表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
141/239

141 一転一心、二心が架する

  

 


 『褒め称えよー』  



 意気揚々と出てきて、そーゆー事を言ってみました。はい、言いました。言ってから、調子に乗り過ぎたかな?とは思いました。けど、宙を飛ぶ影にハッとしました。


 何だ、今の!


 凝視した物体Xは正体を見切る前に、ベチャッてな音をさせてテーブルの上に消えてった。んで、飛んできた方向を見たらハージェストが両手を広げて満面の笑みでいた。


 「あー、可愛い〜〜! 上がれる? そっちに行こうか?」

 「にゃあああ〜」


 褒め称えリクエストにあっさり答えてくれたんで、照れ臭くなりました。ちょっと恥ずかしくなりました。やぁああっぱ、ハージェストには通じてるよねーとも思いました。



「そんな風に小首傾げるともう可愛いのが! 可愛さがぁああ〜〜」 


 繰り返されるラブリーコールに気分は上昇します。浮かれてぴょんぴょん跳ねながら、ベッドへ向かいました。



 下から見上げて二足立ち〜。

 手と尻尾でちょいちょいとバランス取りながら、そーれっ。


 「なーー!」

 「惜しいっ!」


 ちび猫短足じゃないんですけどねー! 違いますけどねー! ベッドに高さがあるからこーなるだけだ!!



 一発で跳び上れない高さでも、よじ登りはできるから問題ない。猫爪は健在だ。しかし、お迎えの手が降りてくるんで動きません。掬い上げてくれる手に身を任せる。


 わーい、エレベータ〜〜  楽ちんですな〜。


 引き上げ完了後も近づく顔に、ありがとーの気持ちから頭を寄せて自分から動物スリスリを実行する。



 「あ! あ〜、嬉しいなー。 うはうはうはは〜 夢の一つが!」


 待てや、夢の一つが叶ったみたいな事をゆーのはおかしくないか? アーティスとやってっだろが? ん〜?  …まさか召喚獣での夢がとか言ってんのか、こいつ?


 …ああまぁそうだなー、俺が真正だったらその夢はとっくの昔に叶ってたなー。そーゆー意味では可哀想な奴ではあるんだが。



 猫頭をぐーりぐーりと顎の下辺りに擦り付けながら、そんな事も考えた。ちび猫に成れる事がいーのかどーか? ちょっとばっかし複雑な気分になりますな。しかしサービスも大事ですしねぇ?


 更なる安定求めてボディタッチでべーったりしてみた。



 「な〜〜ああ」

 「そう、その顔! そのご機嫌顔!」


 

 へ? 今の猫顔? よーわからんが…  この顔でぐるったと。  そーかそーか、ふーん。



 「にーーーっ」


 下ろせと要求してシーツの上、白の大地に降り立つ。


 リクエストではないリクエストだが受けて立とう。受けてやろう。こいつの中に植えつけられた偽物の影を払拭してやろーではないか!


 そんで、ちゃかちゃかぐるってやりました。

 ベッドの上でハージェスト見ながらぐるったところ、高速ちゃかちゃかに足が足が 猫の足が…  三周目で転けた。ズベッとすっ転んだ。


 ベッドの上なんで痛くはないですが、ものの見事にすっ転びました。すっ転びにビックリして声も出ませんでしたよ。



 「ん… んみゃ… 」


 よろしいですか? 猫足が短いんじゃないですよ?  シーツに足を取られただけだ! シーツに穴と裂け目を作製してはならんとブレーキ()効かせてないんだよ!! その所為なんだよ!!



 「ああああ… やっぱ、生が一番興奮するなぁあああっ!!」



 すっ転んだ状態を維持しているので、猫としてはなかなかにあるまじき姿で俺は思う。その意見に納得も賛同もするが、コレがソレに該当するのはおかしかないか?

 

 首だけ起こしてフテにゃんしてたら、手が伸びて俺を持ち上げ膝の上へ。


 ハージェストの腹に猫背を凭れさせ、上を見上げて「にゃーん」とね。そしたら、ハージェストの手が俺の猫手を掴んでよいよいとします。しますんで、俺もそれに乗って姿勢のあまりよろしくない〜 両足伸ばしてだらけたカッコで招き猫猫遊びしてみました。


 「んにゃんにゃんにゃあ〜」


 これでナンか招けたら面白ですな。

 …変なのは来なくていーから、呼ばないから。呼んでないから。呼ばないゆって呼ぶ逆リクエストしてないから。お約束なんて一つもないからあ〜。


 しかし、ラブリーに招くとゆーのは良い感じだ。いや、ラブリーさで招くのか? ラブリーさが招くのか? ううむ… ちび猫進化に招き猫をリストしとくか。

 

 ま、にゃんぐるみに進化はねーから夢の無い遊びでも遊びは遊びだ遊ばいでかあ〜〜。



 「あはは、あーもーこの猫手がちっさくて可愛い〜」



 引き続きの遊びは手のぷにぷに遊びで爪出して引っ込めて、出して引っ込めて〜。これやると何時かの火遊び思い出す。 …キラキラは火遊びじゃないか、にゃはん。



 そんなこんなと一緒に猫遊びをしながら考えてます。


 こいつは用心深いとゆーか慎重とゆーかなんつーか。 …確認は忘れない・怠らないタイプだと理解してるんですよ。それがですね、なんであんなに物分かりがいーんでしょ? 確認が取れてないのになんで納得してるんでしょ? セイルさんが言ったって事と証拠がない事、自分もへーきで外部からの要因が見当たらない。


 可能性がない。


 それは理解するんですが、この一言で密室殺人事件を自殺判定してると思うんです! 密室のトリックを考えずに終了してると思うんです!!


 おかしいでしょーーーー!?



 ええ、どう考えてもおかしいです。俺はこいつの状態とゆーか思考になーんか納得できないんです。自分の事なのにどーしてだ? ナンかの混乱を沈めるのに俺の姿を選んだっつーのはある意味で光栄。光栄だけどよー、追求の過程がなんかこー…  力の痕跡が認められないからってこー…   思考の放棄を疑う。


 「にあ〜」

 「あー、ほーんと柔らかい体してるよねー」



 でろーんと体を伸ばしつつ、自分の直感を信じる。

 対物センサーでも対人センサーでもない、幻影センサーが反応している! あったなんて知らんかったけど勘違いじゃねーと思うんだ!!


 ナニかが俺のカッコしてこいつを騙くらかして遊んだって気がすんだよ!!  …そーだな〜、幻影センサーじゃなかったらアレだわ。


 ヒトのシマに入り込んでナニしてやがる!?って感じ?


 『ココは俺のだ!』


 どっかにこう主張したいんです。さっきからずーーーっと、この気持ちがぐるんぐるんとでんぐり返しとゆーか止まらんのですよ! 俺の内で。


 にゃんぐるみ着た所為か、ひっじょ〜〜うに俺のシマを荒らしやがったー!みたいな気分がですな… 


 

 「あ〜、可愛い〜」


 しかし、そろそろやめれ。あんまり猫っ腹を撫でるなっつーの。俺の場合は中のヒトではなく、中はヒトですからね?


 「にーあーあ〜」


 …やめれとゆーのがわからんのか、お前は! 全くもう! しつこい!


 「あたっ」


 猫足で一撃入れといた。


 …しまった!! キューティクルなくなったら、この手で洗って貰わないといけないのに!  にゃんぐるみの艶出しは自分じゃ無理なのに! 大事な大事な手を蹴ってしまった、やっちまったい!!  



 ……なんだ、この顔なら大丈夫か。






 では、始めましょう。


 「動かずに?」

 「に」


 人ならわからずとも猫ならわかる!

 どっか残念でも気にせずはい、にゃんこアイズ・さーち〜〜〜!



 「…どう? 何かわかる?」

 「……………… 」


 猫目さーちを稼動させても光感度が大変低いのですが。いえまぁ以前も低かったですが。あの時以上に光が弱くて弱々しくてろくすっぽだな…   


 「…わからない?」

 「にー、あー」


 「え? 力を放出しろ?」

 「にー」


 「あー…  さっきちょっとやっちゃってさー、あんま残ってないんだよねー。あはははー」

 「にー!!」


 「え? 残ってる分だけでも出せ? え」

 「に〜〜!!」


 「え、え、早くっても… 」

 「にーー!!」


 「ええっ! そりゃ根性はあるけど!もうちょっ  もうちょっと時間がさあ〜」

 「にー!なー!にー!」


 「え? うわあっ!」



 嫌だ嫌だと猫騒ぎしてみた。早く出せと責っ付いた。腹にどすっと突撃して服を咥えて頭を振って、猫手も一緒に突っ張って、腹をもにもに押したった。爪だけは出してません、咥えも甘噛みマスターしとります!



 「うわあああ〜 あ〜 あ〜 あ〜〜  嬉しい楽しいこの感激にコレもうどうしよう」


 結果、ハージェストの手に取っ捕まり頭から撫で繰り回されて遊ばれました。いや、遊ばしました。弄ばれたとはまた違います。手法としてはどーかと思うのですが、成功したよーなので良いでしょう。これは目的の為に体を張ったとゆーのです。 …一緒に遊んでただけだとゆー心無い言葉はいーらーん〜〜〜。



 「ちょっと待って、頑張るから」


 ベッドから降りて床に座ります。きちんとやるならベッドは良くないと言うんです。まぁ、そーですね。そんで椅子に座ってやろうとしたけど、それしたら猫の俺と距離と高さができるじゃねーの。それを気にしての床座り、なので俺も床座り。


 「に〜」

 「ん? あっは、そんな事は気にしない。そこに居て」


 「にっ!」



 まずは胡座を掻いた楽な姿勢で深呼吸を始めました。


 口を僅かに窄めてやってる姿に「悪かったかなあ… 」とも思うんですが、こーゆー事は早くするべきだと思います。気にしつつも『後で』にしたら、酷い事になるパターンがあります。そして「あの時してたら!」って嘆くんですよね、漫画でもナンでもそーゆーパターンよくあるだろ。


 このパターンはジャンルを問わないのがミソだと思う。

 

 だから!俺は!無理でも!今! させるんでーす。鬼猫してまーす。 …パンダは熊でしょ?  くまあっ!




 姿勢を正したから、俺も猫背をもっとピンとさせてハージェストを見てます。視線は外しません。ちゃんと見てます、見守りとは違うのです。


 そして、ハージェストの体から淡い光りが…  見え出した。

 淡い淡い感じから徐々に徐々に色付いて、色付きに煌めく光りもありまして。光りの人だと思ったセイルさんと同じよーうな光りを…  体から滲ませ始めた。


 見える。


 この光り。

 この光りを雫として俺はこの手に貰ってる。貰って纏おうとしてる。百聞は一見に如かずって、ほんとだよなぁ。


 んで、ささっと猫手を見たがわからない。

 貰ってるはずだが纏えてるかわからない、人であってもわからない。全く困ったもんですなあ、あっはっは! どちくしょう! 共振とかで見えるかと期待してたのに!! さすが俺のにゃんぐるみ!


 わからなくても、きっとできてるできてるできてるはずだ! 絶対きっとでイケてっだろー!




 ハージェストの身を彩る色がゆっくりと濃くなって、煌めきが増していくのを見ていると気分が上がる。ガチで上がる。なんでか興奮してくるですよ!


 『うひょおおおおおおっ!』


 心の中でどーしてか湧き上がる奇声か気勢を上げたら、いきなり消えた。綺麗さっぱり突然消えた。余韻もへったくれもねえ。どーしたと!? 



 「あ〜〜  ごめ、やっぱ無理だわ」




 こ、こ、こ! この根性なしさんがーーーーーーっっ!!





 「うにーーーーーーっ!」

 「えー、そんなあ〜。一点突破の限界突破なんて命を削ったところで絶対にできるってゆー保証も確約もどこにもないから不発も普通にあるってえ。絶対にできる都合良さって笑うってえ」


 「にゃーーーーーっ!」


 カラッと笑うのに余裕を見たぞ!?



 更なる突っ込みを入れようとして思い止まり、本人の自己申告を採用した。ゲームなら可能でもリアルなら難しい、よくある現実です。それに頑張ろうとした事実を考慮しないのは〜〜  ダメダメさんでしょ。お願いを命令系に変え始めたら〜〜  のーみそ薄くて軽いねぇ、あーはははでしょ。カッラカラ〜。

 

 でもなー、あの光りがもーーーーっと強くなってはっきりしたら。あのまま見続ける事ができたなら。俺は『こ・れ・だーーーーっ!』なんて思えたんだろか?



 残念です、タイミングが良くなかったのが悲しいです。


 しかしだ、俺は非常に重大な事実に突き当たったのを理解した。



 今度ちゃんと見せろよーの約束から、見るのは今日が始めてです。俺としては人の時に見たかったんですけど〜 ま、猫目の方が確かだから良いでしょう。

 盗み見、覗き見、エチケット違反に見えちゃったの〜ではなく、今、はっきり見たるわ!状態です。今が正式なスタート地点です。


 では、初めて見た光りの中に異質なモノが混じっていると見分けるにはどんな方法を取るのが正解でしょう?

 


 チッチッチッチッ  チーン!


 答え。

 あからさまに違うと思えるもんがなかった場合、そんなもんはわかりません。不明瞭という問題ではございません。普段を知らんのです。


 薄い色の中にポツンとわかり易く濃い色が、『原因は此処だ!』と主張してたら誰でもわかるでしょう。しかし、そんなんございませんがな!! 区別の一つもできんのだよ!! 


 光りが見え始めて興奮して終わり。ナニが変かナニが違うかもわからない。判別に至る以前の問題が突き付けられている。


 これをどーしろとゆーのだ…



 考えれば考えるだけ自分の無謀さが際立つ。『偽物が出た!』と思った根拠は俺の直感だが…  頼りの直感がほんとーに頼りなく…




 「に… にぃい〜〜〜 」

 「え?  そこ、萎れない。落ち込まない、俯かない〜 こっち向いて〜  ほーらほら」


 顔を上げたら俺の方に片手を出して、かもーんをしてた。下手からのチッチッチッチみたいな指の動きがアレですが。



 色も光りも消えてしまった。

 それは散ったからだ。散っても今ならまだ空気中に漂ってる… はずだ!


 今の時点で見えてない。しかし、ハージェストは頑張った。んじゃあ、俺も頑張らなくてどーすんだ。試す前から終わってるとか思うなだろ!


 見れる、見える、俺は見るんだ。目を潰すよーなのないから見れよ! にゃんこアイズさーちを高出力にしてだーーー!!  …セイルさんがきたら泣く。



 「にあ〜っ!」

 「え? こっち、来ない?  ど、 どーしたのかな?」




 ギンッと睨みました。

 猫四つ足になって、ふーっふーっと唸りながら「正体じゃなくてもいーから、片鱗だけでもいーから俺は違いを見つけるんだ!」と息巻いてやりました。




 ハージェストに足すコトの周辺の空気〜。



 はい、ご破算に願いましてえは〜〜〜〜     ジャララララン〜〜。 




 ちび猫、撃沈しました。

 べたんと尻から落ちて、ぺしゃんと突っ伏して、泣きながら敗北宣言を出しました。





 「…どうしたのかな〜?」

 「みーにゃーあ〜〜〜ん」


 

 あんなに偽者が出たんだと腹立てたのが悲しい位になーんもわからず。あんなに俺にはわかるはずだと思っていましたのに全くわからず。根性出して頑張ったのにわーかーらーずう〜〜!


 この現実に、言うのも恥ずかしい程なーんもできないちび猫に…  俺自身に…  自信喪失とゆーか項垂れ… いや、顔面から突っ伏してるから項垂れるにもなれない。



 「何をそんなにがっかり… そんな可愛い格好(ごめん寝)でやられるとね?     うあああ! その尻尾返事が可愛いんだって!!  尻尾返事はズルいってえ!!」


 俺の体が宙に浮く。そしたら普通にご対面。

 そこには輝く笑顔がありました。


 「心配させてごめん、気遣ってくれて有り難う。今回の事は俺自身が初めての事で上手く対応できてない。だけど、これは俺自身の問題だと思う。外部干渉から成るモノも成り立つモノも本当になかった、それをわかっているから俺もこうして落ち着いて居られる。他にあるとすれば君との事だけ、ではあるんだけど」



 抱き抱えにこっちからもべーーったり張り付きます。落とされる事はないだろうが俺も落とされる気は無い! でも、やっぱり無い胸はちょっと寂しいね。リリーさんで知っちゃったからな。




 「にーにゃーな〜」

 「え? あは、それでも少しは見えたんだ。良かった」


 「なななななーー」

 「……そうだね、そうだ。力を纏おうって俺から言ったんだよね。 …俺が言い出して実行した。はい、その通りです。君の手に俺の力を重ねようとしている」



 俺の猫手に自分の力が見えるのかと聞けば、猫手ではわからないそーだ。にゃんぐるみの高性能が悲しくも誇らしく。性能が低い方が良いとは言わね。


 その間もずっと猫背を滑ってく手が気持ちいーです。これもスキンシップでしょう、肌と肌ではありませんけど。







 それから一人と一匹はベッドの上にごろーんとします。ごろーんとして話します。俺との事と言ったんで内容を追求しなければ〜。



 「うん、その時にね。君が出した黒い力が直結してさ。直感… と言い換えて良いのかな? 見て蓄積してきた知識がソコにガチッとに嵌まったって感じでね。そっから一方向にこう〜〜  だーーーーーーーっと思考が傾れてしまいまして」


 何かものすごく怖い事を言われた。

 ごろーんと猫万歳してたのを取り止めます。ゴロンと一転、猫スフィンクスに早変わり。


 「にゃああ?」

 「え?  …だから君が出した黒い力だよ。ほら、最初の時に君が」


 「にゃーー?」

 「…まさかで記憶無し? いや、無意識?」


 まじまじと互いの顔を見てました。

 黒い力といーますが、なんじゃらほいですよ。


 「えー…  そんな本気で極め人。  こっわ〜あ」

 「にゃああ!?」


 ちょっとー! ちょっとなにその顔! 俺、変なコト言ってないですよ!



 怒ろうとする前に手が伸びて、俺の猫顔をぐにむにします。しますが嫌な気にはなりません。猫だからでしょうか? 褒め称え系列のかわい〜の一環だからでしょうか?



 そして黒い力とやらの説明と、それが何時だったかを話してくれた。


 説明に貰った印を思い浮かべ、覚えはないが理解はする。

 オートファジーはないから自意識を強く打ち出せか。そのままやってたらどーにか連絡ついたんかと思うがナンでか何かを忘れてる気もする…  はて? 注意事項をどっかで聞いたよーうな?  いや、注意事項はちゃんと聞いた。   他に話してくれた時なんてないぞ? 



 「その力がとても強くて凶悪で。 手合わせでは君に力を感じた。 だから短絡な俺の頭が君の所為だと叫んでさ、君の手に俺の力を重ね始めてる事実も忘れてしまった。 …その程度と放り出す気概すら思い出せずに  重ねる事の    ……ごめんよ、頭がごちゃごちゃしてるのがわかるのに上手く整理できないでいる」

 「…なー」



 寝転がって漫画読む体勢と言えばわかるでしょうか? 肘で起きて、組んだ両手で目元を隠してるので苦悩と言って良いか不明ですが〜〜  最後の声も小さくなるから何と言いますか…



 「ふ、  うぁ」


 下向いて吃ったのにえーとですな。えーと、えーと…


 「う… 」


 え、何? 泣き? まままっ まさかね!?   え、え、どーしどーされま!      あ?



 「ふう  ぅ」


 手を外したハージェストの顔は歪んでた。目尻に涙がきらりんしてるよーな…   と見えたんですがぁ。



 「う、あぁあ…  」


 真実は欠伸をしてた。噛み殺しを頑張ってたが殺せてない。


 アナタ目が半分死んでませんか?  …あ〜、ダメだ。もうイッてるイッてる、あれイッてるわー。すんげー不機嫌な顔っつーか意地で寝落ちすんのを頑張ってる顔してるー。


 …ガチでシリアスな話をしてたのに寝そうとか。寝るんですか。





 「……ごめん。まだ話したいのに、ごめん。  どうしてだろ、すごく  何か眠たくて」 

 「にゃ」


 「 …おかしいな、睡眠を要する程に使い込んでは   ふ、ぁ  」



 また欠伸した。もう限界っぽい、頭がグラついてる。肘に一撃入れたら、そのままばったりイケそーですなあ。


 「なー」


 無理すんなよって言ったら曖昧に笑った。

 笑った顔で目を閉ざす、唇が小さく動いたけど聞こえなかった。


 首を傾げて見ていたら、体勢を変えようとしてる最中に斜めにズルッて寝落ちした。



 さすがに顔面強打はしなかったんで良かったですよ。


 眠ったよーです。そろ〜〜っと近寄ります。こそこそと猫顔を寄せ、鼻息が当たる状態を暫くキープ。 …うむ、猫髭ピクピクさせながら感じましたところ規則正しい鼻息ですので大丈夫、正常に生きてます。


 顔を見ながら、再びそろ〜っと移動を開始。


 「…!」


 あっ ぶねー! 手を踏むとこだった。

 俺に伸ばそうとした片手は下向き、下になった方の手は上向き。その両手を眺め、手のひら見つめて自分の猫手を見つめます。のーみそナンかを弾きます。


 

 貰ったのは手のひらに消えてった。押し付けられたのは手の甲。そこにハージェストのを重ねてる。クロさんのはにゃんぺっち。にゃんぺっちは怖いです。



 ハージェストの手のひら。


 ちょーーっと見つめて考えた事に頭を振って、すすすっと後退。 


 にゃんこアイズさーちをもう一度強く念じる。思い付いて、『忍足発動!』もやってみる。 …気分だけでも違います。それが『きっとできる』の成長のはず。


 そんで寝てるハージェストの周りをぐるってみた。


 何もわからん。は。



 正面に戻ってお座りする。またハージェストの手のひらを見つめ、自分の猫手を見る。爪をキュッと出して引っ込める。


 俺にクロさんのよーな肉球衝撃はできないが、 いやいや、猫レベルが上がったらもしかして? …まぁ、無理だろう。あんまやりたいと思わんし、そんなんやり始めたら遊びじゃねぇし。 どんな遊びにもルールはあるってもんだし〜。 …そういうコトを弁えない馬鹿が平気でコロシをするんだよ。  へっ、カラッカラ〜のカーラカラッ。






 お座りから猫スフィンクスになって、寝顔を見て。頭を振ってこの思考もペイッと。

 

 大事な方を考える。

 さっきの説明の裏は『俺を疑っていた』になるはず。だーーーっと一方向に向かったらそんなもんだろ。 そー考えるとこいつはどーやって方向転換したんだ? いや、転換の切っ掛けはどーでも全部話そうとしてくるのがだな…  


 力を使えて勉強もしてる現地の人間。その中でも貴族と呼ばれる位置に立つ。


 疑いを覚えた相手に全てを話す?


 貴族間で陰湿陰険裏からこっそりはあるから、一番に覚えるのは安全地帯と把握の方法だと教えてくれたこいつが疑いを覚えた相手に葛藤を覚えなかったとは〜〜   思えないんだけどよ。




 ちょいと猫手を伸ばして手に触れようとする。


 猫手では距離を埋められないので届きません。爪を出しても届きません。だから安心して爪を出してスカスカスカスカしてみました。


 葛藤についての考察しながらスカスカやってたらなんでか笑いが込み上げて。顔がにへら〜〜となりまして。猫顔のにへら〜がどんなんかわかりませんけど、貶め笑いに見下しでない事だけは確かです。そっちの気分ございません。



 「にゃふにゃふ んにゃふううううっ   …!」


 うっかり声に出してたよ。

 起こしてしまうと慌てて口を閉じたが笑いが止まらんで止まらんで止まらんので〜〜 思い切ってやってみました。ちび猫ですから良いでしょう。


 そろっとそろっと近づいて、こそっとこそっとやりました。そうっと静かにやったんで、物音一つ立ちません。つか、これで音がする方が怖い。




 手のひらに、猫手をこっそり置いてみました。

 置いてもテガタは残りません。ずっと残ったら皮膚の弾力性を疑う。






 ……にゃふ、にゃふ、にゃふふふふふ、いにゃっふー!


 いやー、なーんか妙に小っ恥ずかしくなりますな!! 照れも入ってきますなあ! いやいやもうもうなんでしょか! この妙な悶えは!! なんかテレッテレのテレがですなあ!


 ちび猫、ごろんごろんの猫暴れしたくなってきてますますますですでます!!



 「うにゃんっ!」


 ぷすっ!


 『 …にぃっ!』


 うひぃ!! 爪出ししてシーツが! じゃない、立てた真横にハージェストの手があああっ!!!




 おおおおお、恐ろしい猫悶えのごーろごろをやっておりました。危うく寝てるヤツの無防備な手をぶっすり突き刺すトコでした!!



 にゃん尻振って大急ぎで後退しますです! 

 恐怖で一気に冷めましたんで大丈夫、落ち着きました。正気です。あー、ビビったあ。意識の無い相手に黙って猫爪ごーもんするトコだった…



 気を取り直して今後の課題を考えます。


 しかし、こいつほんとに大丈夫だろか? さっきの落ち方は疲れ切ってのすっこーん。前の時と同じだな〜と思ったが…   自分の魔力量を把握してる奴がおかしい言いながらソッコーで寝るってどうよ? なんか怖くね?危なくね?



 急に不安になったんで、もっかい生存確認しにいった。ふんふんしてたら俺の鼻息が当たったよーで、「ん、 ぅ」とか言ったんで下がります。腹の付近で引っ付いて、丸くなってよーかと思うけど寝返りでの圧死は遠慮する。ぺっちゃんこは嫌だ。こんな体重ある奴は危険だ! 人モードでも俺がこいつをベッドに引き上げるのはキツい!



 また猫スフィンクスになりまして、中断思考を再開します。  ……はれ、ナニ考えてたっけ?  あ、纏う色の考察か。


 違いに比較するべきもんは〜 え〜 ロイズさんとレフティさんはこっそり見で〜   …アレにセイルさんの照り返しが入ってたら終わってんな。セイルさんは強烈だからな〜  んじゃ、参考から除外すると〜 んむ、やっぱ再考察するだけ無駄だな。他に対象ないから詰まって終わりと。


 

 他は〜  貰った印か。

 クロさんに聞いたらわかるかな? でもクロさんはマスコットだからなー。役目の番猫以外の事を聞いてもわかるのかなあ? そーだ、夢での件も聞かないと。 


 今から聞いてこようかな? ハージェスト寝てるし、起きそうにないし。ん、セイルさんとも約束したから聞いてこねーと。



 顔を上げてハージェストを見る。


 ぐっすり寝てる状態で、夢見も悪くなさそーで、呻き声も苦痛の表情もしていない。だから、多分ちょっとまいるーむに行ってきても問題はないだろう。ぼっち演劇は聞こえたから、部屋の中でも近距離なら聞こえるってのはわかってるし。


 起きて居なけりゃきっと呼ぶ、聞こえた時点で飛び出せばいーだろう。

 

 俺は暇だし、ちょっとの間。

 時間を無駄にするのもアレでしょう。時短じゃないけど活用がだよな〜。



 そう思って立ち上がり、ベッドの縁へと踏み出して、床への目測・準備の足踏みふみふみふみふみ その場でふみふみ半回転。そのまま進んで戻って、また座る。

 


 …待て待て、俺。ハージェストは俺がくたばってる間中、ずっと付いててくれたのに俺は何をしよーとしてますか? 起きた時にぼっちを味わわせると? 同様な時に俺はしないとゆーのかね? んん? 



 ……迷うだけ無駄。一緒に寝てた方が有意義。


 んじゃ寝るかと思ったら思い出した。

 起きたら誰も居なかった。そしたら、ハージェストが「気がついた」言いながら入ってきた事あったなー。


 よし、やはり済ませられる用事は先に済まそう!

 まいるーむにハージェストは入れんのだし  って、本当に入れんのだろか?  あ〜〜 そこんとこどーなんだろ? 俺の部屋だけどなー   うーん。



 「に」


 ちょっとクロさんに聞いてくるよ。


 傍に行って猫鼻をちょいと押し付け、行ってきますのご挨拶。終わりましたら、ちゃかちゃか行って参りましょう。 それでは床へ〜  無言でだ〜〜〜〜いぶ!!



 トン。

 

 この高さは怖くない、荷馬車の方がよっぽど高かった。ふ。  



 ベッドからスタスタ離れてお呼び出し。起こさないよーに心の中でお呼び出し。



 『へい! まいるーむ、かもーーーーん!  クロさーん、お願い〜』



 キラキラと降りてきたシャイニングカーペットを駆け上がり、天辺で振り返る。


 寝てる姿に、にまっとく。

 してから思う。


 お前に猫語の勉強必要なんか? 全く問題ないじゃねーか。本当に猫語の勉強が必要なのは、本物と意思疎通が上手くできなかった俺じゃねえ? 








  


本日の国語辞典。

記載せねばならない重大要項がございます。


一転一心… 既存の四文字熟語に該当するものは『ございません』。



本来なら今回の副題は『一転、一心』の予定でしたが、二心を入れるのが適当であるとして四文字となってしまった次第。



一転… 一回転。様変わり、又は変える事。

一心… 一つの心。一致した心。  一つの事に集中。


二心… 心を二つに働かせる事。背く心、不忠の心。 疑心。  読みは、にしん。ふたごごろ。じしん。  

… 物を載せる台。凭せ掛ける台。 掛ける、掛かる、架け渡す。




二心は三文字の方で呼んで頂けると語呂的・語感的に嬉しく。お遊びは辞典の意味以外に字面と内容で汲んでやって下さいまし。


副題の意訳を大雑把にでも書いておくべきかと悩むところですが、読み込める方には不調法とも思います。




ので、意訳問題と洒落ましょう。

副題を表と裏で読み分けて下さい。表はこう読めるから裏はこう読む、この二段階遊びですね。



『一転一心、二心が架する』


ストレートに表読みを願います。下記に裏読みを記載しておきます。



















裏意訳は、『一致を見たのは、共に疑惑の心があったからです』になります。 疑心こそが互いを繋ぐ架け橋の一つ。 


………もしも、アナタの表訳がコレでしたら何と言って差し上げれば良いのか悩みますが 『意訳は回し方一つと言いますから、お気になさらず』 としておきます。

  

過程として、もう一つ意訳ができると思ってたりいなかったりしますが    欄外遊びは度が過ぎぬ程度にしたいと思います。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ