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召喚  作者: 黒龍藤
第四章   道中に当たり  色々、準備します
205/239

205 ある、希望の先

目の調子が良くなく。

今後の執筆への不安におろおろぐにゃんとなったら風が吹けば桶屋が儲かる理屈がマイナスコードの方程式を突き刺してきたので91話の冒頭部を改稿しました。

誤字脱字確認はすっ飛ばした。




 「…… 」


 広げたプリントを纏める、広げる。親指を基軸に傾けては、閉ざす。広げる、閉ざす、広げる。べべべベベッ。


 賢い馬鹿の努力は認めよう。

 しかし、これではどう考えても俺へのリスペクトがない。


 敬意がなければ配慮もない!



 ベラベラとプリントで扇いでみるも、そこから思考が離れない。馬鹿の思考は元より、ご父兄の思考も読めない! あんた、いったい何がしたい!? まじで俺を怒らせたいのか!?


 

 バサッと投げ捨てたいプリントを、じとーっと見る。


 「け」


 この一言で終わらせたい。

 それと同時に放り投げたいのを我慢する。グシャッと握り潰したいのも我慢する! 握り潰して解決するなら、うだうだ悩むか! ああ、もう知るか!


 やっぱり、プリントを放り投げ… いや、火ぃ付けて燃したらいーわ。


 投げた瞬間、ボッと火が付き灰と化す。

 消えゆくそれを冷徹に見下げて、薄く笑う  「あ、やべ。自滅(悪役)路線は廃止。そっちじゃないから〜」  消えゆくに笑みをたたえて力を纏い、数十枚の新たな手札を宙に生み出す。一枚を残して他は全て闇に消え、選ばれし一枚が輝きを放ち始める。輝きは風を纏い、ヒュッと何処かを目指して飛んでいく… 見送る俺の足元からは炎が巻き起こり、赤の揺らめきと共に消えていった…


 そう、路線はこっち(マジシャン)だ! これなら子供受けする! 大人印象(謎ダーク系)を醸し出したら、絶対カッコよく見えっだろー!! 意味深な出方で主要人物認定されて忘れられないカッコよさー あーははははは!!




 「あ〜〜〜〜 しかし、ほんとに終われねぇなー」


 火遊びで邪念とゆー憤りを散華した。俺、ちょーイケてる〜。



 「躾けようにも、これだと普通に保たねえ気がするな。 かー」


 プリントをベラーッと片手で広げ、もう一度見直すが見直した所で長期使用に耐えられそうにない物は耐えられそうにない。設計からしてハズレなモンを守りとして寄越すなよ。だが、逆に初めから短期使用で良しとしているのなら〜 この程度なのも理解する。それで良いなら系統がグッチャでも〜  まぁ、わかる。理解してやる。



 「重さなんて何れは慣れる、それは真実だ。その真理を元に語れば、確かに慣れるまで保てば良い。だがな、あんな大人しそげな上に戦闘能力が殆どない子に… こんな直ぐにイカレるよーな安っぽい守りやってんじゃねえよ!! そんで、系統違いで大きすぎる過負荷を期待値でどうにかしようなんて、そもそもの考えが甘過ぎんだよ!!」


 「た、たたたたっ!?」

 「主よ、落ち着け!! みゅー、お前もだ」


 我が家に来るなら守りが必要、忘れず持って来るようにと指定しといた。指定理由には真面な事しか書いてない。『重さは修行だ、自力でイケる』の心意気ならその機能はなくて良いが、それでも持って来いとした目的はマーカーだ。物品によるマーカーが目的だ!


 だから、個体専用である事は元より、遺失・紛失・盗難に際しての自動対応も常識の範囲内として容認した。反撃も二段階までなら認めるとした上で、他家との段階の違いを想定し、許容する指定範囲に限定解除の条件等を示しておいた。


 だ・か・ら!


 だから、俺も子供を求めて泣き叫ぶ声を遮らずにいただろが! 家中に響き渡って俺の精神を圧迫しても容認しただろが!


 「それなのに、最初から短期の設定だぁ? 俺を馬鹿にしてるんかい」


 「主よ…」

 「おい、みゅー」

 「はーい」


 「こいつに関して、あの子がナンか言ってないか確認しろや」

 「はーい、降下地点から現在地に至るまでの全期間を確認します」


 「そこは絞って良い」

 「はーい、指定は」


 「特別降下地点、うちの子との対話、説明時をピックアップ。無矛盾性も確認しろ」

 「はーい、無矛盾性を含めて三期間を確認。ずーっとレックが一つ、地上観察衛星ひまわりを洗い出しに活用します」



 先程とは打って変わった態度で返答し、ぽんっと球形(個室)作って脇目も振らずに突入して行くのを見届けてから、ドスッと凭れ直して目を閉ざす。



 散華させた火花は、燃え尽きる事なく燻っている。


 なんかこー〜〜 こっちの不手際もあるんだけどよ? それとこれとは違うだろ? 態々出してる指定の意図をわかってて踏み躙る現状に… いらあ〜〜〜〜っとしてくる加熱から発火現状引き起こしそう。


 体内通信は酷いカッコで帰した詫びを含めて容認しても、肝心の飾りのマーカー機能が直ぐに終わる設定とかナニ考えとんじゃ! 嫌がらせか? 嫌がらせか? 嫌がらせか!? 酷いカッコで帰した仕返しか!


 

 「力を展開した水筒に頭はない。毛布は独立機関。そこに終身対応機能がない、頭の設定も足りないマーカー… 三位一体方式かと思えば同位体でもありゃしねえ」


 繋げもしてねえ。


 外部を統括する流れがどこにもない… 暴走に対するセーフティーがどこにもない! 唯一、外部ロックの設定を立てているのが規定に準じたリュックのみ…  ふ、ふ、ふはははは。

 


 「お顔が宜しくなく」

 「あ?」


 「子供が見たら、一発で泣き出しそうな顔です」

 「… 」


 指摘に多少はピクッとくるが、苛つく今は『煩えな』が先に立つ。が、まぁ〜 まだ確定していない。それで、こいつに当たるのは八つ当たり。


 無駄に怒るのも馬鹿らしい、俺はできる大人だと無理にでも気を鎮め、目を開いたら何とも残念な表情でいやがった。


 「そんな顔をしないで下さい、嫌われますよ」

 「うぜえなあ」


 「そんな駄々を捏ねられても。子供が来られたのですから… 自由気ままな大人で魅せるのも良いですが、それよりちゃんと自分を見て欲しいのが子供と聞きますが?」

 「…あー、まーなー」


 「時間的な余裕があればとも思いますが、潰したのはご自分でしょう」

 「…… 」


 あ、イラッとくる。


 「余裕のない大人になっていますよ? 我らが主よ、いつも通りに相違なく。気ままな攻め手よりも力が要るのが守り手ですから。我らが主の本分ですから」


 …慰めよーとしてくれるのはわかるん、だーけーどーなー。まぁ、珍しくあからさまなアゲだな。いや、こいつの事だから家の管理体制の事しか考えてないよーな? ああ、家に穴なんぞ開けんて。


 「別に攻めるのが嫌いなんじゃないぞ、盛大な花火は俺も好きだしな」

 「ええ、そうですね。嵌めて落とすのが好きなだけですよね」


 「…陰険指定で嫌味っぽいな?」

 「いいえ? 主を把握しているだけですよ? ご自分でそう思われ、そうと思考を回しただけでしょう?」


 にこ〜っと笑うので、俺もにこ〜っと笑い返す。


 互いの笑顔で圧っぽいモノを掛け合うが笑顔の無駄使いのよーな気がしてくる。無駄無駄無駄無駄、笑顔の無駄は無駄笑顔。いや、笑顔に無駄なものはない。ないが、平行線を辿る笑顔は無駄だろう。


 この、価値のない笑み(スマイル0円)よ…  お前に、価値はなくても意味はある。意味があると読めぬなら、見るに付けてもかたも無しぃ〜〜    ってか。



 「あちらのご父兄が上手であられようと、我らが主が後塵を拝し続けられるはずもなく」

 「当たり前だろ」


 今度は無駄ではない笑顔。

 押しも圧もない、よくよくわかった笑顔ににんまりする。


 「……我らが主よ、精悍と悪い顔は紙一重とは言わぬかと。笑顔は普段が物を言うと聞き及びますが」

 「… 」


 悪い顔。

 悪党に悪人顔。


 それは子供に嫌われる敵役。 


 ぇええええ!? 

 今の顔で紙一重だぁ!? いや、完全に悪い顔だと言いやがった。


 「その顔で放任主義を主張しますと、最後… 印象が固定しますね」


 どんな(悪どい)顔だと!?


 固定化した自分の顔に、そろそろと手を伸ばして造形を確認… するも、よくわからん。とりあえず、なかった事にしよーと指で目元の辺りから揉んでみる。おしおしおしおし、顔のマッサージを試みる。それよか、美顔系の何かを使った方がいいだろか? 綺麗さっぱり、汚れ落としを使った方がいいだろか!?


 「そうだ、俺はダークヒーローを希望しよう」

 「嵌め落としがお好きな時点で敵役では?」


 「拠点防衛一択の英雄なのに!」

 「敵役以上に味方がいない単独行動者を選ばれますか…」


 「ままままま、待て! 一匹狼系は常に孤高の神聖域だぞ! 子供は常に影のあるヒーローに目が  あ? あれ?」


 上から下へとマッサージしていたが、なんか… 弛んでる? 普段より、ちょっと顎の辺りが… ゆるーんなってる!? まじか!? ちょっとの食っちゃ寝で顔にきた!?? いや、顔にくる前にまずは腹だろ!


 何か違う方向から追い詰められてる自分を感じつつ、脇腹に手を当て胸を張り、踏ん反り返ってナニかをアピールしてみる。

 


 「判定でました、黒です。環境適応で機能は終了、単なる飾りになると教えられてきたそうです」

 「がーーーーーーーーーーっっ!! 初めから、きちんとしたの渡せやあああーーーーーーー!!」


 「はい、測りますね。手が邪魔です」


 声を張り上げ、吐き出すだけ吐き出したら、手をぺッとされて正しく腹回りを測られた。何か違う。


 「この体でしたら、もっと絞っては如何でしょう」


 差し出す何かが違わない。





 

 「爪と牙はマーカーじゃねえ… あれでそっち扱いしろというのが極悪だ。大人なら気遣いの方向を、方向が、方向に、方向の先でぇえーーーーーー!!」


 バシャッ! ジュッ…


 「あちーーーー!」


 もわあんと立ち上る水蒸気にやられる。


 節度ある大人の対応を心掛ける俺を襲ったスリーサイズに、「リセットー!」を叫んだ。何故か頭に浮かんだ薬用洗顔を求めて洗面所に走り、チューブを引っ掴んで商品説明を読んでた所で我に返った。


 根本的解決にサウナ風呂に入ってる。


 「あちゃちゃちゃちゃ…  ふぃーーーー」


 そうそう、ご父兄でなくても人に会う時にはそれなり〜〜に綺麗にしておくべきだ。相手が相手だから、手を抜くと落とし抜かりをチェックされそー。


 「あー、良い感じでだらっだらー このまま悩みも流れちまえよー  あーあ、動作不良も何もかも込み込みで… やりやがったよなぁ〜〜」


 期待値にぶっ込んでる下手くそさを思い出すと、問題あるなら後は任せた!な方向も見え隠れする。ほんと無責任な… 子供が可愛くないんかい。


 ま、そこら辺は直に聞くしかない。


 「水風呂に行くか」



 ザパア…


 「くはあ〜〜  身が締まる〜〜」


 だらだらと余分なモノを水に溶かして捨て去れば、い〜い感じでさっぱりしてくる。


 「あ〜〜  でも、そうだなー。この体で会いに行く必要もないっちゃーないんだよな〜 あちらさんと意思の疎通は必要でも〜〜  ヌイグルミを代理として行かせりゃあ、俺は安全だしなー。誰かの所為で忙しいっつたら、済むよなぁ?」


 以前やった会議パーティーでの参加も、それで十分だった事を思い出すと〜〜 行かなくても良い気がしてくる。

 

 「ダメだ、あれはパターンが違う。玄関先で頭を下げても〜〜  いや、色々対応もできるけど〜〜  あ〜〜〜、思考が逃げに走ってらー。基本中の基本、『俺より強い奴に会いに行こう!』のスタンスはどこいったー。一番手っ取り早く、強く賢くなる道は自分よりも強い相手との対話だってのに〜〜 うあ〜〜、流石にマイナスからのスタートは調子が狂うぅう〜」


 両手で水を掬い、バチャッと顔に掛ける。


 美形は作れる。しかし、それは美肌から! 誰もが羨む玉肌を今から作ってみせようではないか! 大体のヒトが普通に玉肌だけどなー。


 「ちょいと腕に負荷を掛け〜  そーれ、いーち」 バシャ!


 「にーい」 バッチャ!


 「さーん」 バッシャ!


 手で掬った水を顔面に掛け続ける。擦らずとも、水は洗い流してくれるのだ。しかし、滝行っぽいのは何か違う。ミストも良いが気分が違う。今の気分はそうではない!


 二十まで数えた所で、今度は腕を大きく回して水を搔き集め。勢いを持って顔面へと浴びせる!


 「にじゅういち!」 バシャアアアン!


 全身を大きく使い、体を揺らし、流れに乗って勢いのままに掛け続ける!


 「さんじゅうなな!」 ダパーン!


 四十まで数えたら、次の集中は首・肩・胸の上半身。水を搔き集める勢いはそのままに「うぉおおおお!」と、一人盛り上がる。


 「よんじゅういちからのぉおおお!」 ドバシャシャシャシャ!


 ドラミングの本領発揮、連続でバッシャバッシャと掛け続ける。上半身の肌見えは肌見せでもあるので念入りに、これもまた基本中の基本だ!


 六十を数える頃には勢いを付け過ぎた結果、風呂の水が減っている。仕方ない、俺の威力は素晴らしい。しかし、これは狙い通り!


 


 ズォン…


 「ぬぅ… ななじゅうろく!」 ズン…


 上が終われば、次は腹。腹の美学! 

 今度は水を掬うのではなく水の中で腕を回す。水流を生み出し腹に当て、同時に引き締めを図る。腕の負荷に、座った状態の腹筋が反応する! 腹は少し多めに数を取り。


 九十からは下半身、水の流れに方向性を与えて一掻きで最高速度の渦を生み出す。渦の中心に自分を据えて、足裏の汚れも忘れず美脚を作る。尻を基軸に水中スピンでぐーるぐる!


 に、素晴らしき この回転力(洗濯機)よ!


 そして、見よ。

 この衰え知らずの腕力を! 決して水の流れは落とさない、はーはっはっはっはっは! 脚力を生かしてないのが微妙な所だが、脚力だと水が残らん。


 「ひゃくななあ!」


 ザブッ


 思いっ切り腕を回して勢いを付け、ぐんるぐるぐる良い気分。回転力でザパン!ダパン!ザザアと水が溢れ出るのも愉快。渦の終わりまで身を任せ、収束後にゆっくりと立ち上がり、腰を落として大いなる構えを取る。


 これぞ、百八式が締め!


 「水流操術が一つ。 せーい〜⤴︎ がーい〜↗︎  はぁああーーーーー→!!」



 風呂の水を拳に集約するが、水蒸気にする事も忘れない。スモーク的演出を完璧に出してから、凝縮させた水の玉を掛け声と共に上へぶっ込み、即、背中を向ける!



 ドパーーン!


 風呂の天井に突き当たり、ドシャアアアアと水が降り注ぐ…


 両手で頭と髪を押さえて、晒したうなじに連続して当たる刺激が心地良し! さ、これで綺麗になった。


 ピ、チャン…


 「ふーい…  残るは髪と耳の後ろか」


 薬液を手に取り普通に泡立てるも、物足りなさから極限に挑戦。もっこもこの泡を作ってやった。できた泡の山を前に頭から突っ込もうかと思ったが、どうせ同じ事なら泳いだ方がとも思ったが、流石に子供過ぎるかと自粛。普通に頭と体を洗い、顎もよーく確認する。にんまり笑顔に鼻高を添えて笑みの種類を変え、シャワーを浴びて風呂を出た。はー。


 今度、泡風呂にでも入るかなー。






 「なんだ、と…」


 普段着で寛いだ後、次は訪問着だと衣装部屋で吟味して硬直する。此処暫く訪問着を着る機会はなかったが、その辺は抜かりない。数種類のパターンを揃えてる。だから、後は小物の組み合わせでかーんたん。悠長に考えてた。


 その目論見がたった今、破綻した! 


 「どんだけ前のヤツだ、これ!!」


 もう、完全にダサかった。流行遅れも周回すれば似たよーなのが出てくるが、それでもこれはない。鏡に映る俺の姿は着て行くに忍びない!


 「んじゃ、こっちは!」


 ポイ捨てして別のを出し、体に当てて鏡を覗く。


 別のを出す。

 別のを出す。

 別のを出す。

 別のを出す。


 「あ、これはまだイケる! いや、ダメだ。 ちっ」


 別のを出す。


 「あ、このタイプがあったー!」


 シンプル過ぎて洒落とは遠く、訪問着としても褒められた物ではないが、そこは小物でどうとでも! 過去の俺、ちゃんとわかってるー。ああー、良かったー。


 「うん、素材も悪くない。これなら恥ずかしくない」


 装いが全てではないが、見映えも全てではないが! 場を弁えるのも道理である。初めから格下扱いされるのは勘弁、謙遜を通り越して卑下と取られるのも勘弁。俺は卑屈キャラじゃない。しかし、飾りで着回し続けるのもアレだから早急に新しいのを仕立てないと。


 「ん〜、派手より華やかさだな。不幸な事故はあれど謝罪に行くんじゃない。 そう、来なくて良い。来られる方が迷惑だ」


 頭ん中で袖口はあれ付けてー、胸元はあれかそれでーと当たりを付けて完成形を模索する。しかし、まずは羽織るかと袖を通したら腕がパツして ビリ いった。


 「… 」


 硬直からの冷や汗。

 動けない。

 そろそろと、そろそろと  見た。


 うん、もうサイズが合ってないー。



 「……う、うっそだろぉおおお!? どーしてごろごろしてる間にこの手の見直しとか確認の一つもしてないんだよ、おれぇええ!! いやでも、ごろごろしたかったんだよぉおおおおおおお!!!」



 片袖を通したまま、その場でごろごろしたった。当然、助けはない。辛い。


 …あれ、俺ダメな大人してる? こんな事もあろうかと!ってな感じで構えてたのに、こんな事もあるんだよな〜〜〜〜〜 ああああああ〜〜。


 「仕方ねえ」


 脱力。

 袖を抜き、破れた箇所を物悲しく見る。


 「我らが主よ、   …どうしました?」

 「破けた」


 「…サバゲーを始める前に誂えた品ですし」

 「そんなに変わったか? わかってたんなら指摘の一つもしてくれよ」


 「……そんな事を言われましても。よく新しく作られてましたので、これ以上はと口を挟まずに」

 「あ?」


 「論より証拠、ご確認を」

 「あえ?」


 部屋中のクローゼットがオープンなって、中身が全て丸見えに。



 ……近頃は、「持ってきてー」と「片付けといてー」を多用してた。持てなくても方法を確立させてたから任せてた、楽だし。


 記憶にある空きスペースは、普段着と遊び着と仕事着をも軽く凌駕するサバゲー仕様で埋まってた。……ああ、うん。まぁ、その、なんだ。それなりーに新しく揃えてはいたよなー。


 「こちら(戦闘服)でしたら、どなた様も表立って苦情は言われぬと嬉々として語られた覚えがございますが? また、実力が劣る方々からは感謝されるとも。もう、開き直ってこちらを着ていけば良いのでは?」

 「ご挨拶に伺うに、そいつ(戦闘服)で行けと? 真実、喧嘩を売りにきたんかと笑われてヤられるわ。それでなくても挨拶に、んなモン着てったら! お・れ・に、小物感が漂うだろが! 泣くぞ、俺は!」


 力量にビビってそんなカッコで行きました、なんて断固拒否する!






 「整いました」

 「おー」


 とりあえず、袖を通せるのを選んでた。そいつをリメイクするか、型紙から始めるかのどっちか。依頼は時間を食う、できるなら手っ取り早く既製品を買いたい。しかし、もしもを疑う。俺を釣り出す事が目的ならば。


 あの花火は単発じゃない。


 無差別には見えない、計画性を感じる。そんな相手に、『俺との絡みで目を付けられ、被害が出た』となるのは遠慮したい。第一、そんな事も読み解けなかったとなれば今度は俺の矜持に引っ掛かる。


 「本当に可愛がられているのか… そこも疑問なんだよなぁ… 虐待とは違うだろうが… なーんか、こ〜〜〜 安物で済ます所が、こ〜〜〜〜〜〜  どう転んでも修行にもならん所が、こ〜〜〜〜〜〜」


 『最悪、質にならない』




 ……はい、残念思考。

 

 悩んで行き着く先がこれかよー、残念! 弱者の法則に触れる俺、残念! 子供を使わないと解決もできないなんて勘弁しろよー。手法と結果、実力と理念。四つを掻き混ぜ意味を同じと落とし込んでも、合理で伸び代が出てくる訳ねぇだろがー あるとゆーなら妙なこった。


 愚者の極みジュースでもくれてやんよ〜。



 「へっ」

 「どうされました」


 「いやぁ? やる気を出して、こいつを元にリメイクしよーかと」

 「…これを元にですか?」


 大胆さが求められるとか話してたら、めんどくなってきた。


 


 新しく作った方が早いとデッサンを起こして、パーツに分解。サクサクと型紙を作るも、曲線ドレープが理想と少し違う気がするので円周率計算を見直す。この辺が仕上がりに影響する。


 「ご報告しまーす」

 「お?」


 入る前の声掛けはしても、もう一つは忘れてる。残念だ。


 「覗き魔、確定!」

 「判明したか!」


 気分的にはギラリとしたいが意識して顔をセーブ。余裕を持って手を止め、聞く体勢を取る。


 「確実に覗いてたー。監視衛星ひなぎくの過去のデータを浚って我が家に向けられた照射量の違いから方向の割り出しに成功、鏡面観測すいれんと展望鏡すいせんに装備した波動砲を用いて「そこら辺は省いていいから」 えー、ちゃんと最後まで言わせてよー」


 「今ので手法はわかったから、そこまでやったお前は偉い」

 「わーい」

 

 


 

 「…っしゃああああ!」


 俺、大勝利!


 元々、オープン形式は取ってない。しかし、あるふぁを外に出すから完全閉鎖型でもない。当時、目指したのは大人の隠れ家だ。それが特別降下地点を作った事で、部分的な庭先見せ(ショーウィンドウ)もでき、セミオープンになった。あれはあれで楽しかったし、勉強にもなった。


 しかし、入れるヒトのトコ(ショールーム)よかサービスは落ちる。しかし、商売じゃないんだからサービスの質も低下も関係ないっての。




 基本を超えてない = 住居部分は見えてない。


 安堵。

 まじ、安堵。

 俺の気持ちの方が、ガチ大事!


 「だけどねー、方向は二方向出てきた。これ、座標」


 滑らせてくるのを受け取り、開いて確認。住所だと思うと、『うげえ?』な感じ。


 「こっちの弱い方が頻繁に見てるけど、頻度からして恐らくどっちもマーク付けてる。その上で犯人側は特定の場所しか見てない。見せ先は時間も場所もランダムに回してるけど、スポットライトなだけだから他も見ようと思えば見える。でも、落としてるから見え難い。 …我らが主が感じた異常性は、相手側が何度も接続を試みた結果だと思われますで締め括り」

 「なんか微妙」


 「でも、今回の調査でもっと危険な事が判明」

 「あ?」


 「降下した後の行動サンプルパターン、『学舎に通う』。この設定で選んだ、とある学舎の授業風景や周辺一帯。そこだけ、ずーーーーーーっと見てる」

 「ぶーーーーーーっ!」


 「その間、その時々に特定した子供だけをずーーーーーーっと見ていたと推測が立ち」

 「ぎゃーーーーーー!」


 「直近で確認したのは、今回、他家の御子を呼んだ張本人」

 「うちの子、変な感じで目ぇ付けられてるーーーー!」


 最初から狙われてた恐怖案件に悲鳴を上げた。



 『目を付けられた』


 これが嫌な感じで頭を巡る。それこそ人に見せる場所、他のヒトがやってる事を参考に突飛な事はしなかった。オープンマインドを気取る気はない。その時の勢いと遊ぼうでの作製だ。だからこそ、よくあるパターンを踏んでだな!


 学ぼうとする姿勢に大人も子供も関係ないが、大多数であるのは子供だ。基本、子供が主体の場所しか見ていない?


 本物の… 本物のペドなんちゃらなのでは!? うちの子が危険なのではあ!?


 「規則等を出した事が裏目に出たのかも」

 「げふう!」


 見てるだけ。

 そう、見てる だー けー。


 いや待て、見てるだけって… だけでもナンでも、それって しか しか しか しか ん〜ん〜〜ん〜〜ん〜〜ん〜〜  の、今晩のおか おか おか おかあ!  おかあさーん!の為でもうちは写真撮影お断りー ですよよよよ〜〜〜う?


 あ、してたしてた。

 そこら辺はガチしてる。ヒトの善意を信じるのは半分の以下略で。防犯対策ネットセキュリティは性悪説に基づいて構築するが基本ですから。


 あーはははは の はぁああああ。



 「ああもう、なんか挨拶に行くたくねえ… しかし、そうも言ってられんし。行って、真意をだ。あの子は真面っぽいし、問題行動起こしてないし。何より弱いから…  は! もしや、サナトリウム的な!? そっちか!? それで良さげなお友達を探そうと子供が集まる学舎を見てた!?」


 素晴らしい希望の先が見えたが、自分でも都合の良い方に良い方に頭を回してる気がしないでもない。辛い。


 「ん?」


 それでも、楽観できる視野が広がると落ち着く。すると代わりに別のナニかが心に引っ掛かる… なんだっけ?





 「あ、連絡が入ったー」


 それだけで背を向け、退室する。これだから全面的に家を任せて…  いや、でも他はちゃんとして…  あ〜、まぁ矯正する程でもないしなー  ん?


 顔を半分覗かせ、じーーーーっと見てた。まだ連絡を聞いてる状態で見てくる姿勢に「どうした?」と聞いてやる。

 

 妙に改まった雰囲気で、紫瞳を真っ直ぐに向けてきて珍しい。




 紡ぐ言葉は淡々と。


 最後の一人。

 発見時、既に体の半分が失われていた。しかし、意識はある。助けたいが、ここまでくると手に余る。



 動きの取れない事態に二人してめっちゃ見てくる… そりゃあもう、すげえ顔で見てくる。しかしだな?


 「コードとナンバーは?」

 「はい」


 間髪入れない良い返事からの〜 じと目が二組… どす黒さに紫が合体した禍々しげなオーラを二人して向けてくるなとゆーに。その状態で希望に満ちた目とかしても残念感しかないから。そんな所で結束の強さを見せんでも、ちゃんとわかってるから。普通に言え、全く…


 「お前に使った羊水(濃紫)を使って良いが「やったーあ! 先に行くねー!」 あ、こら! 希釈を「自分が汲みます、ご安心を!」 部屋の中なら零しても何しても良いが、他では絶対に撒くなよー!」


 「だいじょうぶー! 器に入れていくからあー!」

 「危険物取扱第一種免許持ち以外は引き離しておきますのでー!」


 声だけはしっかりと残していく器用さと、連携の取れた行動に苦笑する。想定する速さで割り出すと消滅はしない。…厳密に言っても消滅ではない、んだ けーどーなー  ん?


 「あー、裁縫部屋は針があるから閉めて行けと…」


 変な所で飛ぶから閉まらなかった。

 仕方ないと立ち上がり… ふと、何がどうあれば現状を回避できたか?なんて愚問が頭を掠める。手元の型紙に目を落とす。


 「…ふ」


 失笑が漏れるも、歩み、口遊む。


 「よかれ、あしかれ、たすかれと〜 のばすてのひら、つめのさきー  きしてのぞむは、さきの ひ と〜」

 

 興が乗ったので、そこまで舞う。

 型を決め、静かに閉ざして終幕した。ら、内線が鳴った。音声で取って体を起こす。



 「ほい、どした? あ? 着信が入ってる??」


 首を回し、部屋に備えた通信機器を確認するが反応はない。


 「着信音ずんちゃっちゃ、鳴ってねえぞ?」

 『こちらの通信ではなく、星送りに頂いた専用回線シークレット星鳴り(ころろん)の方です』


 言われて、脳裏に閃くピッカピカのお星様! 


 『普段は星と共にメッセージを頂いて終わるのですが、今回は星鳴りが続いておりまして』


 そうだ、あの回線があった!!


 『あちらは回せません、どうぞお部屋の方に「おっしゃああああ!」

 

 最後まで聞かずに部屋を飛び出た。




 ろろろん、ろろろん、ころろろろん♪


 「はい、お待たせしましたあー!」


 思い付いた目論見は、『そうだ、このヒト経由で頼んだら』。息急き切らずに駆け込んで、うっきうきで繋げると星が送られてくる定位置に映像が立ち上がる。小さな画面に相手の顔が大写し。


 『ああああ、お久しぶりです! すいません、手に負えません! ごめんなさい、希望はもう此処にしかー! くそ、これ、どうしたら良いのかさっぱりで!』

 「へ?」


 ずいっと画面に出してきたのは、俺の鳥。

 優美と美麗で固めた俺の鳥。


 両翼を広げて片足を突き出す、怒りのファイティングポーズ(コケーーーーー!)で固まってた。


 彩りも美しく仕上げた、あの鳥が… 俺の鳥が! 泥を被ったよーなど汚い斑模様になって と、凍結!?



 「ちょっ、なにその汚染!?」

 『クレンジングしても頑固な汚れが落ちないのが、  があーーーー!!』


 ちょっぴり、泣きを含んだ悲鳴だけは合致した。





神鳥xxxは鶏ではありません、はい。

矢印が妙に楽し。

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