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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
165/239

165 その回転力で

お久しゅうございます。

目とのーみそ、その他諸々へろってます。






 目が合えば、勢いよく右へ振った。


 非常に態度が悪いが、そろそろとあげてくる上目遣いにやられる。そして再び即座に左へ流し、俯く。もじもじと足を動かす。


 完全に含みのある態度は人でも猫でもわかり易いが、腕の中でやられると心が二つに分かれて絶叫する!


 『ひでえ!』

 『かわええ!』 


 同時に叫けぶが内容的には痛み分けだ。方向が違えど強さは同じ、そして真逆の心裏が優しい方に比重を落として残りを丸め込んでいく。


 しかし、突き抜けた余韻は大きい。 …痛みの摂理だな。



 「に、にああっ!?」

 「あ? はい?」


 衝撃の顔にびっくり目、そこから更なる足踏み。

 猫足が行う要求(肉球)を肌で感じていたら、今度は顔と体で行う激しい要求(猫じたばた)がきたので従う。


 「ふぎゃう!」

 「はい、お待たせ」


 持ち直して手を入れ替えた。




 ぺち。


 可愛らしい叩かれ方に、心が… 心がじんわりと歓喜を呼び起こし、苦悩を遠い彼方へ押し退ける。さっきの態度が悪かった分、心に響く!


 それでも、手だけで弄ばれる自分が悲しい。


 きっとこの先も振り回されるだろう自分が悲しい、しかし密かな楽しみでもある。この手の要求を苦行とは思わない俺は正しい。




 半開きになった口に覗く牙、視線の固定で広がる猫の笑み。大体の思考が読めた。


 ぺちちちっ!


 「…にゃっはー ににゃ〜ああ〜〜」


 目を細め、首を振って早合点を隠す照れ笑い。猫がこんな顔を、とも思うが元は人。どんな形を取ろうとも、それは同一。猫でも人でも綺麗に重なる。君だなぁと思う。


 そして手を上げ、取ろうとした仕草は猫腕の稼動域を超えていた。


 「おっと」

 「うにー」


 猫の体の柔らかさを存分に見せつけ、反り返る。落ちるのを防げば、これまた猫笑いして俺の手を叩く。


 ぺちぺちと叩く姿に勝てない…  どうしても勝てない! 勝負もしてなのに勝てそうにない! くぅ、卑怯だ。だが、幸せだ。



 「かあ〜〜、この幸せを定義と「だから、後にせんか」


 グリッ。


 「てえっ!  ひ、人の堪能を!」

 「余力は何時でも尽きようが?」


 「…そうでした、つい」

 

 「うにゃにゃは、にゃがにあなーん?」

 「いやー、君の魅力にイチコロです。あはは」



 腕の中の君に笑みを向ける。


 誰かに向ける笑み。

 笑みに落差はあれども、情を添える。それが笑みの質を違える。ほんと君の言葉が正解。ぼっちやだー、だよね。


 しっかし、猫だと余裕だよなぁ。本当に切迫感が薄れて違うんだよなぁ…


 君が君である前提が崩れかねない不思議。恐怖に対する落差が有り過ぎで、同一とは思えない。不思議  でなく、異常。


 「にあー?」


 異常。


 ふ、俺の頭が回ってない。情報が足りないから、そんな結論を下す。回せない問題は情報量だ!


 「さ、次に取り組みましょう」

 「…にぁあ?」



 そんな顔されても。

 普通、お楽しみ()は最後だと決まってますよ。






 俺の希望はお預けです。

 目の前に餌をぶら下げて「待て」なんて、ひーどーでおーぼーです!



 「説明を交えてやろう。本当は部屋へ持ち込んで、そこからと考えてたけど似た様な状況も捨て難い」


 俺を抱いて、鉄格子の前に屈み込む。手を伸ばし、掴み引く。



 ガシャン、ガチャガチャ!


 鍵穴もなーんもない牢の扉は良い声で、やなこった!と拒否されました。


 「…にああ?」

 「はい、魔錠です」


 『ああ、そうか』の気分で思い出す。どこにあるかわからんでキレた記憶あるわ。



 扉の縁に手を滑らし、一ヵ所を指して、「ここ」と言った。そこを注意して見るが、猫目で見ても鉄の棒。うーん…


 「この扉の先にある術式は活きてます。でも、鍵は設置されていなかった。他もそう。区別と用心を兼ねて魔錠を設置しました。魔錠の利点は場所を選ばない事にある。それでも、じか打ちは技術です」

 「…にあ?」


 術でぺたりじゃないの?と聞いたら、「平面でなく面積もない場所に一式とはいえ、形状が折り重なるのは良くないです」と、どきっぱり。


 「なああー?」

 「ん? 完成形への重ね掛けは、ほぼ相乗で問題なく。無意味な場合もありますけどね」


 「に、にあにー」


 縮小とかできんのー?って聞いてみたが、直打ちってなによーに重なるのどこよーって聞いた返事が相乗とか。


 一語に込める猫語は荒くていけないよーです。猫も勉強致します。

 

 そして返ってくる答え。

 俺の魔法の本は返事に詰まらない。あーんな、こーんな、ぎゅいーんとか言わない。できなかったのは魔力感覚だけだっけ?


 学力で優秀。


 ほーんの少し、頭を掠める。

 どっかで見たよーうな魔法に冒険が混じる学生生活。楽しそうな、生活。そこに、俺とこいつがいる。


 ありはしない情景。

 

 いや〜、残念なほーにのーみそ回ってんな〜。

 


 「これは開閉のみの単純なものですが、同一体を通す事で全体を強固にする事もできます。その場合は区切り方が肝心です」


 手のひらベッドで聞くのは楽で良い。

 ベッドに腹ばいになって、両足は手首の所でだらーんと。両手は指柵にちょこんと当てて、尻尾は姿勢に添って綺麗にぽい。


 リクライニングベッドでのゆったりな鑑賞。それも安心安全の保証付きとくれば言うことなし! これで飲み食いできたら、さいっこー!


 「それで…  尻尾がご機嫌ですが聞いてますか?」

 「にゃん!」


 はい、それで魔錠はどんなんですか? 見せて見せて、見たいでーす! そこでそんな目しなーい!




 「…直ぐにお見せますよ」

 「にゃーあ」


 指を当てた。違う、当たってない。んでも、中からズズズズッとナンか浮き上がってきた。



 「この様に形状に添わせるのが主流です。重要度に合わせて引っ掛けを変えます。これらは地域によって特色がありますが、担い手の実力が一番大きくでるので特色と言いましても、発展による技術格差と言い換える方が早いかもしれません。

 基本は術式での解錠ですが合い鍵を作る場合もあり、作成には媒介を使用します。術式のみでの構築は不可能ではありませんが幾つかの危険を伴います。第一の危険は消失です。はい、紛失ではありません。それで、これは合い鍵を作る程の物ではないです」

 


 説明の間に、「ぐるるん」と声が漏れてたよーです。


 一生懸命、握って取っ掛かりがないか探して… そりゃー、見つかるはずがない。魔力オープンが鍵なら無理無理無理の無知〜。ん?  無知?



 ギンッと真剣に見直しまして、猫、引き攣ります。


 これが初級Level… これが初級Level! 全体ぼんやり見えますが肝心要なキラキラがうっすくて、ナンなのかさっぱり読めません!! 初級だから薄いんでしょーか!?


 「鍵は用心するもので、術式を大っぴらに出す馬鹿はいません。我が家にも全てを解錠させる親鍵マスターキーはありますが、そんな物は何本も作りません」


 いやーーー! それ、欲しー! 怪盗にゃんこの必須アイテム!! マントの下に隠しておくので是非、頂きたく!


 猫目キラキラでハージェストを見たらセイルさんを見たので、もしや今お持ちとか! 甘えてみましょう!


 「にああ〜〜」

 「諦めなさい」


 「…なーあ」


 残念です。

 とっても残念です!


 「因みに優れた親鍵は他家にとって脅威の合い鍵(パスキー)に成り得ます。何年も見直ししない魔錠マジックロックの有用性は、パスの精度も含めて信用できません。安心している頭は沸いてんのかと笑います。開けて下さいって言ってるよね〜、あはは」

 「にぁああん!」


 やっぱ、それ欲しーです!


 「それに親鍵でなくとも、高難易度(錠破り)を設定して作る合い鍵(スケルトンキー)は大抵の物を解除できます」

 「なぁああああ!」


 宝箱限定にするから、怪盗にゃんこにその鍵ちょーだ〜〜い!


 「解除できる理由は、読み取り技術を半端なく突っ込んでいるから。それでも解除できない場合は、この様に展開させるので自力で読み解けです」

 「にあー」


 そーなると知識ないからアウトですね。


 「展開妨害食らう場合もあるからねー」

 「ぐにゃあー」


 もっとアウトですよ。


 「で、君の技術を」

 「に?」







 パッ キャーーーン!


 「おおおおお」

 「ほぅ、やはりこうなるか」


 「あの、これは  一体… 」


 「後にせよ」

 「は」


 ちび猫、鼻高々です。

 ハージェストの腕の中で高々をやっております!


 言われたとーりに爪を当て、ふんっ!と勢い込んで壊れちまえ!とやりました。ら、できましたあー。そりゃー、セイルさんとリリーさんの合作も破った爪ですもん。できないほーがおかしいです。


 そして、目を丸くしたお顔を見るのは最高です!



 それにしても、怪盗にゃんこは自前で鍵開けできたんか。 …ええ、ええ、そーなんですよ。怪盗は名乗った時から怪盗なのです。技術を持った素晴らしい怪盗なのでーーす!! にゃーははは!


 「うん、雑だ」

 「ああ、厳密に言えば駄目だな」


 …にゃんですと?






 「い〜にゃーあ〜〜」

 「そーゆー事を言いません」


 えー、やだあー。


 うにゃうにゃ言い合うのですが前に進みません。なので、ぴょいと飛び出ます。


 「にあん」


 ハージェストの顔を見つつ、すててててっと行きまして。ちび猫、鉄格子の間に顔を突っ込みスルッとinとoutを繰り返す。


 「にあー」

 「だから、猫の姿でされても」


 「にゃん!」


 どっちも俺だっつーの!


 「猫の君ができるのは良い事です。では、人の君ができるか確認したいので本来の姿に戻りましょう」

 「いーーー にゃ〜〜〜〜〜」


 だって、上に戻ったら猫の俺が必要でしょー? また着替えるのは面倒いじゃないですかぁー。


 「ん? 連中の事を気にしているのか? それなら、気にするな。先ほど自分でも言ったであろう? 時間がどれだけ延びようと死にやせん、捨て置け」


 ぐはあっ、自分で自分の首絞めたあ!? 自分で立派な罠、張ったあー!?



 「そうだよ、あいつらより君だって」

 「お優しいお心遣いを嬉しく思います。ご心配には及びません、看守看護は致しております。皆に会いましたでしょう? 一人で行う愚は、愚とも呼べぬ程に犯しません。劇薬と同じ劇的な変化を望んではいません、お手を少しお借りしたいだけなのです」


 …フレンドリーな笑顔ですネ。そんなお顔ができるお人に蛇がどーのとすいません。でも、そんなにへーきへーきと笑顔で手を振られると逆になんつーの。


 職務熱心でいら  ……あれ? ギルツさん、何時お休みで?



 「行く前のやる気はどこに?」

 「に!」


 いやでも…  ほら、ちび猫なら鉄格子関係ないし。ちゃんとできるからいーよーな気がしてましてぇえ〜〜。


 「にああ。うに、にが、にゃあにゃににに」

 「そうだね、君の爪で魔錠は破砕されました。見事な破砕です。解錠ではありません。ええ、あれは開錠です。違いはわかりますね?」


 「に、にあ…」


 まぁなんだ、問題そのものをぶち壊したからできたとゆーのはスマートではないとわかっちゃいるけど解答ではある訳で。


 損壊させたが詐欺はしてない。



 「君さぁ、上手く着替えられない時があるって言ってなかった?」

 「う!  にゃぁ…」


 ああああ、馬鹿正直に言うんじゃなかったあーー! いや、それが間違いの元だ。自分否定すんな。 あー   鍵を開けるー。 


 

 「人の君が行った上書きを読み取れない数人をどうしよう?」



 昨日のあの人も泣いた口だと言われますと、どーしたらいーのか? 街の牢屋の担当さんを泣かせましたか… 俺も紹介受けて、また牢屋の人かい!と内心で泣きましたが。


 「お元気になられましたら、是非遊びに」


 あの笑顔の原因は、ココかぁ!



 ぴょっと見上げたら。即、後悔。視界に入ったギルツさんが生き生きを通り越した爛々で嬉々だった。


 怖いわー、誰が着火したんだかー。犯人でてこーい。 あ、俺だ。





 「ただいまです」

 「はい、おかえりなさい」


 人に戻るとガチで見られた。

 ま、仕方ない…  では、済まさない!


 「俺は人です、猫は着替えです! 俺が本体です! 着替えは被り物で被り物を着るのが本体です。本体が本体であるから着替えるのです! 着替えは意志で意志は己!! 着替えの意志を持つ俺が完璧に完璧なにゃんぐるみを着こなしているだけなのです! お間違えなき様にお願います。  にゃんぐるみこそ俺のきじゅつうーーーー!」


 着替えのジェスチャー入れて激しく自己主張した。皆がよく言ってるから技術宣言した。


 「「 おおおー 」」


 パチパチパチパチパチ〜〜


 技術宣言に、皆様の感嘆と拍手を頂いた。承諾は得た。が、観察眼は続く。  …うわぁお、余裕な大人はどこを重点的に見てんでしょー? ってか、尻尾の不思議は俺にも解けません。


 さぁ、急がないとカラータイマーが鳴ってしまいます。ちょっぴり気持ちは焦るが…  ガッツはでない。




 「猫は君の付属。君の姿で君の意志であるけれど、君の   お遊びと言えば語弊があるかな」

 「遊んでる気は大いにあります」


 「なら、良いか。  …過去、君はした。猫の君もした。今もして、成し遂げた。でも、同一ではない。利便はともかく混同はよくない」

 「…はぁ」


 「はい、そんなに身構えない。欲しいのは事実、したいのは確認。過去の君と今の君には明確な違いがある。俺は譲渡をやめない」

 「やめられると困ります」


 「だよね。できる・できないじゃなくて…  今のうちでないとと思う気持ちを何と言えば」

 「まぁ、言わんとする事はわかるから」


 「だよね! しましょう!」


 力説から手を取られる。そして肩を掴まれ、ぐーるりと向かわされる牢屋の入り口。扉。  ……見るだけでやる気が萎む。


 「現実を見ないと」

 「…そりゃあね」


 


 牢に向き合わされると、のーみそが「これはおかしい!」と騒ぎ出す。「こんな予定は聞いてない!」と泣き始める。


 敷地内の把握を兼ねた『元おーさまの地下ダンジョンを一周して克服しよう弾丸ツアー』に、『もしやの猫さんを探せ!捜索ツアー』がダブってた。それは良い、『猫さんの疑惑を晴らせ!』も入ってる。その後の『元金魚な皆様とちび猫の感動のご対面オプション』は参加選択した。それでツアーは終わるはずだった。


 はずだったのに。


 なんで、拒否れない選択肢の元で牢屋の扉に向ってるんでしょう? これって無理やり引っ張られてるとゆーんでないか?


 いや! 何時かが今だっただけだ!


 そうだ、これはこいつが仕組んだ弾丸ツアーのサプライズであって! サプライズは人の為で人の所為だと押し付けるものでは!   あれ?  この引くに引けない状況になってんのって、こいつがギルツさん達の前であーゆー言い方したからでないか?


 …yes、こいつが言ったからだ。



 「明るい未来に向って進めそうですか?」

 「……すーすーむーとーも〜〜」


 地底を這ってるよーうな声がでた。俺、がんばれるうー。





 鉄格子の前で、一つ息を吐きだす。

 情報第一、分析第二のこいつを有り難いんだと思い込む。俺はそーゆーのを念頭に置かないから有り難いんだと掏り替えて!


 前を見よう。



 目の前の牢屋。

 内部は空っぽ。誰も居ないし、なーんもない。寒々しいのは何処も一緒。


 何にもない区切られた場所。それだけ。


 ちゃんと見れてる。

 見れてるから、できるはず  だ!



 掴んだ鉄格子は冷たかった。


 やはり冷たいこれをあったかくするには、どうすればいいか? 熱を加えるしかない。熱伝導体にヒートを立ち上げオートで維持しヒートアップさせ過ぎずに継続させる。オート機能の構築ってどーやんでしょね〜。まるっと鉄ですから間違えた時点でお肉がじゅううっと焼けるのですね〜。 あー。




 隣と同じ構造体。

 なら、魔錠はココにあるはず。


 出る為に必死だった。ぶちぎれそーな感じでやった。それは確か。それしか覚えてない。


 自己流。

 できたを考えると、魔錠の形も位置もどーでもいーはず。








 ガチャン!


 あっぶねー!


 集中し過ぎて、くらっとしたよーです。後ろに倒れそうになりました。ガッツリ握り締めてたのが良かったです。


 立ち直して、はぁあ。


 …もう一回頑張ろうと思うが嫌んなってる。開けようと思うと息が上がる。それを整えてようとしても上がるから無心で集中した。無心になったら、息は整う。整ったからそれを維持。


 無心。

 欲を捨てた無心。


 開けるなんて考えてない。しかし、皆さんの手前やらねばならぬ。 ………空回りとゆーより逃げてるのか、俺は。


  

 鉄格子は嫌い、牢屋は怖い、檻は怖い、出られないのは腹が立つ。降りるのは怖くて震えた。足がぶるった。


 今は鍵と対峙中。俺、頑張ってる。


 頑張ったから降りれた。それは俺がきょーふと向かい合って    あ?  ナンか違う?  え、ドコが? 恐怖? 恐怖の質が違う? はぇ?



 階段降りる時、ぶるった。

 扉に向かい合って、息が乱れて心臓ドキドキ。いや、降りる時もそれなりにドキドキ。


 どっちもどっち。


 しかし… 比重が…  おかしい?  開ける方が怖い?  ドキドキの強さか?




 以前。

 正面からぶち壊して外へ出た のです。


 これは解放。

 高笑いしたかどーかは覚えてないがキレてたのは確実。


 今。

 さぁどうぞ、オープンでーすをしようとしてる。正面からの正当。

 

 これは… 開放?

 これで心臓がより一層高鳴る。は? 正規ルートがあかんの? 正当ですよ!?


 




 扉を開ける。

 それは一つの行為です。


 一つで二つのかいほーが大声で笑い出すと気持ち悪くて嫌になる。




 ええもう、気持ち悪さに吐きそうです。吐かない吐かない儚くならないと息を整え、ぜふーーーっとね。


 それでも頭が重くて下を向く。


 向けば靴が見えますよ。そーいや、頼んだブーツはまだでしょか? 風がスカスカシンシンと。あー、今ブーツが欲しかったです〜。ブーツ履きたいです〜。俺のはあそこまでごついブーツじゃなくていーの


  

 首をも少し下げて視界を掠めたモンを注視。斜め後ろにブーツを確認、誰のブーツか理解。


 …もっと後ろに下がってると思ってた。下がってなかった。




 なんとな〜く、どんな顔してるか想像する。


 直ぐに思い浮かんだのは二通り。正解はどっちだろうと思ったが、最後の顔はどっちも同じで過程はどーでもゴールは同じになってしまった。


 ナンか笑えた。

 笑えたら、力が抜けた。


 すかーっと軽くなる。






 『最後は己一人の戦いとなろうとも』


 声に言葉。

 記憶が降ってくる。


 声援や応援は賑やかで。賑やかだから受けているとも感じる訳で。でも、やっぱり最後は自分だけだと。


 事実、そうだったし。自分限定されるとどーしよーもないし。そうなると半分はプレッシャー。


 こーゆー時、見守りに意味あんの?とも思うね。


 んでも、そこに立ってる奴の表情が浮かぶ。状況から当たり前に想像できて浮かぶもんと、性格や内心を知っていて浮かんでくるもんが最後は同じであったとしても。


 そこには違いがある。



 その違いがゴールドブレンド過ぎてわかり難いだけだ! それがわかるのが大人の証!!


 そう、大人の為のゴールドブレンド。違いの為のゴールドブレンド。ゴールドなブレンドを見分ける為のゴールドブレンド。人が行うゴールドブレンド。違いを生み出し、違いを見つけ、違いを当てる! ゴールドブレンドが与える深みが人を新たなゴールドブレンドへと誘う…  誘う大人の  


 ちが、大人をいざなう ゴールドブレンド(高尚なる遊び)…   ぬーん…  



 あれ? ナンかズレた?





 ……ま、なにゆーても見守りは見守り。でないと見守りとは言わんのです。


 

 近くで見守られてる実感。


 なーんか笑える響きで口元上がると、もっと軽くなった気がします。今ならできそう。


 ん、やってみよう。



 『魔錠よ、開け。我は開くを望み求める。  オープン!』









 あは。あは。 あーはーはー。

 

 気が抜けて、めっさリラックスしてる。ゆるーんでたゆーんでほやーんな気持ちの上にやる気が乗っかってる。乗っかってるからやる気が出てる。


 この状態で、どうやったらぶちぎれて突き抜けた激情と同等の事ができるのでしょう? ゆるーんがハイパーマックスにどーやってなるよ?



 ふ。

 ふふふふ、ここここ。


 こ、こ、こ、  こ〜〜   こーろほーのゆきはいかにぃーーー 



 それ、あけあけあけあけ、あーけーよー  あーけーれー  ほれ、あーけーがー  いよ、よーあーけえ〜〜


 あ、そか。 


 とーけーよー?   あーもー きれいさっぱり とけちまえー   いえーー!




 




 「なー、指固まった。冷たくて動かねーの、どーしよう」

 「え? どう…   だああ、こんなになるまでしなくていいから! ごめ、読み間違えた! はい、終了!」


 鉄格子とグッバイさせて頂きました。


 生物の手が… 手が…  ああ〜 あったけー。カイロあったけー。


 「失礼を。  ……いけません、アスター!」

 「は、こちらに」


 おおおお〜 生物の手、第二弾〜〜。こっちの手もまじであったか〜〜。あーー お湯にどっぽんしたい〜。


 ドンッ


 「ワフッ」

 「ああ! アーティス!」


 「あ」


 小さな二つのカイロより、大きな一つのカイロです! は〜〜   ……犬臭いねー。


 「寒くないか?」

 「アーティスなら平気だよ。さっきまで兄さんにべったり引っ付いてたし」

 

 「へ?」


 「こちらをどうぞ」

 「わお、ありがとうございます!」


 手袋を貸して貰いました。大きめのミトンの手袋は二重装着が楽々可能です。そして、ほこほこあったかい…


 かじかんだ手に、なんて優しい…


 温かいミトンは、とある誰かの草履と一緒。そらー、あったかいですよねー。草履じゃなくて手袋なので良かったでーす。


 「ごめんよ、期待に無理させたね」

 

 萎れた顔に、にこちゃんを返した。





 「…ちょっと待つ、まさかの努力放棄に思考投げ!?」

 「それは語弊がありますよ! 俺は思考努力の果てに違いに気付き、別ルートを発見し、そちらが最善であると進んだのです!! 俺は進んだのです!」


 胸張って答えた。

 

 「もう無理だと思うよー」


 軽く言ったら、某二人の視線と表情がよく似てた。


 「開放を…  できるを君は却下したと?」

 「過去の偶然の出来事に縋って新記録を樹立しようなんて甘いのです! 拘ってはいけません! 俺はすっごく楽になりましたあ〜〜」


 にゃはーでキラキラ〜な目で見返したった。


 「俺の…  俺の心痛にも似た不安と高まり続けたときめきを かーえーせ〜〜」

 「だにゅっ!」


 いきなり、ブスッとやられた。


 「ふ、ふつー顔にやるなら指一本でしょーが! 二本は痛いって!」

 「そんなの知りません、強制えくぼがかわいーですよ」


 「顔の横でかわいーつったらピースだろ? こーんな」


 手袋片方外して、にぱーっとピースサインで輝いてみた。


 「……両手でやってみたら?」

 「え? ダブルピースは女の子でないと。男がやってもあれですって」


 「はぁ? 試しにやってみてよ」

 「うえー!?」


 口調と態度はアレでも、どっかで「まぁ、いいや」みたいな気配に油断してた。影が差した。頭にガシッとキた。


 「二人で和む前にだな」


 「たたたたっ! セイルさん、いだあーーーーー!」

 「兄さん、髪、髪! ちょおっ!」


 「手加減しとるわ、二人共!」

 

 「にゃー!」

 「この!」


 解放された頭がズキズキで手加減が信じられません! 引っ張られてないが俺の頭皮は無事なのか!?



 「ハージェスト、お前が追求せずしてどうするか。 あ? 使えぬにも程があろうが!」

 「だあ!」


 うわあああああ、セイルさんが遊び過ぎに怒ってらっさるうー!


 と、尊い犠牲を残して逃げるのは心苦しいが犠牲が犠牲として大いなる役割を担ってくれている内にその尊さを無駄にしない為の偉大な行動を態度で示さな…  あー、囲まれてたっけー。逃げ場ないわー、逃げ出しよーがないわー。


 「ノイ」

 「はいっ!」


 シャキッとしまして、視線に保身と希望と期待を乗せて見上げました。冷や汗たらりのえへへへーですよ。




 優しいセイルさんのご指摘により、手袋を嵌め直してからの質疑応答になりました。


 「ふん…  怖い、か。その違いを理解して、自己防衛「防衛じゃないと思います」


 じーーっと見つめ合った。

 更に、違う違うと首を振る。にぱーな笑顔は忘れない。


 頷かれ、意見が通った。

 やったね! 主張を恐れてはいけません、生意気とは違うのです。正しい方へと向うのです!



 「では、聞き直す。震えの違いから恐怖の根が同一ではないと理解したが、考えるとしんどいから流して終わりたいのだな」

 

 「そんなあっさり言われたら、俺の苦悩に頑張りが見窄らしく身も蓋もなく」

 「兄さん、心境を汲もうよ。汲んでよ、お願いだから。俺に気付いて切り替えが出来たと言っただろ!?」


 「で、それは禁忌なのか?」


 俺達には全く頓着しないセイルさんの強さに心打たれる。そんで、質問に首を傾げた。



 「同一でないなら混同するな、可能性は連動から成り立つ」

 「はい?」


 「……はぁ、だからな?  其は、死に至るものか?」



 セイルさんが笑う、片腕を広げる。手のひらが動き、指が広がる。握り締める。


 気付けば、顔が近い。



 軽い衝撃は。

 セイルさんの指の所為。


 突かれたのは、胸。


 薄く広がっていく感覚。

 一斉に俺の内から、引き上がる声。

 


 開く 傷が

 触れない、約束 は?


 生きていられる?    もう忘れたから



 死にそう  向うと死ぬよ   



 要らないし  死ぬよ死ぬよ  死ぬよ?  


 死ぬ?



 ぜんぶ とけてながれて  きえていくよ

 



 自分の中で反発し合いながら、再び沈んでいく声。それらを全部聞き取れた、聞き分けた、聞こえた。


 聞こえたから、あれえ?

 心臓ドッキリから、のーみそビックリで耳ほじほじ。



 ぜんもん(ぜんぶ) といてだしたら(とけてながれて)  おわりなさい(きえていくよ) ?



 え。

 解いて出すって…  出すって…    出すって提出? ドコに?    セイルさん?






 「死に至って堪るかっての! 縁起でもない!」


 いきなり肩に熱が生まれた。


 『あづー!』

 『あーー! 消えるーー!』


 体がビクンッと反応したら、意識もそっちに持ってかれる。持ってかれた瞬間から、サラサラと砂のよーに思考(構築)が崩れていく…

 

 

 スルスルスルッとできてたものがサラサラサラッと消えていく…  さっきまで  さっきまで 頭ん中で解けてた答えが。


 こ、こ、答えがーーーーーー!!



 消えて真っ白。

 残ってない。


 おわた?  え、おわた?



 終わった、だと!?





 「だから、丸め込まれない!」


 正面の蒼、両肩の熱。

 真正面の犯人。


 犯人が生み出す熱に重さ。片側の重さが消えて、また軽く。


 「兄さん、何をしようとしてますか!」


 吠える声。

 離れても、残る熱量(魔力)


 この熱の連動 は、 手の甲に。



 

 そう、最後は一人。努力も自分。それが筋。 でも、この熱があれば  この熱と共に開ければ    直感的理解は  勘は  そう、俺の勘は。



 世界の扉、世界への扉、内と外を繋ぐ扉。

  

 扉。


 俺の扉は。

 扉の鍵は。



 「ぉ… おー」

 「あ! 気持ち悪い? 過剰に「いのちづなー」


 「……はい?」


 手を伸ばして腕を掴んだ。


 ……手袋様の自己主張が俺を守って下さいました。只の手袋様ですのに、何と素晴らしいガードをお持ちなのでしょう! ええ、邪魔をしたとは口が裂けても申しません。


 しかしだな。


 「ええと…  どうしたの か、な〜?」


 セイルさん、アーティスの頭を撫でてた。よゆー。



 「思い込みとは言わんぞ、お前の積み重ねだ。しかし何だ、街道から外れて細道に分け入ろうとしていくのを見守るのが大人と言うのかと思うと多少の疑問がだな…  一つ、選択をしてみたのだよ」


 「……兄さん、ココでやる根性が憎ったらしいのですが?」

 「兄は易しい鍛錬を課しただけぞ」


 「………そ、の、優しさ、が」

 「何だ? はっきり言ってみろ」



 素晴らしい兄弟仲です。

 何時でも何処でも繰り出される、できるにーちゃんからの出題。俺にもお鉢が回ってきたよーです。



 「お前が言えぬも言わぬも道理ならば、兄もまた何も言わぬよ。だが、そのいじらしさ(要領の悪さ)には心を打たれる。故に、手を出した。何一つせぬは薄情、可愛い弟の一助になれて兄は嬉しい」


 「は、は、  は!」


 引き攣った笑顔を見ました。

 対するは、大人の余裕の笑顔です。


 引き攣り具合からして、嫌み無く嫌みをした模様。黙り、俯き、反論に顔を上げても、言葉が出ず。「あー、うー」しか言わないので確実に何かの図星を突いたと思われ。


 んで、言えぬも言わぬもって何でしょう?


 これは俺に対する何かですよね? このシチュエーションで俺以外は考えられません。そんでセイルさんはわかった。


 わかったのはセイルさんから見て。 ……俺の頭は回転力不足なのか、読み解けない。



 でもま〜、ぱーから始め  ミトンの手袋は何もしなくてもぱーでした。はいはい、タッチ。



 「!」


 ビクッと跳ねて、恐る恐るこっちを向くと思ってました。ギクッからの二歩逃げでした。反応よくて、わーらーうー。


 面白い顔で横向いた。逃げた。

 心に疾しい事がある奴の非常にわかり易い態度です。


 その後のチラ見に、さ迷う視線。どーしよー感満載で八つ当たり気味にセイルさんを睨んでる。きっと俺は残念感だしてる。


 



 地下の牢屋の檻の前。

 そこで笑い出しそうになってる、俺。


 『今』を不思議と言ったら馬鹿だ。




 なぁ、俺は進んでるだろ?  ……くぉら、こっち向けよ。 人がいー顔してるってのによー  ったくよー。










 セイルジウス・ラングリア。

 妹達に甘く弟達にもそれなりに甘い彼の心の辞書には兄弟愛が輝くが、その意訳には適当な崖からの突き落としも含まれる。


 そして、当たり前に突き落とす(後見する)









へろりながらも遊んでみる。




はい、本日の問題。

下記は一連の流れを見ていた人物と人物が発した感情です。番号とアルファベットを正しく結びましょう。



1、リアム・ヘルウィーグ        a、ああ… 世界は広い

2、ギルツ・アーガイル         b、何と言う…!

3、レオン・アスター          c、どう纏めれば良いのか?

4、牢番さん              d、…………よし、幸運。




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