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召喚  作者: 黒龍藤
第四章   道中に当たり  色々、準備します
204/239

204 配慮です




 「そろそろ、行きますか」

 「そうだな」


 一息入れて、馬達も休めただろうと周囲を見。


 ブルルッ…


 「うん?」


 小さな嘶き、『行くの?』と言わんばかりの目。ちゃんと話を聞いてるなぁと感心し、手を上げて立ち上がる。


 「休息は終了、出立の準備を」


 



 「もう一走り、頼むな」


 軽く首元を叩くと顔を寄せて応えてくれた。嬉しそうな仕草に、やはり甘味は強い。予定より少し長く走らせたから、二つあげて正解だ。


 鐙に足を。

 跨ると、変わる視点の高さ。


 騎乗は良い、楽しくなる。


 アズサと乗った時も楽しかった。二人乗りの感覚を思い出すと、俺ももっと上達しなくてはと気を引き締める。


 視線が交わり、顎を引く。「出立」の掛け声で馬を走らせる。



 走り始めて、直ぐに震えがきた。


 ビクッときた!

 瞬間的な身震いに馬上で心と体が反応する! 咄嗟に手綱を握り締め、何だと首と目を走らせる。


 目が合う。

 並走する視線の問い掛けに挙動不審を押し殺す。


 いやにドキドキする心臓に自分でも混乱し、馬足が落ちるのを止められない。胸に手を当てたら、『呼ばれている!』と心臓かどっかが叫んだ。




 …馬首を巡らせ帰りたい。

 家へ戻りたい。


 アズサが俺を呼んでいる! 呼ばれている!  き、たーーーーーーーーーー!!


 


 アズサからの繋がりを理解した興奮と思い違いではない保証はないが保証なんか要らないんじゃないかと言ってる自分の頭が正しいとする暴論が暴論ではないと思う! しかし、現状帰る事はただ… じゃなくて! 呼んでるって、どう言う事だ!?


 寝てるんじゃないのか!? 

 いや、寝てるなら夢なのか!? 心が震える状態… 夢を見てるなら感動か? いやでも、それはないような…


 馬上で一人悲喜劇的な思考を飛ばすも落ちた馬足は周囲に従い、安定して走っていた。まぁ、気合が入って置いていかれる筈もなし。



 「…… 」


 馬の軽快な振動を尻に、配慮に配慮を重ねて帰りたい気持ちに蓋をする。今、帰ったらど突かれるでは済まされない。しかし、この心の震えはアズサの連絡! きっと、そうだ! でも、俺は!



 『このお遣いを済ませたら、貰ったアレが使えるようになるんだ。ガチで魔光石の代わりにしてやると兄さんが言ったんだ!! 俺、帰れないよ! だから、何かあったら… 兄さんにごろごろ言ったら勝てるから、膝に飛び乗ったら一発だから! 君なら楽勝だよ!』


 必勝法を伝えて良しとする。

 俺としては、ちょっと嬉しくない必勝法。


 でも、それが配慮ってものだから。



 伝わる事を願って馬を走らせる。







 こない。


 俺のかわいーブラック金魚のレッちゃんが、呼んでも降りてこないです。なして? キラッ☆ともしない入り口はオープンしそうにない。


 「どうしたのであろうな?」

 「はい、どうしたんでしょうか? 人前にはー えー さっき他の子が降りてきたので限定解除… されたと思ったんですが。 うーん?」


 天井を見上げて首を捻ります。周囲確認に視線を戻すと、ヘレンさんが縮こまりのカッチンモードでおりました。お腹の前で緩く手を組む祈りの乙女像は俯き系で、視線も下向き。角度的に見てるのはロトさん、ロトさんを案じる心優しき乙女像。しかし、像は像なのでその目にロトさんを映してるかとゆーと〜〜  映しても考えてないと思われ。


 どっちかってーと「平常心、平常心」とゆー吹き出しの方が合ってます。



 …しまった、ほんとに放置時間が長くなってる。ちょっとの時間がずっとになって。そろそろ起こしてあげないと風邪をお引きになられたら〜 いや、それより体が痛くなる方か? どっちにしろ、ロトさんの面倒を〜〜  を? を??  をををを、を〜〜〜〜?


 ……あれ、起きてね? 狸の寝入りしてね?


 

 

 「発言を」


 クライヴさんの挙手を見ますが、先に目の前の疑問を解決しようと無言で腕を伸ばし… のーばーしぃ〜〜〜ても、ちょーーーっと届かない。だが、お茶席を設けてるので伸びても無様に倒れはしません! 伸びた体を猫上げし、静かにベッドの上を猫移動。枕元に纏めた柵クッションを一つ取り、ロトさんの顔… ではなく、顔の横に狙いを定め〜〜〜 振り被ろうとして〜〜  皆さんの視線の集中砲火に投手は玉の持ち手を確認し直します。


 フワッな感じでポイ投げを実行。



 ヒュッ…   ボスッ


 「!」


 素晴らしい、クッションの接近に危険を察知してカッと目を開けたですよ! やっぱり起きてたな、てめー!


 「…あ?」

 「……あや?」


 見抜いたぞ!と叫ぼうとしたらば、首だけ動かすだるーんさん。 …すいません、もしかして推定ではなく無罪でした? 演技じゃなくて覚醒直前?


 あいや、やっちゃったー(汗)!?




 「起きる機会を失していたものな」


 セイルさんの一言で覆された。 …なんとゆー事だ、目を開けずにぼーっとしてたとは! 俺だって、そんな高等技術は持ってないのに!


 ん?

 目を開けずに?


 開けずに、ぼーっと? え、それって??



 「だが、まだ動かぬ方が良かろ。しかし、ちゃんと気付いたな。どんな時でも全体を見る事を忘れないのは良い事だ、偉いぞ」


 なんと! 悪戯に分類される案件で褒められました…


 「だが、確認方法が甘い。しかし、今は問題ない」


 続く言葉を聞きながら、ぽすぽすと再びベッドの上を猫移動。お茶席でにっこりしますと同じ笑顔を頂きました。なはー。ですがロトさん、ごめんです。指導教官様が妙に優しくて違う雰囲気漂わせてる。


 空気を読む配慮が大事に。


 「で、気にした理由は?」

 「…寒いかと、えへ」


 優しさとゆーオブラートで悪戯を簀巻き逃げした直後、メイドさんモードにスイッチが入ったヘレンさん。残影を見せる素早さで頭を下げ、キビッとお仕事モードで動き出す。


 …りゃ? 今のって指示になるので!?




 「はい、先程の件ですが」


 毛布包みにしたロトさんをクッションと一緒に壁際に寄せる。もひとつクッション腹に持たせて、よしよししたら続きです。


 クライヴさん、ドゥエちゃんの下剋上真っ只中発言を指摘して下された… そうでした、金魚バトルの真っ最中だと言ってました!


 「それは来ないな」

 「無理でしょう」


 皆でうんうん納得したが、そうなると話が進まない。他の女性金魚を呼んでもいーが、一人に聞くよりか全員が正解。なので、失敗前提で先ににゃんぐるみに着替える事にした。おやつ食べて人の気配に触れてる所為か、眠気も飛んでできる感じが非常にしてます。…セイルさん効果ですかね? やっぱ、見えない照射を浴びてるお陰?


 見えない光はお肌の敵ですが、そーれミュージック〜。



 お日様、ぬくぬくあったかい〜 発芽をいたします〜  ひきーも篭れませー  たいよーな 魔王さま〜〜♪ 黄金を振り撒くよ〜♪



 …強烈な日照りと干涸びは遠慮。




 「それで良いのか?」

 「はい、ロトさんは単純に再確認です。ヘレンさんは  えー、えー、えーー  先に手の内を見せるのは考えものでも、なんてゆーか〜〜 相手をハメて落とすゲームをしてる訳ではないので同じよーに考えて動くのは如何なものかと。やっぱり無理と断られた場合、マズい事になるのは俺ですが… でも、やっぱりコミコミで内容を決めとかないと。勝手な内容変更に不当な料金の値上げは断固反対です! それに、今ならナニがあっても問題は抑えられると期待して! あはー」


 「…そうよなぁ、気持ち良く働ける方が能率は上がるものな」


 問題は丸投げ宣言に許可が出た。やっりーい。




 「では、理解しましたね? いいですね? 俺しかいませんからねー」


 念押しした後、俺の方だけプリンセスカーテンを引いてシルエットにします。マジックショーにはカーテンが付き物なのです! そして、何もしない助手のセイルさんが座っているだけで文句の付けようがないのです。


 「にゃーんぐーるみぃ〜〜〜」


 セイルさんのおもしろ視線を頂くので、サービスポーズでお応えします。




 

 「にゃん!」


 無事、お着替え完了です。

 あーんなに疲れてたのにセイルさん効果は偉大で絶大だ!


 ふんす!な鼻息出ますの意気揚々の猫の前、レースのカーテンがスススッとオープンされるのです。


 御覧なさい、そこにいるのは猫なのです!


 四肢を踏ん張り、尻尾はピンと。どうです、ちび猫可愛いでしょう? 大きなベッドの中のちんまりさんはイイでしょう!?


 皆々様の注目を浴び、ちび猫きゃっほーい!



 「……ええと」


 ヘレンさん、おもしろ顔で手を組む乙女像チャレンジを実践中。なかなか変化に富んでレパートリーが多いです。宴会の余興も率先してイケるタイプでしょうか? そんでロトさん、クッションを抱えて握り締める硬化チャレン…  そこ、ちび猫に投げるなよ?



 ぽっすぽすとベッドの上を猫移動。

 ちび猫、床へとジャンプです。そ〜〜  「うにゃん、にゃうにゃう」


 ベッドは飛び込み台ほど跳ねません。

 下を覗き込んだら意気揚々が ⤵︎ となって冷静に。


 オープン係のロイズさんに降ろして下さいと依頼。一度瞬きをしたロイズさん、瞬間の凍結はなかったよーに滑らかに動かれ枕元の柵クッションを手に取り、中腰に。


 「どうぞ」


 ベッドの縁にぴったり合わせて差し出されたクッションに、ぴょい。手動式クッションエレベーターに鎮立ちしまして、自動制御で降下しまーす。 …俺に直に触れたくなかったとゆーマイナス思考は持ちません。ええ、違うと思いたい。



 上目遣いでヘレンさんの横を可愛く通り過ぎ、ロトさんの前に到着。


 額を凝視。

 俺の手形を確認しますが〜 ちょっとわからんです。 …黒い三連魚が突っ込んで伸びたか? それとも、ボディの違い? たーましーいのひーたーいーじゃ、なーいかーらーでえ〜〜?


 猫、まじまじまじまじ見つめます。

 そーいや、杭打ちがどーのと言ってたよーな?


 ぺっちはしたけど杭ってなんだろ? クロさん、何かしたのかな? 後から追加で杭を打つ… 杭は固定化とか安定ですよねぇ? 昔の人は沼地の整地に杭を打ち込み、耐震性能を得たと習いましたが… しかし、実際にはないから比喩? 表現の自由は自由ですからして…


 「にゃうううう〜〜」


 猫、唸る。

 俺の手形を固めたでいーなら、精神の安定化と考えて良いのでは。今でこそ気絶赤ではなくなったが本来なら金魚のまま。自殺ができるできないは置いといて、その手の事を前提に考えると… 杭打ちとはアフターケアですかね? 逃走癖への配慮ですよね?


 ま、真実はどーでも〜 元金魚な同僚かヘレンさんみたいな特殊系の方にお願いしないと手詰まり。そーなると〜  でもなぁ。



 ごきゅっ…


 ロトさんの喉仏が大きく上下した。

 お顔が引き攣りーの、逃げたくて足を動かしーので壁に体を押し付けて、押し付けて〜〜


 やだなぁ、ちび猫そーんなに期待されたらあ〜


 にーんまりして飛び込んじゃいますよ? これでも猫ですから? そーゆーの見ると狩猟本能が刺激されて『やらねばー!』でうっきうきになるですよ? それに俺はトムトムさんではないですからね? 遊び方は知ってます。ええ、知ってるんでーすーよー。


 「よ、るな」


 そんなあなた歯を食い縛るよーな低いお声で言われたら! いちにのさんと下がって思わず楽しくて突っ込んじゃいますってー!!


 「にゃーーーん」

 「ぎゃあああああああ!!」


 「きゃあっ!?」

 「なんと羨ましい」


 クッションのぶん回しをちび猫、華麗に避けますです。そんで、touch and go! とーーーーう!

 



 「うう…  ぁ」


 ロトさんの腹を占拠中。

 座席が起伏に富みますが、胸の方が荒いので腹式ではありません。過呼吸に似た荒さは言いたくても言えない口パクの所為です。まじ餌くれ金魚みたいー。


 「俺は、俺は」


 ん?


 「俺は、てめぇなんぞの下に… 」


 おお!

 腹を括った不屈の闘志! 何度叩かれても立ち上がる、その強さ!!


 かっこよさと同時にぴかーんです。


 ロトさんの強い強いたましーに呼応した俺のぺっちが額に浮かび上がるぅぅう! いにゃー、かっこいい〜。ほら、興奮のし過ぎに注意報が出たよー。


 「あ、あ、あああああ!!」


 要介護は大変だから、セラピーするかと猫移動。


 「うあ!」 ぴょっ。 「つっ!」


 失礼な顔して手で払うので軟着陸。

 ロトさん、捻った胴体着陸。猫機、即座にフライトします!


 「にゃーん!」 べち! 「…ひっ!」


 きゃっふー!

 ポイントゲットー!  ん?


 …うっかり遊びましたが、あれ、今、ナニか閃いて。叩いた直後に閃いてぇ〜  え?





 人様の額に手を当てて反省。

 ぷにぷにと肉球の手を押し付けながら、反省。


 反省しながら、感触を確かめる。

 よくよく考えると恐ろしい。さっきここに三連魚がコンボを決めたです。中の三人、ぎゅうぎゅう詰めできついと言っていた…


 間違いなく、この口は伸びている。伸びて締まりが悪い口も問題ですが、入れ食いほーだいの入れられほーだいも大変ですが! それ以上に大変な事を猫ののーみそ思い出し!


 【オーラルでも伝染るんです!】


 こーせーろーどーしょーが出した大事な標語がぐるぐるです! 三体も一気にズポポンッしちゃったお口です! アフターケアにオーラルケアがいるのです。つまり、必要なのはお医者様。ちび猫せんせーの出番なのです!!



 「…にゃふーう?」


 なんか間違えたよーな気もしますが、口は口なので気にしません。ちび猫せんせー、無心でぷにぷに致します。両手で交互に押し押し押し押しのお口マッサージをしていると、ロトさん良い感じに弛緩しました。猫手効果が出たよーです。そうでしょう、そうでしょう。なんたって、ちび猫せんせーですからあ〜。

 

 今は無免許でも、これで免許皆伝に近づきましたね。大先生にご報告しなくては! にゃふふふふー。



 ロトさんが終わったので、ヘレンさんに進みます。

 足元でお座りして顔を上げ げ、げ、げ〜〜  てはならぬので、足元をくんくるくるっと回って確認っぽい事をしてから少し離れてお座りします。もう少しで、スカート中を覗く可愛い猫になる所でした。


 ラッキースケベは難しいです。

 猫、堂々と抱いて貰う方が早いです。



 「にゃーあ」


 今度は問題なくシャイニングカーペットがキンキラリーン。

 狙った通りに降りてきて助かります。


 軽快に、猫、カーペットを登ってヘレンさんの目と同じ高さで止まります。はい、物理ですよ〜 ぶーつーりぃ〜〜。今度は乙女像に変身できないヘレンさん。口をあげる猫笑いで、「にーぃ」。


 確認してくるからねー。





 「クロさーーん! 俺のせんせーレベルあがってるかわかりますぅー!?」


 部屋の中、脱衣カゴの前で待ってるクロさんに突撃です。後ろに転がる遊びで受け止めて頂き、たーのしーい。



 「せんせーレベルはわからんですか…」


 最優先事項として聞きましたが、残念な結果に。ですが、仕方ない事でした。歯医者さんごっこは初めてで、猫せんせーは遊びの幅が広がっただけでした。遊び人レベルを聞いた方が良かったのかもしれません… 人体ぷに押しの刑と言って遊んでたら、ガチ上がりしたのかもしれません。くぅ!


 ぷるぷるしてたら、クロさんがよしよししてくれた。やさしーい。



 「そうそう、それで 『バッシャン!』 うおっ!?」


 大きく跳ねた水飛沫。

 真上に飛び出た黒金魚は、昇り竜! キラキラを撒き散らし、下から飛んできた水の塊を迎え撃つ!


 「うひょーう!」


 プール水槽コロシアムでの金魚バトル、王座決定戦を見なくてはー!!



 「うむ」


 ダバーン!


 「ほう」


 ザザザーッ…  ドン!


 「おお」


 金魚の武闘は華麗なクイックターンが決め手のよーです。時折、放つ力は気合い弾。炎や雷の乱戦はなく、完全にナントカ波とかホニャララ破合戦。どうも、それしか出せないみたい。いや、でも凄い。普通に凄い。


 バトル規定があるのか、水槽の底から中程辺りで撃ち合ってます。直撃を食らうか、余波に乗って上に出てドーン!です。見事な闘魚で魔法生物してますね。



 「あ、ドゥエちゃん?」


 ピチャン!


 同じ黒金魚でも顔のサイズや大きさは違います。さっき見たサイズに当たりを付けたら鰭でお返事してくれた。嬉しそうにくるくるして、ネギちゃんとザビちゃんも寄ってくる。それで気付いた他の… 多分、負け組の子達が上がってくる。


 中断はさせたくないのですが…



 ドバッシャン!!


 「おお、金魚の舞踊りはムーンサルトー!」


 対戦してた一匹が跳ね飛ばされて宙を舞い、場外へボッチャン!落ちました。場外乱闘に持ち込みかと思われたが、俺と目が合い急停止。寄ってくる。そして、場外の子はぷかあ〜〜っと腹を見せて浮かんだ。


 猫手を上げて、レフェリーストップ。




 「まだ最終決定戦じゃないのね。そかそか、ごめんね。一息させて」


 一時、全魚で休憩となりました。

 女性金魚ちゃんに集まって貰い、趣旨を説明。


 「なので、意見の相違はございませんか? 総意ですか? それとも… まさかの創意狙いで?」


 お返事に各々がスイスイと泳いでくれますが… うにゃーん、わかりませー。


 「聞き方がダメでした、わかるようにやりましょう。全体、前後左右の間隔を取りながら後ろに下がるー。 そう、いいよー。  よし。  器は女性だ、全員意見が一致してます。右飛び〜 みぎ!」


 バシャシャシャシャシャン!!


 女性金魚ちゃん、猫手が示す方に全魚で一っ飛び。なんて見事なシンクロでしょう!


 「では、器はメイドさんがいーよ。左飛び〜 ひだり!」


 バシャシャシャン!!


 「ぬ? では、同僚がいーよ。前飛び〜 まえ!」


 バシャシャ!!


 「うにゃ〜ん、なるほど」


 グループの分裂に意見の一致と不一致を見た。つまり、レッちゃんフライングかあー。



 パシャン、バシャ!


 「にゃ?」


 どうするかと首を捻れば、女性金魚ちゃん二大グループが何やらあ〜〜  言い合ってるみたいです。フライング苦情のよーですが、全魚で転換キラキラお目々で俺を見る。

 

 「…人数の増加は足が遅くなりますから」


 採用枠は一人でと通達しましたら、しょんぼりした。が、輪になって会議を始めたので任せる。その間にとプールサイドを移動して、暇してる男性金魚ちゃん達の方へ行く。こっちにも大事な話があるのです。


 そーいや、第三性な子問題があったな… いるんかな? 申告ないからいいんかな? 全魚の前で聞くのは〜 デリケートゾーンに引っ掛かる気がする… 外見すらわかんないたましーって大変。たましーが見えてもわかんないから大変。剥き身のたましーが言葉で傷付いたら、どーなるんでしょーねー? 物理で血は噴けないだろうが、まじで怪我するんだろか? たましーの管理をする猫ってすごぉおおおい。


 管理人スキルとレベルが付随するのですね! うーん、馬鹿言ってないと言い辛い〜 前半は真面目な問題でーす。



 「ええとですね…  残念と言うか、君らに不便を掛けるお話です。元同僚の気絶赤こと、ロトさんですが… ものすごく嫌がってまして。 なんてゆーか、心と体の不一致が… ん? 何か第三に似てるよーな…  うにゃん、ちがちが」


 現状と推理を説明し、説得する気がない事と強制労働は却下な事。何より、そんな人が傍にいると嬉しくも楽しくもないと述べ、「あれ、不採用にしたい」と結論付ける。


 ロトさんへの配慮で、俺への配慮。

 決定の通達にしないのは金魚達への配慮です。

 

 半分がガビーン!となり、半分が素早く顔を見合わせる。顔を見合わせ組がガビーン!組の注意を引き、取り纏め、こちらも輪になって会議が始まりました。そして、瞬く間に意見が一致したらしく武装金魚のジュリちゃんともう一匹が進み出て、俺にパッチャパッチャしてくれる。 …うん、わかりません。



 「えー、そのポーズは〜 不採用前にお話をしておきたい?」


 パシャン!


 「…そうだよね、一度は自分で自己紹介くらいしたいよね。  ん?  違うの?」


 金魚ポーズ難読問題。

 解読には翻訳機の必要を痛感致します。天秤に時間と哀れを掛けて揺らして、今日はもう一回頑張って貰う事にする。代表を一匹選出するように伝えると、現代表二匹が顔を見合わせ、あっさり決定。


 「じゃあ、この後で行こうね。で、女性陣の方は〜」


 残念、まだ会議が纏まらないよーです。

 男性陣のほぼうんうんうんうんうんの頷きで纏まったのとは違い、活発に意見が取り交わされている模様。一匹の意見に必ず追随と反駁があるよーで女性会議は時間が掛かってるよーです。


 「…ねぇ、あれ意見の相違に口喧嘩してるんじゃないよね? 口喧嘩なら右回りお願い」


 数匹が遠慮がち〜に、右へ半分回って停止。他の子は動かない。エキサイトしてるから、喧嘩腰的な発言はあるとみた。


 「…ふーん、んじゃ。相違から主旨が逸脱して違う話をしてたりは?」


 全魚、動かない。

 なんと素晴らしい事実でしょうか! 場数を踏んだキャリアウーマン、怒りで話を履き違えない。なんと弁えたメンバーでしょう!


 『その言い方は汚い! 私に謝れ、謝れ、謝れぇええ!!』


 猫脳が思い出し、比較したのは本題がポイ捨ての揚げ足取りに謝れコール。論点がズレないだけで凄いと思う。 …にゃ? 程度の低い事、言ってるだろか? うにゃあ? この『低い』のほーが人様への蔑視? いや、蔑視は強調でしょ? でも、根底が問題? 




 ザバババババッ  ダパンッ!!


 突如、悩める猫の疑問を切り裂く気合い弾がコロシアムの壁に激突。脅威!


 どうやらエキサイト対話で気合い弾がオートで生じるらしく、当てないよーに尾鰭でペイする流れ弾が発生。被弾回避に男性金魚ちゃん、自然散開。言葉の被弾があるのか、ゆぅら〜〜と明後日の方向を見ながら流れに任せて距離を取る大人金魚達。


 子供ネギちゃん、オロオロ感でぐるぐるし始めた。

 救済チョイスに猫尻尾をとぷん。


 ザビちゃんと一緒に尻尾に隠れよーとするのが可愛くて擽ったいが、隠れるスペースほぼないですよ。ごめんにゃーん。



 白熱する女性金魚会議。


 議題がズレてない以上『納得がいくまで話し合っていーよ〜〜』と言いたい所だが、下で待ってるから時間規制を設けるべきか?


 男脳と女脳の違いが時間の長さに現れているのでしょうか? それとも議題の厚みでしょうか?  ああ、猫は悩みます。 男でも女でも興味のない事に掛ける時間は少ないでしょう。答えが出ている・見えているなら、頭を擦り合わせてのごろにゃーんで終わるのです。活発とは問題があるのです! 不満と解消の高まりなのです! 不満は男女平等です! 男女平等さんかくとは三角形のけいじょーをしてとんがっているのでしょうか!?


 猫、わかりません!!


 わかるのは、たましーの金魚の性別の固定化を不動と捉えると性差を確定させる女性または男性ホルモンはどっから出てんだろ〜とか考えたら怖くなる事です! 二つのホルモンが均等配分されたら性差別的なナニかはなくなり、固有スキルも問題も、耳にした事があるだけのホルモンバランスの乱れとやらも消え去ったりするんでしょーかぁあああ〜〜〜???


 なったら、まじで新人類!


 



 「あ、そうだ。クロさーん」


 そんな事より、金魚問題。

 首を回すと後ろにおられたクロさん、身軽にサイドに飛び乗られ。


 「金魚ちゃんをパックンチョされたとか?」


 クロさんの息衝かないお腹を見つめ… マスコット形状も思い浮かべ… ものすっごい疑問が頭を占める。


 「栄養に… なった、り?」


 ならないと思う質問を恐々するとチェシャ猫の降臨。

 

 「え、どうやって? クロさんのお腹ですよね? たましーの袋詰、め(死んで る)?」


 チェシャ猫、お口を小さくニィイする。喉がグポ的に動いたら、上顎と舌の間から真っ白魚の顔が出た。


 衝撃映像に猫毛が逆立ち、ぎゃーーーー!でして!



 ボチャン…


 チェシャ猫の口からツルリと滑り落ちた金魚は白かった。金魚の白骨化! 違った、白髪化! いや違う、白色化してるー!


 赤黒白と金魚の色が揃ったよー!



 ぷかあっと腹を見せて浮かぶ白金魚… 名残なのかナンなのか? 白金魚船体からオイルが漏れ出るよーに よーに よーに ナニか黒っぽいの、でろーんと流れ出てるぅうう〜。


 バッッチャン!!


 一番間近で見たザビちゃんとネギちゃん、硬直解けたら華麗過ぎるムーンサルトを決めて、猛ダッシュ。ザバババババ。その様子に大人金魚が振り向いた。



 ババババッシャン!!


 男女の別なく金魚、大パニックの阿鼻叫喚! うおうさおうでさおうのうおう! コロシアムはうおうおうおが一挙に逃げ出す地獄絵図。ジャパパパパ。飛ぶわ跳ねるわ、潜る逃げ。バッシャバシャ。そしたら、何でか潜った子達がポッポコポコポコ顔を出す。再び潜るも潜水ルートはループに入り、再び浮かんだ時点で更にパニック大恐慌! しかも、今度の出口は白金魚の傍ときた!


 押すと触れちゃう当たります。

 しかし、ループの出口は一つだけ。交通渋滞金魚クラッシュで次々と被害発生、金魚が浮かぶ魚屍累々。


 その間にも広がるオイル漏れ。

 何かの感染源のよう。


 たましーすら浮かばれないよーな、いやもう浮かんでるけど。ゆーらーっと流れる魚体。あれって循環に取り込まれるとヤバくない?


 ここ、循環型社会(まいるーむ)ですよ? 




 一連の騒動は、唯一の武装金魚。ジュリちゃんの羽衣アタックで解決されそーになったので中断させました。細切れ(ミンチ)は解決じゃないの!

 

 白金魚、猫手の中でゆーらゆら。

 目は開けたままの白金魚、目蓋はないので仕方ないですが意識が戻りそうにありません。


 「赤はあれ、黒はそれ。それが今度は白ちゃんに…  抜け落ちた色… クロさん、この子はどうしますので?」


 速やかに猫手で入り口を示された。



 クロさんがお手を振られると水の玉が誕生。

 キラキラしてない水の玉。


 俺の前でくんくるりーん。この動き、なんだか見た事ありますよ?


 「これは… ニャンダでは!?」


 クロさん、大いに頷かれ。

 ちび猫、呆然。


 クロさん、この世界の術式を習得している!! できる猫になってる!! 俺を置いてってるー!!


 「あの… もしかして抜け落ちたの、知識とか記憶とか? 完コピじゃなくて抜き取り形式!?」



 良い顔で大きく頷かれ!


 「クロさん… それはあんまりです、非道です! 幾ら言う事を聞かない金魚ちゃんでも、奪い取るのはいけません! 俺だったら、それは絶対に受け入れられ ぇ  え?  え、ちが?」


 ノンノンとお手を振られる。

 説明の手振りを下さるがわからないので、違うを前提に言葉を捻り出す。


 「嫌な子がパックンチョになったんだから… 提供? 取引? 解放?  手を掛け… 配慮の方?」


 一生懸命、読み解きをしてたら水の玉が白金魚ちゃんをパックンチョした。


 「あ、クロさん! ちょっと待って、何を!?」


 制止しようとしたら、俺の頭が止められる。落ち着きなさいの猫手の動きに歯医者さんごっこのご教授を知る! 猫、指圧の感覚を感じる為に静止中。堪能。ふおおおおお!



 クロさんの尻尾ぺしんで広がる細波。累々金魚ちゃん達の復活と高速逃げできた子達が戻ってくるのを見る。


 白ちゃんが、お掃除ニャンダ(オイルフェンス)の中に収まると水の玉が小刻みに震える。性能が違うらしくバイブレーションが効いてた。ニャンダの種類が違っても高性能を発揮して周囲は綺麗になりました。



 白金魚。

 皆が恐る恐る近づき。


 確認して。

 クロさんを仰ぎ見。


 次の子に場所を譲って。

 一列に並ぶ。




 白金魚の葬送はしめやかに行われ、黒金魚の葬列により作り出された黒の道が入り口へと続き。今、静かに出棺が行われます…


 滑らかに進む水の棺の白ちゃんは、どう見ても魚なので表情が読めませんが穏やかな顔である思いたいです。ええ、もう無垢な子なのですから。白無垢ですから! 完全に綺麗な真っ白転生して下さい的な! 怖い思いを引き摺る事なく逝っちゃって下さい的なー!


 「にゃーん」



 次は幸せに。

 複雑になりそーな気持ちに蓋をして、白ちゃんの為だけを願い、気持ちを込めて部屋の中からお見送りした。


 今、白ちゃんは世界に還るのです。ええ、世界で還れるのです。煌めかしい光の先へと行くのです…



 なんだか、泣きそうな気分。

 クロさんのお手が慰めのよーに俺の肩に触れ、顔をあげると…  クロさんの開いた口から半分白色化した次の金魚ちゃんの顔が見えた。

 

 猫ののーみそフリーズしま「ぅわああああ!!」す。いえ、解除。



 部屋の外で「顔が、顔が!」とか、「今のは!?」とかホラー映画鑑賞のよーなお声が聞こえますが、何か問題がありましたでしょうか? モンスター捕獲ボールの開閉でゴーストが出現した訳じゃーないですよ? 


 白ちゃんの来世への幸せを最重要課題として最善を尽くして配慮したら、こーなっただけでぇええっす。そうです、これは配慮でございますからして配慮なのです。



 ですよね?

 家主様への配慮、ばっちりぃいい。




 



本日の本文、某箇所につきましては過去にたよーな事をうにゃった気がうにゃあああんのらったったあ〜。もう確認する視力がございません、ぐにゃー。



そうそう、202の耐震性能問題。

正解は三です!




では、本日の国語問題と社会問題。


一、水塊… みずのかたまりと書いて、『すいかい』と読みます。すいかいの意味を説明されたし。

二、男女平等さんかく… 平仮名を漢字で書き直して下さい。(←あれ、これ前にやったかな? かな? 汗)

三、お住いの地域の男女平等さんかく事業推進プランを述べて下さい。イベント等でもオッケーでーす。



あと半年程度で東京五輪ですか〜。

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