表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
145/239

145 定立を成す

 

 

 「 …早かった、かな?」



 一人と一匹を前に言ってみた。


 一人の態度がナンかあれだがそれよか自分ののーみそおかしかった。おかしいのをおかしい思いながらグッと押し込んで言ったのですよ。


 床に胡座を掻いてるハージェストの隣に伏せしてるアーティスが引っ付いてる。これはおかしくない。そんでアーティスはハージェストの膝に頭を乗せて甘えてた。その頭をハージェストが撫でてるのは特におかしくもないんですが。



 俺の頭は不満を叫ぶ。


 『待ちやがれ、そこは俺のだ! 退かんかい!』

 『待て、アーティスは悪くない。ハージェストは許してる』

 

 『しかし、あそこは俺のだろ(指定席)! 前に念押ししたじゃねーか! 俺が一番で他は乗せんと言っただろーが! あれはその場凌ぎの嘘っぱちかー!?』

 『アーティスは別枠だ』


 『別枠だと!?』

 『特別枠だ、アーティスは子供の頃からしてたはず。優先権を持っている』


 『なんだとぉおおおおっ!  あああ… しかし、まぁそーだな。アーティスだしな』

 『見ろ、膝は二つ。頭は一つ。ちゃんと一つは空いている。空けている!』


 『おお… アーティス、わかってる!』

 『そうだ、アーティスはわかってる!』


 

 『『 よし、そっちだ! アーティスは良い子だ! 』』


 

 俺ののーみそぐだぐだうだぐだ言ってます。


 しかし、騒ぐだけ騒いだら終了した。人に戻ってんのに、何でこんなん出てくんの? ハージェストが「猫本能あるの?」とか言ったけど、猫意識が残ってるってどーゆーこったい? 



 自分思考に呆然として突っ立ってた。





 「どうかした? 落ち着いたよ。   お帰り」 


 耳が声をスルーした。


 「? どう…     おーい?」



 スルーした。


 現実が痛い。意識がどーして混ざるのですか? いえ、もしかしてこれが正常? だって、あっちもこっちも俺ですからあ? クロさんのお蔭で気持ちがアガッて胸の中はじんわりしたのが広がって。あったかくも熱くもなって『動かねばー!』な気持ちがどんどん高まって… ステータスなんか見えんけど猫のレベルは上がったと思います。しかし上がれば今度は人意識が落ちる罠?


 罠、罠、罠?


 えー、ナニそれ、嘘でしょ。思い込みでしょ? スパッと分離するもんでしょー? 分離。分離って…  人格の分離? 二重人格? いや、猫格? 分かたれると戻らない… 派生したなら今度は統合とゆー問題が発生して 統合? 人格と猫格の〜  さ・い、とーうご〜〜〜う。


 いやそれ一体ナニが発生するの? ナンのアクマ合体の混ざりもん? ふゅーじょ〜〜んっ。



 『合成が上手くいったらレアモンスターが生まれます、希少の入手おめでとう! やっほーう』



 「どうかしたわ、 け? は?   え、俺?  お、おお 俺なんかした!?   ……さっき放ったコトとか? え、ちが?   え? あ  声… 尖ってた かな? 素っ気なかった?   あ〜  し過ぎた?  いやその本音としたモノが   え? 待っ   どーしぃいい!」



 『入手の大変難しいレアものにはご自身がなりましょう。それが入手への一番の近道です。チェンジのドアまであと少し、君ってすっごーい』


 天啓のよーうなアナウンスが脳内で谺するが、天啓なんてないんで俺の向こうでの知識が勝手に創作してるんでしょう。だって、ここゲームの世界じゃないんですから〜。それだけは確かですから〜。


 ヘンにのーみそ回るって嫌ですね。



 「なんで泣きそーって!  …っとぃ!」



 俺が出てきたら、直ぐに頭起こして俺を見てたアーティス。その頭をずーっと撫で(抑え)てたハージェスト。仲の良い一人と一匹は起きる時も一緒です。こっちくるのは見えてんだけど。


 アーティス見てたら、どっかで『良い子は許そう!』『可愛い子!』なんてのが再びぃい!!




 こののーみそリセットできんもん?



 あ、したら終わり?










 「落ち着きましたか?」

 「…はぁ、まぁ、なんとか」


 ガクガク揺さぶられて、ぱらっぱっぱっぱな頭が正気に戻る。首のガクガクは嫌でも正気に戻れるもんだと知ったが、それでも魂抜けていきそう。


 引っ張られてベッドに座ると一気に脱力。


 座れば、アーティスが正面に。足の間に体をグイグイ捩じ込んで、ドスッと膝に頭を乗せてじ〜〜〜〜っと俺を見上げてる。訴える目に「ヒュウ」と鳴く鼻声が可愛くて魂が抜けてる暇はない。それに鼻が股間にあたる。ピスピスさせて嗅いでるのに思うコトはある。



 モードが完全に変わってるアーティス。


 いや、通常に戻ってる。

 両手で顔をわしゃわしゃすると、嬉しそうに目を閉じ鼻を押し付けべろんちょする。べろんちょの手でまた撫でる。撫でたアーティスと俺の手が綺麗かどーかは考えない。 …うーむ、汚いか? タオルで拭くべきでしょか?



 「で、どうしたんですか?」

 「はぁ、それが…」


 アーティスをよしよししながら、さっきの分裂思考について語ってみた。






 「あ?」

 「いや、だからさ…  えー、猫暴れで解消とか思った事は確かにあります。ええ、あの時です。ですが、それは人の俺の意識でして」


 隣の開いた口を、下からガコンッ!と上げて塞ぎたい。 …舌、噛む?



 「ええと… 人の意識の中に猫の…  猫の自分を感じた?」

 「そうなんです、これまでなかった思考でおかしさを感じまして…  俺はどーにかなってくんだろーかとゆー実感が芽生えて… 」


 自分で言ってて怖くなる。あれ?な違和感が引っ掛かる。違和感と思うから怖くなる。しかしだ、猫になるってーのは『できる・できた』な話です。何より俺のはにゃんぐるみ。


 なのに、どーして猫意識が… 意識、意識。意識なのか?


 意識と自我ってナニが違う?



 自覚して疑問となると思い出す。こーゆー時に都合良く思い出す。いや、探り当てる?



 『違うお前になるのだろう』


 以前の、人でありながらなんちゃらも思い出す。あれの〜 変型?   自分のスキルに食われてる? 自意識を食われてってる? 


 どうしてできるのか?を危険視した。しかし、最終は流すで良いとした。お着替えスキルに使用上の注意は多々あれど、仕様そのものの危険性はこれっぽっちも。


 着替えが危険なんて誰もそんなん言わんかったし…   だあっ! あの人達の場合は単語を大義名分に黙ってるとゆー危険が…  あったり…  すんのか!?



 やりきれ・なりきれの完璧は… 完璧はだ。 人としての  お、終わり… を示してるとか? 見えないカンストで誕生するのは完璧な猫? 完璧、猫頭になったら「どーしてだ〜?」とか追求すんでしょか? にゃっはーんな猫に追求力あるんでしょか?  完璧なったら呪いの発動…  じゃなくて…  成就なのか?

 


 手の施しよーうがわからない、実体験 中 だろか?   医者、医者、いーしゃのお医者様。 ごっこのせんせー俺ですが?


 なら、診断余命宣告するのも俺でしょか?




 アーティス撫でる手が止まってた。


 「あ〜のさ、聞いても良いかな?」

 「は… ぃ」


 駆け出しそ〜うな心拍に「冷静・stop・走らない!」を押し付ける。「その先、危険。よく考えよう!」の標語を繰り出し掏り替える。問題を掏り替え、自分維持。走ってから考える・走りながら考えるの熟考が俺には難しいよーなので焦らずに。人ができるのは人事だから知ったこっちゃねえわ!!



 よし、へーき!

 

 隣を向いたら眉間押えてた。



 「君さぁ、もしかしてタマッてる?」

 「…はえ?」


 

 お前、どんな思考を繰り出した? 人様が真剣に悩んでいる時に、なーんでそんなヌルい顔で見られにゃならんのだ! あ!?



 「アーティス」

 「オンッ!」


 声と手振りにヘイッと反応、体を起こして犬正座。

 隣から手が伸びて俺の膝小僧を押えます。押えたら今度は持ち上げ気味に横に引っ張ったんですよ。


 「へ?」


 視界の変化と共に体が後ろへ傾き、引かれてない方の足が上がります。前にアーティス座ってるんで蹴らない様に足は真っ直ぐ上げましょう。そして体勢を維持できない俺は後ろへ倒れます。ベッドだから大丈夫。天井観賞した後は犯人を見てやりましょう。


 そんなこんなで反応、遅れた。

 


 ぺた。 「うひぃいい!」



 ドコに手をーーーっ!!



 バシッ!

 

 体がビビって震えます! ソッコーで手を叩いて握力勝負! ベリッと引き剥がして、ポイ捨て。次に蹴ってやろうとしたんです。



 「うあっ!」


 寝転がった状態からの回し蹴りですがアーティスが動かないんで、あぶねえ!と回避で不発。目の前の俺の行動よりハージェストの言い付け! なんて怖い!


 跳ね起きて、恐怖の倍増と憤りをミックスして怒鳴りつけた。


 「人の急所にナニをしよーと!」

 「あははは、タマッてるならそーゆートコ(フーゾク店)行く?」



 そこには光り輝く笑顔があった。

 輝く笑顔に相応しいキラキラ金髪エンジェルリングのおまけもついて、もう輝きがものすごい。伏して拝まねばならないグレートな光輝を前に俺は眩んで行動停止に陥った。




 



 「 こ・こ・こ・こ   こぅ〜〜〜」


 

 元は「この手は」だか「こんの!」だったか? 


 それがどーでもよくなると、言葉は単なる発音練習になっていくのです。こけこっこーなのです。天空から光り輝く使者が大いなる翼を広げて舞い降りてきているのです!


 

 鈍くないので、そーゆートコがどーゆートコだかピンときてます。そりゃあ、あーゆートコのこーゆー話でございましょう?


 『うひょおおおおおおっ!』

 『え、え、うわ、マジ? え、いや、ちょっと待て! 待て待てま…   あ。   あ、あ、ああ〜〜  いやでもあのほらだってほら! 人で!  ヒトのヒトでそりゃヒトでないと〜〜 うひゃいやでもでへ』



 金髪に蒼い目と掛けてテンシと解いても、そのココロは人それぞれでしょう。多分。


 行動停止を強制解除致しまして、笑顔に笑顔をお返しします。両手を合わせて上下にスリスリと揉み手に似たよーなのもやってます。


 でも、自分の笑顔が自分でも面白顔になってる気がしてる。だって、ほんとにそんな気してる。



 「あはは、わかり易い顔してるねー。うん、良い感じ」

 


 爽やかな笑顔と口調と態度にドギュンと撃たれて衝撃が。


 今の笑顔にハメられた気がしております…  非常にしてます。無情なまでの爽やかさ(今の、うっそーん)に無性に腹が立つとゆーか裏切られた感がいっぱい。


 ずるずるとベッドに這い蹲るよーうに撃沈し、ぶるぶるしました。





 「どうしました? 起きませんかあ〜?」


 最後のかっる〜い呼び掛けに震えるが、黙って片手を上げる。要求は通り、掴まれ引っ張られる。しかし、起きる方向から言えば自力が一番でした。要求せん方がましでした。




 黙ってベッドの上で胡座を掻き、アーティス呼んでベッドの端にぴったりさせて首を抱く。 …ああ、こんなんした覚えがあるわ。間違いねーわ。


 ベッドに片足胡座掻きで座ってしれっとしてるヤツを見る。じろーっと見る。


 「んで、今のおココロは?」

 「俺ですか? 俺よりそれこそ、そちらのおココロは?」


 「あー?」

 「君さぁ、さっき俺の言葉に右と左を考えたろ? 肯定に否定でなくても「待った」を掛けたろ? 君の言う猫意識ってのは、本来その先にあるだけのモンじゃないの? 違う?」



 言われた事を反芻してたら、もっと言った。


 「俺から言えば、気にし過ぎの一言です。ですが、それで終わらせても君は納得しないでしょう。だから、聞きます。君は強制的に自我を抑圧していませんか?」





 目の前の蒼い目の〜〜 テンシ? 


 表情を落とせば冷めた目がこの上なく似合うこいつが残酷か、冷酷かと聞かれたら。  



 側面で本質を かーたーるーなあ〜〜 は、やりました。慣れたかどーかに変換したら意味が全く違うでしょう。はい、出てくる答えは変わらずに。


 こいつの基本は、ま・と・も。

 まともでまともなコト言うまともにイジメる苛めっ子。絶対、こいつはイジメっこーー! こっこっこーー!

 

 





 「そうは言いましても」


 「だからさ、そう思うコトがぐるぐるさせるんじゃないの? 猫の君の方が感情をそのままに出してるよ」

 「えー…… 」


 「だってさぁ、さっきも遠慮なく蹴ったろ? 小動物だから大した威力ないと思ってるかもしれないけど」

 「あ、それは〜  はい」

 

 「十分痛いよ」

 「す、  すすすの すいません」


 これ見よがしに「ふぅ」とかしないで欲しいんだけどさぁ… 今更、蹴った場所をわざとらしく押えなくてもさぁ…




 「で、続きですがね。今、君も言ったじゃない。待ったを掛けて右左を考えた。それは期待と良いのかな?の二つだろ? 真っ当で良いコトです。何でもそうですが慣れると躊躇いは薄れます。


 『金で買った、金を出した』


 これでナニしても良いとする馬鹿はいるんですよねー。そーゆーのが面倒起こして仕事増やして良い迷惑。買われる立場をちっとは考えろってえの。望んでやってる真性は少数だって。その少数の内でも、それこそ望む所と自分で自分を誤摩化して、誤摩化しを片隅で自覚してた分だけ止められなくなって泣く事すらわからなくなったよーなのもいたんだよねー。  …まぁね? 証明がなされ難い事を見越して延々と相手にタカろうとした性悪としか言いようのないのもいたけどねー。


 客商売だから口を出し難い点があるのは本当。


 男で魔力が強い奴ってさ、頭でわかってても拗れたら最後は叩けば良いって思ってるのが結構な割合を占めるんですよ。力が強いから余裕、余裕だから挑発もする。それでケリを着けるのは短時間。これができるよーになると自制も抑制も薄くなる。叩けて威嚇できて最悪でも引き分けに持ち込める。場数を踏んで慣れると抑制を要領に掏り替えやがる。


 良い感じと言ったのは、素であろう最初の感性が俺の希望に添ってくれていた事に対してであって、決して侮辱やからかいではありません。確認を取っていただけです」


 「はぁ…」


 真面目な顔で言うんです。この前と違って内心読めちゃった〜な感じにならないんで… 嘘じゃないと思います。どっか投げやりなため息が苦労話と悟らせます。いえ、口調は愚痴でしょか?


 


 『ああ? そんなん知るかよ』

 『難癖つけてんの? 難癖つけるのがお仕事ですかあ?』

 『証拠もってきてから言ってくれませんかねぇ? しょ・う・こ』


 『お前ら』


 『おーぼーはやめて下さいよ!』



 のーみそがよくある感じを弾きました。

 こーんな感じのを思い出すってコトは〜 どっかで聞いたんかな? 屋台村猫歩きの時はやけに賑やかだったと記憶してる。

 

 これは華々しいスポットライトが当たるドコロか大層ストレスが溜まりそうな方々の苦労が忍ばれるたいへ…   良い事したはずなのに「お前が犯人じゃねえのか?」扱いは嫌だな。悪徳警備さんに酷い事されたのは俺ですし、どこぞの店の前で酷い目に遭わされそうになったのも俺です。


 しっかし、何らかの被害でどっかに呼ばれた役人がえっらい苦労してるとゆー裏側感たっぷり。 …はぁ   ん?    俺へのセクハラ問題はどこいった?


 待て、それは難ありだ!



 「商売として成り立ち、成り立たせてもいる。させてる以上は知らぬとはしない。どんな経過でそうなったにせよ、それを生活の糧としている。そこが誇りを持ち難い場所であっても、顔を上げる以上は忖度してやれとも言ってはいるんだけどねー。

 その気概を踏み躙る事を楽しみにする奴もいれば、どこまでもあくどいのはいる。少しまともなら生きた道具扱いはしなくても道具とは見做す。もっとまともなら人扱いだけど親切で終わるはずもない。ほんと、『力で』叩くのが一番簡単。  は。 でも、やり過ぎると萎縮から活気が下降線を辿るしさあ。 そうそう、円卓の方は平等を旨とするから上が介入する救済措置はないらしいねー」


 「え?」


 苦情を入れる前に追加がきましたが、最後はダークじゃありません? 言ってるのは店のランク? ブラックはどこでも有りそうな事実と奴隷やナンやが俺の頭を下へと押します。平等って言葉も違う感じで下へ押します。


 あ〜、なんて言いましょう?


 今の自分と比較してもっと酷いと思われる話を聞きました。『それに比べたら』と思うと言わなくて良いよーな気がしてきます。ちっちぇー事だろ?な感じがすごくします。  



 えー、えー、え〜〜  これはモラハラでしょうか?   モラハラはモラルなハラスメントで良かったはずでぇ、いや違うか?  モラル… モラルだから〜  モラルにおけるハラスメント?


 …あれぇ? なんか合ってるよーで違う感じもしてくんな。しかし、まぁいい。違っていてもそれはそれ、これはこれ。他人の話で俺を丸め込めると思うなよ! 俺の苦情は俺が言わねば誰がわかるー!



 「とりあえず、俺にセクハラをして良い事にはなりません」

 「はい?」


 ぎちっと言っておきましょう! お前がしたのはセクハラだと訴えましょう!





 「え、そんな。だったらどう確認を? 前以て言ったら本当なんて出てこないよ!」

 「それとは話が違うのです」


 「えー、風呂で見てるし。これからも見るしー」

 「ぶっ! そーゆー言い方をすな!」


 「えー、大浴場に入るって言わなかった?」

 「そ、それは…  入る予定ですが」


 「それに大浴場の貸切は止めろと兄さんが」

 「そ、それは…  言ってたよーな」



 ヘンな膠着入りました。


 しかしですな、「謝れよ!」なんて叫びたくもありません。俺としては「ごめんね、もうしないよ」の一言に「ん」を返して終わる予定だったんです。なのに、何時もなら直ぐにくる「ごめん」が…   なんでか入りません。


 これは譲らないトコなのか?    あ〜〜〜〜 仕事に関わるからか?






 「よし、わかった。ちょっとそっちへ寄って」


 頷いて、靴をポイ捨て。ベッドに乗った。奥へ行けと手を振るから場所を空ける。したら、ごろっと横になる。なって片足伸ばして片膝立てる。

 

 「公平を期そう」


 俺の手首をガシッと掴んで某所に持っていこうとした。 した。



 「待たんかあああああっ!」

 「公平に」


 「セクハラすんなああああっ!」

 「公平は公平だ!」


 突然の腕力勝負にギリギリと抗いました! 抗わねば俺の手が某所に無理やり触れさせられるのですよ!! ベッドの上での真剣勝負にヤられてなるかと必死で必死に全力を傾けて!  


 下半身は完全に寝そべってるとゆーのに! 力負けして…  俺の腕がぁあああああ!!



 「ぐわああああ!」

 「公平にだね」


 「それ違うーー!」

 「言った以上はする!」


 「ぎゃー、いやー、やめてー、公平の方向おかしいってー! たーすーけーてー え〜〜っ!!」

 「四の五の言わない! これで終わりだ」  


 「な、んだ   とーーっ!」



 ずべっと横滑り。


 足を広げる形で足払いを掛けやがった…  それ反則じゃないのー? 俺、しなかったのにー!   あ、オワタ。



 俺の手が生地と仲良しさんをした。べったりされたんでナンかの形状把握した、もうばっちり。密着時間が最初の時より長くておかしくてあったかい、そりゃ体温あるもんねー。


 

 うああああ。 何時か… 何時か人生を振り返った時、これは愉快な思い出として出てきますでしょうか? 某所に手が当たりましたので勝負は終了です。少し嘘泣きしてもいーですか?


 う、う、うええええー    あ?   ああっ! ぐーにしとけば当たってもまだ違ったんか!! うーああ〜、俺の要領わっる〜う。容量ないんか、この頭。 …待てよ? 当たった形状のブツを強く握り締めるか揉み込んで、「次はするな!」の脅しをしとけば!



 チッチッチッ チーン!


 アウトォ! その後を考えろ、したら最後だ! ナチュラルに具体策として『湯』を用いる相手を何だと思ってる! そーだ、ぱーのままで良かったんだ。手を離した瞬間にナニされるかわからんし、ぱーが正しいんだ! ぱっぱらっぱっぱっぱっぱーのぱああ〜〜。



 頭がぱーみたいな自分を自分で慰める。

 

 お湯はこわ〜いのだから仕方な…   お湯…  お湯の使用は二番目でぇ〜。 なら、一番目で使うお湯は? 一番 一番 一番風呂。   


 風呂場でセクハラ?



 …いやいや、なかった。なかったから。のーみそスイッチ切りましょー。追求せずに流しとこー。しかし、なんでこーなった?



 「お、俺は猫意識について聞いただけなのに… 」

 「それは大丈夫。心配ないよ」


 「はぁ?」


 隣はもう座り直していたですよ。



 「君が言うから視てたけど、特に何にもないですよ」

 「みてた?」

 

 「はい、話してる間中ずっと視てました。全くお変わりございません」

 

 けろっと経過観察してたと言ったので衝撃を受けました。今までのやり取りの全てが診察だったとゆーのですか!






 「なんでわかるって… えーとですねぇ…  俺が正確に君の気配を覚えたのは、此処、領主館です。その気配で君を捜し出そうと向かいました。姿と気配を念頭に置いた事があの時の敗因で俺の落ち度です。今になっての言い訳ではありません! 一緒に居たからこそ気付けた事実なのです!」

 「ほわ?」


 素晴らしい目で見られましたが、ギンッな睨みは睨みでは?


 そこからの説明でわかった事は、人である俺と猫である俺では気配が違うそうです。但し、全く違うのではなく類似性が認められるそうです。


 なんで気配が違うのかわかりません、どっちも俺ですのに。


 その事については、にゃんぐるみの形状が問題なのではないかとゆー指摘が入りました。後、着替え意識。体をすっぽり覆い隠しても、内と外で同じ気配出したら隠れるにならない。そこに着替えるとゆー(変身)意識を加える。


 そーなると同じ気配の方がおかしい気はする。それでもこれは、ハージェストが道理に適うと導き出した結論なので正解かどーかはこれまた不明。


 この事実は最初の『へ〜んしんっ!』の所為だったりすんでしょーか? うわ、嘘っぽい〜。でも、どうなんだ? あそこでやったし、手伝い入ったし。 


 …大事な事を間違えません。重要なのは気配が違う事実です。



 「手袋も始めたから間違えない。戻ってきてから頭を抱えてしゃがむまでの間、特に何かを感じた覚えはありません。それから今に至るまでも変化はございません。優しい嘘を吐く程、俺は優しくありません。それを必要とし、せねばならぬ時があれば俺は沈黙か不明を貫きます」


 

 断言と締めにへにょーんとなりました。

 そんな俺に苦笑した後、背筋を伸ばして言いました。



「俺は自分を肯定します。

 俺は自分の見立てを肯定します。 

 俺は君を肯定します。

 俺は猫の君を肯定します。

 俺は君が君である事を肯定します。

 俺はどちらの君であっても君である事を肯定します。

 どちらかが君であるとは肯定しません。

 君が君であるから猫になっている事を肯定します。


 君が君です。

 君がいるから猫がいます。鶏も卵もどちらも同じ、君と共に猫の君がいます。


 君は君だけです。


 あるべき事実に偽りなく、誠実に向かい合い、語りし事を、ハージェスト・ラングリアはノイ・アズサに宣言します」




 向かう相手は指を揃えて自分を指した。そして俺を指す。


 一つ言葉を紡ぐ度、一つ手が動く。

 それは差し出されるものであり、宙に向けるものであり、閉じるものでもあった。流れる動きは説明に添い、説明する心情に意思を表そうとしてた。


 こんな風に歌うんじゃないの?  なんて片隅で考えてる俺はどーかしてる。





 自分を肯定する事。他人を肯定する事。他人に肯定される事。


 そんな経験ありますか? 


 全く無いとは思いません。自分ホメはしてましたし、人様に共感したコトございます。遊んでる時に「そーだな、お前ってそんなヤツ〜」とか言った事も言われた事もございますって。


 えー 共感は賛同で、賛同は肯定に〜 なりますでしょ? 違う?  ああまぁ、共感は出した一つの意見に対してであって存在に対する全肯定ではないか。 


 だって、そうじゃないと。  


 俺が受けただろう 言葉の重みが   おかしいだろ?






 つまりだ。


 アナタは自分を〜 許すなり何なり(これでイイのだ)してますか?  ムカついても他人の声を受け止められる?  他人に認められてる?  認めらてれるのはアナタの根幹に根差すモノ?



 こーゆー感じに直すと〜  大げさ? 違う?  じゃあ、どういうのが合ってんの?




 相手の表情変わって、笑う。

 何時も通りの笑顔なのに、何故かエンジェルスマイルに大変身。



 脱力と ココロに広がり浸透するものと  染み入るな〜なんて思う俺と。『命の水』をまた貰ったんでしょうか?


 ほーんと、類似品(美味しい水)なら持ってんのにね。


 


 「ナンか医者の先生みたい」

 「はい、癒しはできます。ですが人の役に立つ程でもなく、自分程度ですね。でも、使えはしたので患部と原因と処置を見極める事に徹して修めました。ほーんと自慢にもならない程度であれですが」


 「…それは本物の先生ではありませんか!」

 「いやだって、そーでもしないと力なんて幾らでも要るから。キュッと一つできればかなり違うんで。 …流れを読み間違えると効果ないし」


 「え? いや、普通にすごいコト言ってると」



 謙遜する意味がわからん。

 他の人だって漠然とやってるんじゃないだろーに。 …医者でも科が色々ありますが、こいつは精神科もできるんでしょーか? それとも心理学をカジッたんか?



 俺の専属医はレフティさんでなく、こっちであっちは補助だとのーみそに上書きしときます。それにしても、ほんとに色々してて俺との比較に…  立場で扱き使われって言ってたが本当に、こう… 



 「何かあったら言って下さい、ちゃんと診るから。人の君が言い難いのなら…  いや、本当は人の方が良いのですが猫で言ってくれても構いません。猫の方が言い易いと言われるのも微妙で悲しいですが…  溜め込みだけはしないで頂きたく」


 「…はい」


 悲しいけど我慢するみたいな感じで言われてもだな… ストレス問題だったのか? ストレス・ストレス・スートレス。


 猫になったら言って良い。猫で場所を選べば迷惑ない。確かにそうは思ってる。言い難い事は〜 飲み込んでる?


 屋台村を思い出したら行きたいな。でも行けません、その理由はわかってる。納得してる。でも、猫なら行っても良いでしょう。


 そうだな、このループが俺の中ででき上がってる。いざとなれば猫でも生きてやるって考えたよーなないよーな。そーいや、さっきも結局は叫んでない。アーティスは良い子でシメて終わって我慢してないけど我慢した? 筋が通ってるから我慢じゃないけど、グッとしたなら我慢でしょうか? 自分を誤摩化し丸め込んだ? んで、ストレス? 


 意識してないけど我慢をしてる良い子ちゃん?


 溜めに溜めての大爆発か、不発でじこ〜〜っとくすぶり続ける〜〜  上手に言えない子でしょうか?  それなら、猫も出てくるか。


 ストレス溜まるとエンケイダツモウしょうにもなるかもねー? 納得してても出てくるストレスさんて強いやねー。



 

 金色が揺れて顔を覗き込まれた。



 「考え過ぎてない?」

 「いや、理由を何となく把握」


 「ほんと?」

 「言う通りの溜め込みっぽい」


 「なんと、この短時間で原因が掴めましたか!」

 「的確な治療のお蔭です。先生、腕は確かですね!」


 「ええっ! 問診だけですよ? 治療はこれからで!」

 「いえいえ、接触での治療は要りませんー!」


 「えええっ! 全く触れずに治療をしろと!? 問診だけでの判断なんて俺には無理です、非道です!」

 「なんでそーなる! って、そーなるのか」


 「では、治療を!」

 「いやもう先ほどして頂きましたから〜」


 「何ですと!? 問診以外で触診と呼べるのはアレでしたが、もしや、あっちの治療をご希望で? え、あっちでイケるの? イケたんですかあ!?」

 「いやー、ちがー!  ちょっと待つー!」


 「えー」

 「だから、まーーーーー!」


 ぎゃあぎゃあ言いつつ遊びの攻防と馬鹿やってたら、笑いが込み上げる。つか、顔笑ってる。ハージェストの顔も笑ってる。声に出したら、ハージェストも笑い出してて二人で一緒に馬鹿笑いした。


 「グゥ〜  ォンッ!」


 アーティス、吠えた。目が拗ねてた。 

 

 「ああ、良し」

 「ごめん、おいで〜」

 

 声掛けウェルカムに手を広げたら、犬興奮で飛びつかれた。



 「ワオンッ!」

 「うっ!」

 

 「そこは根性!」

 「それは無理ぃ!」


 べろんちょもされまくって笑ってました。






 コンコン。


 吐き出すもんがなくなる程度に笑ってベッドに転がって、ゼイゼイ言ってたら、ドアをノックする音がしたですよ。






 

某有名所の「残酷な天*のテーゼ」 


 

はい、本日の副題の為の辞典でございます。


 

These(テーゼ)… 独語。英語でのスペルは別。訳は定立。


定立… 論理展開の為の命題。ヘーゲル弁証法における肯定的主張または肯定的判断。階級闘争・政治での綱領。措置とか正。


対語。

Antithese(アンチテーゼ)… 反定立。


Synthese(ジンテーゼ)… 総合。定立と反定立を止揚する意。


止揚しよう… アウフヘーベン。合。  もう両方合わせて〜の考えで良いと思います… 



尚、ジンテーゼは化学意では合成とゆー訳も有りますので〜 後は任せた。




措置と言えば、救済措置に法的措置とか出てきます。残酷な天*が行う救済措置ってたらナンか違ってきそうですネ。


副題にブツブツ言ってたら関連的にどーしても上がってくる曲名でした。




後、一応。

真性… 生まれながらの性質。純真。確かな検査での疑う余地のない病気。




訳が不要と思える副題を選ばない自分が馬鹿だと思える今日この頃です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ