえ! いえ、はい! できます!」


 ヘレンさん、アガリドモリのアガリから実力を発揮。力が加わる様がよくわかり、へー!って感じで見てました。


 


 完成した透明感溢れる器を三匹が角度を変えて何度も目視確認しています。まさに現場監督です。揃って頷いた後、へたって座っちゃったヘレンさんに更に要求。


 「え、はい!」


 頑張るヘレンさん、器に力を注ぎます。 ぺち。


 「え、違います? ええと…」


 エアーぺちぺちでやり直しを要求。器作りは終わったみたい。


 「注ぐ… 力を注ぐ…  この中に、器に力を溜める… ような?」


 正解には金魚の舞い踊りが披露され、かっわいーい。


 「ええと… ええと……  構築に手を貸すのではなく、私の力で…  器を満た、す? え、ええ!? 単なる放出あっちでは散りますので、溜めるとなると… める、とどめる… 散るものに停滞を…」


 ヘレンさん、一生懸命考えて頭を悩ませておられます。猫、チラ見しますがどこからもアドバイスは出ません。してあげても〜  って、これは試験でしたっけ!?


 「一定の基準値よりも高く… 一定の基準値よりも低く…」


 真剣にブツブツ言われてます。

 猫、出ちゃうモノには蓋をすれば?と思います。ですが、蓋は蓋。金魚ちゃんが入れなかったら意味はない。たましーの金魚が力の蓋に当たるとゆーのは安全が考慮されていない…


 「要は、押さえ込み からの…」


 ヘレンさん、口調に不安が滲みます。間違いなく、『儘よ!』みたいな感じも致します。それでも人に問いません、ヘルプ視線を飛ばしません! あの時のヘレンさん、再び! かっこいい!!



 息を大きく吸って〜〜  ギッと気合が漲ります。 猫、応援します! 頑張れえ〜〜!!

 




 「すいません… もう、これで精一杯です…」


 …うん、ちょっぴり。ほんと、ちょっぴり。ちょーっぴりのとろみとゆーか色とゆーかが器の中に見えました。黒金魚達が覗き込んでは舞い踊り、ヘレンさんに褒め踊り。


 「そうよな、押さえ込むは制圧だ。だが、散らしてはならぬ制限が付く。為したるは正圧、よくできた」


 お疲れ〜なヘレンさんをセイルさんがお褒めになられた。制圧した正圧は静圧でこの二つはどーのと言われて対するは負圧で動圧で下がる気圧のなんたらだとわかりみがどーのの動圧はどっぱ〜〜んの方向性なんだよみたいな事をべらりと言われて猫の頭がうにゃっぱーんです。

 

 猫の頭は怒涛に流されると言ったでしょー?


 噛み締めて理解の猫に一息に言ってもダメだとゆーのに、三匹が説明に云々とわかってる頷きをしてるのが… 一番、辛い。猫のダメ頭を って、猫、何してんの!?


 難しいのは当たり前、その当たり前から逃げてどうする!?


 現状を嘆いて振り返り、その上で変化なしを選んで突き進むのか!? 突き進んだら進化はないだろが、この馬鹿学術会議めが! ぬるま湯に浸かっていたいの、なんてくそ甘ったるい思考で動くのが学術会議だと言うのか!! そんなモノ、進化ではなく退化だ!



 …ああ、文明退化の音がする。


 チャリンチャリンと音がする! 金の亡者が鐘を鳴らして腐敗のおんしょー連れてくるー! いーにゃーー、鍾馗様はどこですかー!? 分野違いで無理ですかー!?


 ああ、退化の改新が望まれる!


 しかし、保身以上に軽い軽い軽い軽石クラスののーみそが邪魔をするのですね! 軽石は石だから改心のしよーも何もないでしょーからバッサリやっちゃってやったったにするのが一番だと思いまーす。


 でも、猫脳は軽石ではありませえーん。


 我がやったった証明ににゃおん学術会議は進化論を是とし、叡智は努力の結晶の山盛りのてんこ盛りであるのだと言いましょう!


 猫、魔法の辞書を片手に退化の音を退けてご覧に入れましょう〜。

 


 ちび猫魔法を行使する決意を固めてたら、努力の人ならぬ努力金魚のジュリちゃんが舞を披露してらした。


 器の上での舞い踊り。

 魚体から舞い散るキラキラは光雨のよう… 金魚如雨露もできるらしい。『すごいよ、俺の金魚』と感動に打ち震えてたら、ちゃぽんちゃぷんと器に光が溜まってた。本気で凄い。どうやったん?


 ちゃぱん!


 「きゃっ!」

 「お」


 「にゃう!」


 そこへ一匹が飛び込むと、きらーんきらーんきらーん!と連続で発生する眩しい光が立ち上り! 黒い金魚ボディがシルエットにー!


 


 ぴちゃん…


 光が静まった時、そこには。



 「おお」

 「にゃうー!」


 なんという事でしょう… 俺の金魚は進化した!



 見よ、金魚しんかぁー   に、ん、ぎょーーーーーーーー!!!

 


 

 「にゃーん!」


 大興奮でベッドから飛び降りて見に行った。




 器の中で器用に回転、金魚の鰭がぴっちゃぴちゃ。自分確認を終えて縁に手を掛け、身を乗り出した人魚ちゃん。 …ボリューミーな髪でお顔が見えません。ご本人もそうだったらしく、ううんと両手を上げて髪を掻き上げ、首を振る。素晴らしいオープンさでお顔と一緒に上半身もオープン。


 女性人魚ちゃん、黒ビキニ。 セーーークスィ〜〜〜〜〜〜。


   

 人魚ちゃんの周囲をぐるぐる回る二匹が『成功!』のハイタッチ。ちび猫もそこに加わります!


 「にゃーん、なーん、にーい!」


 ぴょんぴょん飛んだら一緒に跳ねてくれて、うにゃにゃにゃにゃーん! 人魚ちゃんも身を乗り出して、ちゃっぱーん!



 猫、歓喜のダンスを終えて人魚ちゃんに顔を近づけ観察します。 …おお、なんか厚みを感じる! 首元や手首がキラキラしてるけどネックレスの類は〜 ない。お臍から下は黒光りする魚鱗に金魚の尾鰭。キラキラは魚鱗の名残でしょうか?



 しかし、上は人になれても下はなれない。


 人の足は持てない金魚…  まぁ、鯛焼きですからねえ? 焼き加減が甘くないんでしょう。焼きが甘いと形になりませんしねー。お話は顔があればいい訳ですしー い?


 危険な思考を改めます。


 猫、人面魚シーマンは嫌です。後、お茶碗を湯船にするナニかも嫌です。あれらはホラー要素です。可愛い人魚ちゃん、万歳。鋭い魚の牙を持たない可愛いファンタジー人魚ちゃん、ばーんざーい!



 ちゃぽん…


 猫に向かって両手を広げ、満面の笑みで人魚ちゃんがお話をされますが… 残念な事に口パクで声は聞こえませんでした。


 事実に気付いた切ない顔の人魚ちゃん… 足を手に入れてないのに喋れない、なんて不憫な人魚でしょうか!


 「にーい」


 絵本とは一味違う不憫さに、うーんと感じ入ったら〜 体を捻ってヘレンさんに向き直り、口パクとジェスチャー。手を伸ばして器を支える親指にタッチ。不思議そうに見てるヘレンさん、徐々に目を開いたかと思うとちょっと怠そげだった体がビクンッ。


 口を開いて喋り出す。


 「ご機嫌よう、主様。皆様方」

 

 初めて聞く女の人の声がヘレンさんの口からした。 …人って親指で操縦できるもんなんだ? つか、動かしよーのない親指が操縦桿でいいんだ。




 「そう、共に喋る。この状態が共有。感覚がわかって?」

 「…はぃ」


 人魚による人間の乗っ取りならぬ操縦劇は続いております。まず最初に俺とセイルさんに深々とお辞儀してご挨拶した人魚のカサンドラちゃんこと、カッちゃ…  カッちゃ…  うーん、カッちゃんは違うかなー? 男の子っぽいし、どっかのおじさんを連想する。かと言ってドラちゃんはアレだし、ドーラちゃんはあの子だし。うむ、ここはカーラちゃんか?


 カーラちゃんは元同僚推薦派でした。


 人体の尊厳に対するなんたらから同僚を推してたそうです。いやー、尊厳とか言われると怖くて詳しく聞きたくないですね。


 「できるのは繋がり故よ、抗ってみて」

 「はい」


 表情の主導権はヘレンさんにあるらしく、うぎー!みたいな顔して頑張ってる。でも、全く通じてないよーでボディはロイズさんの前で淑やかなお辞儀を終え次へと向かう。


 「体外であれ、あなたより強い。内なる力も巡るもの、強き流れに従うが道理。況して、私に体はない。あなたが私達を抑え、主導権を握るのは難しい」


 説明しながら、E地点に立ち止まる。ヘレンさん、お顔が変。目が不審。しかし、ボディは頭を下げて優雅にお辞儀。綺麗な姿勢で上げたお顔がうにゃってるー。ギルツさんに手を取られると、更に目元が赤くなる。

 

 「私達は器を求める、それなりに使えるモノを。本音を言えば予備は欲しい。でも、今は維持もできない」


 あう、猫を見ないだけ偉いです。


 「あなたも不安でしょうけど私達にも不安はある。定着は守りを失うと同義だし、定着と適合は同義ではない。定着からの離脱は不透明で、定着後に不適合が発覚したら悲惨と脱落を通り越して真っ逆様よ? 間違っても定着したくないわ」


 あう、人の体でそこまで言っちゃあダメでしょー。気持ちに希望がぐるっちゃうでしょー。


 「今は試しの時なのだから、心構えも含めて必要な話をしましょう」

 「は、はい! …はぅう!」


 試験の次は面接で流れは合ってます。

 自分の希望とはいえ、大変ねー。リストラからの起死回生の就活を決意したその日の内に試験と面接の両方だもんねー。それも一次と二次の連チャンで… あ、もう研修ですかあ?


 ほんと大変ねー。 


 しかし、なーんのサービスで? ボディの方からも手をにぎにぎ、お顔を近づける。うーん、ヘレンさんのたましーが真っ赤に染まってそう。それにしても、カーラちゃんのご挨拶は堂々としてるからメイド姿だと違和感あるなあ…


 「観点の違いから外したけど、打って出る姿勢は嫌いじゃないわ。好きよ」


 手を離し、今度はC地点に向かいます。


 「最善を模索して仲間と意見がわかれてね。色々と博打をしてきた仲だから、見送る際にも賭けをしたの。 ふふ、悪くない賭けをしたと思ってる。 …あなたも賭けに出たのよね、わかるわ。でも、不慣れでしょう? 一人で大変だったわね」


 最後の言葉にヘレンさんの表情がスコンと停止。歩みが止まる。口パク金魚を真似て、あわわわわな顔面一人踊りを始めたヘレンさんの目が潤んだ。


 んでも、感動のヒロインの体はさっくりと歩みを再開。

 姿勢良く堂々と独り言を言いながら、涙目でお辞儀巡りをするメイドさんと言ったら なんてカオスな。



 終点はD地点。

 ロトさんの前で止まると、じーっと見下げる形で動かないヘレンボディ。


 「そうね、あなたは逃げ出した。いいえ、意志の強さと言って良い。でもねぇ、わかっているのかしら?」


 はい、どすの利いた声からの〜 素早く上げて下ろしたあー!


 ドスッ!


 「いてえ!」

 「黙れ、印を戴いておきながら役に立とうともせぬ愚か者めが!」


 「てめ、何様のつ「黙れと言っている、この不届き者が!」


 ガスッ!


 「ってえ、何しやがる!」


 はい、足で蹴ったは二連続!


 「黙れと言うた!」


 ダンッ!


 今度は床で良かったですよ!


 「確かに、お前達は力が弱い。私達に比べれば、ないも同然。その上で碌な構築もできぬとあらば邪魔になるだけ! 切り捨てるも道理だが、それでも戴いたからには尽くすべきだと考える。何故なら、あの時、確かに希望を押し頂いたであろうが! それをなかったと言うのかえ!」


 ドスッ!


 カーラちゃん、足癖が悪いのか足技が凄いのか全くわかりません!


 「ぐっ!」

 「お前は外に出た。感情が赴くままの行動を蛮勇と笑いもするが評価もする。私はあの一点を高く評価している。 だがな?  外に出て、無事に戻った。 お前は誰よりも、あの囲みの力を解したはずだ」


 …なんかヘレンさんのお目々が見た事ない感じで爛々としてる。あれ? 顔の主導権、移行した? ……いけませんねぇ、二人のお喋りに操縦者ボディを忘れますねぇ。でも、ヘレンさんの体のほーを向いてるなら視覚を共有してるでいーんですよね?


 「体に戻り、夢は覚め、全てを忘れゆくに疎ましさを覚えども… 追うに足る大物でもなし。主様のお心を煩わせると思えば、夢と終わらせるも仕方なし。己の憤りなど些細な事よと済ませもするが… お前は違うだろうが、この痴れ者めがぁ!」


 ゲシッ!


 女性の怒声が響きます。

 そして、足蹴なる暴力が振るわれるのです!

 

 メイドさんスカート、ひらひらタイプじゃないから靴の先を凶器にしてる。カーラちゃん、体で教えるタイプですかー!? 猫、暴力にビクビクするんですけどー。


 「この身が我が身でない事を喜べぇええ!」


 カカカカッ カーラちゃんは武闘派でー!? うわ、あのカッちゃんのほーがいいのかなー!? そりゃ、カサンドラなんてめっちゃ剣で打ち合ってそーな感じもしますけどー!?


 ドスッ


 「にゃ、にゃなやにゃーん!!」

 「は、主様。どうなされられた!?」


 「なーん!」


 カーラちゃん、武闘派で脳筋の気があったりしますー!?



 「主様、甘やかしてはいけません。こやつは阿呆です、本来なら主様の傍に侍るも許し難い程の阿呆です! これ以上、恩義知らずの慮外者となるを許してはなりません! ああ、腹が立つ!」


 何か違う。

 けど、違わないらしい。


 二つが絡むのでセイルさんに目で助けを求めると、うんうんと頷かれた。筋は通ってるよーだ。通ってないのは暴力だ。


 「に〜〜〜」

 

 ああ、猫は手腕を持ちません… 腕力はないのです! 誰か、魔法の辞書を呼んでくださー 内容を読み上げてくれてもいーんだけどー。


 「ですが、この手の頭にもそれなりの律があります。それに則れば良いだけで、それ以外では納得しません。何せ、馬鹿ですから」

 「…なぁ」


 暴力至上主義? えー、不良のピラミッドー?


 「馬鹿ですから都合よく自分を被害者に置き換え、目を逸らしてこれ幸いと逃げるのです。抜け出た、終わった、なかったと! 辻褄が合わぬ事にも目を背け、傲慢にも主様への恨みを呟けばそれで何かが終わると信じて「俺はお前みたいな「黙れ、この滓!!」


 ゴッ!


 ああああ、暴力の連鎖が止まらないー。


 「お前は平気で自分の女も殴る口だろうが!」


 うっわ、そっち!? そっちに話を持ってっちゃうー!?  ぐあー  って、待て待て。その名目も付属するなら、より放り出していいですよね? 此処はひとつ、将来性が見込めないとゆー事で。


 「力に阿る頭なら頭で、もっとしっかり見極めよ!」


 不採用でいーですよねー。俺、導きの星とか持ってないしー。しかし、生態系を壊すポイ捨て放流が問題であるのはわかっ「お止めして下さる主様を有り難いと思わんのか!」 は?


 え、待つ待つ待つ。いや、だから俺は放流を希望してて。え? 暴力を止めよーは放流も止めよー?



 混乱猫の目の前を、すい〜〜っと黒金魚ちゃんが泳ぎます。一瞬、猫手が出そうになりました。遅いけど。スカらぶるだろう猫手を上品に揃え直し、正気の舞に「にゃおん」と一言。混乱(微)を脱しました。そう、肝心なのは男金魚のご意見ですから。


 丸く蹲るロトさんの額に一直線、選手交代のよーです。







 両手をグッと握り締め、感動に打ち震えておいでで「あー、シャバの空気うめえ〜〜〜〜」す。はい、yakuzaなにーさんに負けず劣らぬ言い分です。笑顔のロトさん、今のあなたは誰でしょう。




 え、化合物?


 「…うにゃん!」


 大変失礼な事に、聞いた名前にのーみそが勝手に要らん単語をくっ付けました。咄嗟に可愛く鳴いて誤魔化した。危ない、危ない。


 「気持ち悪りぃ! 俺の中から出ていけ!」


 おお、ロトさんが正気だ!

 ヘレンさんと同じ現象に、猫、ちょっと安心しました。



 「あ?」


 しかし、安心は続かなかった。

 シーちゃんの声はカーラちゃんより低く、怒気に溢れてた。纏う気配もどんどろどろどろ、笑顔もどろどろ。見事な豹変。猫、豹になるには難しく。


 一人の口から飛び出る夫婦漫才… の、よーな口論は早々に終わり。


 「んじゃあ、力比べといこうじゃねーの。お前が勝ったら望み通り、永遠にさよならだ」


 暴力は回避されました。

 シーちゃんが全てを汲んでくれました! ジュリちゃんは静か〜に漂ってて横槍を入れないので総意のよーです。




 これから、一つのボディで男と男の勝負が始まります。


 「主様、離れていて下さいよー」

 「にゃーん」


 猫、安全圏に真っしぐら。


 「あ」


 お膝の上に飛び乗り、特等席で観戦です。尻尾、ピコピコ楽しみです!


 「かっこよくキメますから見てて下さいねー」

 「にゃおーん」


 暴力回避の爽やかなバトルが始まりまーす。




 「どうした、早くやれや」


 ロトさん、体をぶるぶるさせて片手に力を溜めているよーですが〜 見事なスカらぶり。最初にキランとした後はピカッともしない線香花火は、不良品か保管ミスのよう。


 「お前、それで本気かあ?」


 勝負は綱引き、あっちです。

 過度な危険もないバトルは、右手から垂れ流せ。しかし、シーちゃんの引きが強いよーでロトさんの力が全く出ない。カーラちゃんの言葉を踏まえても、シーちゃんの方が強いのがまるっとわかります。


 「イキも何も落ちるたぁ、この事か」

 

 顔を真っ赤にしてるから、鮮度は良いと思います。


 「んじゃあ、そろそろ代わるか。左から出すぞ。 …かーわいそーだから、ボクちゃん休ませてやろーかあ〜?」

 「っざけるな!」


 すっげ楽しそうな声に反発、教育官のロイズさんの目も反発。じっとりとした目がヤバイと思うです。


 「そっか」


 直後に、ゴッとイキました。



 

 「にゃあ〜」

 「ああ、勝負にもならんな」


 左手から溢れるあっちは打ち上げ花火! 引きも出しも強いです! 舞い飛ぶ花火は綺麗で素敵な鑑賞ですが、セイルさんにオートで食われてるよーで俺の前まで飛んでこなーい。


 「もちっと抵抗してみろや。あ?」


 あれ?と思えば、顔の主権が移動してる。同じよーな口角上げなのに、違うものに見える…


 「ほぅ、足りないと。よっしゃ、希望通りガンガン突き上げてやろーじゃねーか! やったなあ!」


 聞こえない会話の返事には物理返しがあるよーです。一つのボディの中でナニが起きてるのか、一切わかりませんが「てめ、ころ ころ「はっはぁー、次はコロがりたいってかあー! いいぜ、回してやるぜ!」 ええと、わからないのでナニがどこでどう回って大回転してるのかさっぱりです。


 猫、メリーゴーランドが楽しいのは初回に限ります。  



 「げ」とか「ぐ」とか聞こえるのが嫌なんで、猫は反対向きまして「あ」お腹に頭を突っ込みます。だが、耳は隠れなかった… くぐもる声が聞こえるではないか! 聞こえない、聞こえない、聞こえないー!


 頭をグリグリ、猫は聞いておりませんー!


 「 (あああああ!)

 「ご領主、こいつを解放したらどうなされます?」


 うーん、これがセイルさんの臭い… にゃんだむ〜。


 「あ? どうもこうも有罪だ。無罪放免になるか」

 「ですよねぇ」


 ぬ、なんと顔触りもいい服なのでしょう!


 「収監理由と犯罪歴、これに有益を掛けて天秤を傾けた。ノイが扱えぬ、扱わぬとするなら戻すだけぞ」

 「ですよねぇ。お前、聞いてるか」


 ちょっと踏んでみようかな? えいっ。


 「蛮行を蛮勇とは褒めん」

 「解放後は収監生活が約束されてるのを忘れられる馬鹿だしなあー」


 「がっ!」


 「ああ、収監を甘くみていると」

 「あー、それはあり得ますねぇ」

 

 踏み猫に勤しむ間も話は続き、「年数は」とか「済む訳」とか「希望は」とか「領主の面子」とか様々に聞こえますが、「下層とは」そんな事より! お客さん、凝ってます? ちっとも柔らかくないですよ〜。 えいっ、えいっ。


 「うげ!」


 プラスされる喘ぎ声は聞き流し一 猫は、お腹を攻略するのですからしてー。


 「だってよ、聞こえてたか? ちゃんとわかったかあー」

 「ひ!」


 ん? 終わった?


 振り返るとロトさん、両膝着いて腰を上げる前屈みで首がこーなると、怖あ〜。あ、目が死にかけてるー。あ、あ、肩からずべっ「に! …にあ?」あー、シーちゃんが倒れるのを許さないのか。 …支えてるって感じがしない支えも不思議。

 

 ロトさん、体勢と顔がアレだけど「主様、楽しくやっときました」…ゆーてる事もアレな金魚ねー。やった系は仮ゆーしゃで十分なんですが確認は必要だろか?


 ぴょいと飛んで「あ」飛んで飛んで飛んで、うげえ〜なロトさんを覗き込み。焦点が合ってないのに、やべえ!とびびって猫は優しくペチペチぺー!




 「き、ぼうしま す。自分を、つか ってくだ さぃ」


 なは?


 猫、上半身エアロビでセイルさんを振り返り。


 「みゃう〜?」


 ご説明を願いましたら、してくれた。




 …手のひらくるりの、希望ですと?


 猫の放流計画を阻止しようとか良い根性してんな、お前。遡上できない生け簀の何が不満だ!? 生け簀は生け贄でも百舌の速贄でもないんだぞ!! うにゃー!







正圧と負圧。

静圧と動圧。

変化なしと変化あり。



 

本日の「あ」。

兄の「あ」がいっぱい。兄と他の区別は可能なはずだ!



本日の金魚クイズ。

一、シーちゃんの正式名称はなんでしょう? ヒントは三文字。 三文字の後ろに化合物とか化水素(又は化水素酸)とか化カリウムとかついたりします。


二、カーラちゃんのバストサイズは幾つでしょう?



 


二のアンサーが出せるかどーかは不明ですが、最初にあなたが想像したサイズがあなたの理想とゆーかなんとゆーかアレなところだと思われえ〜。後はビキニの形状もプラスすると、よりあなたのアレがはっきりするかと。



本日の副題。

希望のてんこ盛り でも、いーのかもしれない。


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