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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
181/239

181 鍵は心か、心は鍵か

平成最後の更新です。

とても感慨深く。


そして普段より、ちょっぴり長く。




 「あ〜 からだがひーらーくう〜  ん〜〜    っとい! あぶね、薬瓶が」


 はい、外に到着でーす。大きく伸びをしてみましたあ〜。



 ジャスパーさんが心配で、後ろ髪を引かれる思いでしたが地下牢への階段口を目にした時点で終了。一瞬の棒立ちからソッコー無視って早歩き、追い着き追い越せどんどん行け行け。


 「先に行く? それとも後にする?」

 「先いくー」


 はいはい手ぇあげてジャスパーさんポイ捨て、サクサク階段登りました。振り返るなんてとんでもない。登ったら、アーティスが尻尾振って待っててくれた。



 しとしとぽつぽつ降る雨は、待っても止まなそうな感じ。もう夕方かあ、地下から出ると夕方になるのが基本でしょーか? なんか一日、損した気分…


 なんて思った俺はすごい! まだ余裕がある!! 新たな問題が発生したが、最大の問題である命の危機は遠ざかった! せんせーも見習い君も卵ちゃんも、皆々様が楽になる十分な保証が付いたのだ!!


 有意義な午後の地下時間でしたあ〜。


 


 「ウォン!」

 

 「アーティス! 雨だ… よ。 っても行くよなー」

 「それは行かないと」


 一声吠えて駆け出してく。

 雨を物ともせずに、ごっきげ〜んで軽やかに〜 水・泥一緒に跳ねてくよ〜。



 「なぁ、俺… アーティスと散歩に行けんのかな?」

 「は?」


 「なんか… 一緒に行くのを諦めて、捨てられたよーな…  誘うだけ無駄って見捨てられたよーな…」

 「考え過ぎ」


 ポンと肩叩きされたけど、逆になんかねー。


 「じゃ、小雨だし。こっちも走って行こうか」

 「うあ、フライングー! まぁてぇ〜〜」


 小雨の中、飛び出てたのを追いました。


 「え、お二方!」

 「あ! すませー、もういってまー!」


 他の牢番さん達へ伝達指示を出してたオーリンさんを置き去りにしよーとしてましたー! 緊急停止で振り向くと。 オーリンさん、はえー! 後ろを取られたかと思えば「行きましょう」と追い越される。ひどー。




 「ふぃ〜」

 「はい、お疲れ」


 「ありがとー」


 部屋に戻ってマットで靴裏、ペッペッペ。貰ったタオルで顔を拭きますが足がつべたい… スボンの裾が濡れてます。ブーツでない俺だけが、こんな風にぃい〜。


 しかし、着替えの前に後の予定を話します。一人は執務室にgo。一人は着替えて夕ご飯まで部屋待機で休みます。なので、残るお人は交代の休憩時間入ります。


 一人だけ可哀想な感じですねー。


 「ちょっと読み込んでくる」

 

 さっさと行くので、その場で見送り行ってら〜。そんで、オーリンさんがにっこり。


 「茶でも入れておきましょうか?」

 「自分でできますよー、風呂出てから飲もうと思うんで」


 「湯上りでしたら、先に淹れて冷ました方がよろしいかと。ああ、冷水を貰ってきましょう」


 サクサク進むオーリンさんを慌てて止めて、お茶をお願い致します。その間に俺は着替えの準備。ズボンの裾を折り、靴下を脱ぎ、足を拭き、室内履きに履き替え、雑巾を取ってきて靴を拭いて干しました。それから犬笛、お守り外して〜 ネックレスも外す。水回りに貴重品は置かないのです。


 濡れ物と着替えのズボン等を持って洗面所へ向かえば、お茶の準備の音がする。



 なんか贅沢ですねえ〜。


 持ってきたのを別分けし、浴室覗けば綺麗です。肌触り的確認をすれば何処も彼処も綺麗でぺっかぺか〜な垢と無縁の浴槽さーんが誘うので、シャワーをやめてお湯を溜めます。


 ジョボボボ…


 「よし」


 適温を確認。

 流れ出る良い音に誘われて、俺も同じ音を出しときます。トイレ、トイレ〜。





 「お待たせでーす」

 「いえ、ちょうど湯も沸きました」


 タパパパッ…


 慣れた手付きで湯を注がれて蓋をする。鼻歌でも歌い出しそ〜な、顔。


 「本日は途轍もなく貴重な体験を有り難うございます」

 「へ?」


 「担当時間の幸運とも言えますが、とても…  とても貴重な金では買えない体験をさせて頂きました! 最後に恐怖を感じなかったと言えば嘘ですが、自分は完全に無関係で馬鹿はしないと心に刻めば、後はもう興奮の坩堝! 恐怖が興奮の糧になり!!」

 「オーリンさん…  つよー」


 「いえ、自分の力は大したものではなく」

 「いえ、俺はホラーは恐怖でしか」


 「恐怖に目を閉ざすのは危険です」

 「うわあーん」


 恐怖を乗り越えろとゆー輝く笑顔に、のーみそが反射信号を発したので急遽努力の笑顔で対応します。内心は見せずに話を逸らす〜。





 「いえ、自分は入れません」


 オーリンさん、無糖派でした。スティックぐるぐるもしないそーです。


 ポポポポッ…


 お茶をカップに半分注いで貰って終わりです。序でに早く冷まそうとポットの蓋をずらしたら、それはお代わりの合図だと教えてくれました。にゃっは〜。



 「何かあれば、お呼び下さい」

 「はい、オーリンさんも休んで下さい」


 お見送りに廊下まで行って、「お疲れ様でーす」しました。笑顔で手を振って、ドアをパッタン。そこで扉を背にずるずると座り込み頭を抱える…


 「拙い、ひたすら拙い… 金魚憑きをどー説明したら…   はうっ! お湯はどーなった!?」


 

 慌てて駆け込みました。


 ズベッ  ゴツッ!


 「あたあっ!」


 慌てたんで内履きさんが脱げ、打ち身が増えた。泣きそうに痛い。





 「はあ〜〜 良い気分〜   悩みも溶けて流れて消えてしまええ〜〜」


 湯船でぜーたくしておりまー。いやもう、ぎりぎり溢れずにすんだ。頭と体を洗って水量減らして入ったが、俺が入ると元通り。いーねえ〜。


 「ぷへっ…  あ〜、ジュリ金魚ちゃんが憑いたと思われるが要確認。下手な話で不安にさせるのはアウトだ!」


 バシャン!


 湯叩き判決いい感じ〜。


 「基本は外に出さない。しかし、外出希望は叶えるべき。何よりジュリ金魚は武装した。クロさんも安心してお使いに出せるとみた! そーれ、ばっしゃん」


 バシャッ!


 「お使いと散歩は別。許可制で遊びにいく魂の金魚… なんかかわえ〜。しかし、金魚の知識は侮れない。夢渡り… 人にできない事も魂ならば可能なはず。そーなると、何時かはどの子も夢渡りできるよーに? 夢で会いましょうの夢追い金魚」


 

 たーましいの〜 きんぎょっ が かーらだを〜 ねっらっいー  かーらだの〜 ううえで かーなしぃばーりぃ〜〜 がっちーり、しばあって ごーまんえつ〜うー  きーんぎょ〜 はっ そろりと てーをのーばす〜



 「かかかかっ 金縛りにしてからの触りほーだい! 夜毎悪夢を見させ、体力に気力を奪って体を乗っ取るのはセオリー! 待て、ジュリ金魚は好意持ちだ! そんな乗っ取り劇な    ぎゃあああ、成人向けエロ夢がセオリーに!?」


 ザパッ!


 勢いよく湯船から立ち上がり、恐怖に口を開けて固まる。そして、気付く。


 「いやいやいやいや、マイナス思考に回してはいけない。ジュリ金魚ちゃんは男前だ、これからとゆー未来を疑ってはいけない。そーだ、志に道半ばとゆーナンバーツーの金魚に失礼ではないか。ふははは!」


 ゆっくりと浸かり直しに沈みます。


 「それに恐怖も興奮だとゆーた。ジュリ金魚を叩ける人だから、きっと乗り越えられるでしょう。夢の世界で金魚に跨り、揺さぶり、昇って絶景ぜっちょーできるでしょう〜  はあ〜〜」


 ため息か極楽か、よくわからん息が出ました。鯉幟を思い浮かべて縁起担ぎで帳消ししといた。






 ジャスパーさん、どーすべ〜。


 チャポ…


 「本気で考え、本気で対応した。だから、俺を追ってきた。本気だったから、俺は本気で恐怖して  本気だったから、クロさんが怒ってくれた。怒って叩いて追い払った。問題は、それが一過性でなかった事だ。しかし、それは本気だったから」

 


 本気本気本気。

 みーなさんの〜 ほーんーきぃ〜  鍋の中で回る本気は、ぐるぐる混ぜても混ざりませーん。調和の取れない出汁なんて、ほんとに不味そう。


 「今回の重要性を考えれば。個人ではなく、社会全体と受け止めると。  猫が狙った玉遊びで全てを引っ掻き回したと考えるのが妥当なのか? 猫が我慢をすれば…  あの程度の奴らと切り捨てシカトしていればあ〜  三人は生きていたと」


 湯船の中で考える。

 良い湯加減では茹だらないので煮えません。






 「あー、終わり終わり。今日は終わり、仕事は終わり。あ〜、向こうが覚えていようがいまいが関係ない。煩わしい心配とは言わないが、それよりは手筈をだ」


 頭を切り替えれば、思考が足を鈍らせる。


 「はあ〜」


 ため息が出る。

 

 誰だよ、時間を掛けて話し合えば分かり合えるなんて言ったのは。時間を掛ければ掛けるだけ、次々と問題に課題が浮かび上がって肝心な話に辿り着かねえ! あれから何時まともに向き合えたのか? 


 出てくる課題を読み解いてばっかじゃねーか!


 小さな事からこつこつと取り組む事は得意だが、ガキの頃からやってはいるが。何か、何かこう…  方向がズレてきた気が!



 「最重要課題(名前呼び)に取り組んでいるつもりで、何かがおかしい! くっそ、自然体で呼ばれてえ〜  こつこつ進んで「君、お前」が定着しそーな現実が嫌だ。俺は嫌だああああああああ! 熟年でもなんでもねー!」



 頭を抱えて廊下でしゃがむ自分がどうしようもない。こんな所で叫んでも解決しない。ぼーっと廊下を眺めて、二人で遊びに行ってる所を夢想する。買い物巡りに食事をしたり、騎乗の練習なんかして〜


 「遊びから始めるナニかが本当に遠い… 好きな物を後回しにする意味がない… あ〜、もう! 気力は尽きぬ泉じゃねえっての! 尽きない様に自己調整に補充(癒し)を掛けて湧く泉にさせんだよ。それを〜〜  キレるぞ、俺は。    はぁ、行くか」


 ベッと吐き出しても補充はない。断じてない!


 「あ〜〜 何時までも、湧くと思うな  気力のいずみぃいい〜」


 語尾に力を入れて立ち上がる。

 立ち上がれ、俺!


 「そうだ、行こう。何がなんでも行こう! 行ってアズサと楽しむんだ!」


 見え隠れする未来の一つを固定して、絶対に行く!! その為に、まずは染め粉の確認からだ。






 カチャン。


 「戻ったよ」


 聞こえる水音に、そっちかと首を向けつつ寝室に行く。





 ピチャッ!


 「ううむ… どーしても反省点が見えない、反省する点がわからない。しかし、三人は潰れた。それが現実。どこで何をどう回せば俺の気持ちを維持したまま、この現実を回避できたのか?  う〜〜 」


 バシャン!!


 「う、ぎゃーーーー!」


 バッシャ、バシャン! バチャチャチャチャ!!




 上着を脱ぐと楽になる自分の泉の目減り加減に上着を落としたくなる。が、落としても放っても面倒。箪笥の取っ手を掴んで開ける。


 ガチャ 「あ?」


 手を止め、水音が?と訝しげば直後に響く悲鳴と水音。


 「アズサ!?」




 「連打連打連打連打、れんだあああああ!!」


 ジャバババババッ!!

 見よ、俺の高速突きの水飛沫を!


 バンッ!

 なんでこんな水音してんだ!



 「そして、こいつがトドメの究極奥義!」

 「まさか溺れっ!?」


 ガボッ!

 しまった、少し多かった! くうっ!


 ガッ!

 湯に沈んだ猫の顔が、人の顔にぃいい!



 「どりゃああああ!!」

 「待て、何が!?」


 バッシャァアアアアン!!



 「…あれ?」

 「………あ?」



 桶にお湯を掬ってばっしゃんさせたら、誰かさんが頭からばっしゃり水難に見舞われました。何時の間に戻ってたんでしょー?


 桶をそろそろ下にしてナニを隠す。そのまま突っ立ってると静かぁ〜に風が流れてくるので寒いです。こそ〜〜っと桶を盾に湯船に沈んでみました。


 お湯の中でも不思議と寒い。悪魔の熱視線は冷凍ビームか? そんな目で人を見てはいけません〜 no、no、no!




 「で、君は風呂で何をしてたのかな?」

 「いや、単に風呂を堪能してですね?」


 湯船の縁に両肘着いて、組んだ手に顎乗せて、間近で悪魔が魔王の笑顔でこっちを見てるとか、なにこのごーもん? 湯船からの脱出ルートが見えません。


 「じゃあ、俺も今直ぐ堪能しようかな」

 「待て、ココで脱がんでも!」


 「濡れた服をどこで脱げと」

 「うやあ〜、それじゃ俺が出てからで〜」


 「いえいえ、君に堪能の仕方とゆーものをお教えしようかと」

 「だーーーー!」



 ベチャ!


 悪魔が悪魔の姿を一枚脱ぎ捨てても、そこには変わらぬ悪魔があ!


 「大体、あなたは風呂で遊ばないと約束しませんでしたか?」

 「あれは猫、俺は人!」


 「のーみそは一つ!」

 「俺は遊んでなー!」


 迫り来る魔の手と勝負です!


 「俺は水の浮力に重さをりよーした筋トレをしてただけ、だあーー!」

 「そーなんだー」


 「うおおっ!」


 湯船に沈む体力勝負は危険です。このままだとガボゲボしそーです。うああ、もう茹だる逆上せる倒れます。はい、出ますんで代わりに入ってくださー。


 「あっれ〜?」

 「ぶにゃー」


 「しまった、猫の可愛がりを間違えた」

 「おま、そこ言う」


 「それはそうと俺があげたのは?」

 「逆上せる… 俺はあがるう〜」





 




 あー、ぬる茶ごくごく美味しいでーす。

 茹だりましたが気を利かせ、あいつの分も淹れときました。俺は気の利く人間でーす。


 「はあ〜」


 座わって飲んで一息すると、ぐたーっとしてくる。首を後ろ倒すと首筋に気配。タオルに吸わせて、もっかい頭をわーしゃわしゃ。


 「ぐはあっ! 茶じゃねえ、着替えの服と靴を持って行ってやらねば!」


 慌てて寝室へ駆け込んだ。



 そこでポイ捨ての憂き目に遭ったと見られる上着を発見、救出、介抱、安静にさせといた。








 待ち時間はだらけたい。


 「ふあー」


 なんか欠伸も出た。ベッドが恋しい。しかぁーし、待つ。出てくる音が聞こえたので、キビッと立ちます。カップ&ソーサーを手にドアへと向う。正面は危険なので横を選択。


 「お待たせ」

 「へい、どーぞ」


 茶を献上した。


 「…あれ? わざと過ぎたあ?」

 「まぁね、ありがと」


 ナチュラルにソーサーごと受け取らないのが微妙です。ううむ、しまった予定外。執事さんごっこは向いてませーん。立ち飲み待ち中にも、また欠伸が出るから横向きに。


 「眠い? なら、先に休んでも」

 「いにゃ、そんな事は。片付けするし」

 

 「眠いなら俺がやるから」 

 「だいじょーぶだ、俺がやる」


 ゴッゴッゴと全部飲んだ。


 『味わってないぞ、お前』と『手ぇ掛けさせて、わり』と『一気飲みのほーが美味いよな』が頭を付き合わせると、二対一で丸め込んで終わり〜。


 自分の分も、お盆に乗せて片付けに行く。シンクに置いたら横から手が伸びて洗い出す。あ、と思うが少量なので、任せて俺は拭き上げる。二人でやると早い。


 「行こう」

 「ん」


 ベッドに上がって転がり伸びたら、なーんか言いたげな視線を感じたのでもっと寄るかと転がって反対向いて視線を回避。






 「うあ?」


 起きたら、部屋は暗かった。

 隣はいない。


 掛けた覚えのない毛布様を剥ぎつつ、鼻をひくつかせたが美味しそうな匂いはしない。残念。


 「今、何時?」


 部屋を出て隣を覗く。

 見た状況に、やっちゃったあ〜。


 コココン、ノックで気を引きます。


 「ああ、起きた」

 「ごめ、ご飯」


 「いいよ、食べようか」

 「起こしてくれて良かったのに」


 「起きなかったよ」

 「ええ!?」


 食堂ご飯がテイクアウトになった理由にうひょーです。俺、起きなかったんかい。



 待機中のワゴンさんから銀色ぴかぴかの蓋を取りますと、蓋の内側を滑る水滴と美味しそうな匂いが同時進行。テーブルとお友達のマットさんを敷いてくれたから、俺は取り出したご飯様を並べる。


 「今度から先に食べてくれていーから」

 「もう少し待って、起きなかったら食べようと」


 そんなこんなと話しながら、いただきまーすのにっこりさん。冷めても美味しい豆のスープに、にんまりにこにこ!



 最後の締めは黒薬湯X。

 啜ると口が嫌がるが… 飲まねばならぬ!なのですよ。


 「ごちでした。この薬湯だけど、せんせーがさ」



 俺の難問が解決された話をうっきうきで話した。ら。


 「ああ、そっち… そっちはあ〜 厳密に言うと犬猫ではない証明だから。他の何かを疑い、人である証明とは成らないとする〜〜」

 「えええっ!? 俺はどー見ても猫ですよ!」


 盛大に拒否っといた。


 「いえ、人です」

 「それはそうです」


 だが、受け取った人間ののーみその問題と言われると〜 人っていやぁね〜みたいな。


 「他に方法あるん?」


 黙って、ちょっと眉を顰める。

 考えてるのはわかるが表情は固定で読めない。


 それが何かと言わないままに見送られ、薬湯の採用が決定。のーみそ問題を片付ける方法は幾らでもあるとゆーから、より楽な方を選んだと思われる。そこで精神攻撃を連想する俺は、お金ばら撒き口封じ系より良いのか悪いのかわかりません。



 「なぁ、話を聞いて欲しい。あ、眠くない? 眠かったら明日でも」

 「平気、聞くよ」


 二人で夕食片付けて、ワゴンを押しながら話します。話を優先させるから感想文はお休み。廊下に出して、ドアを閉めたら続きを話す。


 「ちゃんと聞くから、こっちで」

 「あ、うん」


 寝室に向けた足を戻します。



 「全員が本気だった結果、こうなった」

 「そうだね」


 「考えれば考えるだけ、ちび猫の行動が問題に思える。猫が行動しなければ、その先にあっただろう未来を考える。絶対の未来ではないと思っても〜」

 「そこまで考えて出した自分の心を否定するのは反省とは違う」


 真顔でさっくり肯定するのに、どこかホッとする。しかし、ここで安堵しても解決にはならない。しかし、とても耳に優しい〜。


 「だけど、どうしても『三人が』だよ」

 「あのさぁ、君はどこを反正と考えてる?」


 「ん?」

 「だから、反正。彼らがそうならない、なる前の正しい状態に返したいなら起点は?」


 「いや、だから猫に出会う前の」

 「だから、そこがもう違うって」


 お互い、じーーーっとみる。

 

 「逆算。三人を潰したのは、あいつの選択。その選択を否定。選択そのものの原因を追求。そこにはクロさん。クロさんがした理由は君。君の理由は三人。三人が主原因。どうしてそこで終われない?」

 「…年齢かと。だが某有罪判決は受け入れたので、それだけではない。 やっぱ、猫の姿が」

 「その猫に何をしたのでしょう」


 「そうなんだけど…  あー、他も色々考えはしたんだって! やられてたら問題は発生しないとか、お前とも会わないとか! そーなったら、お前も悩まないとか!」

 「無知者の幸せに持っていかない!」


 分岐予想で、こっ酷く怒られた。



 「関わりを拒否しない点で優しいとは思う。反正を求めるなら、あいつが引き受けない所まで持っていかないと」

 「待った、そこまで遡ると反省も成長も経験値も空っぽに! チャラにならない現実さんをどこへ持ってくのだ!」

 「まぁねー」


 その軽さで終わると獲得値が一切ございません。無為より有為を選びたい。


 「完全な反正を捨てて良いなら」

 「何ですか! あるなら出し惜しみしなーい!」


 に〜と笑うから、にゃは〜と返す。笑顔の息は合うんだけどなー。




 「君は知識が足りません。だから、経験が結びつかずに周回する。だけど、相談してくれたので適切な知識を渡せます。この現実を変える知識ではないけど、君自身に今回の反省を求めない知識にはなる」


 すんげえ良い笑顔に後光が眩し。

 しかし、この現実に反省しなくて良いだと? それ、自分を正当化して済ませるダメダメさんみたいでね?


 

 「猫が動かない未来。約が実行される」

 「えあ?」


 「だから、あいつが持ってきた時点で契約が発動」

 「…待て、ジャスパーさんは切れたと」


 「うん、言ったね」

 「じゃあ」


 「じゃあ、どうして切れた契約が読めたのでしょう?」

 「うにゃ?」


 「君はいなかったけど、強制展開は聞きましたよね?」

 「はい、セイルさんがさせたと」


 「切れて終わって使い物にならない。なら、どうして展開できる?」


 真面目な顔に真面目に考えると、脳内フローラで猫がゴロゴロ遊びながら「あるからにゃーん」と返事した。







 「そう、あるから。展開は繋ぎとは違う」


 腕捲りから実演が始まりますです! 大喜びで隣に座り直して、うっきうきです!


 「あ、疲れてない?」

 「大丈夫、わかる様にやるから見てて」



 片手握って前に出し、人差し指を宙に向け、五指を開く。広げた手の上、少し高い位置で小さな光がキラリ。


 キラリがツルリと滑り出し、場所を広げながら難易度高そげな踊りを披露。終演したら起点に再び光が生まれて、キラッと輝き、新たな光のダンサーがキラキラキララン踊られます。次々とソロで踊る光のダンサーズ。軌跡で形がはっきりしたら、ぎゅーっと凝縮。誕生です。


 私をみってー、な感じで小さく可愛くぴっかぺか〜。


 「これをこう」


 指の動きに従って、光の文字が腕に着地。


 「契約時は互いの力で構築するから、また違った感じになるよ」

 「おお、おおお〜」


 「で、切れた状態ってのがこう」


 指の動きでスパッと一線入ります。右と左に別れてさよーなら〜。ですが、文字は読めます。いえ、見えます。なんて書いたかわかりませー。文字だと思うんだが…


 「土台は自分の体。だから、無理にでもこう」

 「あ、右のが薄れてくー」


 「刻みは留めるだから、切れても直ぐには消えません。隠すだけ。隠しても皮膚を叩けば赤くなるのと同じで叩き出せます。ですが、普通は叩かれただけでは出ません。意思の元に見せるものです」

 「…技術?」


 「そ、叩き出しは技術。単純にぶっ叩いたら読めなくなるだけ」

 「解放のお手伝いでは?」


 「…基本は、ね」

 「その顔、何かこわ」


 そうこう話す内に右に別れた文字さん、永遠にご機嫌よう〜。


 「消えて薄れる、それは流すとも言う。俺は少ない分、代謝は早い。早くても少量の水で大量の泥水を押し流すのは難しい。もしもを考えると刻みの約は嫌いです」

 「あ〜、そんな顔しない〜」


 ポンと肩叩きして慰めとく。



 

 「さ、ここから」


 左の文字さん、うようよ踊り出しました。うそおー!


 「構築に入ってたら修復が始まる」

 「ちょっと待てえー! 切れた理由はどこいったあー!!」


 「根性いーよねー」

 「ちょーっ!」


 「で、あいつがやってたのはこう」


 踊る左さんを真っ二つ。

 元に戻ろうとしますが結びつきません。切れた箇所が滲んでぼやけて手を結べない。


 「この手の類を仕込んでた。契約は互いの前で結ぶ。だから、腕が良い。そして用心深い、一人でやってきたと豪語するだけはある。どこで覚えたんだか」

 「へ? 学校とか」


 「こんな裏モノ教えないよ」

 「えー」


 「子供に教えてどうするってね」

 「わ」


 じわじわ食い荒らされた文字さん、お顔が薄れてさよならです。溶解事件が終わった後は綺麗な肌さんのお戻りでーす!



 それから、隣の視線が一点止まりに。

 一々気にしてたら、やってられない手の甲は俺が維持してるんでしょーか? そーですね、こんなの子供に教えたら善悪関係なくやるわ。


 ぜっっっったい に やるわ。


 やらんでもいーよーなことにまで やっちゃって  信頼なんて言葉を捨ててくわ。





 「次に発動を」

 「うあ!? なんで同じのが!」


 「二重掛けです」

 「…あなた、できる人? それとも当たり前?」


 「あはは〜 できるよー、とっくに限界突破してるけどさ」


 あっかる〜い声で指輪見せるのに、顔だけで笑い返したったー。ちょっと困るう〜。




 腕に浮かぶ文字がスーッと消えると、変色が始まった。


 「これこそ内容が問題。一番簡単で効果的なものは力の阻害。的確な罰で報復、人生潰せるからね。あの約は重かった。重い約は報酬が高い反面、反動が大きいのも当たり前。それでも切れたら、少しは「いやいや、それと止め。止め止め止め!  ぎゃーーーー!」


 「いだーーっ! だだだだっ!!」

 「止め止め止め止めーー! 爪立ててんのに何で止まんねえーーー!」


 「似非似非似非似非!これ、似非だから! 見た目だけの、い  だあーーーっ!」



 ギリギリしてんのに、何で消えねえんだよ!!






 「うや〜」


 現在、某箇所をさすさすしております。キレーな湯上りの玉肌に俺の注射爪の跡が残ってる。もっかいギリってバッテンにしたら、蚊に刺された時の痒み止め(効能無し)と同じになるでしょう〜。 …違う、これは予防注射だ!


 「痛かったです」

 「じーさんでの経験が… 形にならない知識が俺を突き動かしたのです!」


 「あー」

 「ごめんなー」


 腕に広がる発動は石化でした。石化に見えました! 実演を通り越した本物にしか見えず… 頭ん中は悲鳴に染まり、『解除、かいじょー!』の緊急警報に従い鍵を探し… 緊急自身速報以来の警報音に心臓は耐えても、のーみそがぐるったらしく…


 ぐるう中でも、『できる事はある!』と叫んだ猫せんせーが冷静にぐるりながらぶすっと注射をしたのが真実だと… 思いますです…



 「こんな時こそ握力勝負を」

 「しません」


 「しろよー」

 「やだよー」


 「えー」

 「えー」




  


 悩みが尽きませんが、それは置いといて。


 結論。

 ちび猫が請求しない未来の先には、ジャスパーさんが運を持ってるか・いないかの未来がある。


 「あれは重い刻みだから不完全でも必ず発動する。あの女は従属を優しいとした。では、即死は免れると聞けば?」


 脳裏に浮かんだジャスパーさんは血塗れで、腕を押さえて呻いてた。肘の先がないよーな、あるよーな…


 「制裁を下しても物は相手に渡ってしまう。全体を阻止する為には?」

 「ぎゃー、ジャスパーさんが自爆したーーー!! 周り中に、とび ちぃいいいっ!!」



 あんまりな話にぶるぶるです! 楽しいお使いじゃなーーーーーー!!







 だがジャスパーさん、ちゅっどーん!説で気付く。


 唯でさえ死ぬ確率が高い橋を人は渡るでしょうか? 渡りませんよねー。切れて、隠せて、繋ぎの防止までしてたんなら、それこそ、あれを慰謝料にトンズラこいて二度と帰って来なかったらいーんじゃね?ですよ。


 「なんで逃げずに」

 「できてたからだよ」


 「あう」



 しょーがないんで三人とブツが残った場合に話を進めた。


 「現物確認の有無で対応が変わる」

 「確認?」


 さすさすを止め、頭に指を当てて思い出す。木陰に隠れた忍びのにゃんこの盗み聞き。


 「落とし、た。騒いで…  開けて確認… そうだ、した。あいつら、確認してた。だから、三人で笑って降りてって」

 「なら、有罪を。あんなモノに笑い合えたのなら事後は無関係としたんだろ。それはシューレがどうなっても良いと判断したとみる。心を殺して立っていた子供ではないから、君に力を振るえたのだし。子供の善悪は流され易く、心は向きたい方を向きたがる。だから、感情が先に立つ。考えなかった、思いもしなかった、従っただけ。そんな言葉で無罪はやれない、放免など考えられない」


 「いやでも、ちょっとま」


 きつい言葉に別の未来もあるはずだと模索したら、三人が取り扱いを間違えて自滅する未来がhitした。周辺も大変な事に。


 「そこで運が転んで何かが重なると、高確率でみたいなものになる」

 「ぎゃー! 黒い物体から一瞬の覚醒の声(助けて)がー!」


 「うわ、よく気がつくねー。えげつないの平気なんだ」

 「いやー、ないないない!」


 「悼む心はあっても、みたいなものには嫌悪が先立つ。死ですら、どれが正解なんてわからない」


 死の正解ってなんですか?

 のーみそが自分自分と言い出すから、ため息で返事。こんなので自分はどうだ?なんて考えたくない。



 実践の方が楽しい年頃だと思うし、俺でレベル上げしよーとしたし、最後は希望に賭けるとかゆーて突っ走りそーなタイプだった気もする。女の子を含めて。いや、あの子の方が押せ押せで…  応援してたね。



 「君が請求した事で他の未来が潰れた。確実に潰れた。そこにはシューレの大地が潰れる未来を含む。猫の手が安全を運んだ。力を持たない猫だから、約に触れずに上手に歩けた。


 あいつが、もし、本当に、心から、あの玉を使ってはならない物だと考えるなら、猫の手があいつの体を守り、心を守った事になる。気付いても、気付かなくても、理解しようとしなくても、そうなる。大地を潰した現実を重責と受け止める心なら、より、そうなる。


 猫の手が守ったもの、それは  」



 俺にくれた言葉は心に沈み、広がり、形を変えて、灯りになった。


 

 「それにね、あいつでは処理できない。それだけの力はない。頼めば足が出る、放置は大地を殺す。持ち続けるは愚策。心から案じる程、己を秤に掛けるだろう。引き受けた時点で詰んでいるんだよ。 ふふっ」


 

 『本当か? 本当にいーんか!?』

 『にゃっはー! 猫の行動は正しかったあ〜』


 灯りと共に広がる猫の歓喜がしつこい疑いを足蹴にしたが、鼻で笑う悪魔に声が出ない。ジャスパーさんがぐりぐりされる未来が見えた。



  


 仮の未来の考察は、俺の心をしんどくも楽にした。引っ掛かり続けた『猫だったから』は、猫のビクトリースマイルで泡雪です。泡雪には蜜が合う。かき氷は美味しく楽しくごちなのです!


 「まだ検討は要りますか?」

 「いえ、もう十分です。 …善悪も感情も様々に立つ先を、猫は気分で歩いていこうと思います」


 にーっと笑い合って、自分の手を見る。消えないこいつも何時か違う形になる。なるようにやってんだから、なる! 為す! 成し遂げる! だから、願望スキル『招き猫』をのーない発動。猫手で幸運を招いて、少しでも早く良くなあれ〜。


 「あは」

 『終わってないにゃ〜ん』


 フローラで猫が尻尾振り振り見てくる隣で恐怖様が寝そべってらっしゃった。『あ、出番?』って、こっち見た。うぎゃあ。





世界猫歩き 〜 にゃんぐるみで歩こう 〜 



ちび猫は家猫です。

ホームから散歩や遊びに行った範囲が世界になると思われます。


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