表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
183/239

183 夢に添い




 「…何の事でしょう?」


 一人の石化は割と早く解けました。しかし、俺を放ったらかしにしておりま。解けそうにない俺の石化を気にしないとか! 一瞥ぐれ〜しろよ、お前。


 「言った通りよ、何をしたの」

 「何も」


 「嘘をお言い」


 そこから言った言わない〜じゃなくて、やったやってない〜の水掛け論が展開され〜  うにゃあ。


 「私か、お兄様か? それなら私となるでしょう。どちらかが行うと見越してやったのではなくて?」

 「待って下さい、長時間でなければ俺もできます。石を使えばもっといけます! 心臓が潰れる思いを何故しなければ?」


 どちらも声を荒げない。

 黄金の善き魔女様と蒼い目の悪魔のバトルは冷戦です。そして、悪魔の正規看護は時間が勝負。一発勝負な助けは… 魔王様だと勝手に酔ったな〜。



 「ハージェ… 私はあなたの味方よ。だけど、ノイちゃんの味方でもあるの。だから、怒っているの。わかるわよね」

 「わかるも何も、姉さんを敵に回してどうしろと?」


 「なら、さっさと言いなさい!」

 「言えって… 疑われる事は  な、何一つとしてしていません!」 


 押されてます、完全に劣勢です。非常にお強い黄金の善き魔女様は俺の味方。俺の前で悪魔を糾弾するのだから、疑う余地もない味方でいらっしゃるのです。しかも、混乱と困惑が見える相手が口を開かないとなると〜 「実力行使が良くて?」とまで言われました。


 「ちょっ… こんな所で止めて下さい! 周り中に被害が、それ以上に彼が巻き添えになったらどうするのです!? そうなったら、姉さんでも!」

 「あら、あなたが盾になれば良いだけよ。逃げた時点でノイちゃんが終わるわ。逃げる事なく立ち続け、守りなさい!」



 ちょー、こえーーーーーー!


 怖さで飴玉飲み込みそーに! 善き魔女様は魔女なのでリアルに怖い。巻き込まれで死ぬとゆーあまりの恐怖に、二度目の石化に襲われました… しかし、このままだと死ねるので決死の解除を試みる。


 ガリッ、成功。

 ガリリッ、力溜め。

 ガリコリ、ごっくん。


 石化解除薬として多大なる貢献を果たした飴玉の喪失に伴い、尺取り虫が降臨。


 決行。


 うにうに移動に挑んでみたが、その場でもたもたするだけで、これっぽっちも移動できない… 気持ちに体がついてこない〜。


 仕方ないので安全ガードを強化です。蓑虫の更なる進化!を、希望しても毛布を握り締めるだーけ〜。外敵を前にしても動けない蓑虫… 計り知れない防御力… 暖かさとゆー防御でどこまで対抗できるのか!? 


 はれ? そーだ、駱駝様は? まだリアルではお会いしてない駱駝様、どーして助けて下さらなー? 


 「お黙り!」

 「姉さ! それは本気で駄目だって!!」


 ひえっ!


 お怒りである善き魔女様は俺の味方… 味方…  味方でも怖い。あのあのあのあの、そのカッコは何を繰り出されるのですか? ときめきと恐怖の比重は恐怖に落ちてー! 


 「話します、話しますから止めて下さい!」


 一名、グッジョブ。あ、仕事じゃねーな。





 「昨夜…  昨夜は、その…  ええと…  気付けた事実に現実を直視して、今後の為にも心の整理をするべきだと自分に向き合いながら寝ただけです!」

 「だから、その内容を言いなさい」


 「だから、それは!  …お、俺の個人の」

 「それだとノイちゃんがさっぱりわからないでしょう! 何を甘ったれているの!!」


 情けをどこかへ置いてきたらしい黄金の魔女様は、言葉でギリギリ締め上げ白状しろと責め立てる。逃げるよーに泳ぐ目がどこにもない救いを求めて右左、へにょ〜っとなる顔が可哀想だが俺のぐったりの原因らしいので助けない。


 がっくりと項垂れて、ボソボソ話し出しました。


 「俺のアズサと最後のお別れをしていました」

 「…お別れって、ハージェ」


 「だから、最後のです!」


 …魔女様の態度にカチンとくるものがあったよーで、やさぐれた雰囲気が漂う悪魔。これ、どーすんだ?と思ったら、魔女様のお顔もそんな感じぃ〜。



 ふいっと背を向け、俺に笑顔を。手が伸びて、額に触れて、もう一度にっこり。斜めった体を戻して椅子を少し動かして、ドレスをふわりとお座りに。


 優雅に髪を手で払い、目を閉ざす。

 閉ざした横顔から目を移せば、悪魔も雰囲気一変させてた。


 さっきより後ろに下がって下がって、足は肩幅、腕をぶらーん。天井を見上げて、喉を晒す。頭を戻すと目を開けてない。両手を腰の後ろに回せば蒼が出現。


 一旦、魔女様に固定された蒼は一呼吸で伏せられたが、舌は仕事を開始した。





 とても冷静で淡白な話ぶり。

 俺の希望が俺殺しに繋がるとか初めて知りました。なんじゃそら〜が、「俺は此処におりますが?」と嫌味を呟くのですが、言ってはならぬと噤みます。ええ、俺ではない俺なので容認するしかないのでしょう。イラッとするけどな。


 そしたら、何時か… 「それは俺じゃねーだろ」とムカついたよーな記憶が蘇り。


 蘇りは芋蔓式でリオネル君が掘り出される。記憶の中のリオネル君の口が動けば、思い出すのは彼の声。違いに、そうじゃない感を強く感じてえ〜    んー んんん?


 

 「召喚において名付けか明かし名かは、同じに見えて別物です。どちらであっても最初に相手を知る大事な鍵。他人はどうでも、その時の感動を忘れた事はなく。それでも、人は鈍くなれるものだと」



 静かな声は淡々として感動はどこいった感。対する魔女様にも感動はない。感動を求める雰囲気でもないが、俺が茶々を入れたくなるのはどーしてだ。




 「で、何を考えたの」

 「…」


 「だから、あなたの言うお別れに何を考えたか言いなさい」

 「大した事は」


 「実害が出ていてよ」

 「過去の哀切に泣いていただけなので」


 「具体的に」

 「寝て忘れました」


 「嘘、こうまではっきり言えるのに忘れるはずがないわ。あなたの一点集中と言うか… 諦めない心と言うか…  しつこさを姉様は理解しててよ。してるから、言っているのよ。最後のお別れなら尚の事、全部やり尽くしてから寝たのでしょ」


 黄金の善き魔女様は、柔らかくも冷たく輝かれる。密度が高い黄金だからこそ重たい言葉も平然と言える。純度が高い黄金のみが持ち得る強さを褒め称えよ!


 魔女と悪魔の対決は、性格をお見通しの魔女様が上。魔女様に勝利の女神の面影が見える…  あ、勝負あった〜。






 成功から終わりまでの追憶を周回。

 一周が大変短い思い出。

 

 手を引いた、水を飲みながら話した。中庭を突っ切った際に、見上げていたから気が済むまで待てば良かった。防具を持ってくれて、泣き言は言わずに。最後は恐ろしく男前でした。


 内容、それだけ。


 「その繰り返しです」


 俺的意見は、どーしよーも。

 

 「愚行は?」

 「悼みには不要かと」


 「…そうね、害意を抱くは悼みに遠い。嘆きを穢すは愚かなこと」


 魔女様達が真剣ですし、俺も真剣に聴いてますが…  


 「だけど、それだけならおかしくてよ」


 俺をチラ見した魔女様の言葉に、俺の半分が首肯し半分が首を傾げる。




 静かに続く睨み合いは…  違う、睨みではない! そう、主張を曲げない鬩ぎ合いは魔女様の軽いため息と「続きを」の声が断ち切ったが、悪魔はそれに反駁した。


 「黙りなさい、私が行うは真偽の為の詮議に等しい。返答がなくば、ハージェスト・ラングリア。第一と認めたあなたの権利の剥奪を進言します」

 「…な!」


 …せんぎってなんだっけ?


 「…彼は自分を頼ってきたのですが?」

 「どこに由縁があろうとも既に事は動いています。お父様のお返事はまだでも、お兄様は  エルト・シューレ伯爵セイルジウスはノイ・アズサに庇護を与えると、家に迎え入れるとされました。家の者が迎え入れる者を害するなどあってはならぬ!」


 「害する理由などない!」


 魔女様の激怒にビビりましたが悪魔も即座に激怒を返す! そこで姿勢を崩さない悪魔の根性すげーです! しかし、魔女様の視線がこえーです!


 「それを是とできぬ現状に憂いている!」


 魔女と悪魔の睨み合いは恐ろしい、まじでがちに恐ろしい。そして、言ってる内容にのーみそが「えー」としか言ってない。そんで権利ってなんじゃあ〜。



 「あなたでなくとも良い状態が整いつつあるのは幸いなのかしら?」


 『はて?』から言葉を噛み締めると、ギルツさんやオーリンさんに皆様のお顔が浮かびます。はい、とりあえず仲良くやっていけるんじゃねーかと思いますが。


 「…俺を彼から引き離すと?」


 感情が欠ける声にドッキリですが、躊躇いのない「そうよ」には『へ?』です。「危険人物を傍に配置してどうするの」と断言されると『うえ〜?』になります。


 ちょっと待ってな思考の途中で話を振られた。


 「死にたい?」

 「いぃえええ〜」


 「他人の欲を叶える為に献身して?」

 「きょーひぃ〜〜」


 本気で嫌だが極端な質問ではなかろーか?   …訂正、該当が無差別なら魔女様の言葉通りだわ。しかし、こいつの場合ではあ〜。



 「あの、体調を 崩し  えー えー、すみませ?」

 「ごめんなさい、その原因が愚弟にあると考えられるの」


 「え、まさかあ〜」

 「…絶対ではなくても可能性は排除するわ」


 「…そんな かのーせーは」

 「私は二人の味方でいるわ。だけど、現状に様子見はしません」



 俺の知らない内に物事が決まっていくとゆーのも嫌ですが、俺の目の前でどんどこ話が進んでいくのもあれですね。どんどん坂道転がってく御結びが土と砂利をくっつけて大きくなっていませんか?


 「え、あの するわけない  ってえ〜」

 「器にされた者もそう言ってよ?」


 「え」

 「その凍えは力の作用。巡る力があなたを殺す、それは「やってない!」


 「いいえ、あなたの力と私は視るわ。お兄様が即座に外に出られたのも、あなたの力とみたからよ。似過ぎる力で触れたが最後、どちらに引き摺られるかわかったものではないわ。あなたの事を思えば、お兄様がされるはずもない! していないのならば、話しなさい!」


 

 この激怒にショックを受けてた。

 違うと訴える目は徐々に力なく沈み、何かポツリと言ったが聞こえない。


 三呼吸ほど置いて話し始めたが、俺としてはその間も全くポーズを崩さないほーが驚異。なんとゆー躾。 …失礼、訓練の賜物。


 そんで在り来たりとゆーか想定内の話。


 追憶の先は生きていたら。

 その後の希望の語り。


 帰ったら、真っ先に披露するのは準備した部屋。気に入るかどうかの確認を済ませたら、風呂に入って飯食って、話しながらの寝落ちを希望。翌朝、成功の実感に浸る事から始めたかったそうです。家に慣れたら、町慣れ人慣れ外歩き。道を覚えて迷子を回避。道の覚えが悪けりゃ、店舗を重視。重視は食い物。そう、買い食い。

 

 そんな事をぺろろろろ〜んと感情を伴わない顔と声で話した。何故か俺の胸に広がる不思議余韻… しかし、魔女様は全く納得されなかった。

 

 「その程度とも言える話を言い渋った理由を」



 無常の風が吹くのです…


 ゴーゴーともビュービューとも吹きませんし、本来の刈り取りもしませんが、無常の風きたりの言葉がぴったりです。その風の果てには、『俺』がいました。ええ、俺に嫌われない為に噤んでおりました。


 「俺の何が不満?と聞かれたら、ありませんと答えます。じゃあ、どうしてそんな事を考える?と問い詰められたら… 心が泣いてもへつらうしか! それはそれで嫌でして!」 


 本気で本気の自重を計算と呼んでいいものか? 今後を共にする為の儀式は自分との〜 えー  決別? 常識が服着て歩いてるよーな理由でしたが、どこ見てるかわからん目が燃え尽きて灰になりそ〜です。しかし、話が進むと俺が刈り取られそーな感じがして怖い。



 だが、魔女様は微動だにせず。


 俺としては〜 ほんとーに召喚とゆー手段に未来を賭けてたんだなーとしか。誰もが使える便利な魔法ではないけど、確立されたもんなんだなあ〜って。


 妙な実感を覚えたと逃げておきます。



 「…寒くはなくて?」

 「え?」


 とーとつに話を振られた。平気と答えようとして、変に体が冷えてるのに気が付いた。俺の湯たんぽ様もない! 何故だ、どこだ、どうしてだ!? 行火様、懐炉様、シリカゲル(湿熱)様はどこだあああ!?


 はう、ステラさん! そーだ、ちょっと離すって…  うあー、足が届かねええええ! 



 「ハージェスト、部屋を出なさい」

 「…はい」


 「後で、あなたの荷物も移動させます。 …そうね、最初と同じくあちらに移りなさい」


 「え」


 声をあげたのは俺です。俺だけです。まじで進んでいく処遇の改善策が改善ではないよーな気がするのに、「命に関わる」と言われると「う」しか出ず、間違いのない改善だとされるのです。


 その改善に、俺の中で議する声あり!


 『納得できーん!』

 『本気だったから話さなかったんだ!』

 『待て、本気だったから凍えたんじゃねーの?』

 『今も寒い… さっきのは嘘か?』

 『違うだろ』

 『見破れないよーに混ぜたんじゃ』

 『魔王様と魔女様に感謝を』

 『待て、飛躍すんな!』

 『駱駝様、お休みで?』

 『しまった、洗うっつってやってねー! 拗ねちゃったー!?』

 『洗う暇はなかった』

 『今日は買い物の日だったのにー!』

 『そーだ! 第一希望に、目的が叶う素晴らしい日であったとゆーのに… どーしてこーなった!?』

 『あいつの所為か?』

 「あっちもこっちも本末転倒』

 『さよならこそが世界を変えるニュータイプにしんかあ〜』

 『ギルツさんの出番?』

 『もしや俺のチョイスでいーんか!? チェンジあり? ありありあり!?』

 『うわ待て、まさかの落としゲー!?』

 『あほ、お手は貰ったって』


 「それから、あなたの隊の者は選定から外します。あなたの為にと動く者を揃えられた事は良い事ですが、それが裏目に出るのは許しません」

 

 『ぎゃあ! まさかの絞り込み!』

 『え、残り何人? 三人っぽっち!?』

 『贅沢ゆーな』

 『あ? 残り全部で六人じゃね?』

 『うそーん』

 『一人、確実に除外だろ』


 「…諾」


 静かぁ〜な返事に、のーみそのざわめきが止まった。俺ののーみそ、あいつが反論するとおもーてたみたいで驚きで止まったらしい。代わりに、ぽろっと。


 『手ぇ 離した?』

 


 感情が抜け落ちたよーにも見えるが、あれは抜けてない。諦めに清々しさはない。ひたすら抑え込んでるよーな感じのほーが強い気がするが反論せずに受け入れたってえ事は、あ〜〜? 


 『…戦略的撤退は認めねばならない』


 『そうだ、魔女様は手強い!』

 『馬鹿め、魔女様に不敬だ!』

 『態勢の立て直しを容認!』

 『魔女様の攻略は一夜にして成らず!』


 身体が冷えてくる。

 せーしん干渉に蹴りを入れる駱駝様… これ、まじで何が原因?


 『戦略的撤退? なにゆーとんじゃ、あいつはもう負けてんだよ。それとも転進にしとくかあ?』


 冷たさが冷静なツッコミを可能にさせるが、くるっと回って反対行くんか? この場合、違う道を選ぶのでは? あいつが俺を殺そうとしたとは思ってないが責任を感じて手を離してバーイバーイ… 


 声を荒げる『そんなはずは』に、無言で『敗者』が重みを効かせたドロップキック。ぶっ倒れた所にフライングアタックでボディープレスをずどん!と決める。ジャスパーさんを敗者とゆーた、あいつは   受け入れるしかないとゆーたな。




 つべたい、ちべたい、この異常。異常がおかしい。ムカつきに凍える異常とゆーのは異状でおかしい。これ、おかし。おかしい。おかしいっつったら現状が一番おかしい! どーして俺のきぼーに逆行するよ? これ、逆境かー! 境がどっかで狂ってる? そーだ、絶対どっかで狂ってるー!!


 狂いの隙間に差し込む鍵は?


 鍵を回してガチャって流れを変えて  どこどこどこどこ、差し込む 俺の鍵はどこでしょー? どこに鍵穴あるでしょー?   どこがどこへどこをどこでどこにどこと〜〜〜〜〜  あ〜〜〜   もう、全部が お か し い  ん、じゃーーーー!!



 「ぎゃああああああああ!!」


 ぐるぐるがピークに達して叫んだった。

 毛布様剥ぎ取って、飛び起きて、叫んだったーー! 語らない真実で真実が伝わるはずがねえ!!







 …いえね? 床立ちで突如やってくる賢者タイム。異様に不思議なすっきり感。自分自身で戸惑っとります。目ぇぱちくりで何をゆーたらいーのやら。うにょーになる口で二人を見ると二人も変な顔してる。


 「…まぁあ、ノイちゃん!」


 それは、劇的。

 黄金の善き魔女様は早変わりの魔法でリリーさんにお戻りです。喜色満面で両腕を広げて〜〜 熱烈なハグを頂きましたあ!


 むぎゅっ!


 むぎゅむぎゅと当たる衝撃と顔を掠める金色にハグ返しも出来ずにおりますが、このフリーズに冷たさは感じません!


 「ああ、ああ!」


 ハグを解いたら俺を上から下へと何度も見返し、笑顔で何度も頷いて、くるっと転進。


 「ハージェスト!」


 今度は力一杯、弟をハグしました。弟の顔、まだボケてます。口を開けて呆然と俺を見てましたが、再度のむぎゅっに姉を見て、そっから早口で会話を交わす。


 「証明が「残ってない「信じ「疑いは「俺自身が「疑いを「姉さんは「したことに「一番に「でも「贈ってく「次は「あるはずも!」



 …はい、興奮冷めやらぬ姉と弟はわかり合えたよーです。めっちゃハグする辺り、仲直りの仕方もダイナミック。見てると恋人同士の仲直りにも見えます。今にも踊り出しそうな二人が雪解けキラキラ蒼い目で、頭と頭をこっつんこ。その体勢から繰り出す笑顔は素敵でも、俺は妙に力が入らない。足がガクブルのブルを始めてる。



 「「 初めての火花、おめでとう! 」」

 

 二人から祝福を貰ったよーだが限界、後ろに倒れる事だけは拒否。後頭部を強打し、背中と尻打ち、床へ転がる二度目の頭打ちの悲劇の回避する為に狙って前に倒れます。ますが、崩れる体を支える足は膝からイって〜   また打ち身ぃい!


 「みぎゃー!」


 前面、余すところなくズベりました。絨毯様のお力添えを頂いてもカバーし切れず。聞こえる、「うわあ!」「ノイちゃん!」の声に、もう起きんでもいーわと全力放棄。次に目が覚めたら絶対ベッドの上だから。誰かさんが運んでくれる、当てにしてま。


 早速、肩を掴まれたが疲労困憊意識飛ぶ。さっきの爽快感はどこいったー? 嘘っぽくて酷い〜。








 鼻センサーの起動で、ぼや〜〜っと目が覚めた。スーンと鼻呼吸すれば幸せな匂い… しかし、眠い。幸せなままに意識がとろ〜〜っと再び沈む中、小さな音が静かな空間に遠慮がちでも確かに響く…  擦れるよーうな何かの音。 これは…  おん?  おんおんおん!? 『そ』から始まる音ならば、これは!


 「 () はんっ!?」

 「あ」


 一人、飯食ってた。



 「   …起きたねー」

 「そこのあなた、どうして「あ」の後もしれっと食事を続けるのか? そこは食べるのをやめて来るのが普通なのでは?」


 「だって、美味しいから」

 「だーーー! 待ってくれてもーーー!」


 「既に遅い昼食です。先に食べてて良いと言ったのは君だし」

 「あー、また食ぅうー」


 喉がごっくん、舌のぺろりが実に美味そう!


 「安心したらお腹空いちゃってさー」

 「俺のご飯〜 俺もご飯〜  うええええ〜」


 「起きれない?」

 「あ? ふざけるなぁああ〜」




 「う、りゃ〜〜」


 ぷるぶる、ぱたん。

 これが全てです、これで全てです! 耐久時間は言葉通り。這い出ようとしたベッドから、力が出ずに出れないのです! 拘束具はございませーー!


 「ううう、ご飯が ご飯が  ご飯様がぁああ〜〜」

 「この肉、美味しいよー」


 「うぜええええ!」


 カチーンときたので掛け声と共に根性を発揮。転がってベッドから降りて這ってでもと思ったが、転がれもしなかった。なにこれ、酷い。俺を見ながら飯食ってるあいつも酷い。食い物の恨みは怖いと知れよ?



 「はー、食べた。お待たせ〜」


 全部食い終わって、飲み干して、ほう〜〜っと一息してから、やぁああっと動き出した。遅い!


 「俺も空腹抱えてお世話はできませんから〜  ね?」

 「みゃ〜あ、うにゃ〜あ」


 急遽、請求方法を変更。

 猫語を駆使して可愛らしさに必死を滲ませ、世話を頼む。




 「はい、あーん」

 「…」


 腕が上がらないので食わせて貰うしかないのですが、が、が、が。


 「それ、びょーにん食ではあー!? お肉はあーー!?」

 「美味しそうだよー」


 「えーー!」

 「君が食べないなら俺が貰うよー」


 「やめれ」

 「次のは冷めても美味しい米のご飯だよー」


 「きゃっほー」


 複数の野菜さんがタッグを組んでボディが不明な えー えー 野菜コンソメ?崩しゼリー、美味い。次のチーズリゾットさんも良い顔してるう〜。






 「もう無理?」

 「あう」


 「はいはい、無理に完食しなくていーから。水は?」

 「ん〜」


 食わせて貰って、口が満足。腹が満足。幸せに体が弛緩する。もう、どっこも冷たくない。


 「後でお茶を飲もうか」

 「え」


 「ん、薬湯の方が良い?」

 「ちゃっちゃちゃちゃ〜」


 「片付けるよ」

 「お手数を〜」


 こちらであちらと食器を片付け、ワゴンを押して部屋から出て行く。こればっかりは手伝わずにすまねーと思うができないったらできないのです。





 「さて、全て話して貰おうか」


 満腹からの眠気を払拭するのに渋く決めたが、へらった笑顔が返ってきたので迫力はないらしい。ざーんね〜ん。


 「はい、主原因は君です。俺の疑いはきれ〜に晴れました〜〜。ひゃっはーあ」

 「せつめーを求める!!」


 「その前に、改めて初めての火花おめでとう」

 「ありがとう。意味わからん」



 略すと、『あっちができたね、おめでとう!』だった。そう、内なる力の解放。初めて産声を… 花火にするんか、危険がみっちり詰まってそーだな。


 「待て、そんなん見てない」

 「こう、ざああ〜〜っと」


 手のひらジェスチャー、胸の前から横へと広げて上に向かってばーんざ〜〜い。


 「…したんだ」

 「うん、すっきりしなかった?」


 「…すごくした」

 「だよねー、だから倒れたんだし」


 「うあ?」

 「君の所に火花はあった?」


 「もちろん、花火は点火が醍醐味で」

 「え?」

 

 「え?」


 顔を見合わせると、何かが『ちん!ちん!』鳴ったので二人して間を取り、置いといてのジェスチャーで先に進んだ。



 「初めての慶事に対する礼儀です。その子が添わせた綺麗で可愛くて笑って眺めていられるものは放出からなる無秩序な美しさ。その儚さや元気良さ、何より子供にわかり易く火花としたとか〜  ほら、褒められて嫌がる子供はいないし」

 「待て、お前は確か… 垂れなが…」


 「本音と事実と建前と礼儀は、『混ぜるな、危険!』です。また落ち着いて、その様な事が言える事こそ幸せなのです」

 「うぬぅ… 大人の礼儀作法を出してからに」


 「さっきの綺麗だったよ」

 「…そっか? なは、んじゃさ」


 「はい?」

 「お前のはどんなんだった?」


 「俺? 俺は小出し派だったらしくて… その頃のほーが今より多かっ「わ、わ、わ、わ、わー」


 「いえ、大丈夫。育て易い子だと喜ばれてた」

 「うわーい」


 素敵な素敵な褒め言葉ね〜。事実が多面さんを引っ張り込んで真実さんを笑顔にさせて自分史実を下支えさせたんかー 良かったな〜。



 「で、俺が倒れたのは? 今も体がゆーこときかないのはあ〜〜?」

 「本気も本気、君が本気でやったからです」


 「へ?」

 「いやね、初めてには『盛大に』とか『よく見えた』が付き物でして。事実、俺のよーな小出し派がいるから本当の初めてと言うには怪しい場合もありますが」



 さっきから盛大にきゅぴーん!きゅぴーん!と鳴り続けてる俺ののーみそ… 過去の俺が叫んだのは… 子供の盛大な…  育て易いは、ほにゃららに?



 「もしや、この状態は!」

 「そう、その状態は!?」


 「本気のぎゃん泣きで盛大にライフ削って寝ちゃった子供」

 「大当たり〜」


 正解にパチパチと拍手くれる姿が過去と重なる。


 「俺は幼児か!」

 「紛う方なし、真実は一つ!」


 きらりーんと勝ち誇る顔に…  その決めポーズに! なんか、なんか、なんかああ!!



 しかし、説明は続くので文句に噛み付く心は抑え込み。


 俺がしたのは一気の放出。溜めに溜めた力を回して、ぐるって、どっぱ〜ん。小出しの経験も全くない初回でやったから、体に大きく負担が掛かって半分自滅。だけど、どー見ても花火。元々持ってないモノの放出で死ぬ筈もなし…


 「この動けない辛さを筋肉痛か成長痛のよーに語るな!」

 「似たようなもんだよ」


 「みぎゃー!ぐぎゃー!ふぎゃー!」

 「かわいー、かわいー、もっと鳴いてえ〜」


 「ち」

 「それはやめよう」


 横になってるけど、更に力を抜いて抜いて抜いて抜いて だっらーん!としてええ! はい、本番に息吸って〜 ぷーう。



 「やり方もわかんねーのに、どーやって力を溜めた?」

 「いやもう染まり馴染めの覆いで、順序を素っ飛ばして溜め込みの技術をものにした君が驚異です。筆舌に尽くし難い〜」


 「凄みにヌルさを返すなよ!」

 「え?」


 「せめて、かっこだけでも雰囲気出せよ!!」

 「うわ、ほんと君の余裕を見誤り」




 同じ見えて違う事は、全て結果に表れる。それは技術に長けた黄金の魔女様のお墨付き。


 「つまり、俺が同調したと?」

 「そう」


 「同調は同じ… 同じ… 同じに安心した俺が勝手にお前の力をもぐもぐしたと?」

 「そう」


 「食い過ぎでゲロったが、器さんへの押し付けなら全部ゲロできないと!?」

 「そうですが火花を嘔吐に変換しない。毛繕いで溜まった毛玉は吐き出すのが習性だと知っていますが、それはちょっとね〜」


 「ちょっと待て、人を完全な猫にすなー!!」

 「うっにゃーあ、にゃはははー」


 い〜い遊びの顔して猫の某ポーズを取りやがった…


 「…その砂掛け、やめいとゆーに! この理不尽をどーしろと!?」

 「基本、万物は流転するのです」


 「流転で死ねそーですが!?」

 「君のは飛ばし過ぎで転がり過ぎなだけ、速度超過はやめましょう」



 説明を理解できる俺の頭が憎らしい。

 しかし、筋が通るからとゆーて… 本当にこんころりーんの穴はないのか? 人様の家に通じる穴はないのか!?


 「俺は君ではない君の事しか考えなかった。君が彼を殺すと下した心の嘆きに泣いて従い、昔の夢を重ねに重ねて、最後の望みを吐き出すと。そこには後悔と… 決意が潜んでた。それは、「君を一人で泣かせたのか」と唸った記憶を蘇らせ。後悔が後悔にならないと怒り狂って喚き立てた。


 君が話した禁断の箱には希望が残ってたけど、俺の禁断箱には後悔と『希望』の顔した新たな決意が自主的に入り込んでた。最後にと添った夢にこそ、現実が詰まってた。


 閉ざし切っていた状態からの真逆の同調…  俺、このまま倒れても良いですか?」


 首を曲げて、ちょっとへにゃった顔を見せるから。笑顔で断る。


 「そのまま倒れて俺の腹を押し潰す気か。逆流は認めん、俺と同じく前へどーぞ〜」

 「えー」


 「えーって、おま」





 俺のできたは自信喪失させるらしい。「閉ざすで失敗した事なんて」と愚図られても。


 「…なぁ、寂しいや悲しいも同調?」

 「それは多分、俺の引き摺り。一口に同調と言っても意味合いは多種あって、覗き見的な場合もあるし、自分に呼応するものがあれば増幅とも言えるし」


 「わーい、俺の滝行かっこええ〜」

 「え?」


 目を閉じるだけで眠りの妖精がやって来る。


 「あ、疲れた?」

 「ん〜、なんか」


 「休んで」



 掛け直しにふわっと空気が取り込まれ、遮断。俺の意識もゆっくりと、遮断。










 夢。

 同調した、夢。


 沈んだはずの自分を見てた。

 さよならと沈めた水の夢はもう終わったはずなのに、寂しさと悲しさが込み上げて、なんでか涙が止まらなかった。


 そうか、あれを呼応と呼ぶのか。





 

 俺の夢を染めた。

 二人分の  あおい、いろ。

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ