138 二歩、進む
新年おめでとうございます。
今年は視力と体調と要相談でいきたいと思います。曜日変更は今回のみでございません。
ごろっとベッドに転がって、さっきの話を反芻してた。
天井と一緒に手を見てた。
手袋をしてない手の甲は、火傷みたく皮膚の一部が引き攣れてる。それをじーーーっと見てますと、思う訳ですよ。
おかしいモンはまともじゃない、まともでないのに違いがわからない。
これにイラッとする。
引き攣れる印のラインに結界を思う。
同じであるなら、このラインが光ってえ〜 手の甲からぱあああっと浮かび上がる紋章! 浮かばせたソレを相手と観客もどきに見せつけながら、殴る!殴る!殴る!殴る!叩きつける!! そして蹴る。最後にカッコ良く勝者は拳を天へと突き上げるのだ!!
なーんてお遊びは遠い。
傷じゃないけど傷口には触れません、見るだけで充分です。これで傷口が痒かったら地獄だっての。
「ふぅ… 」
痛くもないから思考で遊べる。わかり易いナンかもない。だから、この印が活きてるってな事を忘れる。でも、忘れる方が精神的には良いんです〜。
消せないから隠す。取れないから隠す。別の力で覆い隠す。隠す以上に広げない・広がらせない為に押し止める防波堤を思う。
奴隷の首輪でがっちゃん。
誓約でがっちゃん。
皮膚にジュウッとやってがっちゃん。
二人がしてたのを見た時のドッキドキを思い出す。 …奴隷の輪って便利品ですよね? しかし、それ以上に身体に対するワンクッションの方を強く意識する。
皮膚にジュウッてやるより、ほんっと良い。ムカつきイラつきあっても「これさえハズれりゃあ!」になれますでしょ。でも、こっちはなれんのです。
奴隷の輪とゆーものは利便性の追求から作製されたのでしょーか? それとも奴隷となった者を少しでも労る為にできたのでしょーか? どっちだ? …やっぱ利便性?
そーですね。
アナタが奴隷の首輪を作るなら、どっちを思って作ります?
デザイン・材料、そーゆー事を考えながらもどっかでニヤニヤしてません? 顔に出さなくても内心ニヤニヤしてません? ゆーえつにも似たナンかを混ぜて作りません? まぁねー、労りの為でも嫌味っぽいですよね〜。
どっちであっても見え隠れするモノがあんじゃねえ? そこにヤサシさってのは混ざってる思う?
ヤサシさ、ヤサシさ、ヤーサシさ〜 あたまんなーか やーさしい〜〜 ん〜んんん〜〜♪ んんん〜ん〜 ア〜ナタは〜 どーゆーヒートになりたいですか? どーゆーヒートでありたいですかあ?
…子供の頃、大人の自分を想像しようとかあったな。色々想像したけど漠然としてコレッてもんはでなかった。それでも鬱ってる自分を想像した事はない、一度だってない。そんで犯罪者なってる自分も想像した事ないわ。
鬱に絶望は個人の想い。
他人と比較するよーな類いのもんじゃないでしょうけど〜 ナンかな? 真性の鬱ってどんなもんでしょね? …違うか、真性どーたらじゃないか。 真性じゃなくてもソレ極めたらあ〜 もう目が覚めるコトはないんでしょーしぃ? 問題にスカッと目を覚ます方がよ〜っぽど良いと思いますのにね?
ま、選ぶのはご自分ですし。誓約は合意だからなーんとも。
そんでですねぇ、俺の体内に向けて直に発するナンかは〜 ずうううううっっと澱の様に溜まってくんでしょうか? この印は、ずうううっと『奴隷・奴隷・お前は奴隷』ってなコトを俺に呟いてるんでしょーか? 合意したら受け入れたってコトでしょーから、取り込んでやがては落ち着く方向になるんかな?
ずーーーーっと呟き続けてるなら、この印て奴隷印とゆーより呪いのナンかみたいじゃね? あ〜、呪われてるのと全く変わらんよーな気がすんねぇ。
さぁいてぇええ〜〜。
でも、ほんとーに痛みないし。
つか、もう本当に安定しちゃったんだろーな。
考えても考えても答えは出んが、のーみそは回してる。だから、普通に行き着くし思い出すし。
『俺の中にある印はどーなっとんじゃ?』
………中の印が奴隷印の力をゴチってないだろーか? うまうま食ってないだろーか? ……………どー考えても、こーんなもんにあの人の力が負けるとは思えねえ!! 邪魔だっつって踏み付けてるとしか思えん。
あ〜〜 でもなー、あーるーだーけ〜〜って言ってたからなー。 そーだよなー、食ってたら印の力なんてとっくに消えて活きてるなんて言わんか〜。
アガッてオチての先へ進まないダメダメ感がた〜〜っぷりですが、悩むだけ無駄時間なんてコトは考えたくもなく。成長に繋がってるのを期待とゆーか成長の為の思考蓄積をしてるんだと〜〜 だって、俺はヒトとは違うんだからあ〜。
比較対象ないと参考例も聞けんので大変です、ほんとに。 ふわーっ。
「このお守りもなー、お返事してくれるお守りさんじゃないですからねぇ。どういう過程でそうなったのかもわかりませんが、俺から離れた事で力を発揮したんなら有り難う。方向はどーでもしようとしたのは俺の為でしょーから、あはっ …腹癒せじゃないよね?」
良い迷惑とは思わない。
…思わないでいたい。限度が怖くて考えたくないのも本音ですが、ありがとね。しかし、ほんとに食ったんか? 食えるんか? ………魂喰いとかゆーとカッコ良さげ〜〜 にゃはん。
食ってないと思うから言ってるんだけどさ。
でも、二度と元に戻らないって怖いね。んでも、俺も色々戻れませんからねぇ?
…そーですね、戻れない。
はい、過去をリセット。あそこから人生やり直し〜 これができたら後悔も苦悩もない。代わりに今の俺が居ない。後悔も苦悩もボロ泣きも踏んで歩いた俺が居ない。今を思う俺が居ない。
居なくなる事の引き換えがリセット。
んじゃ、自分が要らないってコトですよね? 自分が要らんのですか?まじで? …要らんでリセットしても自分だから似たよーなトコで同じよーうに引っ掛かりませんかね? 都合の良い記憶だけ残しとくなんてのはリセットと呼びませんし。そっちなら時を渡るお人の方だと思いますが、記憶の混同と亡失と憔悴に認知症の発症がこわあ〜ですよ。発症に年齢は関係ないゆーし。
でもほんとにリアルリセットできちゃったなら、それはそれでナンかの犯罪者みたいだぁね。 …みたい、じゃないの?
…色々あっての自分のカタチ。けーけん踏み締めて立ってる自分。それを自分でオトしたく、オトしめたくないと〜〜 あー、あんまりぐるってると壁に頭ゴンしそー。
俺のカタチだから 馬鹿にすんなよ。
だから、深層であろうとなかろうと効力が発揮され続けてる事への不安はさよーなら。不安が不安を呼ぶんでさよーなら。確認は怠らないからさよーなら。一番良い確認は猫目で見るコトだろーけど、にゃんぐるみは高性能で通さないのがほんとにすてきぃいい!! なんか自分で詰んでらあ。
され続けてても聞こえない囀りは知りません、気にしません。変な睡眠学習も拒否っときます。猫の耳に鳥のぴよぴよは気を引かれるボイスで念仏とはいきませんが、それだけです。煩さに変化するよーなら頑張ってがっぷりしてみせようと思いますので、はい終了。そう終了。
わかった上でスイッチ入れて。 ほら、完全ノイズ・キャンセル。
「ふはー… 」
脳内エンディングを迎えて天井を見てれば、ハージェストの顔を思い出す。
「あれもなー… 」
伯爵のおとーさんには名乗らない、それなんてヒドイ!と言われてびびったけど。のーみそが「うにゃあああっ!」と悲鳴も上げたけど。
『お土産と引き換えですいませんが、そこんとこノータッチでお願いします』
冷静な部分がこう通させてよと主張しました。
んで、それを言ってみたらば。
「お前も言ってくれたろ? お土産は相手を黙らせるだけの絶対の価値があるって」
「うん、それはそう! 絶対そう! そうなんだけど、それとこれとは似て非なる傾向が含まれてですね。 言い方一つと態度一つで好印象は飛びます。そして、それに対してぐだぐだ言うのは周りです! 煩い人は居るもので。自分本位の見方にこうあるべきと固まってるのがうざったいのに、良くも悪くも安定感だけは出してくるんですよ」
説明する姿に哀しいかな、俺はわかってしまった…
ば〜ればれ、ば〜ればれ♪ そーこの内心読めちゃったあ〜〜♪ きゃ〜〜〜はははっ。
あっちあっちと、希望を示して輝く一等星のほーへと一生懸命引っ張っていこーとしてるのが読めてしまいました。あっはっは、あれは本当にどーしようでしたな。
頑張れば頑張るだけ顔に出てた。
まぁねー、焦った顔でもなけりゃー慌てる口調でもない。説明くれる時の真面目な顔でしたけどね。
奥の奥の奥底で、自分希望を通す為にのーみそ回して頑張ってるのがあああ〜〜 俺の目と口をうにょーんとさせました。それでも俺も真面目に対応しなくてはと思ってぇ〜 口元をグッと引き締めてたんですけどね。
それでもどーしよーもなく顔の筋肉がヌルーくなろうとするんで最後自分がどんな顔してたか? そんなん、さーーっぱり。
今回わかったのは直感じゃねーと思うんですが、これも直感ですかねえ? 対物センサーだけでなく対人センサーも稼動し始めたんだろか? 特定人物指定有りなら〜 笑う、にゃはは。 しっかし今回のは嘘や騙し、嵌め落としに該当しないんでセンサーの定義はどーなんでしょね?
「…問題は俺自身だったし。 へっ」
手紙の最後にフルネーム書いた。
書いたが名前の事で話があると切っといたから良い。手本を書いてくれたハージェストに、そこんとこだけは念押ししたから良い。
寝返りして、この部屋の窓のほーを見る。空が見えます。
読めた事も引っ括めて、期待を上げてるハージェストにどー話そうと頭回してたらナンか引っ掛かった。ナンだ?と思った瞬間、のーみそがソレを弾いた。
自滅した。
花が死に掛けてると気が付いた時、焦った俺は何を思ったか? ナチュラルに名前が… まるでどこぞの「じーさんの名に掛けて!」と同じだったな。しかも俺が俺だから考えるとか思ってたな。
この落雷に硬直したっての。
沈めたはずのモノが 浮上してた
自然過ぎて、とっくに浮上してた事にも気付かなかった。
あの時の気持ちを自分なりに分析して分析して分析しなくても、これが俺の心の有り様。
一時の感情の波に押されて決意したつもりはございません。
返されて覚えた違和に異世界を思い、自分から馴染まないとダメだと思い… 蓄積されていくモノと現実に、将来を見据えたからこそ〜〜 沈めと。 まぁ、泣いたけど。
コダワリを持つ事、持たない事。
自分を形成してる形がソレを区別させる話なはず。
突き当たる壁に軌道修正しようとしてる。
自分でこう有りたいと修正してるが、良かれと思った事で自分がぺしゃる現実が辛い… だから、迷う。ぐじってるつもりはない。ないんだがーーーーーっ はぁ…
心は複雑でも感じるもんでしょう?
自分が培ってきた知識の上に心が乗っかってるんでしょ? 心の上に知識積み重ねたら重くて潰れるじゃないですか。
ハージェストの「知識を選べ」がこの思考を後押し… じゃなくて。 あ〜〜、支えてるでもなし。俺の思考は俺で成り立っとるわ〜。 ん〜、何て言うかね?
隣で「そーだ、そーだ!」と応援してくれてる感じ? これでいーんか? ん、これだな。これでいーわ。
んでえ、感情に踊る心が後から泣かないよーうに自分を律するとか法律とかが〜〜 あ〜〜〜〜 心の談義ができる程に年食ってねーから、迷ってぐるぐるするのは当たり前ですよねえ? そろそろ、ぷしゅーってなりそーです。
時間あるから考えるだけ考える考えた蛙がぴょこんと跳ねて回ってげこげこのこけこっこが考える蛙を突っついてぐるっぱバサバサで走り回って庭のにわにわで跳ね飛んだ先に泥足のうえぇえええええっ!!
あ〜、どーでもいーわ。
疲れたから頭休めに黒薬湯でも飲みますか。高価な高価な黒薬湯さまは〜 飲まねば作製して下さるヒトの心をぺっちゃんこにするお薬なんでーす。 うにゃにゃにゃにゃー。
「よーいせっ」
言われた通り、ゆっくりと気を付けながら起きる。
目眩もなーんもしないんで普通にしてて良いと思います。
内履き突っ掛けて、テーブルへ行きましょう。
ガタン。
カチャン。
椅子を引いて座って、カップの蓋を取る。素晴らしい黒茶です。
「あ〜〜〜 お菓子様もかもーん」
箱をぐいっと取りまして、ぱかっと蓋を開けます。 甘い香りがふーんわり。
なんかすんごくホッとします。
これは料理長さんが俺の為にと用意してくれたお菓子箱(小)なんです。無くなったと差し出せば補充されて返ってくる素敵なお菓子箱ーー! 自分で入れない、作らない。それでもお菓子が入ってる。なんて素敵な魔法の魔法のお菓子箱〜〜 なーんてね〜。 …転移・転送とかゆーて、どっかから掻っ払ってるんじゃありません。料理長さんと料理人さん達が作ってくれてるお菓子ですー!
「ふふふふふ、どれにすっかな〜」
お菓子箱に入ってるのはクッキーです。
形も大きさも種類も違うクッキーは選ぶのも楽しく、嗅覚も視覚も大事ですねえ。さぁ、血糖値さんを上げますよ〜。
夕食を考え、大きめのクッキーを一枚とホイップクリームをちょんと絞り出したよーなちっさいのを一個取り出す。
大きいのをばくっと半分。
ボリボリ食うと、何が生地に練り込まれてるのかわからんけど美味い。文句なしに美味い。
「んじゃ、飲むか」
ごっきゅ、ごっきゅ、ごっきゅ、ごっきゅ… げふっ。 げへっ、ごふっ!
「ぐえっぷ! お菓子様かもーんんっ!」
残り半分と一個を纏め食いして口直しした。
この恐怖の黒薬湯ですが、効能は滋養強壮体力回復の他にも効果があるそうです。 …はい、あっちの効果話じゃなくて。料理長さんのお話では貧血にも良いそーなんです。何故なら、この黒薬湯は煮出しの薬湯だからです。
『こちらの温めには銅鍋を使用しますが、薬湯は鉄鍋なのです!』
拳を握った確かな力説でした。
はい、俺の知識では貧血にはレバーやほうれん草とかですが〜 簡単なのはサプリメントで補給ですが〜〜 鉄分の不足が原因でしたら、日常的に鉄瓶で沸かした湯を使ってご飯作るなり茶淹れるなりして口にしてりゃー改善されていくんじゃないでしょーか?みたいなぁ〜。
魔力水と回復とゆースキルがございますのに、そっちに傾倒してないんですね。そっちが発展すれば違うだろうと思う方が短絡ですよね。魔力無しさんに貧乏に医者の居ない地域は〜〜 民間療法が全く発達してないほーがおかしいわ。普通に恐ろしい万能薬も作ってるしさあ! そーいやあれ、何時使えばいーんだ? 今か?今か?今なんか? うーん…
どーでも三人様みたく使った分だけ食費に回るんでしたらあ〜 利便性とゆーものは、どっちを向いても金が要るんですなあ。
そんで向こうの生活を思い出しますと、鉄瓶やら鉄器はフッ素加工に押されてるんじゃなかろーか? つか、あやめねーちゃん使ってなかったし。家にあったかなあ?
…でもぶっちゃけ、理屈では鉄釘放り込んでもイケますって! でしょー?
何事も改善とゆーものは普段使いからのよーです。
しかしダメだ、あれじゃ足りない。口の中がアウトだ、水でも飲むか。
コンコンッ…
「あ、はーーいっ」
誰でしょー?
「失礼します、お加減は如何ですか?」
「あ、お帰りなさ〜い」
外へ出られたオーリンさんのお越しでした。
入り口で立ったまま室内を見てるんで言っとく。
「あい… ハージェストでしたらセイルさんの所に行って帰ってきてません」
「次期様の元ですか? なら、自分とは入れ違ったのでしょう。そちらに行っても構いませんか?」
「はい、どーぞ」
「有り難うございます」
静かに扉を閉められる。
片手に持ってる包みは何だろう?
少し手前で止まって軽い笑みを見せてくれるが、視線の位置に『しまった、手袋してないよ』です。慌てず騒がず、そっと手を重ねて隠します。俺もできるよーになりますって。
「不躾を。 微弱ではありますが術式が活きていると判断します」
見上げたオーリンさんの顔は、眉根が寄ってた。
その顔に質問すれば、「現状が不可解です」と正直に仰って下さいました。誤摩化さない顔のストレートなお言葉でした〜。
人が違っても意見が変わらない。やっぱ、人と違うって大変だぁね。
そこんとこをもっと聞きたいんで椅子を勧めてみました。
「近くで立っていては怖いですか?」
「え? …いえ、そーゆ」
答え終わる前に、さっさと片膝着いてしゃがんでくれた。
「これでどうです?」
「あ… はい」
おおお… おのれ、椅子を勧めたのにその場にしゃがむとか!
「あの、汚れるからやっぱ椅子の方に」
「仕事中ですから汚れもします。儀礼祭典時でもなければ気にし過ぎる事も無く、お気遣い下さいまして」
うひょおおおおっ! オーリンさん、笑顔が爽やかですねぇえええっ!! いや、皆さんそーだっけ? うーあ〜〜〜… あー、おばちゃーーん。ちょーーっとお試し確認も混ぜてみよーとしたんだけどさー 俺が張る罠って見え見え? もっと押せ押せでないとダメなんか? えー… めんどい〜。
も、いーわ。
元々、仕事中に同席希望する方が間違いだと思ってたし。徒弟君達だってえ〜 …そーいや、徒弟君達のその後はどーなった? きっとおそらく可哀想なあの二人は? 確か鬱とか わひゃっ。
忘れてるコトに、えへらっと笑って進もうではないか。俺が口出しする範疇外だし。 …しかし、聞く方が良いんかな?
「こちらをお土産に持ってきました」
しまった! 先を越されたよ!
「俺にですか?」
「はい、どうぞ」
「有り難うございます!」
出された包みに『つい』で、手を伸ばして受け取りました。素手でした。
……おかしいな、俺の危機管理甘くね? ちょーぜつ甘くね? いや、人柄知らんでもお家の皆さんを信用しなくてどーするのだ? そーだ、クライヴさんの時を思い出せ!
疑う時、疑う人、疑う状況。
判断を鍛えろ! でないと目付き顔付き悪くなると…! 第一印象の改善は顔の筋肉からっぽいし!! 動かさないと筋肉は落ちるだろー!
「嬉しいです。なーにかな〜」
にま〜っと笑って包みを開くと果物がコロンとゴロンと。キタコレ、果物! タイミングばっちし〜〜。
「食べた事はございますか?」
「えーと、中味みたらわかるかも!」
「これは皮に香りを持ちます、美味しいですよ。今、召し上がりますか? 料理長には断っているので気にされなくて大丈夫です」
「頂いていーなら!」
「では失礼して」
カタン、カチャ…
刃物を使うからと部屋の隅に行かれた。
この部屋には簡易キッチンはないが食器棚はある。しかし、飾り物だと思ってた。んでも刃物はなかったはず。
懐からナイフ出して布巾で拭ってから切ってた。 …さすが、できる男は違う。 …向こうだと銃刀法違反かな〜。 はうっ! 違う、仕事人だ!! 一緒にしてどーする!
「不調法ですが」
そうして盆に乗せて運んで下さいまして、俺にカットフルーツが提供されたのです! きゃっほー。
手で食いました。
皮を例えるなら、みかんじゃなくてオレンジ系。もしくはグレープフルーツ。皮との間に切り込み入れてくれてるんで、そこをムキッとしながら実をガブッと!
皮からエキスがぷしゃっと滲み出て、手に移り香。 …い〜ですね〜、これぞリフレッシュな香り〜。
「失礼、お待ち下さい」
部屋を出て直ぐに戻ってきたオーリンさんが手にしてたのは… 濡れ布巾です。お手拭きです。ホットでないおしぼりでーす。洗面所で絞ってきてくれたんですな。 なんてできる人!
会釈と共に下がろうとするオーリンさんを引き止める。
食べたい・お話したい・暫し待てで、今度こそ椅子に座って貰いましたよ。少し離れているが立って待つのに「圧迫が」を臭わしつつ、ちょろちょろ視線を顔と椅子へ飛ばしつつ〜〜 にへにへ食ってたら座ってくれた。
「固辞し続けるのも不調法」
この定義に俺はもう何も言わない。
「薬湯の後でしたので、すごく嬉しかったです。口が生き返りました。これ、高くないですか?」
「気にされる値段ではありません。お気に召されて何よりです」
お土産貰える程、ナンかしたっけ?と思うんで聞いてみた。
返答に微笑む中、一瞬思い出す考よ〜うな目をされた。
「時には運命と思える事があります。今回の遠征と言いますかどうか… この領主館に到着し、一息入れた所で館内の異変を察知して駆け込む事態がありました。皆と共に駆け、要所で散り、辿り着いた開かぬ扉に蹴りを入れ… 最終的に自分は目的の扉の前に立ち、そしてその場に残ったのです。
館内へと駆け込んだ時の立ち位置は皆バラバラでした。内へ走った者も外を警戒した者も反射で動きました。自分の居た地点から最適と最善を判断しての行動です。過程を経たから、今の自分の位置があります。今の自分を幸運であると思っています」
優しさが滲む笑顔だが意味がわからん…
「本日は次期様のお言葉を携えて、伝達者としての務めを果たしてきました」
「はい」
他の方達にご連絡に行かれましたね。
「本当に… 人の顔を見て感付いてもまだ残る、淡い希望を力で握り潰す実に得難い経験を積む事ができました!! 煩くぼやく声を立場からネジリ込んでやりました… ! くっ この様な務めは滅多に体験できるものではありません。本当に有り難うございます!!」
…ほわあ〜?
大変良いお顔されて何をお言いで? その握り拳なんです? 連絡に行っただけでしょー?
「実に良い鍛錬になりました!」
…よーわかりませんが、オーリンさんの経験値が跳ね上がったよーです。これはボーナスポイントでしょうか? 握り潰すってナンか怖いですね。でも仕事に行っただけですよねぇ?
逆にお土産がコレでと恐縮されましたが、いえいえピッタリなタイミングで大変美味しく頂きました〜。 え〜 きっといーんでしょう。もう食べちゃったしー。
でも、俺のお蔭ってのが… ぶっ倒れたからですよねえ? ぶっ倒れたから人様に差し上げるボーナスポイントが発生した? なんだかなー うぬぅ。
「その質問にお答えはできますが…」
「はっきり教えて下さい」
「ハージェスト様からお聞きになられては?」
「それはちょっと微妙です。この手を見るとふつーに顔が変化します。まだそんななのに、そんなんでも俺が聞いたら話すでしょーからそれはどーかと。色んな人からのご意見とゆーものも知りたく」
「幅広く意見を求める事は良い事です。意見に振り回されなければ」
肯定しても思案に暮れて困った顔されるオーリンさんに下がりません。
教えて貰うのだ。
奴隷の首輪とは言わんかったが制御環は見せてくれた。セイルさんは、今はジュウッはやらないと言った。やらないほーが主流になってんのに、どーしてナチュラルにやられたのだ俺は?
「…その様な顔をなさられないで下さい。押されたのは犯罪者認定に起因します」
えー、俺を取っ捕まえた方々の調書には〜〜
『贋物で領内の経済を撹乱させ、利益搾取を目論んだ。領に対する謀反である。玩物も所持していたが、物を区別する事で相手の信用を得ようとした事実が悪質である』
こう記載されていたそうです。
続きには共犯者の有無の裏付けがどーとか蜥蜴の尻尾切りのよーうに受け取れる文言が連ねてあったらしくぅうう〜〜 待てや、こら。それは推定書きか捏造か? ああ?
「あのあのあの! あの!! 俺は玩具のよーうな飾りも売ってきましたが、皆さん納得の上でのお値段で! 本物は本物としてのお値段を要求してですねぇええっ!」
「大丈夫です、落ち着いて下さい。理解しておりますから」
「…ですよねー? 本物でも屑石なら違うですしね?」
「はい、輝きを放っても小さく利便性に薄ければ人は値切ろうと思うものです」
間髪入れない返事が素敵です、オーリンさん。
「この調書により、彼らは領の警備兵としての務めを果たしていた事が証明されました。この様な目に遭っておられる上で言います。自分達はこの調書から彼らの行いを是としました」
「はい!ちょっと待って!」
「ですがそれは尋問まで、彼らの行いが尋問で止まっていれば問題なく許されました。最も現場での行き過ぎは現場監督者の不手際となります。そして裁いた時点で越権行為であり、領主に対する増長です。居られた場所は牢と定められた場所ではありません。仮設でもありません。
彼らの言い分にどの様な理があり、それがどの様に領の利となろうとも。差し出すモノが義心としても、愚か者には相応の処分が与えられます。違えたが故の歪みに酌量の希望・是認の祈望は詭謀を企てるよりも愚かしい限りにて」
待ってはくれなかったが、強調しない声は淡々して詰まる事も無く気負う事も無く。でも、なんでかな? 表情変わってないのに固い気がする。
しかし、領の利か。
俺はほんとーに幾らだったんでしょーか? 妙に知りたいよーな。
『財政の圧迫緩和一石二鳥個人か領かの違いだけ店頭売り犯罪者に人権無し、闇市闇鍋闇ん中、最後はひっそり』
のーみそが変に落ち着いてると思ったら、単語が一斉にスタートして脳内を駆けてった。ここは貧乏領だと聞いております。ハージェストが包み隠さず言いました。
…オーリンさんは言われません。
あっちが悪い・こっちが悪いを言いません。聞いてスッキリする答えをストレートに言ってくれません。立場でしょうか?
押す方が色々と簡単なんだろーと思えます、ええ。
「人を人として扱うは、どこに心を定めるべきか。鏝の使用は品格を問われる事でもありますが範疇外である事も示します。範疇外の行いを成した証明とも言えます。そして鏝の使用を禁じた領も自分の記憶ではありません。 …どちらから、どの道を通って、このシューレにお越しになりました? お住まいであった所では誰からも教えられなかったのでしょうか?」
…これまた職務のお話ですから淀みなく。
それよか、俺はどこに居たんだとゆー視線が痛い。首を絞めた気もするが気付かぬ振りをして!
「俺、そんな範疇外のよーな事をするヒトにみえるんでしょーか?」
「人は売れます」
スパッとしたお返事でした。
返事が明後日の方を向いてる気がします。ですが、合ってない答えが合ってる気もします。計算素っ飛ばした答えはこんなもんなんでしょーか。
「ぐるんぐるんなのーみそがわーーーって」
「は? え? あの、大丈夫ですか? 疲れました?」
「宝石店の徒弟君達どーなったかご存知ですか?」
「徒弟ですか? 徒弟… えー、そちらは… 」
この領主館の牢を管理監督してる方のお名前を入手しました。ギルツ・アーガイルさんです。この人に聞けば間違いないそーです。近日中にお会いするでしょう。
ん〜、明日?
貧血… 原因が鉄分欠乏と低血圧では分類そのものが違います。その他含めて正しい知識確認はご自分でどーぞ。後、鉄器は重いです。釘が危険と判断されるのでしたら鉄飾り入れられるとよろしいかと。 …飾りも大きさで軽くはないと思いますが。
利便性… 良いモノは高い。高くても良いモノは良い。金を惜しむと物を知らずにいる。
雑音をカットしても人の声は通す某イヤホンは実に便利でありました。自分、イヤホンしない人なんでほんと知らなかったですよ。