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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
143/239

143 四囲、泳ぐ遊魚は

 



 ぺんぺんぺーんのぺぺぺぺぺーん。


 床を猫手で叩きます。

 金魚の捜索方法はこれしか思い付きません。ノックもどきをするのですが、猫手は減り込む事も無く床は床です。波紋もできません。


 居るはずなのに姿の見えない金魚の謎。


 

 「そうかっ!」


 猫探偵は気が付いた!


 正解は、『下繋がりで金魚鉢に戻っている』だ!



 特等席に猫っ飛びして中を覗き込んだが、期待は物の見事に裏切られた。いや、猫探偵の推理が安直で間違っていた…



 「うにゃーん、どこいった〜。 あ、お前は落ち着いた? 思いっきりやっちゃったもんな、痛かったね。無事で良かったよ」


 水面から見上げる赤金魚に釈明にもなってない言いたい事だけ言っといた。代わりに、いきなり突進してきたお前が悪いとゆー責任の擦り付けはしない。


 そして猫探偵は考える。

 正解を知っているクロさんに聞くのはまだだ、まだ早過ぎる! これで泣きついたら俺が無能のよーではないか!



 黙って見つめる金魚鉢に、にゃんと閃いた!


 金魚は端に逃げた。

 そう端に隅。隅っこに暮らしてなくても隅っこに固まっている!!


 「そっちかぁ!」


 まいるーむの隅に駆け寄り、床を見た。





 見つめて見つめていないかな? ここら辺にいないかな?


 猫手でぺんぺん叩きますが無反応、何も見えません。諦めずに床を見ながら注意して進みます。ふんふんしつつ進んでますが、鼻での捜索は意識しておりません。だってそんなん必要以上にわかりませーん。



 半周して顔を上げたら、クロさん見てた。


 「クロさん、俺の金魚がいないです。出してくれた俺のきんぎょー    あーーーっ!」



 言って気付いた、だるまさんに勢いよく振り返るっ! しかし、金魚はいなかった…  どこいったあ〜    いやいやまだまだ半周です。



 自分自身にツッコミ入れて、すちゃっと顔を上げて宣言します。



 「だいじょーぶです。猫探偵は捜索を続けるのです!」



 クロさん尻尾がうにっとしたよ。


 そして俺はすちゃちゃちゃっと一周したが、どこにも金魚はいなかった… 後ろを見ても、金魚鉢を覗き直しても床ぽちゃさせた金魚はいない…


 深まる謎に… 謎は…   いや多分、下に深く潜ってるだけでしょ。俺が通る時には静かに潜んでいるんでしょう。要は誘き出した所で一網打尽にすればいいのだよ!


 しかし、どう誘き出せば…  やはりアレか、狐になれか。狙った所に出現させる。その為に音で驚かせて誘導するか、ひたすら待ちの姿勢を貫いて出現時にそこを目掛けて大ジャンプ! 


 雪の中に頭から飛び込んで、突き立った狐はカッコ良かった。頭だけが見えない狐棒な姿がイケてて笑った。



 だが、俺は頭から床に飛び込む勇気はない。よし、驚かせる手法でやろう!  …漁でも似たよーなもんあったな。んじゃ、飛びますか!



 ぴょーんと大ジャンプ。ジャンプ。大ジャンプ。


 変化なし。なーんもなし。振動伝わってんのかな?



 「むう、もう一度!  せいっ!」


 再びジャンプして、ソッコーでそこら辺の確認をだ!



 肉球マットで掛かる衝撃を殺してダッシュしようと〜〜   んあぁ?   ころ  し? 殺せた?  はい? 今の感覚なんですか?

  

 床が衝撃を強制吸収したよーな、ぷににんの感覚に足裏チェック。


 チェックに片手を上げたら、何の時間差? いやこれ時間差? 猫手にくっ付く光りの雫がトロッと床へ落ちた。




 ぴ、ちゃ…  ん。


 落ちた雫は波紋を生んでも円形にはならなかった。生まれた波形は一方向に突き進む。水面からちょっとだけ出てるナンかの背鰭みたく進んで、残していく航跡()はキラキラしてる。それを目で追う内に見えてきた色に色に色々いろろーーーーーっ!



 金魚はソコで群れていた。



 「お、俺が開けといてって…  おねが…  」


 まさか…  まさかまさかまさかの真っ逆さまに金魚は外へ出たのでしょうか?



 ちび猫ぴっしゃん!


 心の落雷に打たれて恐怖しましたが! 悲鳴を上げて駆け出そうとする気持ちを襲来した恐怖が抑え込んだのか、それとも猫としての特質に目覚めたのか?


 沈黙と無音の完璧なハンターとなって、金魚達に気付かれないよーうに急速接近しました。



 しかし、金魚達のレベルも相当なもんだと思います。どいつもこいつも水音を立てません。そんで床ギリギリの位置をキープしてる。そこで皆でヨッテタカッテ押すな押すなの牽制をしつつ、入り口から外を覗こうと頑張ってた。


 俺の事なんか全く気にしてない。波紋が到達したコトにすら気付いてない。 振り向きもしない。   俺の金魚なのに…  ちょっと寂し…   



 いや、そんな事より!



 「にゃーっ!! ダメです! 魔法生物な君達が外へ出たらどーなると! ココだからその姿が維持されてるんでしょー!」



 ぺし、べし、ぱし、ばし、ばっしーーんっ!



     じゃばじゃばっ! ばしゃん、ばしゃっしゃっ!!



 床を叩いて説教しました。出てはダメだと怒りました。

 更に続けて叫びます。


 「人魚姫のよーに泡になって消えたらどーするんですか! 泡は光に透けて煌めいて綺麗に見えるかもしれませんが、エフェクトの終了は元に戻るではありません!!」



 俺の怒りに金魚達は、『しまった、バレた! 見つかった!!』な感じで逃げました。一斉に水飛沫を上げて床下へと逃げやがりました。ですが姿が見えなくなる事もなく。赤と黒の集団は下に潜ったまま散らずにソコで固まってます。どーもこっから離れたくないよーです。



 金魚が真実理解してるか大変怪しいのですが、言葉を理解できなくても床を叩いて怒れば怖いは覚えるでしょう。そして寄らなくなるでしょう。それが躾の第一歩!


 「うむ、まぁまぁよろしい」


 実際床下にいる金魚は叩けませんし。


 ですが今回は俺が悪くていけません。そりゃー違う世界が見えたら見たいですよねえ? 閉塞感を覚えてなくても違うもんを知ったらねえ… 逆に閉塞感を覚えるわ。

 興味津々、好奇心旺盛、何だろうアレは?で恐れずにずんずん進んでった行動力は〜  賞賛に値するんですが当然っちゃー当然か。こいつらにしたら金魚鉢の中と外に大した違いはないだろう、詰まる所は部屋の中で自分ちだ。



 「良いですか、金魚達。外へ出るのは危険です。金魚である君達にどれだけ力があるのかわかりませんが、外へ出た後、帰ろうとしても無事に迷わず帰れますか? 見た目と距離はズレてる時がありますよ? 途中で迷子にならないとゆー保証もありません、迷子にならなくても力尽きたらどうするんです? そこで泡になってしまったら… ハージェストは散る散るゆーてました。術式の不発はバラけて終わりだと。

 魔法生物でも、ガードも何もない君らがナニかに巻き込まれたら…  あっとゆーまに泡消えでしょ? 誰にも気付かれずに…  上がらない金魚花火となって散りゆくだけなんて…  うう… 」


 俺は切々と訴えた。

 遊びに行った後、帰ってこないなんて悲し過ぎる。何時迄待っても帰ってこないなんて泣きたくなる。 …斥候に出して帰ってこない・やられたか、ちっ!のゲームとは訳が違う!


 ちーがーう〜〜〜っ!



 ばしばし、ぱんぱんっ! だんだんだんっ!!



 「あ」



 一人悲しみ興奮して悶絶床叩きしてしまったい、にゃー 恥ずかし〜。



 「ごめ、興奮した。驚かせ… 怖かった?  あはは。  入り口は危ないからね、戻ろ?」


 今度は優しい叩き方で、あっちあっちと誘導しようとしましたが全く誘導できません。その場でくるくると回りはするんですが〜〜  どの子も入り口から移動しようとしてくれません。


 弱りましたな。


 まぁ、当たり前か。外を見てないから諦めがつかないんでしょう。見たいの見たいのお外を見るの・見る迄こっから離れないのーな気分の子供を相手に、外を見せずに引率するにはどうすれば良いのでしょう? 怒って叩くだけなら減点マイナス加点は一切無しの〜〜  ダメさんでしょ? 大体そんなんして、おガキ様が心を開くとおもーてか! 只でさえ会話ができんとゆー試練に、 あ?



 「はうあっ! もしや、既に出た子があーーーーっ!?」



 だるまさんの勢いでクロさんを振り返ったが落ち着いてらした。何事もなさげに猫顔洗いをされるので出てったのはいないよーで安心した。



 入り口を陣取り、床下に留まる金魚達に語ってみる。



 「遊びに行きたいのはわかるけどね。君ら、金魚ですからね? 大地の中も上も泳げんでしょう? 水の中だから泳げるんでしょう? 賢い君らを弱いとは言わないけど、この部屋だからと言うのはあると思います。だけど、この部屋の空中を泳ぐ事ができないのに外を泳げるとは思いません。こっから出たら単純に墜落死ですよ」



 ちろっと横目で見た金魚鉢。


 あの中の光る水様液。床下の中、天井から滴る光り。この部屋を満たす光りの中でも、あの水様液はモノが違うと思う。金魚はあの中にいた。


 『培養液』


 そんな単語が思い浮かぶ。

 金魚は金魚鉢とする物の中で泳がせるモノ。環境下を整える必要があるのなら、出すだけの一時と長期維持は別とみた。



 「この部屋を出て、本当に君らは生きれるんだろうか?」


 金魚を眺め、考え、クロさんを伺う。



 猫笑いで逸らされた目からは、自分で考えろと読める。

 読めるから思考の海に沈んでいれば、尻尾にツンツク刺激を受けた。


 「黒金魚。 …俺が言ってるコトちゃんとわかるか?」


 何時の間にやら浮上してきて、俺の尻尾をツツいてた。他はと見れば浮上しかけてたのが尾鰭を翻し、また潜っていく。他のもあっちを見たり、こっちを向いたりと忙しい。


 同じ様に見えて同じじゃない、体を持って意志を持つ。

 

 これは、個だろう?



 「君らにも自我がある。 …クロさん、すごいです」


 自意識。


 「この部屋は、俺の部屋。クロさんは俺の番猫。クロさんが出してくれた君らも俺の物、俺の金魚。でも、意志があって望む事がある」


 自分が自分であると。


 「…まいるーむの中は安全で、ココに居る限り死ぬ事はない。そう、俺がこの部屋を必要としなくなる時、死を迎えるその時まで  君らは、この部屋で、変わらずに、ずっと  ずっとその姿で泳ぎ続ける。  この部屋の彩りとして」


 他者と自分を別ける自我、それは比較する第一歩とも言える。


 「でも、俺が死ねば部屋を維持する必要はない。この部屋は消滅 か、    あの人の元へ回収されるんだろうね」



 目を閉ざして動かないクロさんは、大きくなっただけのマスコットに見えた。取り付けてくれた、あの時みたいな。


 瞬間の痛みを感じた気がするのは、どーしてだろね? どっかでナニかの正解を読み間違えてる気がしてくると落ち着かない。落ち着かないけど、答えはどっからも差し出されない。




 俯けば、下に潜りっ放しの金魚達がこっち見てた。


 見て、ゆっくりと鰭を動かし浮上してくる。俺を目掛けて泳いでくるのもいれば、迷うよーうな泳ぎをしてるのもいる。金魚の頭は素晴らしく回ってる、知能の証明。魔法な生物であっても生きてます。 …クロさんも駱駝さんもね。



 「あの人が処分を決めるだろう。  君ら、あの人に掛け合ってみるかい? 人ではないあの人ならきっと声無き声も聞いてくれる、死と時を覆す事を容易と笑うヒトだもの。  俺の時と同じ様に  同じ物でも、違う体をくれるかもね?」




 笑って教えた。


 擬似的なナニかであっても、個を有すると見たのだから。存命する手段を知っているのだから。だから、俺が知る()を教えてみた。


 教えてあげられる事があるってゆーのはとってもいーね、素敵だね。



 金魚の動かない形相に感情は読めないけど、口をパクつかせるのに限定解除が必要だと思う。しかし、魔法生物とは言え、生まれたばかりの子に言語問題を追求するのは最低だ。てか、知能がある子に失礼な。そうだ、これからの可能性を無視している! だって魔法な生物だ!


 「でもなあ、そーだよなあ…  金魚からのチェンジを希望する気持ちが育つ可能性もあるのか…   この先、違う姿になりたいと願う様になったなら。もし、そうなったら自分で頼んでみなよ。人で無いモノを人にするのも容易なら、人以上のモノにするのも   容易だと思うよ?   絶対を手にする、あの人ならね」




 自分は自分、他人は他人。自分らしく、自分らしさ。


 口でいうそれだけで自分というものを語れるものかと思いもする。そして何を以て自分に自分を見出だすのか? 自分足らしめる何かとは何であり、何を見るか。


 俺はその一つに名前を選んでた。


 拘るのは… 拘りは要るでしょ。何も無いなら無い事が個になるのか? 流れて消える事を決めた個は個に足り得るか? 無と変わらなくね?


 決めた事すら消えてくってのは  砂上の楼閣より始末が悪そ。 いや、やっぱ同じ?



 …金魚であっても何を選ぶかは自分で選び取りたいもんでしょう。それができるなら誰だって   …………誰だってとゆーのは、決めつけ思考の思い込み信号の危険ランプの点灯思考??  うーにゃーーーっっ!




 ちゃぽ!


 「ん?」


 遅れて浮上してきた子達も俺の顔を見い見い泳いでくれます。すーい〜〜〜っと泳ぐ姿は了解ってか了承ってか、わかった的な感じ。皆そんな感じ。

 

 俺も猫顔ですからわかり難いかもしれませんが、チェシャな感じにならないよーに笑います。



 「金魚達、お外に出る希望を今は下げてくれますか?」



 ぱちゃんっ!


 「わおっ!」


 金魚跳びです! 

 これは完全な了承と理解でしょう!! 



 う〜あ〜〜〜 あっ   き・ん・ぎょ・の説得に成功しましたよ!! い、い、い〜〜〜 やったあああっ!!




 「わかってくれたんだね! 嬉しいよ、良かった。良かったああ〜〜」


 これで金魚達に外を眺めさせても、『広い海に飛び出ていこー! 今、ここから俺の冒険が幕を開けるぜぇ!』な気持ちを膨らませて潰す可哀想な事態に陥れなくて、すーーむ〜〜〜〜〜っ。



 ああ… 俺に説得のスキルが発生したな。



 実感を噛み締めてたら、金魚が俺をツンツンします。


 「わっぷ!」


 一匹がぴちゃっと跳ねて、俺の前で一回転するとゆー大変な大技を披露してくれました。なんて素晴らしい!! 


 仲良くなるとこーゆー特典が…   はっ! 違う、俺は金魚を侍らして一緒に遊ぶとゆー楽しい夢を自力で叶えたのか!?


 そうだ、叶えたんだ!!  いにゃっふーーーーー!  さっきのがっかりさんとはさよならでーす!






 ぴちゃん、ちゃぽ。 ちゃぽぽっ。


 纏わりついてくる金魚の可愛さに猫手を床へ差し入れたら。 さーしこーめーるぅううう〜〜 なんてぇ不思議な不思議床。


 流動体でありながら、そうでないものってなーんだ?



 突っ込んだ猫手に赤金魚が乗ってくる… 


 この猫手に自ら身を委ねてくるとは! 自分を好きにしてとか!!  うーあ〜〜〜、金ケツぶっ叩いたのにこの可愛さ。ダメ、もーダメ。プリケツ金魚にやられちゃう〜。



 では注意して、金魚をお手玉してみましょう。

 金魚が乗った手を上げ、上げ、  あーげーれーまーせーん〜〜〜  猫肘の稼動域を甘くみるなぁ! ふ。  


 しかし、方向を変えて猫手に乗った金魚を『ぽーいっ!』はできます。爪を出してバシィ!と横殴りするのの可愛いバージョンです。


 「そーれ、ぽいっ!」


 ぴちゃんっ!


 部屋の中に向かって飛ばします。うむ、やった事もないがゴルフのよーだ。やっぱり、これは金魚玉か! しかもオートで次の金魚玉が自分セットにやってくる! こうなるとホールは金魚鉢だが玉が生きてる事を考えると… 衝撃を考えると…   楽しいのは俺だけな金魚虐待ではないかと…


 しかし、やるからにはカップインを狙いたい。


 

 鰭を小さく動かして留まっている金魚を猫手で掬おうとしますと〜〜 金魚掬いと大きく違います。


 ああ…   ああっ、なんて悶絶猫歓喜! 賢く信頼を寄せる金魚を本気で弾き飛ばすなんて有り得ない! そんなんしたら鬼畜です!



 「めっちゃ可愛い! 順番にね〜  それっ!」


 ぽちゃん!


 腹打ちしないよーに軽く楽しく一緒に遊ぶ事にしました。


 遊ぶ金魚に重みがございます。ええ、軽い重みが致します。持っているから重さが発生する。なら、重さを感じるのは正解。金魚の体重は命の重み、俺が外へ放り出したら泡消えする程度の  誰も困らない重み。それでも掛かる重さが重いと思ったら重いんですね。



 不思議。

 俺は何時か何処かで何かの事で、『重い』とした話を聞いた気がする。



 「…どんなものにも、それなりの重みってもんが」


 にゃんぐるみは重くない。着膨れもしてないし、足裏丈夫だし。暑いかどーかは今以て不明だけどさ。この姿になってるとどーしても思うコトはある。


 印も。




 印を貰えたのは幸運。

 なら、貰った印は俺にとって幸運の証。


 LUCK値のあるゲームもあったけど、LUCK値は重くないんですかね? レベル上がったら数値が増加して値は大きくなる、大きい値は重いはず。レアの遭遇、発見、成功の鍵のLUCK。



 幸運で拾ったブツ。

 物質か物体が増えるんだから持ち物としてもプラス増。


 幸運が齎す人脈。

 物質的重みはないけど、そっちじゃない分が増えますでしょ。人との繋がりに重い・うざい・嫌なタイプが入ったら面倒。 …どんな人との付き合いも楽しいんなら重くはないか。幸運な人脈って付き合いが楽な人との限定になるんだろか? それ、いーよね〜。ひろーく・あさーく都合良く。


 ゲーム設定の範疇内LUCKとそうじゃないLUCKってのは〜〜 ナンかの芽を摘んだりするのかな?  あは。 おねえさん、笑ってそう。



 

 幸運の大きさが与える影響。

 重さが示すベクトルに厄介と思った時点で、自分が持つのに相応しいか相応しくないかとゆーよーな想いが多少は過る。


 ソレを知った人々は、ソレが欲しいと群がりタカって追い詰める。お前にソレを持つ資格が有るの無いのに資格が要るの要らんのなんちゃらと喚き立てて責め立てて最後は相応しい者に譲れとゆーカタチで取り上げてそれを後で知った御上がお裁きにお出でになられて全て纏めてうにゃーあ〜〜〜〜っと    ん? にゃは、時代劇混ざっちゃったよ。


 カンゼンチョウアクものの安定感は半端無いねー。





 他人と自分の違い。

 そこから発生するパンドラボックス。開かない様に、開けない様にするよりも。





 それらを、全部その程度と押し退けて。



 くれた優しさに 自分と  そこに引っ掛けるコトで足すコトのハージェストは。



 絶対、を。

 猫であるコトの俺をご破算には願いませんので  ええ、誰がどんな言葉で何と言おうと、この姿は俺が俺である事の証と成り立つ以上は。



 印もこの姿も手放さない。

 そのコトで聞こえる雑言は、『雑多な言葉』に変えて充分。



 俺の幸運と努力の結晶。

 貰えたモノと自分の努力。一つではないこれに掛かる重みはカタチを形に高めた自分のプライドだと握り締める。二つを共にと握り締める。


 猫であるこの姿。

 生き延びた証、自分で行動した証。一番最初、死の恐怖から  原因、理由、そんな事より  大事とするのは

 




 ちゃぽんっ! ぱしゃっ!


 「あ、ごめん。無視したんじゃないよ」


 可愛い重さの金魚にかわいーと笑います。



 …そーいや俺は重くねーから担いでいく、なんてコト言ったな。自分で自分を担ぎますと言ったんですかね? はっはっは、そー言ったんですね。


 自分で自分をどー担ぐ? 担ぐとは言わんでしょ。   ふは、自重で潰れるのに掛ける重力値はどんだけ?




 怖いとする人の気持ち。

 これが他人と俺の望みの食い合いになるってんなら負けたくないですね。こればっかりは譲らないし譲れないし譲っても意味ないし。





 何をするでもなく泳ぐ金魚を黙って見てると気持ちが和らぎます。ぽこっと顔を出すのに、にこっと笑います。 …世話も不要な金魚は見てて飽きないです。それとも飽きるでしょうか? 俺の金魚でも。  ……世話焼きしてるほーが飽きないか。



 「あのね、赤金魚が一匹で待ってます。一匹では寂しいです。だから、あっちに戻りましょう」



 笑って一歩踏み出せば、了承の様な水音をさせて泳ぎ出す。


 前、右、左。

 後ろも確認すれば、ちゃんとついてきてました。






 灰色猫の歩みに、赤と黒の煌めく金魚が従います。


 じゃばっ!


 跳ねると魚体が放つ煌めきも小さく散る。回り燈篭でもないけど、それ以上。花の灯りは嬉しかった。今思うとあれは風情か風流か? 金魚の灯りも負けず劣らず洒落てるね。


 俺を囲んで先に後に。

 暗い場所であったなら、その身を灯りと供して泳ぐ事だろう。






 てこてこ歩いて行きますが、お楽しみの引き延ばしにうろちょろしたり、ちょっと止まってみたりして。左右と後ろの子は進みませんが、前を行く子は進みます。


 気付くと、あれっ?な感じで急いで戻ってきたり待ってたりするのが〜〜  もう本当に可愛いのですよ! どしたの?な感じが良いんですよ!!



 ちび猫大名金魚行列、正面に戻ってクロさん終点まであと少しです。



 「で、クロさーん。この子らって部屋から出したら泡消えしちゃう? 泡切れはスパッとした方が良いけどさあ」



 金魚鉢の隣で待ってくれてるクロさんは、お返事に手振りをくれました。その手振りがどっちを指しているのか、よくわかりませんでした。ですが手振りを続けられ、違う手振りをされました。


 「? わからず」


 止まって首を傾げば、黒い猫手がビシッと俺を指しました。しかし視線に手線は俺を通り過ぎているよーなので、くるっと後ろを向きました。



 「な。 な、な、な! 何やってんのーーーーーーっ!?」


 

 数匹が入り口で、入り口に、入り口から!



 「出るなとゆーたのが、お前ら  わからんのかああああああっ!!」



 ちび猫の高速ダッシュを甘くみるなよ!


 「こんの! どうっ!」


 左にゃんこキックでばしゃん!と蹴り飛ばし、右にゃんこキックでげしっ!と床下に沈めてやりまして、沈めた踏み足を軸にとうっ!とジャンプ致します。飛び出た黒金魚を頭から猫片手で華麗に空中キャッチ! 空中にゃん回転で姿勢を戻しつつ、部屋の中へゴールデンボールを力の限りに叩き込む!!



 「 〜〜〜〜 ふにぃっ!」


 だばんっ!


 小さくも良い気合いが入りました。

 猫肘角度に猫腕力の問題で叩き込めたのは奥ではなく入り口でしたが〜〜 ノーコンではございません、にっふー。そこそこの投球に満足です。そのヘンでまーだ粘ってたら衝撃波は良い牽制になるだろし。そう、俺は牽制球を投げたのだ。



 ばしゃんっ!! 

 

 「まじで牽制球になったんかい!」


 叩き込みと同時に顔を出した黒金魚がビビって跳ねて潜ってった。ほんとに油断も隙もない! 



 「ヒ・ト・の・話を聞けや、きんぎょぉおおおっ!」


 ちび猫、怒りましたよ!


 入り口で猫様立ちしてぷんすか怒りましたらば、こっちを見てるクロさんが金魚鉢の縁にぽすっと手を置かれました。




 ぷしゃあああああっ!



 「にゃんと潮吹きーーーーっ!   あいや」


 叫んでから自分自身に突っ込む、ドコに鯨がいるっての。



 噴水が上がった後は光りの水が溢れ出す。


 ざっと溢れてひたひたと押し寄せ、直ぐに俺の足にも絡み付く。そして勢いを保つ流れは入り口にだっぱん!とぶち当たり  …当たりましたが当たらなかったよーに消えていきます。外へ溢れてないからどーにかして循環してると思うんですが、さーっぱりわかりません。そして勢いに転けるかと思ったんですが、転けもせずに猫立ちしてました。


 でも、金魚は違ってた。


 流れに逆らうのは本能なのか? 皆ばっしゃばっしゃバタフライして金魚鉢に向かっていきます。 ……噴水は帰還命令?



 「あ。  ほら、頑張れ〜」


 一匹が流れに勝てずに流されてる。

 頑張って金魚鉢に向かってバタフライしてるから、流されるのは不本意っぽい。あぷあぷしながら頑張ってる姿に体力の無さも個性かと思う。皆が皆、できる子じゃないよーです。


 …金魚の水流れ。他の子はできるこの状態。この子は落ち零れといーますかねえ? どーなんでしょうねえ?  言うんでしょうねー、言うヒトは。



 「ああ… どーしても流れちゃうのね、君は。頑張ってるのにね。もしかして色々やって疲れた?」


 ご飯が要らない分、休息が大事なのかも。

 あぷあぷする子の応援につく。流されるのを猫手キャッチ、頑張りを無には致しません。ですが防波堤以上の事はちょっとねー。


 早い子は床ぱちゃしてた。しかし、力尽きて流れてきそーうな子は他にも数匹いるんです。


 「あ、これならイケるかも」


 溢れる勢いが弱まってきたので頑張りどころです! 



 

 クロさんはスパルタでした。

 たしっとされて第二波がさばっ!と発生したんです。ちっとも先に進めないこの子は果たしてあの波に乗れるんでしょーか?



 想像でヌルくなった俺の目に、流れる赤い影が掠めた。




 「え?  あーーーーーーーっっ!!」



 瞬間の出来事でした。

 第二波波乗り赤金魚サーファーが入り口へ向かって一直線!


 「なんでまたっ!   …まさかお前、気絶赤かーーーっ!?」


 

 叫ぶ俺の目の前で、気絶赤は見事な大ジャンプで部屋を跳び出した。






 赤金魚は放物線を描いて上にいた。

 なんでかめっちゃスローモーション。どーしてあんな静止が?と一瞬でも思った自分が馬鹿。 



 姿が、そこでブレてた。

 金魚の姿も赤色も、ブレてカスレて消えていく。属性のキラキラも消えてた。咄嗟にちび猫大ジャンプを敢行したが、伸ばした猫手はスカって届かなかった。


 「にっ!」


 猫手を上げて落ちていくのは、俺。

 消えていくのは、金魚。


 心臓ギュッと掴まれた感じでも空中にゃん回転に体勢変えたら、目の前に足場。とすっと着地。  …ちび猫、十点! 華麗なにゃん着、大成功!




 着地場所はキラキラしてた、滑り台が平均台になってた。


 そこから仰ぎ見た金魚は更なる泡消えに、その姿を失い…  俺はそれを見る事しかできずに…  



 ヒュッ!



 「あにゃ?」


 ほんとーにあっとゆーまでした。


 部屋から金の → っぽいのが飛びまして、赤金魚の手前でぱんっと炸裂してぐわっと覆い被さりましてね? なんか投網っぽくですね… 


 今、金色の球体になってます。中で赤さが滲み出て、姿が再び浮かんできて。  あ、赤金魚ーーーーっ!  お前、無事で!



 「に、にぁあ… 」


 涙溢れる感動のご対面シーンのはずなのに、赤金魚こっち見ません。球体投網の中でくーるくるくる回ってます。そして金色に光る投網がずーるずーると引かれて、部屋の中へと入っていきます。



 クロさん、さすがです!!


 あの手振りは『心配ないよ』で正解だったか! あ〜〜〜〜〜〜〜 良かったあ。 それならもっと早くやってくれたらいー  じゃない、準備も負担も要るはずだ。責任転嫁に自己本位すな!


 泡消えする寸前でも助かった。失われかけた金魚の姿を取り戻し、生き延びた。死は怖い。 これで気絶赤も外へ出ようとは考えないよーになるだろう。うん、結果オーライ!


 俺ももーどろっと。


 

 「ん、  うん?  あ?」



 タタッと部屋に入ってピタッと猫足停止です。ハージェストの声が聞こえたよーな?



 「………あ? あれ?  んん?     何処にっ!?」


 澄ました耳に鋭い声が飛び込んでビビります!! 突発性にあせあせしますが、ちょっと声が真剣です! そのまま、くるっとUターン!



 「にゃーんっ(こっちー)!」


 しゅたたたっ


 滑り台に戻ってなかった平均台をそのまま突っ走り、先端から飛び降りる! ベッドの真上ってのがわかってる〜う。 とうっ!



 「あっ! そっちぃ!」



 びよよん。


 「にああっ!?」

 「げ」


 ヘンな弾みにヘンな飛び方なって、あーーーーーーっ!  平均台じゃなくて、これ飛び込み台だったあーーーー! 








 

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