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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
195/239

195 意見の相違に首を傾げ

本日の某箇所の表情は、是非ともノーコンみたいなぴーかんでよろ! ノーコンをプラス思考で言ったらば? きゃっほーい!






 これは夢か?


 いやいやいやいやのま〜さかぁ〜 ゆーれーがこーんな泥棒音を出すはずないって〜。


 そう、幽霊は居ないのです。

 此処に幽霊など居ないのだ! 此処で幽霊に一番近いのは、俺の金魚ちゃん達なのだから!


 だから、テーブルの前で停止した奴はヒトである。


 ヒトヒトヒトのヒトである!


 そして、あれはハージェストではない。絶対に違う。魔水を貰ったばかりの俺の感性が狂っているはずはない。俺のハージェストに似ているだけの偽者だ!

 

 幸か不幸か、寝待ち姿勢はベッドの端。ふふふ、この位置からならヤれる! 大きく腕を振ってのアッパーか、それともそのまま突き出すキン的か!? …うむ、やはり狙うはゴールデン!!


 展開する狸寝入りに、瞬間の猫目きらりを取り入れる。くふふふ、手で顔を隠してないから連発できないのが残念だ。




 もう少し、あと少しと距離を測ってた。


 「…… 」


 もう一息で止まる敵の足。

 視線を感じるのを知らぬ存ぜぬ、俺は寝てますを貫いた。そしたら、いきなり白の光がびかぁあああああっと!


 「ひょおおおおおっ!?」

 「やっぱり、起きてたか」


 見上げる顔の下にひかりぃいいいい!!


 「ぎゃーー、お化けぇえええ!」


 反転、撤退、逃走です! 闘争は排除のポイ捨てです!


 「だっ」


 人の足首、掴みやがったー!


 

 足蹴にしながら体を捻れば、片手を上げる全体像。

 うぎゃー!で蹴り倒そうと頑張れば、天井の灯りがスイッチオン。


 じわわわわ〜〜っと照らし出される中で、判明する人影。その輪郭に従って、うにょ〜んと伸びては消える黒い影。いや、霧… あ、湯気? 空気中に存命するキラキラとは違い、人体に纏わり付いて離れない黒いナニか…


 「ひぎゃああああっ!」

 「あ?」


 恐怖に毛布を引っ掴み、頭から被るも足がぎりぎり引っ張られー。やめいと反射で大回転、側転蹴りを実行するも当たりませー! しかし、足は解放された。結果、オーライの成功です!



 尻で躙り下がって、毛布の隙間から睨むのですが… 黒いナニかは薄れてた。ねっとり感もなければ禍々しさも薄れてて… 最後は、さらっと消えてしまい…


 余韻を感じないでもないがそーでもないでもうにゃあああ?



 灯りの元、全体像からピントを合わせると見上げる奴はハージェストだった。どっからどーみてもハージェストだが、笑った顔にムカついた。あいつは、俺に、そーゆー顔で笑いませんが? 知っているから言ってやる。


 バレバレだっての。


 「何故、寝てる振りを」

 

 ダークな陽炎が消えても、俺の目は誤魔化され!  …待て、消えるとゆーのは完結では?


 「何を考えて」


 どこかが違って聞こえるハージェストの声。

 本人でありながら本人ではない、その完結とは? 乗っ取りが完了したのでは?


 「沈黙は答えではないよ」


 金魚ちゃんの乗っ取りと、宇宙からの侵略者的乗っ取りの違いは何か? 同じよーな事象であるなら、自主的に出て行くか出て行かないかでは? 操るなら埋め込み式とか…


 ごきゅりと喉が鳴る。



 「お、おま」

 「ん〜」


 口元を歪める皮肉の効いた笑みを見て、衝撃。心にドスッと突き刺さる、この衝撃。衝撃こそ、火花。


 俺の目の前でバチッと飛んだ火花(苛立ち)気化(理性)引火(衝動)に手を取らせたら、「人の話を聞いてるか?」と真っ向から可燃物を投入してきた。俺の内燃機関が一気に上昇、瞬間時速でオーバーシュート。激烈にムカついた!! 


 それは、お前のじゃない。

 それは、ハージェストの体だ。


 返せ。

 誰が許すか、返せ!



 「ふ、ふふふ。そうか、全てはこの時の為… 猫の力の解放… お試しと準備期間… 終了の合図は自分の理解。そう、寄生ちゅーに消毒など無用。殺虫あるのみ!! この手で引き剥いだらああああっ!」

 「…だっ!?」


 人爪兼猫爪、にゃんこクローで顔面強襲した。ベッドのスプリング、素材知らんけど良い仕事してるー。






 「俺の目を潰そうとか」

 「にゃーん、にゃーん、ごめんよー」


 「猫の首を引っ掴み!」

 「ふぎゃあー」


 とりあえず、寝台の奥へ行けと背中を押した。それから徐に俺も上がるが、つい眉間を指で揉むのはわざとじゃない。


 「全く、もう… 君の目が本当に良いと言うのは、よく理解しましたとも!」

 「みぎゃあああ。だってー、お前の顔の縁をタールっぽいのがあ〜〜 俺の知識と合致したら、お前が喰われるとー」


 …気持ちは嬉しい。


 「だから、べりっとしよーと」

 「君の闘志を褒め称えよう。しかし、引き剥ぐと言いながら突き込んだ事実は? 君のべりがどすであった事実は? 本気で目潰しを食らうと思った俺の恐怖は!?」


 「そ、それは目測がズレましてえ〜 うえーん、すいませー。ちゃんと体はお前のだと思ってたんで、ほんとにほんとにほんとにそこは不可抗力なんですえーー」

 「うぅううう…」


 「まじ、ごめんんんー」


 二人で行う反省会は… 何と言うか、こう…  どちらも空回ってないだけに酷く情けない。アズサに髪を染めてくると言わずに行ったのも、染めた後の何時もの準備を話さなかったのも、アズサの知識が全く外れてなかった事も!


 全部、あの雰囲気が悪かったんだろ。


 ああ、そうだろうとも! 雰囲気に流されるままに動いたばっかりに、こーゆー事になったんだろぉおお! 悪かったな、俺が雰囲気なんか作ってよぉおお!!


 「お前がお前で乗っ取り事件は発生してなかったと理解した時点で、心臓がドッキドッキのバックバックで〜 実力行使に走った俺も俺ですが、一言、一言言ってくれてればあ〜」

 「だから、俺も反省してると! があーーーーー!」


 吠えたら、アズサが転がった。


 両手で示す全面降伏に似た仕草に、見上げる目。そんな格好をさせた自分と現実とアズサに軽い苛立ちを覚えるが、仕草に猫の可愛さを透かし見て変な幸福を得る自分… 同時に思い出す、アーティスの幼い頃の… ああ、俺の頭も良い感じに混ざってやがる。


 「あああああー」


 虚空に向ける怒りが虚しい。

 馬鹿らしいので、アズサの隣に転がって「ごめん」と謝罪しておいた。


 



 「じゃあ、髪を染めるのとセットでやってんだ」

 「そう、影纏いは前日からやっておくと馴染みが良い。それで持ちも良くなるし」


 「相乗効果?」

 「いや? 要素は一つですから相乗とは言わず」


 「うや? …にゃはー、そーゆーのは一発でできるもんだと思ってた」

 「初級と呼ぶものなら、一発が普通」

 

 「げ」

 「言葉の括りは同じでも、日常と非日常で行われるものの意味合いは違う。重点の違いで派生が起きる、そこから〜  まぁ、ね?」


 言葉を濁して笑う。


 「…うにゃん」

 「あは」


 更に笑みを深め、拗ねるようで沈む顔に「基礎の違いがわかって良いのでは?」と宥めておく。俺から言えば、その眼だけで十分補えてるけどな。

 

 「勉強が…」

 「明日は遊び」


 「ん、そうなんだけど」


 気に病んでくれるのは嬉しいが、当たり前に答える事で…   一般より深い知識を得ている事を理解してるだろうか?

 

 「一度理解したら、君は遠くに行きそうだ」

 「へ?」


 「俺とは違うってこと」

 「うええええ!」


 飛び起きて、見開いて、見合って、沈黙を続けて、面白い顔をする。また転がって、落ち着いた顔に戻って、俺を見る。互いに相手の顔を見た。そこから、「明日、どこから回る?」で口火が切られ「ん〜、君の体力次第にもなるけど」で会話を再開する。


 「そうだ、アーティスは?」

 「一緒に行ったら、この騒動に意味はなく」


 「あっはー」

 「俺も顔を売ってるしさ。変えずに行けば、どうしても煩くなって君が思い描く感じにはならない」


 「ぬぅ、変則であろうと第一希望は叶えねば」

 「そうそう、アーティスはその後で。もう遅い、そろそろ寝よう。 …暑くない?」


 「いや、お休み〜」

 「ん」

 

 安眠の為にアズサが適度に離れていく。

 その間に起動を確認する。アズサがちゃんと被ったか確認し、腕を振って灯りを落とす。









 薄闇の中、眠りに落ちる狭間で切った手札が浮上する。


 思った事を思ったままに呟いた言葉は、相手を引き止める為の言葉に似ていた。本音、アズサの顔、無意識、その辺が入り乱れるが  下手な切り方だと自嘲する。している自分が居る。同時に追って行く事はできないと 決してできぬと  呟き返す自分も居る。



 夢の入り口で 

 俺は待つだけだと 


 事実、他に手はないと


 語る自分と目を合わせ、反論なく立ち続ける。閉ざされた境地で佇めば、時の眠りが触れてくる。抗えぬ力に身を委ね、誘いに従えば  不思議と古き言葉を思い出す。


 神との対話。

 その時、神は 己の姿を していると。



 鏡合わせの己の姿。


 違いを探そうとも、それは己でしかないと。それでも、そこに座すは神であり。神と語らう虚実の夢は 夢でありて 夢でなく。虚実の夢で、最も重視すべきは


 

 狭間から夢へと招かれる中、思い出せない言葉と隣の気配を探しながら 眠りに落ちた。








 「おはよー」

 「……ん〜」


 珍しく俺が先です。

 しかし、隣の頭が金色でないのも不思議な感じ。


 そろそろとベッドを降りて素足で歩き、夏履きを突っ掛け進みます。静かあ〜にカーテンを捲ると、少し肌寒い。窓から見上げる空には朝焼けの雲が広がってた。良い天気に顔がにぱー。


 相方がまだ寝てるので、カーテンを少しだけ引いて光を取り入れる。


 そそそそそっと服を着替えて、寝間着を持って洗面所へ。ごそごそしてから戻ってきたが、起きてない。昨日の騒動が響いているとみた。すまなー。



 ウエストポーチを持ってテーブルに。中身を取り出し、持ち物確認。それから、箪笥を静かに漁って物を揃える。


 「ハンカチと布バック。筋肉痛用のメンソレさんは要らんだろ。 …いや、要るか? 貴金属はちっちゃいのを二、三個のみ。他は片付け。そんでお金を  メモメモ、セイルさんから貰ったほーから〜 よし、こんだけ」


 日日と金額を記載して、慰謝料袋に突っ込む。金が尽きる頃に総額がわかるでしょう。まぁ、時間があればその前に数えるが。それで、こいつを箪笥に戻していいものか、ちょっと迷う。


 金庫がないのがネックです。でも、お貴族様は困らない。自分で魔法の鍵を掛けられる。二人して部屋は空けたが家には居た。用心と信頼が天秤となって揺らぐが、お出かけモードだからとリュックに仕舞う事にした。


 「…おはよう」

 「あ、おはー」


 お金様の高貴なお声で起きたよーだ。リュックに片付けて立ったら、胸をぽりぽり掻きながらテーブル横に立ってた。


 「…これ」

 「昨日、準備するの忘れた」


 「俺が出すのに」

 「いやいや、あるし。これでお前にも奢れるし〜」


 「ひゅーう」

 

 軽く口笛を吹く姿に、ちょいと指差し「これ、どうしよう」と聞いてみる。


 「持って行きたい?」

 「いや、荷物だと思う」


 「じゃあ、置いて行きなよ」


 即答した顔を見て、「ん、そーするわ」と調理用兼護身ナイフは置いてく事にした。



 ハージェストが着替え終わる前には、準備万端何時でも出れます。「じゃあ、食堂に行こう」「いや、持ってくるよう言っといた」で、なんか行くぞ!の気分が空回り。


 

 程なく、ご飯が届きます。

 お届け人は、マーリーおばちゃん。そして、お届けにはご飯以外もありまして。



 「わあ… もうできたのですか」


 昨日の今日で上着が戻ってきたのです。ええ、それはそれは綺麗で流石です! 裏を見ると当て布がされてて補強が効いてます。当て布の端も本体に縫い付けられてますが、引っ繰り返しても表に糸目はないのです! 


 斜めに上がる縫取りはデザインにも見えて…  レベルの違いに首が傾き、きゅ〜〜っとなります。


 

 袖を通して、二人に見て貰う。


 「うん、良いね」

 「ようございました」


 「マチルダさんに有り難うと伝えて下さい」

 「はい、そのように。後、私の指導が至らず申し訳もございません」


 …おばちゃんに、また頭を下げられました。


 「仕事の出来が良いと姫様に褒めて頂いた矢先に… 気を太くして… マチルダは」


 顔に無念と書いてある。そんで、あっちやこっちの無念が俺を目掛けて飛んでくる。リリーさんのにこ、マチルダさんのぱああっなにこ、おばちゃんのにっこにこ。女性陣のにこに対して、冷めた俺の疑いの眼差し。ショックと悔しさが混じったマチルダさんの激おこ、それに対するセイルさんの静かなるおこ。ハージェストの白けにおばちゃんの… 歯軋り。


 いーんがは めぐる〜よ〜 ぐーるぐると〜〜 はーりやまつきさーすー ひーかりのけ〜〜ん きらーきらしてるーよー いーんがっ りっ つぅうう〜〜  いぇい! 



 マチルダさんの激おこに、リリーさんの名誉も掛かっていたとすると… なんと言う事でしょう、俺に針がぶっ刺さる。


 「セイルさんに取り下げ依頼しておきますから…」

 「はい?」


 あれ? 今のを聞いてこいつが理解しないとか、変。



 「そんなの必要ないって」

 「え、でもあれはだよ?」


 意見を述べたら、却下食らった。


 「だから、あの態度が許されるとでも? ないね。怒りに駆られたのは仕方ないとしてもだよ? 此処に子供は要らないよ。あの場で必要だったのは機転と望みを貫き通す気概だ。君はそれを示してのに、どうしてあれを許せると?」

 「俺の機転?」


 「そうだよ、君はできた。何故、あれはできない」

 「え、こ …個人を比較するとゆーのは」


 「本来、比較検討する内容でもないのが笑うけどね」

 「あや?」


 「俺も兄さんも君の意見に振れるけど、それは甘やかすとは違う。違うから、君はあれこれ話して説得したろ? そこで筋が通ったから意見が通った。それ以上でもそれ以下でもない、取り下げは不要」

 

 でも、それじゃあと思うのですが。


 「何が可哀想?」

 「本当にお優しく…」


 おばちゃんが感動してくれたが… 現実に頭を下げねばならぬのはおばちゃんで、一番割りに合わないのもおばちゃんだと思ってる。


 「マチルダの失敗は混同した事です。姫様との対話で自分も許されると立ち位置を誤ったのです。ええ、見て、知って、立ち位置を測った故の…」


 口籠もり、黙って俺を見て。また頭を下げて謝るおばちゃんを止めるとのは難しいと知った。俺の意見は間違ってないと思うが黙って流されるほーが正解か? そうやって人は楽を覚えていくのですね? ね?


 あー、現実に即応した対処方法スクロールしたあー これで机上理論出されたら殴りたあー 方向不明のそれでも努力しろも殴りたあー おばちゃんの指導現場を見た事ないからアレだけどー  にゃっ!





 それから、ヘレンさんの話。


 延命のよーな措置に感謝を頂きましたが器の癖付きがあるそうです。見様によっては役立つが危険でもあって、何方付かずで言い様がないと。何度かテストした結果なので間違いないそう。他人の力に鈍くなってるって、どう聞いても致命傷に聞こえる…



 「では、これで」

 「はい、ありがとです」


 頂くご飯は美味しいですが、やっぱり微妙な話は微妙で遊びの前にはよろしくない。知らないよりは良いんだろうけど悩ましい。


 「ほら、食べる」

 「あ、りょーかい」

 

 最後に普通のお茶を頂いて、ごちです。ちょっとまったりしてたら、聞こえる鼻声。即、反応して開けに行く俺。


 ガッチャン。


 「アーティス、おはよー」

 「ヒュン!」


 その場でアーティスを構う構う構う。するっと入って、尻尾を振り振りハージェストに向かう。しまった、足裏拭いてねえと思ったけどもう遅い。 …まぁ、今日クリーニングの日だし。




 「ヒュウウン?」


 ねぇ、ほんと行かないの? 居るの? なんか違うんじゃね?みたいな顔をするアーティスに「楽しんでおいでね〜」と頭を撫でる。撫でる撫でる撫でる。しかし、みょ〜に疑い深げな目で見られる。


 「アーティス、皆と一緒にな」

 「ゥワン!」


 ハージェストが伸ばした手に頭を擦り付け、何故か納得して行った。


 「何この差」

 「後でばれたら辛いな〜」


 二人でブツブツ言いながら食器をワゴンに乗せます。ドアの前まで寄せたら、stop。



 「じゃあ、始める」

 「あいよ」


 ハージェストの邪魔をしないよーに、ベッドに避難。アーティスとゆー試練を乗り越えたので、影纏いの術式を行うのです。




 読めない光の羅列が玉になる。


 それを手のひらに受けたとこから、黒い滲みが発生。ねっとりのどろ〜んが怖。美容の泥パックと違うのがなんとも〜 どー見ても、体が食われてくか食わしてるっぽいのがなーんとも〜〜  怖。


 影纏いは気配を変える総称で、実際に気配を纏うものでもあるそーな。よりリアルを追求して改良版が作られ、他人の基盤マトリックスがうんちゃらってえ話で〜  しかし、本人がどーたらになると困るから第三の特定をなんたらと〜  昨日、俺がハージェストじゃないと判断したのは正しかったのです。影とゆーより人格を纏ってるのかと思うと、ちょっとアレで  うわ。


 全身真っ黒の人体シルエットに、二つの蒼が瞬いてる。


 闇の人と化した姿が、なんでかキラキラしてる。周囲が完全に祝福モードな、この不思議。蒼が閉ざされ闇に沈めば、完全な…  闇の…  せ、聖人とか?


 キラキラがさら〜っと消えたら、人モード。そんで、うにょーんみにょーんと伸びてた黒い触手のよーなのが服へと収まる。



 人が現れた。


 毛先が黒い茶髪に深みが失せた青い目、何時もと違う立ち姿に醸し出される雰囲気。


 「お待たせ」

 「…声まで違う」


 「声は変えてない」

 「え、まじ」


 「別の方向で騙されてる」

 「うえ〜」


 変身過程を見ていたが、何か納得できない承服為兼(しか)ねる。俺の第一希望と違う感じがするのです。頭でわかっても感情が納得しないとゆーか… こいつはこいつであるのだが〜  む?


 「なぁ、今のって簡単?」

 「は?」


 「高度な技術では? 消費量は優しい感じで?」

 「…… 」


 青い目と問い合わせごっこしたら、黙って指を一本立てました。


 「上? …あぁ、補充してたんだ」

 「……そうです」


 目に見えないケーブル線からこっそりエネチャージ。キラキラモードはセイルさんからの愛情とゆーか、遊びに行く前にお兄ちゃんから貰ったお小遣い〜 い〜い〜い〜〜。 


 単に横を向いただけなのに、ハージェストだとよくわかる。



 「…えーと、この姿は無理そう?」

 「いにゃ、よー見るとこれはこれであり」


 知らない気配の知らない奴。『此処から見抜け、真実の目!』を発動しても完璧でわからない。しかし、根がわかるとゆーのかぁ〜〜  そう、サファイアとルビー。あれは根が同じ、過程で色を違えただけの同じ鉱物。宝石界のツインズ。


 「一粒で二度おいしー」

 「っしゃあ!」


 ベッドから降りてにかにかしながらウエストポーチを掴む俺と、掛け声と同時に箪笥に向かったハージェスト。


 夏履き脱ぎ捨て、ショートブーツに足を突っ込む。腰のベルトにグリップもごつけりゃ刃渡りもガチなナイフを二本ぶち込み、片方の太腿にポーチを巻いて端をベルトに接続。バンダナで髪をばささっとしたら、何が当たったのかガシャッと音がしたジャケットを羽織って、小さめリュックを肩に掛け、着替え終了。



 「さ、行こうか!」


 ナイフ使い(二刀流)の冒険者が立っていた。

 竜騎士職で前衛で長剣使いで魔法の辞書が変身したら、こーなるなんて聞いてない。


 「おっと」


 黄色い飾り石が揺れるちょっとリッチな耳飾りを追加装備。違う意味で、あんた誰? 





 定位置にワゴンを止めたら、今日は内から。あの隠し扉から出発です。


 「合わせは覚えてる?」

 「…最初と最後なら」


 「じゃ、今日覚えよう」

 「え、一発?」



 カタタン…  タンッ!


 良い音で確定し、ギィと開きます。


 「覚えた?」

 「……完璧には練習を求める」


 お互い、困ったなの顔からの〜 「「よし、遊びに行こう。それからだ!」」で後回し!



 あの時、一人で潜った扉を二人で抜けて閉めました。


 「うわっと」

 「より一層、生い茂り」


 「そりゃあ、季節が季節ですから」

 「虫除けしろとゆーた、あなたは偉い」


 そんなこんなと言いながら、ざかざか掻き分け、進みます。前がいるので断然、楽です。「あ、俺この前ここでさ」「何、引っ掛けでもした?」と止まる事なく進みます。そして、見下ろせる場所に出た。


 「君に置いてかれて、俺が座り込んだ場所があそこら辺」

 「ぶっ」


 景色より、まずそっち。

 二人して良い思い出持ってます。良い感じに雰囲気、飛んだ。飛んだくらいがちょーどいーのか。




 「あそこを確認して行こう」

 「だね」


 前回の逃走ルートを通って、某入り口の確認をする事にしました。


 


 「上着ないとやばいですね」

 「薄物でも良いから、必ず露出は避ける事。あ、そこ滑るかも。気を付けて」


 「ん」


 足元注意の下り道。地面と同化の石段を注意して降りていく緑のルートは攻めか守りかわからん感じ。そんで隠れんぼした緑のカーテンは、更に厚みを増して素敵な状態。


 「ふーん…」

 

 ハージェストが周辺を確認してる間、俺もキョロってみるが緑の成長以外変わってないと思います。


 「…どうです? 誰かの援軍はお越しですか?」

 「見てて」


 某入り口に手を伸ばす。

 そしたら、音もなく現れる円陣。入り口の手前に浮き上がる様は、どー見ても門で鍵。そして何度見てもかっこいー出現。


 「ここ、弄った跡がある」


 指差す場所を見ますが、あからさまな歪みはないので区別がつきません。難易度の高い間違い探しに唸ります。


 「侵入者…」


 仮ゆーしゃの援軍か、それとも単なる泥棒か?


 罠に掛かる誰かを夢見て…  運命の前に下がりなさいと心の中で呟きながら、拝んどく。


 「引っ掛ける場所を探してたな」


 …そうですよねー、無謀に飛び込む馬鹿いませんよねー。


 斜面を確認するハージェストの言葉にうんうん頷きながら、落とされた土とそうでない土の違いに悩む俺がいます。今日の所は収穫なし。罠へのときめきを覚えますが、落ちた先の穂先はキラリ。

 

 「なぁ、この先はあのままで?」

 「ん?」


 周辺をキョロってから顔を寄せてこそっと、『大丈夫、搦めとるだけ』と変更を教えてくれた。こそっと告げる意味を考えて、ぐっと顔を引き締める。


 妙なうにゃーん顔してますが、防護ネット(蜘蛛の巣)の設置に安心です。


 


 「んで、こっからこっちへ行って人に出会って猫の出番」

 「なるほど、此処からなら」


 下山まで、あと少しの地点で立ち止まる。周囲を見回しながら、片手で襟元を広げてそこに向けて何か呟く。上着の内側に… ブローチ?


 「此処から手を繋いで行く、俺は握らないから君が握ってて。それで俺が握り返すまで喋らない」


 許可を貰ってるからこっそりじゃないんだけど、こっそり遊びに行くってほんと大事ですね。




 歩き出したら視界が変化、周囲がぼやける。半透明に白を加えた光のモザイク視界に、頭がくらっときた。握った手を意識して、下を向くと楽。周囲のぼやけた感じはあるが、ハージェストの靴や足元の道はぼやけてない。透明マントは内側から見えない仕様でしたっけ? あれえ? …違う、待て!! 俺が見えないとしても、ハージェストの影にはなってんじゃ? それ、拙くない?


 焦って顔を上げたら、また気持ちわる。


 そーだ、こいつがその程度の事に気付かないはずないっての。思考を捨てて、前の足取りを頼りに歩きます。 …スローダウンしないかな?




 「やっぱり」

 「や、まじ大丈夫」


 離れていくのを引き止めます。

 建物の影で直座り、到着寸前でへたりまして。


 歩き出してからの視界を説明したら、頭を抱えた。歩いた距離と時間と術式のレベルみたいなのブツブツ言ってた。最終、力の加減をもっと落とすになったんだが、それはそれで大丈夫か不安です。途中で解けたら、どうすんですか? 


 慣れと染まりの可能性に多大な期待を致しましょう。計画表と観察日記じゃない、経過観察健康日記その他を書き残します。ええ、全部資料ですから!


 これで俺の目が良過ぎる所為だったら、つっらあ〜。


 「本当に? 近くだよ」

 「お守り握ってたら楽になったし、地面見てたら比較的へーきでした。固定画面で落ち着いたとなると俺の映像処理のーりょくのよーな…」


 「固定画面?」


 慣れない視界に酔ったのが正解だと思う。おねえさまの酔い止め発言を思い出すのが微妙です。俺、弱いんかな? でも、三半規管じゃないだろしー。


 「…現実に即応する以上、精神論は見当違い。俺のは外しても良いから、お守りは外さない。約束」

 「へ?」


 お守りに触れて何をゆーかと思えば、意外な発言。

 目が驚きを正直に伝え過ぎたらしく、「頭は大丈夫?」とにこやかに手が迫る。やまった。


 「もうへーき、まじへーき。じゃ、行こー!」


 立ち上がって、平気アピール。くらもふらもなく回復です!


 「約束は」

 「…はい、約束です」


 お守りの紐を揺らして、ぷーらぷら。んじゃ、予定通り大物のカーペットから見に行きまー。






 「うーん…」

 「それ、小さいと思うよ」


 店内でうんうん言ってます。市場にも良い物はあるけど本当に良い物は店の奥にある。市場より店だと言われて店に来たが甘かった。取り囲む枚数に圧倒されてる。


 「でも、触り心地が」

 「こちらはどうですか?」


 まだわっかい店員さんが引っ張り出してくれたのを試す。手触りで唸る。なかなか決まらないが値段の相場がわからないのも唸る! 値段を聞く雰囲気にならないのも困る! 適当な二枚を繋げて使おうと考えてるが… 量も多くて目移りする。柄より手触りを重視したいが目を引く柄もある訳で! カーペット選びで日が暮れそーで怖い…


 「傾向を理解したから、落ち着いて。そちらので」

 「はい」


 あれこれそれとチェックしたら、「またくる」と連れ出された。で、四軒回った。その内、一軒は外れ。四軒目を出たら、少し離れた所で意見の擦り合わせ。こっちを見てた店員さんに軽く会釈して、昼ご飯にgo!


 食べながら整理する事にした。んで、これまた予定通りに市場ご飯に行くのです。



 「金は気にせず、良いと思った物を選べば良いんだよ」

 「いやいやいや、それはちょっと。それにコーディネートがおかしくなる、推しの二つは並べると色が合わないだろうし」


 「三枚にしたら」

 「え」


 

 何を困ると言いたげな顔に、首を傾げて「絞り込むとは、どーゆー事だ?」と聞いてみた。




誰かの中で1に対する株が爆上がり。興奮から天井知らずのストップ高!

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