198 震えます
ごーろごろ、ごーろごろ。
ごーろろろ〜 の ごろんとな〜。
…はい、ベッドの上でだらけてます。ええ、ごろってます。つか、しんどいです。我が事ながら、このだるーんは如何にかならんものだろか? うにゃー、二日前の元気が恋しい〜。
「…楽しかったなー」
街に戻る前に穴兎を見に行った。
しかし、居なかった。まぁ、緑に紛れて発見できなかったとも言う。自然迷彩柄の毛皮ですし?
「じゃ、確認を始めるから」
「へい」
離れて行く姿を、お馬さんと一緒に見守る。見えた兎が『普通』かどうか確認するのです。もしや、角をお持ちの兎さんで!?と期待して聞いた所… 以前、他国から食用兼繁殖用として仕入れた大型兎が業者さんの〜 不手際か、悲しい事故のどちらかにより某地点で一斉逃走。その大部分が逃亡に成功したらしく… 外来種による生態系の破壊とゆーファンタジーにあるまじき実話を聞いたのです……
当初は兎ですし、事件は重く扱われず。
それよか、助けを求めた業者さんの怪我の方が問題だったとか。
その後、逃走地点から遥か離れた地点で大繁殖に成功! うさうさもふもふパラダイス!!
巨大兎パラダイスの攻撃は厳しかった… 自生植物と作物とその他に大ダメージ! 移動する一大楽園に大地と領主と食料諸々大ダメージ!! 緊急クエストの発生に初見の冒険者、『数が居ようと所詮は兎だ、毛皮と肉をgetだぜ!』と楽勝気分で行ったらば〜 巨大兎の集団に跳ね飛ばし、蹴り飛ばし、足狙い、丸齧り、二段構え、荒波等々で酷い目に遭ったそう。
今では遭遇する場所の在来種もそれなりに遣り返してるらしいが、やはり体格が物を言う。なので、野生は発見次第「狩れ!」が合言葉だそうな。
齧歯類、強い〜。
巨大兎、強い〜。
集団で固有スキルを強化したり上位スキルを使うのって、怖い〜。怖いとゆったら栗鼠の怖い話も怖かった。冬眠明けの栗鼠が死骸の某所に歯を突き立て啜っていたとゆーのです。生存とゆー輝きの前に草食とゆー言葉は幻想を纏うのですね。丸齧りなんて雑食と同意でしょ?
手から零れ落ちる光。
空へと掲げる腕。
全方位に散って… 散って… すごい広範囲に光が散っていく。
幻想的に綺麗でした。夜ならもっと綺麗でしょう。しかし、よくできるなと感心したら闇の聖人バージョンがダブってた。セイルさんのお小遣いかと納得。そっから、倍率ドンドンドンで上がってく土竜叩きを思い出して空を見上げる。残念、セイルさん網は見えなかった。
でも、光の中心地。
両手を伸ばすハージェストはセイルさんとリンクしてるよーに見えた。セイルさんの蒼い目が、今、此処を見てる気がする。
情報の共有化。
以前聞いた時には監視を疑い、GPSだと訂正したが、それも違っていたよーだ。一つ先に飛び出た末端、それは偵察でしょうか。本人も安心して救援を待てるとかゆーてた。しかし、それより何か違う方向を感じる…
避雷針のよーで違う方向性を感じる… でも、同時に何かこう〜〜 そう考える事が安易なよーな〜〜 うーんんんん…
現場でないとわからないものに直面してるよーです。それを何と言えば合ってるのか、わからない。とりあえず、小さく万歳。お手上げは邪魔をしないよーに顔の横まで。再び空を見上げ、手持ち無沙汰に指をひらひら遊んでみる。見てるう〜?
問題なかったので街に戻る。
ポツポツと光が灯った地点に兎が居たとゆーのだが、そっちは全くわからず。うぬぅ… どうせなら、映像の可視化の横流しを依頼したい! 俺にも見えるよーに引っ張りたい!
「他に力は使ってない。そんで、あれは要因にならない。 なら、現状のだるさは… 消去法だと ま、次は一人乗り。楽しみ」
帰り道も前に乗り、今度は手綱を一緒に持った。お馬さんカッポカッポの状態をキープと言われてキープしてたら褒められた。ご褒美に一人で手綱を握った。その間、ハージェストが俺の腹に手を回し〜 腹は腹でもここら辺はよろしくないとか、回した手はこう組めとか授業が平行で進み。色々した後、最後にそろ〜っと立ち乗りした。
体重で補助用の鐙がグッと沈む感じが良かったです。
何かあったらと後ろが俺の尻を片手で支えてくれてたが、それはそれで危険なので最後は一緒に立ち乗りです。補助があるって良い。それから、腰を落としてジョッキーの姿勢。軽めから速度を上げるジョッキーさん! それが太腿にクる… よりも先に、二人でこの姿勢はどうなんだ?がキた。
男性ペア、女性ペア、男女混合ペア。
何れのペアで行っても、何か非常に問題を醸し出す体勢であると回転する思考に逆回転させて無に帰させた。はい、力技での逆回転。つか、倫理的にもお馬さんの迷惑を考えろですね。
「うりゃ」
寝返りしてみた。
テーブルの上のブツがチラッと見えると、にまーっ。早く持って行きたいけど、だるいと失敗する法則。
街に戻って気になる店を発見しても、お馬さんに乗ってると問題が発生。ええ、駐馬場の問題です。それで発見一号店はスルーした、悲しい。しかし、発見二号店の近くには馬場があって行けた。管理人さん付きの馬場は馬屋さんのグループ店! お馬さんの胸飾りと敷物に描かれてるマークが同じでレンタル中の一時預かりには金が掛からんかった。ラッキー。
入った店は当たり。
一目で気に入って買ったブツ、満足。
満足と言えば、お馬さんにも大満足。ほんと物分かりの良いお馬さんで、馬屋さんに戻って「今日はありがと、縁があったらまたねー」と別れを惜しんでたら、お馬さんも名残惜しいと摺り寄ってくれた。すっげ、可愛かった。長いお顔を寄せると同時に体も寄せる、おっとっと。優しい可愛いゆっくり押しなので気にしないが、じりじりと押されるバックバック。馬屋さんと話すハージェストが遠くなる。
名残惜しいの攻撃に、『お馬さんに好かれてる!』と気分は上昇アゲてくる。円らな黒目が俺を見つめる可愛さに「どした〜?」と聞けば思わせ振りに視線を外す。その流し目の先には 籠に入った野菜があった。
馬屋さんの店の端。
何故かある野菜籠は値札付き。
ええ、数字からして値札でしょう。
「…… 」
顔を戻すと、お馬さんのキラキララブビームが直撃。うん、この子の睫毛も長い。そして、尻尾が揺れてます。
圧ではない圧を放つお馬さんは理性的。
理性のお馬さんがスピード狂に応じた心意気の心は体力の消耗。
初心者の指示をミステークと判断すると、これっぽっちも譲らず、どれだけ宥め賺しても全く動いてくれなかった… 教習の… せ、ん、せぇええー。
「すいませー。これ、くださー」
馬屋さんの顔もキラキラした。「やってくれるんで!? 良かったなあ〜」と声が弾む。一盛り幾らの野菜を買って、最後に意味の違う動物触れ合いコーナーに突入。
「君、継続ですごく良いお得意様になれるよ」
「何を言われる、速度超過の割増料金を俺が払っているのだぞ?」
ボリボリ食べさせて堪能した。楽しかった。
目を閉じたら、また眠気。
欠伸に合わせて丸くなって眠る。
起きたら、お昼過ぎたとこ。
『あれ、俺の昼ご飯は?』と思ったが、食っちゃ寝な所為か腹はまだ空いてない。しかし、思い出す夕ご飯は美味しかった。ちょっとお洒落なレストラン系のお店は料理長さん程ではないが美味しかった。空腹は最高の調味料を加味しても美味しかった。食べてる人達の雰囲気も落ち着いて良かったから、ゆっくりできた。なんせ、椅子に座ったら「はあ〜」だったし。
食べて出たら、昼の店と夜の店が入れ替わる時間。
後は冷やかしながら帰るだけだが体力を考えないとキツい。非常にキツい! 坂の上の家に住んだ事はなく歩きで帰った事もない!!
だが、まだ行きたい場所がある。
迷いがあって行きたいとこリストにはあげなかった。二つの内の一つは、もうほんとに後日で良い。しかぁし!もう一つは頑張ればイケるんじゃね? それに次が何時かわからんし〜〜。
「なぁ」
「ん?」
「今更ですが」
話した結果、夜の街へと足を向けた。
「いよっと」
体を起こして、ぼーっとする。
静か〜な室内。
ボスッ…
非常事態用、柵クッションを引き寄せて無駄に倒れてみる。やはり上質は追求した時にこそ現れる! なーんて。
一面だけ良好な視界。
帰ってきたら部屋の掃除は終わり、プリンセスベッドが出現してた。いえ、虫除けガードを装備してランクが上がったベッドです。桃色レースでなくて何よりですが、昨日全面を閉めてたら〜 シルエットに奇妙な病人感が反映されたらしくハージェストが「ひぃ!」と叫んだ。めっちゃ精神にキたと嫌がったんで、それからは顔が見えるよーにしてる。
「うむ、俺的にも一面開けて正解」
トイレに行くかと足を下ろす。だるだるーんなので気を付けないとレースカーテンを引き千切りそー。肌触りも良く、ふわりと纏い付く極上のレースで蓑虫したら〜 網に絡め取られた虫ですよ。ガードレースで自爆したら馬鹿だっての。衝撃の吸収も見込めないし。
夏履きを突っ掛けたら、少し体幹がうにゃる。落ち着いて〜 歩く。
トイレ行って顔洗って気分すっきり。
「ふん!」
こんな事ではと気合を入れたら、どっかからプシューッと抜ける感じで体がへにゃる。昨日からこんな状態が続いてる。これが問題でないとゆーのがまた何とも言えずぅ〜。
「ふぃ〜」
よたよたと戻ってレースに注意してベッドにごろり。安心。しかし、贅沢レースが邪魔な気も。
見上げる天蓋裏もレースレースレースの総レース張り。構造をレースで隠して広げて吊って吊って吊って〜 天辺から連なり落ちる光があったら、まいるーむ? そこはレベルが違うか。見慣れなさに圧迫とゆーか狭いと感じるよーな気もする。
だが、個室空間。
紐を解けば、完全なる個室空間!
素晴らしい! やっぱり、個室は必要です。今は部屋全体を一人で使ってますけど。
「ハージェスト、今頃どこ走ってんだろ?」
目を閉じると、色々思い出す。
俺を揺する手が手首を掴んだ感触。
慌てた声。
昨日の昼の出発が今日の夜明けになった事。
何とか気付けて「いってら〜」と声を掛けれた。
自分、褒め。
アーティスの鼻声、「ヒュー」。
セイルさんの断言、「命に別状はない」。
ハージェストの反論、「だから、見てわかる別状が出てる!」。
リリーさんの小言、「静かになさい」。
聞き取れない小さな言葉の群れと物音。
時折、浮かび上がる意識。
人の体温。
登り坂にひぃひぃ言ってた。「体力を見極めろ、そして増量する!」と引っ張ってくれない。泣いた。そしたらすごいタイミングでリアムさんのお出迎え、「この辺りと指示があり」。
おんぶして貰って楽をした。
ラッキー。
にゃんぐるみに着替えずに済んだ。
呼ばれたせんせーの診断、「過労では?」が妙に刺さった。
ハージェストの「この辺で北上するんだ。こっちへ来るには迂回路だから気取られ難い分、時間は掛かる」説明を自分から聞いたのに半ば寝てた。
手首と額に熱が触れたり、離れたり。
馬をかっ飛ばしてるハージェストの姿が浮かぶ。
ストレスフリーになりますよーに。
「いきなり、動き過ぎ」から始まったせんせーの質問。
ポツポツ答えていったら、「ああ、それなら… 」気が緩んだんだろうと言われた。
安全地帯に伸びてる状態だろうって。
「まぁ、それならこれで落ち着くわね。よかったわね〜」
「…そうか、静かに伸びていれば良い。時間を取って見に来よう」
「え、いやそれは。 え、有りなのか? ええと、心理面からくる睡眠… 」
一人が納得しつつも得心できずに、「行って来い」「え、嫌ですよ」の問答して「私達が見てるわよ」に「これ、肝心な時でしょう!?」と拒否し続ける。「元は姉さんが行く予定で!」「この領に私より上の女は居ないと言ったのは、あなたよ」と何故か冷たい応戦が勃発。「上だから、姉さんは指示出しと確認で良い訳で」「何を甘いことを」と氷塊が飛ぶ。ゴゴゴゴゴッと背景音が鳴ってるリリーさん。「対外的に何と言おうと、現時点でのシューレの女主人は私」で、「それはそうだけど、もう粗方決まってるだろ!?」に「キルメルの面子を聞いて行けると思うの!」の一喝で収束。日延べで終決。
にゃっとふぁいとの予感に震えます。
セイルさん発注、弟妹限定クエスト『王都からのお客様を迎えに行こう』が改めて受注されました。お客様、俺の所為で出発が遅れてすいませー。お客様を低く見ている訳ではないので、お許しをー。
丸くなって丸くなって、寝る。
指先に熱。
深夜の目覚め。
暗い中、ふかっとした何か。
目が慣れたら、丸まったちびが俺を見てた。
ぱっちり開いた目、縫い包みみたいな、違うモノ。
指をそっと 指でそっと 細まる目に 顔をするり 上げる首に 喉をすすっと 口がうにゅーっで 尻尾がふいっと。
喉、鳴らした?
「起きておられますか?」
立ち上がり、寝てるハージェストの元へぽすぽす行って ぶちぶち音を響かせて 口をもごもごしながら帰ってきた。口から髪が食み出る現行犯。 …それを、『さぁ、食え』と出さないのは褒めるとこ?
「昼食をお持ちしましたが… もう少し、後にしましょうか」
ぺろっとしたら、今度は肩の辺りでうろうろ。小さな猫手を伸ばして脇にin。『入る入る、ここに入る!』と体を突っ込む無茶振りに、腕を広げてスペースを作る。ぽすっと収まって丸くなる。ハージェストは起きない。
丸まったちびが起きた。『あ!』みたいな顔して、やり直し。今度は手を掛け顎を乗せ、気持ち良さげに睡眠モードに落ちてった。 …俺の肩口、痺れそう。しかし、顎台を要するのは同じらしい。なんてこったい。
肩に熱。
じんわりと広がる、温かな熱。
触れたと思う毛並み。でも、パントマイムな感覚も。
視線。
僅かな光に反射した猫目。
意志。
有るか無きかの重み。
映像と違い此処に要ると思うのに 熱の消失と共に消えるだろう、ちびは 何だろうか?
気の緩み。
そんなもんで、ちびが出て来る必要あるんか? あ、過労の診断出てたか。でもなぁ、そんな診断出るほど 何かした覚えも。
ああ、眠い。
光。
動く光。
それは、光点。
セイルさんがどこかを見てる。その先に光点。野原。あの野原。滲む光が拡大されたら、ハージェスト。光点、繋がり。飛び出た手足は、働きば ちが、働きあ ううむ、働く〜 おとーと。
足元に、ちび。
とととっと軽快なステップで働くおとーとの元へ行き、がぶっ。口に光を咥えて戻ってきた。
「あ」
倒れた。
ぎゃー、一人が倒れたあー!
お座りして褒めて褒めてと期待で輝くちびに、「早く戻してきなさい」。
『えー』な顔して嫌がった。
光の玉を肉球で押さえて、こーろころ。
倒れたままの働くおとーと、焦る俺。「いいから、早く戻してこい!」と怒鳴りそうになった口をむぎゅっ! むぎゅ、むにゅ、ごくっと根性で飲み込む。
ここで怒っても解決しない。
何故なら、ちびは見ていない。倒れた事に、これっぽっちも気付いてない! 視点が違い、思惑が違う。理解してないものを只々怒鳴ってどーすると! そこは見ている方が汲んでやらねばならんのですよ!! ……渋々させるのは悪手、ちびが納得して持っていかねば。それが出来て初めてクリア案件になるとゆーもの。
「… 」
抱き上げ、希望に添って褒めて褒めて頭を撫でて、光を貰い。ご機嫌なちびを胸にしがみ付かせて、両手で光をぎゅぎゅっと握る。お握り作成ポーズで誤魔を振るのだ!
「これを上げてきて」
配達先を指で示した俺と握り光を見比べ、にぱっとした。咥えて、とんっと降りて。ハージェストの前にころん。そこは体に突っ込もうよと思ったが、既に足取り軽く戻ってきてる。
俺からの、光点。
何でか白く白く輝き出す不思議。そこに生まれる小さな黒点、いきなり成長。白と黒の戦いが始まりー ぐるるん回転、入り混じる。斑模様の卵になったと思ったら〜 アーティス(ちび)が誕生。アンアンアン!と吠えてハージェストを復活させた。
胡座を掻いて、アーティス(ちび)を膝に乗せる。
「あた?」
ハージェストから飛び出た光。アーティス(ちび)を突き抜け直線で俺に当たって、ぱああっ。 …俺が光点として輝いてますか? いやいや、俺は召喚獣じゃないから〜 と、ご遠慮申し上げ。グッバイと手を振って散らすが、光は散らずに逆収束。するするする〜っとセイルさんまで巻き戻っていく序でに今度は相関図を描いてった。光の強さで力関係がわかるオマケ付き。
どこをどう突っ込んでもトライアングルになってない。つか、なるわけねー。大体、セイルさんが放つ先が見えない関係先は多い。多過ぎて単に輝いてる気もする。しかし、拙い。これは拙い!!
ちびを抱えて光り輝く相関図のきょーふにぶるい、決心した。
「一刻も早くセイルさんの膝を占拠し、陥落させねば!!」
目が覚めた。
ん〜と伸びをする。くはあっと脱力。ぼーっとレースを見てたら、ふと思い出す。今朝、なんか夢を見た。確かに、なんか見た。見たから起きて、ハージェストが出て行くのを〜
「見たから、慌てて意識を振って。驚いた顔して戻ってきて 行ってくるよって〜 俺の腕に手を。 その後、即落ちしたか? そーだ、あったけ〜 が、最後か。一大決心したよーな気がしたのにな。 ……ま、夢は夢か」
空腹の方が大事。
正夢も逆夢も予知夢も! 思い出せないと意味はなくう〜 あ、悪夢は思い出さないに意味があり〜 うああっ!夢渡りができる人に聞いたらいーのでは!? そーだよ、相手が覚えていないと意味がないからなんたらと! アレンジで夢を覚えていられるかも! ……見るかどーかもわかんねー夢に毎夜やるなら馬鹿じゃねえ?
「…いや、積み重ねとゆーものは 待て、体調が微妙な時にできんのか? にゃんぐるみも着れん奴が」
閃きが現実に突き当たって、ちょっとへこむ。そもそも、体調がおかしいからそーゆー夢を見るんでね?と思うと〜 ふっ 的な鼻笑いが。
「ん?」
テーブルに見覚えのないブツを発見。見に行く。メモと重し代わりのブツ。メモを読む。
「ロイズさんの字ですね。えー… な、らし ましょう」
読めた。
用件のみ素晴らしいメモと二個目の呼び鈴、getでーす。
早速、鳴らします。
リンッ!
今度のは余韻が残らないタイプでした。
「はい、起きられましたかー」
…間延びとは違う張りのあるお声が、前回と同様に大変近くから聞こえました。鈴を鳴らさずとも、「夢渡りができる人にー!」とか叫んでたら普通に見にくる距離でした。
二個目でも鈴の効力がよくわかりません。
「お待たせを、お腹が空きましたでしょう」
そう言いながらも、ご飯の準備ではなく「体調は如何?」の問診が先なのです。そして、廊下で聞こえる物音。入ってきたのはロトさんでした。そーいや、指導教官が決まってました。
「終わりましたか」
「… 」
無言で頷く一名様に鬼の追撃。
「今は口を利いて良い」
「はい」
…素晴らしい上下関係が築かれてました。先程まで教育の一環として、風呂掃除をしてくれてたそうです。 …あれから、血色と肉付きが良くなって何よりです。目付きもどこぞの若頭のよーでお変わりなく何よりでございます。ええ、人格が突然変わってなくて良かったと思っております。
「では」
「え?」
ロイズさんに疲れるといけないからとベッドに追いやられます。反論せずにベッドに、go。ころっと転がれば始まる実習。
はい、俺の世話係りはロトさんで決定済みでした。手の問題、力の問題、メイドさんの選定問題等を一挙に解決したロトさんです。ええ、まぁ、相関的矢印で安全だろうとゆーのはわからんでもないのですが〜〜〜 ちょっと、微妙で あの、看護や介護の資格はお持ちでな〜〜 お断りするのは 贅沢ですね。
「そうではなく」
「…はい」
協力実習には、こちらも大変気を使います。起こされ、クッション入れて貰って凭れたら、寝間着の襟元に前掛けを入れてくれる。どこの坊ちゃんでしょう?
健康の証に腹がくるる〜っと小さく鳴ったのですが、ご飯になりません。粛々と続く指導と実習は素晴らしいのですが、今やらんでもと思うのです。
「できない筈はないので、もう少しお待ちを」
ご飯の味がわからんなりそう。
なんて思ってもご飯が並んでいくのは嬉しいでーす。
「お待たせを しました」
スッと頭を下げるロトさんに、「はい」と返事をしつつロイズさんを見てしまう。まじ、食べていい?
酷い事に、とても酷い事にロイズさんが席を外されます。「お食事の合間に自己紹介を聞いてやって下さい」との事でした。入れ替わりにクライヴさんがお越しです。開けた扉の前に立たれて、目元がやんわりと。それから、キリッと。
傍に立つ無表情さんをそのままに、スプーン持って頂きますの笑顔を外と内の二人に振り撒き食べ始めます。因みに内の反応薄いです。自己紹介もせずに俺の片手をじっっっっっっっっとり見てます。
手袋してませんし、こうくると力関係あっても怖いです。そんで食べにっく〜〜う。
締めの果物に手を出した頃、椅子に座らせたロトさんがよーやく口を開きました。それまでは、ものすごく目で語ってました。一発逆転劇への葛藤が如実に現れた目は食欲を減退させるのですが、それなりに胃が催促するので食べれました。
「…は、それなりに力が」
沈んだ声、白のシャツ、膝を掴んで震える拳、黒のスラックス。清潔さ。呟く、断片的な身の上話。下町?スラム?乱暴者? それでもそれなりに筋は通したとゆー ゆー えー 一部、ほんとかどーかわからない自己申告の自己紹介。
「俺が何をした」
絞り出す声に、「存じません」で返した。端的に「可哀想な巻き添えではなく、された何かが査定に掛かって、こうなったのだと思われ」と正直に話したら。らぁ〜、表情が酷い事に。
歯を剥き出して唸られたら狂犬ですがな!
じりじりと腰を浮かすので、こちらもじりじりと病人用テーブルを足元へ押しやる。せめてベッドの安全は確保したい!!
パン!
空気が籠もった大きな音はクライヴさんの忠告。
既に室内に入られ、仕事モード。しかし、振り向かないロトさん。早口で罵られる。主原因が不明で、どうやられたのか不明なのも不満なよーです。頭を力で押さえる事を自分がやっても、やられるのは嫌だとゆー我が儘っぷりを発揮してます!
「こんな、こんな印をどうにもできねえ奴が俺の上だと!? ふざけるな!!」
力の限りにガオオンです。
とんでもなく自己主張の強い自己紹介。その上、自己承認が必須のご様子。しかし、そんなん言われても。
お布団かぶって寝たいです。
ですが、ロイズさんの教育は絶大です。唸って吠えて怒っても、立った場所から動いてない。手を動かしてアピールしても移動はしてない。だから、クライヴさんに捕縛されない。
ですがね? どれだけ叫ばれ睨まれようと、俺にロトさんを納得させる必要も説得する必要もございませんから。だから、『やだなぁ、胃が痛くなりそー』なんて思っても流せま りゃ?
空より来たる黒い影。
三匹が斬る!
俺を助けに黒い三連星のお出ましです! ってか、クロさん。俺、着替えてないよ? 通常モードもokですか!?
「な、な、な!」
驚愕するロトさん。
同じく驚愕するも、速やかに間合いを取って離れたクライヴさん!
トライアングルでロトさんを囲み、ゆらりと泳ぎながらもじりじりと距離を縮める三匹。鮫のテーマソング! 驚愕に恐怖が混じって手を振り回し「ひゅっ」っと息を吸い込んだ瞬間、三連星もひゅっと真正面に集結。
ロトさんの額を攻撃した。
「わぁあああ!」 ドタッ!
悲鳴と尻餅、瞳に滲む恐怖。手は後ろ、開いた足、仰け反った状態。尻躙りで逃げたい様子。しかし、右に左に揺れてもオープン固定は決定らしい。ゴスゴスと音が聞こえてもおかしくない連打が続きます。血は出てないが非常にやばそう。
金魚ちゃん、歓喜の舞。
くるんくるんと可愛く舞ったら、列を組み直し、三連星になって気絶したロトさんの額に消えてった。クライヴさんの熱烈な視線を受け止めて、首をぷるぷる振りました。
「い、いやったああああ!」「うわ、きっつ!」「きゃー、きゃー、きゃー、いやぁあああん!」
一つの口から三つの声。
溜めから勢いよく立ち上がった顔は嬉々として両手を広げ、「うわ、まじ動ける!」からの感動で打ち震えてた。
「主様、初めまして! 俺にもあーゆー装備くださぁああああい!!」「あ、馬鹿! 主様が苦しいだろ!」「きゃー、馬鹿!何してんのよ! 食器、食器が倒れちゃうー!」
熱烈なハグに、うきゃー。
直後、呼吸が楽になり。「はぁ」と息を吐いたら、襟首を掴まれてるロトさん。
「あ、悪気ないですないです。まじ、ないでー「すいません、馬鹿っぽくて「おい「えっと、あのあの私達 急ぎ、ご訪問の許可を頂き あの、お仕事… お疲れ様でえぇっす」」」
最後の呼吸はぴーったり。
ノリと口調と釈明に、仲良さげな年下の子達を見たのです。
「希望を「あんたは言ったでしょ」「でも、さっきのじゃ伝わったか「言ったでしょ!」「ええと… やっぱり優先順位はあれ「順位なら、ご挨拶に自己紹介が先でしょーー! あんた達、引っ込んでて!!」
女の子の勝利です。
「初めまして、主様。以前の名を、ドゥランシーエと申します」
虚無のスカートの裾をちょんと摘んで、はにかむ可愛らしいご挨拶を頂きました。でも、外面はロトさんなので微妙です。狂犬のガウバウガルルからキャンキャンになった後の一転のはにかみは… ギャップ萌えにも遠く…
で、ほんとに突然ぽぽぽんと出して貰ったそう。
しかし、これは天罰てきめーん!をしてこいだと判断。今に至る。
ドゥエちゃんは金魚の水流れをしてた子でした。
提示された未来に輝く希望と深い絶望の闇を垣間見て、足掻く事への情熱と恐れを抱き、乱高下に疲れた心がスパルタの水に押し流されて気力を削られ、流される悔しさと、それでも力の出ない自分と。
滲む涙に、どこまでも不明な到達点。
水流に諦めと諦めた事で生じる恐怖が交差した時。
そっと 抱き留められて嬉しかったと。そして感じた温もりに 正気を取り戻せたと。そう、頬を染めた顔は… うん、びっみょ〜〜う。顔に出そうなので引き締めましたら、ドゥエちゃんの顔も引き締まり。
「主様、私達は色んな希望を持っております。が、それとは別にお願いが」
「はい? 難しいのは無理ですよ」
「簡単なお願いですし、主様も賛同してくださるかと」
「はあ」
「私、女です。女の体が欲しいです。男の人の体に興味がないと言ったら嘘ですが、その、あのコレが妙に、いえ、すごく嫌と言うか気になると言うか」
内股でもじもじした。
コレはナニでアレらしい。
「主様も一致しないから微妙なお顔をされるんですよね。わかります。私だってそう思います。入るなら女の人の体が良いよねーって話し合ってました」
「……いや、でも、あの、そんなに都合よく」
「杭打ちまで為された安全体はコレのみでも、今ならまだ大丈夫! 間に合います。一人でいいんです、後は私達で何とかします。証を蘇らせ穴を開け、繋げてみせます! 皆で意見を出し合い検討を重ね、「これでイケる!」と手順まで考察済みなので大丈夫です! ですから、主様♡ 私達、女体が欲しいです」
金魚のドゥエちゃん、野郎の体に入りたくないそーです。
他にないよと言おうとしたら、他にあるよと言われました。あるのに野郎に入れと言ったらセクハラでしょうか? でも、あると言われた体は解放済みで。その後、どうなったか聞いてませんが…
いえ、その前に人権の問題が。
でも、金魚ちゃん達の尊重すべき意志と希望…
死んだ者より、生きている者。
死んでいるけど、生きているモノ。生きて自我を継続し、継続するが故に性別意識が失われない。
一人 対 複数。
女性金魚ちゃん達の、総意…
微妙な顔した俺の馬鹿。
一人はみんなの為に。みんなで一人を乗り回す。乗り回される一人、よりは二人。負担分割は数の勝利。
期待に輝くドゥエちゃん。
男の雰囲気、皆無です。そして中には、まだ二人… 多分、本体は一番下に埋もれてる…
複数を飛び越え、全魚が相手。
ふ、ふはははは。仮ゆーしゃと同じく全魚にごーか な、事ですね! わかります。しかも、こっちは永続と。さーすが当たりくじぃ〜〜 ってか、一般人化したらリリースしよーと考えてたのに必須とか!
犠牲者を増やすのは躊躇われるが、全魚とゆーのは暴挙のよーな… 大体、精神の割り込みで一線を超える以上、精神 汚染 に、近いよー な?
「主様。私、お話しできて嬉しいです。お話しして、自分が此処にいると。自分の価値よりも意義よりも、この肉の重みが。私は希薄な存在ではないと… 戻ればあるのだと。 私、お使いもお手伝いも頑張ります。やる気あります! でも、この体は… やっぱり、あの、コレが なんとも。 ね、主様♡ 私達の心に大事な補助具をお願いします♡」
…うん、補助はあると便利でプラスです。
だから、金魚の意識改革 いや、改革すんのは俺の頭? これ、職場改善 要求 だよね?
内股で、きゃぴっと。
ぐーにした両手で口元を隠す女の子ポーズ… 違う意味でロトさんが可哀想な。
しかし、現実を取り纏める上司は誰だ?
俺ですよ。
責任を持って最後まで飼わねばなるまいと思った俺の金魚が、真実の献身を望んでいます。んで、制限時間も言ってます。
まじ、震えます。
避けて通れない金魚問題。
魚は活きが大事、その為の水も大事!
本日の漢字。
一箇所で遊びました。意図的に遊んだので誤字ではありません。他にあったら、そっちはアウト。
本日のもふもふパラダイス。
ジャイアントラビットで検索すると、それはそれは素敵な画像が見られます。