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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
178/239

178 だから、それさえもわからずに

以前のペースに戻したいのですが… 目がしんどくて、むーり〜なのが自分でも  あー。







 診察を終えよーとも、今は睨み合いの最中です。邪魔はしないで下さいよ! ちょーーっと息を吐いただけ。それだけで鼻で笑いやがった、どちくしょう!


 テーブルの上にいるから、当然相手は下に見る。だから、それは仕方ない。しかし思考はダダ漏れで、猫を下に見てますよ! そんな中で目に付く手首の制御環。腕組みしてる胸元で、きらりと光って自己主張。 …それがなんでか不思議なお洒落さん。


 なんでお洒落に見えるんだ? 誰よ、あんなスタイリストしたの?  うにゃー、腹が立つ! 猫爪、出し出し!


 「なんだ? 黙ってお前に引っ掻かれろってのか」

 「ぎにゃー!」


 猫冷静が飛ぶー! 飛んでくー、飛んでけええ!



 「ふ、ふぅうう」

 「け。何してんのか、わかってんのか? こいつ。 あーあーあーあー、ご機嫌取りが要るってか。めんどくせえなぁ」


 「ふっ かぁあ〜〜」


 尻尾ぺしんすっぞ、てめー!


 「はい、こっち」


 パンッ!

 

 「みやあっ!?」 タンッ!

 「はい、そこじゃない」


 「うにゃっ!」  パシッ!

 「違う、そっちでもない」


 「にうっ!」   タシッ!

 「…だから、こっちだって。わざとしてる? そんなに尻尾揺らしてさぁ…  ほら、アーティスが心配するよ」


 「みゃ? う、うみゃ! みゃああ〜」


 あー、危なかった… 馬鹿猫になるとこだった! うわあああ、アーティス心配させてごめ… いやいやいや、ちょっと待て。それ、心配してるんか? 違わねーか? かっこいーぞ?



 ま、いっか。

 はい、落ち着きましたの大人猫!


 相手は鼻で笑ってちょーはつしてくる大人です。猫が大人にならないと、はーんけっつも出ませんね! にゃんけつ振っても出ないしさー。それにできる大人はシカトしません、致しません。致さぬ事が正解です。そうです、大人は冷静に。話し合いをしないのです。大人は冷静な騙し合いから、にゃんぱんちを繰り出すものなのだ! 対応の一つとして、『そんな事もできないなんて、やる気あんのか? お前はよー!』てなもんでしょう!



 そんじゃまあ。


 にゃーんぐるみ〜  ぺいっ!



 テーブルから飛び降りながらの解除です。こーゆーのは初めてですが、できるはず。はずなのだから、しなくては。テーブルさんはお立ち台ではありません。



 タッ…


 「お  っとい」


 無事に靴底、床を踏んでいけました〜。しかし残念、方向ズレてた。だから踵を軸に方向転換、ぐーるり回して正面でーす。



 「ただーいま〜のご帰還でーす」

 「ん、お疲れ」


 「ヒュン!」


 ヘッヘッヘな嬉し顔で寄ってくるのに、頭から抱えてぐーりぐり。


 「お待たせ、アーティス。すっごい良い子で待ってたな〜。偉い偉い偉い〜」

 「ヒューン」


 カタン。


 「どうだ、疲れは?」

 「だいじょーぶです」


 「はい、こちらを向いて」

 「あいっさ〜」


 横に来たレイドリックさんの指示に従い、立ちまして、両腕広げて身体検査。ぽんぽぽぽんっと手が叩いて滑って、「問題ないですよ」。


 今回は大袈裟なスキャンはございませーん。



 「そうそう、俺のぶん〜」

 「もう冷めたでしょう」


 「冷めても、これがいーのです」


 カチャンと取って、鼻息すーん。

 胸いっぱいに吸い込む香り、は、ほとんど飛んでた。しかし気にせず飲みます、ごっくんごくごく。


 「ふはー」


 俺の為に淹れてくれたお茶を飲まずにどーしろとゆーのでしょう。しかし冷めてしまった所為でしょか?


 口の中に渋みが残る。


 渋みが、舌の上に広がって 広がって 広がってえ〜  後味悪くて残念です。でもま、何時まで〜もは残りません。残ってもしゃーない、唾液流し。







 猫が人形に。

 言葉を聞き分け、理解する。

 特定の人間の言葉に我を抑え、甘えた声で鳴く。


 話をする。

 会話が成り立つ。


 召喚獣。


 空間に、証。

 光が散り、痕跡を残す。


 召喚特有の、力の証。



 「そうか、それで。 それで、か。 だから、兄弟仲も良い訳だ。は、なぁーるほど。人の同意を得ずに契約を強制展開するお貴族さんの弟にしては、やけに力がないなと思っていたが… そういう事か、それなら納得だ。力がないのは仮初めか、擬態の罠か。一度成功すれば後は簡単とも、複数持ってりゃ維持がどうとか聞くしなぁ。そうだ、能力が高い奴ほど力を食うとか食わんとか。そこんとこ、どうなんですかね?」


 俺の体に刻まれた赤。


 道理で式がおかしい訳だ。どれだけ読んでも読み切れねえ。そりゃあ、新式も旧式も関係ねえわ。「使いの式如きに!」と罵って、片っ端から試したところで  ああ、意味が。


 混じりの意味が。


 『だから、』に続くそれがわかっていたら。それさえ先に読み解けていたら。そうすれば、俺は  きっと、潰さずに。 …畜生、俺が費やした年月返せよ。それとも、俺の知識の無さが問題だってか? 


 ああ、ああ、腹が立つ!

 今も貴族のでかい力に惑わされ、間違いを犯した。腕の痛みが思考と判断を鈍らせた! 落ちた光に結界干渉の応用型と… 俺の知らない式だと思えた。それで流した。それらの重ねが…  誘導か? まさか… まさか俺が誘導されていた?


 いや。

 それがどうでも、俺は根本が違うと聞いて 知っていた。知っていたのに!


 同じ課題、同じ結果、同じ過程であっても契約の根が違うと! 最初の振り幅が違う召喚獣は、人との約が混じって体系が読めなくなる事があるってえのは   〜〜こーゆー事かよ!


 獣の力。

 人の想い。


 それを混じらせ(盾に)、意図的に読めなくさせる獣。それができる獣に、できない獣。召喚主の力の違い。根の繋がり。必要な時にだけ、回す力。回せる違い。その場限りで跳ね上がる特性。


 無秩序には得られない、証の獣。


 

 「そんな洒落た金の掛かるもん、俺の周りに飼う奴はいませんからね」



 現状。


 媚びるか、死ねか。

 それなら、三択で情報だ。


 反射でぺらりと言葉を返して、多少なりとも掴んでやらあ。そっから、少しでも優位に。このままで誰が終わらすかよ、クソ貴族が!




 「はあ?」


 俺を見て、視線外して、俺を無視する。そんであっちに聞く。しかも聞いてる内容に、あんたねえ!だよ。


 「自分がナニ言ってんのか、わかってんの?」


 思いっ切り馬鹿にしてやろーと思いました。そしたら、品定めを通り越して睨んできた目に思いっ切り憎悪をぶつけられた。一気にボコられそーになる感じ  を、きれーに躱して流します。受け止めませーん。



 「人形が取れる契約獣、一段上の召喚獣とは思いませんでね。人形での会話も可能。それはそれは、ええご立派なこって。それなら尚の事、何も装着していない事が問題だろが。それともやっぱりお貴族様は、特権翳して最低限の決まり事も無視して良いってな話かよ。そんなんされたら下っ端は、ど〜うやっても敵いませんが? まぁ、初めから眼中にもないってんですかね。


 それとも、何で? こいつにココの粗探しをさせてたって事でいーんですかね? それなら俺が殺し掛けたと誹るのも、俺を威嚇すんのも間違いだろが。ヤられる可能性を排除せずに出した、お前らの驕りの所為だろが!!」



 ガチ吠えした。

 吠えた。


 吠えられて心臓、ドッキン。


 「俺だけが謝る、おかしいじゃねーか」


 無条件降伏ではなく無条件逃走に入り… たくなる自分に蹴りを入れ! 『だめだ、萎むな反論しろ!』と叫ぶ心の声に手を上げて! 


 はい、持ってるカップが危険です。


 反射で投げ付けるのも落として割るのも危険です! 危ない危ない、あー、危ない。俺は理性の人なのです。ビビりではないのです。単にでかい怒鳴り声が嫌いなです。それだけです。それ以上でもそれ以下でもないのです。ええ、そーれーだーけ〜〜  なのです。

 


 カッチャン…


 割って大変な物はテーブルに。


 それでは狙って近付きましょう。

 お怒りモードには、お怒りモードで対処する。負けはしない。 はい、息をスーッと吸ってえ〜 吐き出す感じからのぉ〜。



 「あーなた〜の〜 言い分を〜 たぁ〜しかに〜 聞きましたあ〜。 んで、俺の何処が獣? あ? この、俺の、何処が、 けーもーのー ですかあ? 言ってみろよ」




 割り込んで、やっすい挑発をする口調と言い分に目を細め。

 

 他人の獣を直視する注意点を思い出すが、今更過ぎてどうでもいいと観察を続ける。見える範囲に獣相も歪みもない、わかってる。爪、皮膚、短髪から覗く耳。向かい合う瞳孔にも見当たらない。どれだけ見ても不明だが、手にうっすらと感知できる力。


 頭を掻く素振りで視線を遮り、流し見る。二人の不動を捉えて腕を下ろす。ナニかあるのは、わかってる。しかし、これ以上嵌められるのはごめんだ。



 「それは?」

 「…これはちが、これは違う。カウント外です」


 「はあ? 相手に見せずに違うだあ? そらまた都合のいーこって。人様に物事問うならよ、すっぱり全部脱げや。おら」

 「だーーー! こんな寒いトコで脱げるか、ボケ!」


 「だったら、ふざけたコト抜かすんじゃねえよ!」

 「誰もふざけてねえよ!」


 「ああ? こっちはお前の為に、こんなもんまで嵌めさせられてんだぞ!」


 突き出して、ぷーらぷらと手首を振って見せたのに。のには、「そりゃー、仕方ないだろ〜」とのーみそ呟きます。大声で「当たり前だ!」と切り返したいが、俺の理性(小心)が「それはちょっと… すいません」と言ってしまう… ああ、これだから俺は。


 外しちゃダメよの必需品。

 だから、だからだからだから〜 これで下がったら俺の馬鹿さが決定する。してしまう!


 「だから、そっちじゃなくて俺が獣かどーかの話です! 勝手に話をズラすなあ!」

 「誰がズラすよ、全部見せずに見ろってかあ? ああ、いーとも。そっちがそー言うなら、ぜ・ん・ぶ、見てやろうじゃねえか? あ?  後でガタガタ文句言うなよ!」


 「見れるもんなら、ちゃんと見ろー!」


 怒鳴り返しましたら。 ら。 即座に腕組み解かれて、片手がぐーになりました。表情笑顔で唇片方持ち上がる。『この人、いやー』な悪役笑顔にビビります。


 俺、なんか間違えた?


 そんなはずはないですが。それに皆さんいるから大丈夫。 なんてゆーのは生でしょか? 殴られた後では遅い、生。そうそう、生のナマナマです! 目の前、泡立つ沸騰ナマ加減! そんなんきっとマズくてヌルくて美味しくなー。あれ? 前もこんなん思ったよーな?


 でも、こーんな時に「冷静に話し合いを!」なんて言えません。それは第三者にお任せ。怒りの沸点落とした時点で負けじゃない? どんな形でも土俵から降りたら、負け。それ、絶対。ぎょーじ軍配差し違えなしで覆らな〜い。



 ジャスパーさんの目が怪しく光る事はなかったが、何かこう 雰囲気違う感じになりました。 …まぁ、真剣な顔もするもんですね。



 じっとじーっと見てきます。俺もじーっと見返します。


 「横を向け」

 「へ?」


 「見辛い」


 はい、横向いた。


 「…だからな? か・ら・だ・を、横に向けろと言ってんだよ! 顔だけ向けてどーするよ? 人を小馬鹿にしてるのか?」

 「……最小限で的確な行動を取っただけだとゆーのに! 視線を外せと聞こえるだろが、言い方が悪い!」


 怒鳴り返しながら横向きましたー。


 「自分が今やってる事を察して理解しろ! 頭の悪い召喚獣が」

 「だから、違うとゆーてるだろが! 正しく理解す「ああ、はいはい。わかったわかった、悪かったよ。後ろ向きな」


 「……くっ!」


 くそお… 謝ってない口調でも、先に謝られると! 背中を向けての深呼吸。「くふはあ〜〜」と吐き出す正気は瘴気になって勝機を失う笑気に変わっちゃったりなんかして〜〜 にゃはん。


 鬱憤、吐いときましたあー。



 

 次のコール待ってますが、なかなか声が掛かりません。そーいや、背中を向けるって危なくないか?と気付いたが。 そんなん今更。 そーいや、後ろの人は入った時から…  ずーーっと腕組みしてたっけ。


 はて? この腕組みポーズ…


 もしや、手出ししませんよアピール? それとも手出しちゃなんねえ自衛ポーズ? いや、単なるカッコつけとか。


 「横に」

 「おー」


 はい、間違えませんの横向き結び〜 終わりの一回転まで、あと一回。






 空っぽになりそーでならん頭を、ちょっと逆に回します。


 この人は、保護者で監督者。

 教えたとはっきり言った以上は先生でもある。


 周りの目がなかったら、さっきのぐーぱんで俺は殴られてたか?


 『ぼーりょく、ぼーりょくぼーりょくぼーりょく 暴力はぁ いけません〜 何があってもぼーりょくは いけないんですう〜』



 ぼーりょく。

 それは感情に伴って振るわれるもの。


 今は遊びの嬲りは関係ない。それをすると此処にいる全員にボコられる、人目がある。それでも皆の前で振るうとなると、それは感情の発露がさせる訳で。


 つまり、ナマ。

 ナマ感情。


 勘定弾く、それもナマ。


 「腕を前に上げる」

 「ほいよ」


 両腕前に突き出しますが、手のひら重ねて隠します。してから気付くが、これはアウトか? 確認アウト? 手袋は外してないけどね?


 そろ〜り気持ちズラして、指重ね。



 ズラしたが誰も何も言いません。しなくても良かったよーな気が。いや、これは自主性が。理性の自主は自首ではない! あれ?  自首とは自ら行動す  ええと… ポイ捨て。



 

 理性の会話が成り立つ大人がぶつけてくる生の声。


 喧嘩、突っ掛かり、どん詰まりの対応。


 ……人が、そう、どこかの、誰かが。そーゆー時には、上手に、躱すのが良いと言ってた。それに関しては俺もさっき躱した、つもり。ですが話は続いてま。続く以上は躱してなくね? 打ち切ってなくね?


 さっきの、ばーか〜に対する躱しなら。


 『そーなのそーなの、わたし馬鹿なの、ごめんねえ〜』


 こーやって勢いを削ぎ、上手に躱す。これで打ち切って、そそくさとその場を離脱。うむ、これなら躱した感じです。感じはするが、態度と口調と年齢で煽り文句になるよーな。おちゃらけ遊びでない場合、これで躱すの良策か? 手法であるだけ、根本解決目指してない。寧ろ、激怒狙いじゃないですか? だって、相手はナマな訳だし。


 つか、躱すってえ〜 その人に向き合いませんよ宣言でないの?



 「もう一度、後ろに」

 「ほいよ」



 じょーずにその場をやり過ごし、せーいかーいを導き出せ。西海にじょーどがあるとかゆーてたが、とーかいはないわ〜ってな感じのよーな導きはてんくーのお星様からきっらーんな光?


 全てに向き合ってたら身が持たない、だから躱す。それも常識。それでも宣言するなら宣言するに足る相応し〜い相手ってえ事でえ〜 ふははは。



 感情が引き起こす、ぼーりょく。


 それが絶対に許されないものだとするのなら、それは生の感情を見せない。向き合わない。向き合わさない。向き合わさせない。絶対条件は、与えないコト。


 感情を封印する。



 底に沈み、溜まる感情。


 歪みが生まれ。

 歪みを意識。


 戻りたいと泣いて。んで、暴れる。 暴れるは連鎖か、潰れるか。潰れたくないから、暴れる。やっぱり、連鎖。


 「片足立ちできるか?」

 「おー」


 上手な対応。

 感情の一つに絶対を課し、重しを乗せて否定する。


 どう考えても、なにその縛りゲー。糞ゲーじゃない? 俺、ぼーりょくで死んだけどぉ? 無差別な暴力殺傷事件で俺が死んでも、まだ『ぼーりょくはいけません〜』としか言ってねーのかな? それとも、そっから進んだんかな?


 まぁ、俺が死んでも世界は変わらず。

 変わらずに、陽は昇っているコトでしょう。 


 …昇ってないと、ねーちゃんがやばいから昇っといて。天体ショーで止めといて。


 

 だけどさー、喜怒哀楽の怒だけを省くって酷くない? 感情の仲間外れはイジメでしょー? 根本からの欠如要請って、相手に向かって指差し『歪め』と囁き呪うにひとし〜


 「くっ!? くぅううっ!?」


 こ ここここっ けっこけここけ、転けますがー! 


 「うお〜」


 片足尾翼をあげまして〜 バランスと〜って 両腕広げて ひーこうき〜。 ぶーんと世界を ひとっ飛びぃ〜  風をうーけて、右へ左へ角度付け〜。しかし、地面とあ〜しは お友だちぃ〜 決してあなたと離れない〜。 そーです、私はカカシさん〜  一本あ〜しで頑張るよ〜。 いえいえ、これは忍びのにゃんこの続きです〜  人間バージョン、良い感じぃ〜。



 「つか、もう終わっていー?」


 カカシしながら振り返ったら、生温い目。なんか馬鹿にされてる。証明しろと言われたとーりにしただけなのに。


 「ああ、お前召喚獣だわ。絶対だ」

 「…はあ?」


 顔見てたら、めっちゃ殴りたくなった俺はおかしくない。





 「だからな? やってる事に意味はないと、人であれば直ぐに気付く。それを馬鹿正直にずっとやる。召喚主にしか懐かなくても、どんな獣も周りは気にする。状況の把握が生存に繋がる。その為、主でなくとも許容範囲なら言う事を聞くのが普通だ。 …馬鹿じゃない限りな。周りが幾ら安全でも言われた事を黙って実行し、尚且つ内容を考えない。ぼーっと言われたままに行い、最後は気が逸れ、遊びが入って本性が出た。わかるか?」


 「…考え事をしていただけだ」

 「はあ?」


 「あの短時間で、お前には計り知れない高度な思考を こうしょうなる思考を回していたのだ! それが真実だ!」

 「……へぇえ〜」


 馬鹿にする顔に、さっきの思考を悔やみたい。理性を支えた俺の  いや、悔やんではならない! 一片の悔いで自分に負けるなんてあってたまるか!


 「そーか、そーか。んじゃあ、他にも言ってやろうか? 獣相は見えねえし、お前の気配も掴み難い。その辺は無力のもんと似ているが、本当にない奴はこれっぽっちもねえ。その点、お前は違う。確かになーんかありやがる。そこに、お前以外のもんがある。だから、召喚獣だ」

 「…はああ?」


 「弟の方で間違いない。俺は色目で見ねえ、類型で判断し、そこから分類する。強さが邪魔をするが、そんな目眩しには引っ掛からねえよ。多いのは弟の方だ。手放さない為に重ね掛けもするんだろが、お貴族さんは身内で回すってのもあるらしいしな」

 「はぁ?」


 内容を反芻し、今までの行動を当て嵌める。


 「まぁ、その常識の無さが召喚獣だと言ってんだよ。気付けってのも可哀想なもんか」


 ギリギリギリギリ、座ってる人間二人を見た。


 二人とも真面目な顔でいたが、その真面目な顔にモヤッと感。騙された覚えはないが、何時かの「話せない、ごめんね」が、のーみそぐるうと更に広がるモヤッとさん。んで、何時の間にか更に後方移動を済ませてたオーリンさんとギルツさん。元金魚ちゃんは意識不明のままだが、せんせーとレフティさんがじーっと見続けてたのに広がる理性が鎮静発揮。


 両手を腰に当て、ぐーぱんを誤魔化す。胸を張る。息を吸う。自己主張する。


 「この、むちもーまいな輩が抜かすなあ! 見たものを見たままに言うだけで世界が全てを容認するとおもーてか!? そんな訳ねーだろが! それとも、全てを見抜く真実の目の持ち主さんですかあ? そーんな人には見えません〜、経験でレベルアップする観察眼こそが真実を見抜く目かもしれませーんーね〜。 へっ。 じょーしきとゆー固定観念に囚われたマヌケが言うこったあー!!」 


 怒鳴ってやったら横向いた。

 但し、向く前の睨みがキツかった。


 「あーあーあーあー、難しい言葉を使える賢い獣で良かったですね。で、俺に何を見せたいよ」


 俺を相手にしない、この根性。


 「こ、の… 新しい情報を得ても、のーみそアップデートしないとか!」

 「ああ、なんだ? そこら辺のガセネタを俺が見分けられねえとでも言ってんのか? は」


 「か〜〜〜 基準がズレてる事にも気付かない、このお馬鹿さん! 脳内フローラ咲き乱れてやがんのかぁ!? いやー、のーない繁殖は手に負えません!」

 「うるせえなぁ」


 「せんせー、何とか言ってよー! こいつに俺が人だと言ってやってえ〜」

 

 


 俺を指差し、騒ぐ声。騒がしく。騒いでいた。

 それなりに、笑って。


 あれらが。

 部屋で 賑やかに。



 潰れた、俺の手駒。


 赤。赤。赤。赤。 赤い。


 この身を這う、赤。

 召喚獣の性質。



 俺は、何処でしくじったよ?



 貴族共だけが 平然と。







 なんて酷い。


 せんせーが「おお、おお」とかいーつつ俺をぽんぽんするが、人であるとは言ってくれない… レフティさんも黙ってて… ああああっ、そんなんで俺の主治医が務まると思ってんですかーっ!?


 あ、ごめんなさい。サブでしたね。


 「せんせー」

 「はい、べーして」


 「べー」


 ここで診察されても。


 「はい、あー」

 「あー」


 「うんうん、声の張りも元気なっとる。まだちっといかんが良くなった、よしよし」

 「わーい、黒薬湯Xぐっばあ〜い」


 「それは飲みなさい」

 「え?」


 「どえらいもんを見たが、ちゃんと人だぞ」


 無事、ハンコがぽんっと押されたですよ!




 「あからさまなぐるに言われてもよ」

 「はあ?」


 腕組み、流し目、呆れた口調。

 全く変わらない態度。好ましくないです。あ、せんせー速やかに移動するんだ。



 「なぁ、どうやったら人が魂を扱えるよ? 夢物語な夢見て、みてえなもんにしちまうのが落ちなんだぜ。誰も成功なんざしねえ、するはずもねえ。それが神の領域なんだろ? それをあんな風にしてよ… 俺に刻んだ呪いなら、まだ理解できる。だけどよ、アレは違うだろ? 流れの、道が途切れてるもんを誰も渡りとは言わねえよ。お貴族様はナンの実験をしてたんだ? あ? 


 元とは言え、此処は祈りの王の場所だってのえに。


 だから、俺もあのブツがおかしいと再確認に剥いた時点で足を止めたんだぜ? あんなもん、王の場に持ち込むもんじゃねえってな。それをお前ら  …初めからか? 初めから、そのつもりなのか?」


 淡々と喋っていたジャスパーさん。黙ってしまった。


「 …魂の、実験を? まさか、王の場である事が前提 なのか? それなら  いや、それさえ誰にも気付かれな け、れば    は、ははっ…  はははは! 他の貴族達が知ったら、なぁんて言うんだろうなあ?  信心が  人の心がわからない、めでたい頭のお貴族様かよ!」



 …大変静かです。皆さん、何もいーません。そんでジャスパーさんが最後に犯罪者的な笑顔を見せました。この人ってばアゲアゲで、俺をとーり越してえっらいコトをいーだしました。どーやっても人認定しないよーです。



 「どうせ、これもそのまんまにする気なんだろ」


 此れ見よがしに腕をぷらぷらされてもねー。俺の気持ちをどーしてくれる? はいはい、そこでセイルさんに振るなよなー。そっちの見立てで話を勝手に持ってくなっての。


 「おい」

 「あ」


 目の前に〜 はい、立ちまして〜  『ぼーりょくはあ〜 いけません〜〜』  そーですそーです、にーっこ笑顔で  ぼーりょくはあ〜 はい、理解ですう〜。 ぼーげんはあ〜 それ、理性ですう〜。 ですが、許しは与えませー  はい、せーかいはあ〜 心ですう〜。 時に錯乱 致しませーっ  きゃっほーう。



 手を上げて、顔面に指を突きつける動作に小声からの〜〜


 「 (鈍いと、)死ぬぞーー!!」


 べちーんっ!


 「ぶっ!」

 「目え開けて寝るなぁああ!」 


 ばちっ!


 「こっ!」

 「くたばるぞーっ!!」


 右から左で、更に右!


 がしっ!


 残念無念、最後の右は不発です。三回目になると不意打ちにはなりませんねー。でもって、手首がっちり捕獲されたああ〜。両腕頑張っても筋肉負け〜。


 「…人が真面目によ」

 「手より先に足が出るのはカエルの こーーーーっ!」


 げしっ!


 「がっ!」

 「そーなんを確認! 信号の受信に救助を試みるも失敗! 尊きじんめーが花と散「ふざけるな!」


 「みぎゃー! 今日のおやつが抜きにー!」


 




 ヒドい。


 ココのかんきょーはヒドすぎ。お部屋にいるの、もうあきた。お外で遊びた〜。んでも父ちゃんの兄ちゃんのそばならあったかくて、まだぬくぬくできるからいい。


 こーゆー時は父ちゃんじゃダメだ。


 でも、そこんとこツツくと父ちゃんしおれるから言わない。そーゆー時は、だまぁって離れるのが一番。何でもないよの振りして他のヤツんとこ行く。火ぃ吐けるから、寒さには強いつもり。だけど、上手にやらないと腹減りになって困る。その点、兄ちゃんはすっごくいい。遊んでくれるし、へーきでくれるし、なくならない。いつでも、いっぱい。怖い時もあるけど、すっごく優しい。


 今も優しい。

 おやつくれた、んまかったあ〜。


 父ちゃんも母ちゃんも、なかなか呼んでくれない。呼んでよー。俺を仲間外れにして、ヒドいー。まぁ、他のと一緒にいたけど。用事してるのわかるけど。俺、ココにいるんだけどー もー。


 なでなでで終わったと思ったら、まだ終わってない。上がりたいのに、どーでもいー奴が何かと頑張ってるよーだ。もう終わってんのに何をわかってないんだろう? わかんねーなら、俺を見ろよ。


 見ても見てないヤツ、にぶ。



 そっと見上げる。

 黒い手は出てない、よかった。あれは怖い。


 「…向きな」


 あー、もうなに母ちゃんに言ってんだよ。なんで母ちゃんがお前のゆーコト聞かなきゃいけないんだよ。母ちゃん、ゴキゲン斜めだぞー? なにしたいんだ? こいつ。


 あの新しいのは、わかってる。ちゃーんと俺に挨拶してった。あれが正しい姿なんだぞ。なのによー。  …他のみんなも、ちゃんとわかってんだろーか? ココの下に行った時も、みんなして母ちゃん見てたけど。ナンかあったらすぐ助けるよ、だけの目じゃなかった。あれは獲物を確認してる時の目だ。ほんと確認だけだったけど。


 よく、わかんねー。

 なんであんな目で母ちゃんを見るんだ? そんな必要ないのに。


 「あからさまなぐるに… 」


 ぐる… たしか、みんな一緒って言葉。そーだ、前にシメた奴らは「みんな、ぐる」と言ってたから間違えてない。いっしょは同じ。同じだからシメた。つまり、頭わるい も  いっしょ?


 いっしょ… 


 いっしょ。

 いっしょにわるい。だから、わからない。みんな、頭わる。残念。



 でも、みんな知ってるはずなんだけどなあ? うーん… 父ちゃん、ちゃんとみんなに言ってた。みんな、その話こそこそしてた。だから、母ちゃんのコトわかってる はず… それに俺がいる。なのに… なーんでわかんないん? なにを確認したいんだ? わかんないなら、自分と比べればいーのに。


 比べたら、わかる。

 いるか、いないかの二つ。他にない。


 なのに、なんでだ〜?


 ん?

 あーー!


 ムカムカしてきた。お前、母ちゃんになに言ってんだ! なんで母ちゃんが我慢しないといけないんだ! お前より母ちゃんの方が怖いのに。お前より母ちゃんの方が強いのに。怒ったら、すっげえ怖そうな黒い手も怖いけど、そうじゃないのに。 やっぱ、にぶ。


 俺がいるのに。


 ちゃんと ここに (眷属) が いるのに。


 

 そんなコトさえわかんないのが 俺の上、な、わけない。 ばーか。


 

 べちーん!


 「…ぬぞー!」


 うわ! 母ちゃん、やさし〜。そーだよね、鈍いと死ぬよね〜。



 「…おやつ抜きにー!」


 え?

 …ええっ!?


 「グ…  ゥォルルル(母ちゃん)ガアアアーーッ(おやつーー)!」



 馬鹿は せいばいー! 


 

 「アーティス!?」

 「待て、アーティス!」


 ガッ!


 「ひっ!」

 「わー!」


 ドタッ! ゴチッ! ドスッ! 


 「うお!」

 「ぐえっ! えー、いたいー  げぶっ」


 こ、の 一番下っ端がぁ! なにわざわざ母ちゃんに手え掛けとんじゃー!! 


 『してはならない』


 この簡単な、最低限のことさえわかんねえ下っ端は引き摺り回して仕込んだろか! おらあーーー!



 「アーティス、待て!」


 だいじょーぶだ、とーちゃん。一発ギメなんて狙ってない。いつもの傷物ていどだよ! それよか母ちゃん! こーゆー時は母ちゃんに!


 でないと父ちゃん、捨てられる!

 母ちゃん行ったら俺も行くから、父ちゃんほんとに一人になるよー!



 「アーティス、引き摺るな! そいつの足がアズサに!」


 え?


 …がっぷり、食いちぎっちゃっても〜    あ、お口  ヌルッってえ〜。



 ゴリ。


 咬み直し、当たり前。



 ゴリリ。


 うっさい、黙れ。母ちゃんがこわする!  …口ん中で火ぃ回したろかな? 俺、器用だしぃ〜 あ、そーか! みぃんなやってた、しけつぅう〜。  あれ、ちが? しつ、しけ  …しつけだっけ?


 ……ふふふん。俺、やさし。







久々の国語辞典


笑気… 笑う気配。だったら、とても可愛らしくて推奨したいのですが違います。一酸化二窒素です。


あの書き方ならサラッと読めたかと。なはー。




本日の遊びは二つです。


では、問題。


黒犬はガブッから思考を回しました。

心に芽生えた『優しい』は、黒犬にどんな思考を巡らせ行動を取らせたでしょう?


一、純粋に止血行為。 ←傷害行為に全く気付いてない。

二、局部的、お肉やきやき。 ←傷害を理解。仕置きを含めた、止血行為。

三、傷害からの明確な殺人狙い。

四、止血に見せ掛けた眷属としての大盤振る舞い。

五、優しいを追求し始め、何もせずに終了。

六、取ろうとした行動にstopが入ったので、不貞腐れて現状維持。 ←暫く、ガブッたまま。気分は「俺、優しいのに!」




…黒犬の言い分をカットしたら、『飛び掛かって引き倒した、ガブッた』で終わって展開早いんですけどね。




続きまして、筆記問題。本日の国語遊び。


『こうしょうなる思考』


上記の平仮名を漢字に書き直して下さい。

その後、思いつく限りの『こうしょう』の漢字を書き出して下さい。


あなたは、幾つ正しく書けますでしょう?



実力とは、正しく【その時】に発揮されるナニかである。うむ。


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