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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
137/239

137 一つ、払拭

     

    

 つっる ぴっか きっらり〜〜〜ん。


 お久しぶりのせんせーは、せんせーは、せんせーはぁああっ!  完全に禿げ上がってるお方ではなかった…   なんてこったい! 


 お疲れモードであるがその所為なのか… 無精な感じで毛がぽつぽつとですね…  毛根は死滅されてなかったよーです、素晴らしい根性です! 俺ないと思ってた、ごめんなさい。



 「ん、喉も腫れとらん」

 

 寝たまま、せんせーの診察受けてます。久々でーす。

 せんせーは診に来よう来ようと思ってくれてたよーですが、やっぱり忙しくて来れなかったそうです。治療法と患者さんの数にちょっと唸ってたと、カラッと言われました。


 忙しい中、忘れずにいて下さりありがとーございます。はい。


 

 「脈拍は正常の内、受け答えも良し。熱は平熱よりでもやや低め、普段通りですかの?」

 「違う。平時の体温は今より高い、指先もこんなに冷えてはいない。季節とはまた違うものだ」


 「それではやはり、精神的な一時のものでしょう」


 せんせーの診断結果は予想通りでーす。これが違ってたら怖いです。それよりハージェストが俺の体温管理をしてるのに驚きました!


 …まぁね? 驚いたっても手袋で手は握るし、一緒に寝てるしな。こうなると一緒に寝る事にメリットがぴっか〜んと光ってる。


 うむ、大事なのは命と自分。煩い声があったら猫の耳に念仏といきましょう。


 俺も多分ハージェストの体温がおかしかったら〜〜〜  低けりゃわかると思う。うん、きっと当たり前に普通な感じで。あんま意味ない程度にかな? にゃっはあ〜ん。 あー。


 

 「自分で起きれそうか?」

 「えーと…  よっ」


 ……あれ? いよっ! 


 ぬ? 起きれな    …肘を使え。んで、横に転がれええ〜。



 「無理はしない、寝てる」

 「動くと目眩がせんか?」


 「特には… さっきは起きてたし」

 「俺がゆ〜〜っくり起こしたんだし」


 「目眩から吐く奴がたまーにおる。まぁソコまで落ちとったら小康にも戻らんが。血が降りたんじゃから意識はどうでも体は辛い、寝てなさい」


 せんせーにも起きるな言われました。

 そして冷えた体を内側からあっためる為に、後であったか〜い黒薬湯Xを飲まされるコトになりました…  血糖値上げるなら飴玉さんとかチョコレートさんとか甘いブツだと思うんです。無敵なのは羊羹さんだと思います。 …でも、甘いおやつなら何でも頂きますよ! 某物体は断じて要らんけどな。

 


 「はっきり言っておくぞ、人は不安から倒れる事がある。不安の払拭に過労となって倒れる者もいれば、度重なる心痛で倒れる者もおる。だがな、不安だとする気持ちだけでぶっ倒れる者は珍しい。不安な気持ちは曖昧故に大抵が漠然としとる。何となく怖い、そんなモノだ。

 それが心を追い込む事を否定はせん。せんのだが、『何となく〜』なだけで血の気が引く程の衝撃が心身に与えられるか? 難しいと思わんか? なるのは確実に原因がある。原因があるから不安が増幅する。具体的に想像できて実感と取り込んでしまえば倒れる事も〜〜 稀にある。多感で繊細な証とも言えるが… まぁ言い方は様々でもだ。

 

 心に要因が、積み重なるモノがあるからだと考える方が易しい。 のう、話せる事はないか? 不安と抱えるモノがあるか?」



 大変真面目なせんせーの顔を見上げてました。


 自分の口が、ぽけ〜っと開いてる気がします。

 椅子に座ってるせんせーの後ろに立ってるハージェストも、せんせーと似たよーな顔してます。目がちょっとだけ違うんですな。俺をツンツンした時と同じなんで、ちょーっとですが。



 んでえ〜 せんせーの診断結果は〜  何か不安に思ってね?で本当に正解か?  ん〜、どーもこの顔は言いたいコト黙ってないか?な気がしますなぁ。


 これは〜〜  沈めと。

 心に仕舞った事を引っ張り出して喋れっつってんのかな? 全部話せっての? 包み隠さず、ぜーんーぶーーーう?



 倒れた原因はわかってる、ブラックボックスの所為。でもねー、せんせーにはちび猫の話もしてないしさぁー。 


 ふあん。

 不安。ふーあーん〜。



 漠然とした不安を捨てたら、今度は確かな不安が残ってたか… 


 セイルさん任せにしよーと思うがせんせーの目を見ると、それもそれで間違えてる気がする。






 俺の事を心配してくれる有り難い人に全てを話す。


 ココとココが冷たかったんです。ずっと前、ソコが『ぶらーん』と『どばっ!』な状態になってたそーなんです。常識で危ないでしょ?


 じゃあ、俺はどうして生きているんでしょう? どうやって生き延びたんでしょう? 時軸が違ってた? あった時がなくなった? 時差で消えちゃった? 


 それ、まじですか?  


 あったコトは消えませんよね?

 だからこそ積み重なってできる来歴な訳で。それでも今は五体満足で、傷痕なんてございません。

 


 あったコトをなかったコトに。ないモノをありモノに。


 理に反するなら歪む。

 こーゆー時に再生なんてゆーのは〜〜 適合しそうなだけの都合の良い逃げ言葉っぽく思えてですね? だってさぁ、ソレおかしいってどっかで思ってしまう。それにさー、もし後で歪んだら泣くのは誰だよ? 人体の中で歪みが大きくなってったらさぁいてぇ〜、治った内からペロンとなったらこっわ〜あ。



 理に合わないってのは弾かれるってコトだろ。

 弾かれ方は様々だろーけど、俺も見本の一つになれるトコでしたし?



 歪まない為にありモノにするなら掏り替えもやり方の一つ。

 俺の石を黙って取っ替えた様に。


 あの人がしてくれた様に。




 命の倫理をどうこう言って良いってんなら、どうこうできるってんなら、それは人の定義からハズレて。  …いーや、ハズレてて。 でないと不愉快ってもんだから。憧れ、羨望、嫉妬。そんなもんより不愉快が先に立つ。俺、そっちぃ〜。だって、ハズレですからあ。



 スキルなんて言葉一つで倫理をわからなくさせそーな頭が嫌ですね。そんで心の安寧の為に、そーゆー




 「あのな、案ずるより産むが易しと言う。心のつかえは人に話すと少しは取れるもんで、話す事は自分に問うものでもある。口に出すと違う、溜め込んでおっては辛い。積み重なりは重くて一人で取れんなる。女は仲間内で喋くり合ってうま〜く発散する者が多いが〜 女の輪も力関係が露骨な所はあるから面倒な時があってな…  はぁ。


 ま、心の整理は思い詰めてするものではないよ。思い詰めて行うは、他にもある道を見失うおまけを貰うって事だ。遠回りも悪いもんじゃない。 まぁ、きっとな」


 思考を中断させたせんせーの小難しそーな顔が、苦笑のよーうな顔へと変化してく。その顔が優しく見える。



 …そーですね。でも〜 口にする言葉が正しく心を表さない場合はどーしましょ? 話す内に違っていく場合は? ズレてっちゃう場合は? 言葉は人の心を表すには不完全なものだとも聞きました。


 軽くぺらっと話す決定打がございません。


 話してどーにかナンの?ってな思いも、まぁある訳ですよ。話す事ですっきりしても、それこそ今度はせんせーが守秘義務で辛いんじゃない? 話す事がすっきりでしょ? 個人を出さなくてもこんな症例が〜って内々で話はするんじゃね?  知らんけど。


 人間そこそこでないと神経磨り減ってイッちゃうんでない? どっかで捌け口がないと。だから、本当に話しても良いもんですか?と疑う俺は狭量ですか?


 せんせーは良い人で大人です。それは知ってます、謝罪で一緒に流したし。だけど、信じるに足るナニかってナンですか? 差し出すモノは?   


 …差し出さないのに信じろと?  んあ?      ……あれ? どーして差し出す?  ……俺、何のコダワリを? いや、気にしないでどーする! 



 ……どーでも人に求めるだけの俺が狭量と。




 狭量な上に、お前に関係あるかとぶった切る勇気もない。馬鹿じゃないからして貰ってる自覚はある。


 んじゃ、どーしたら?  どーしよう、どー言おう。


 さぁてえええ…





 「いいよ、話さなくて。さっき俺に言ってくれたコト以外に話す事があればと思っただけ。だからね? そーゆー顔でいると表情がですね、ほんとにですねぇ。目付き顔付き言いましたよねぇええ」


 「み、ぎゃっ!  ぎゅ   け、ぶうっ!」



 ハージェスト、ヒトの顔をーーーーーーっ! ぐるむにしないーーーーーーーーーーっ! 









 「そろそろよろしいのでは? ああ、血の気も上がって良い感じになりましたなあ〜」

 「やっぱりこの位でないとなー」


 「本当に。気分転換は大事です、そしてマッサージは最適です。手が与えてくれる熱(スキンシップ)は精神的にも違います」

 「そうだよな。ん〜、香油の一つも置いとくか?」


 「良いですな、今の時季に乾燥は少ないでしょうが ぬ!  揉み込みには油があると一番です。解すにはもってこいですか、ら  ふんっ」

 「う! いーーっ! そこ、そこいたあーーー! ぐりっとしないでーーーー!」

 「あはは」


 「そこ、笑ってないで  うえっ!」

 「じたばたする元気出たね〜」


 「くあーーーーーっ!」



 二人掛かりでマッサージしてくれまして。

 体、イタ気持ちいーが再び!


 すっげぇいーんだけど〜  俺、もうぐったり…   しかも二人掛かりで服を脱がされたんです! 二人とも手慣れてましてね、ええ…


 しかし、治療すっから早よ脱げってやられるとねぇ?  ちゃんとタオル掛けてくれるし。







 ハージェストが話してくれました。


 俺のは精神面が大半で、大まかに原因を把握してるから良いって。そしたらせんせーあっさり問題ないなって。一人悶々じゃないならいーわって。悶々するコトもあるし、ないなら成長ないわって切って終わったよ。嫌な顔一つしなかった。


 そんでぇ、時間が掛かるもんは時間が要る。時短じゃ熟成に到達するかっての〜〜〜ってさ。


 熟成は…  肉でしょーか、酒でしょーか、漬物でしょーかぁあああ? 俺はコンビニ弁当の白ご飯に付き物のカリカリ小梅さんより、たっぷり漬かった梅干しさんのが好きでしたあ! 肉厚万歳!



 しかしこの現実は、ハージェストが、代弁、して、くれ、た、から、 でっ!  …ねー、そろそろ終わってくれてイイから〜。 しかし終わってくれと言い出し難くてですねぇえええっ!  そうだ、声でアピールを!



 「ふええええ… 」

 「これ以上は止めておきましょう、反動が出たら痛いですからな」

 「そうだな」


 え? 何の反動?


 「昼食後、ちゃーんと薬湯を飲むんだぞ」

 「えー、もう体ぽかぽかで要らないですけど」


 「遠慮してどうする? ぐびっとイっとけ、な。  ぐびっと」


 にかっとしたせんせーの笑顔が良過ぎる… ビール飲むカッコで言わんで下さい。


 でもそーですね、執事さんも言った高価な薬湯ですから。

 普通は頂けない薬湯だと言われました。向こうにも医療制度がある国とない国はありましたねー。俺はあやめねーちゃんの扶養家族なってましたぁ。でも、ココには制度がないよーですから保険証はございません。ですから、ぜーんぶ実費で当然です。ま、保険証を維持すんのも金が要りますけどねー。無職で保険証の維持は大変でしょう。ですが、保険の方も入り無し出費は首絞めだろう。


 ロイズさんはアレな所為でほーちでしたが〜〜  執事さんやステラさんの態度で普段から使う薬は… やっぱり高価じゃないでしょ。はぁ…  ぜーたくしてます。 多分…  

 



 「それと、あの件を話しても良いでしょうか?」

 「あ〜〜 あれか…  以降は進まないままか」


 「はい、戻った者は元々深刻ではありませんでした。それがですね」



 ベッドでばったりしてたら幸せ。

 しかし、ハージェストとせんせーの話は聞こえる。聞こえるが意味がわからん。二人の会話に専門用語が混じってるよーで理解が追いつかないのが現状です。やっぱ何とな〜くは聞き流しになるって…  言葉は耳からとゆーてもだなー。


 ちろっと目を向ければ、せんせーと対等に話してる。その姿に自分との落差を思う、そーなると顔面をベッドに埋めてしまう。 …ダメだ、考え過ぎるな! これからだ!



 「落ち着いた?」

 「んあ?」


 「ちょっとねー、行き詰まってるから話を聞いてくれない?」

 「へ? 俺?」


 「そ、話したいのは君へなんだ」


 二人の顔にナンだろうと思うが、俺にも出番があるよーですよ! 


 「はい、寝間着。あと水分は?」

 「あ、ありがとー」









 

 「……ほわ? そんな事を言われても〜〜  俺にはさっぱりでございまして〜〜」



 前に言ってた意識が曖昧な患者さん。

 回復された方、おめでとうございます。されてない方、心配です。しかし、どーしてそこに俺のお守りが関与するのだ?



 「このお守りが赤い光りを… 」

 「俺も見てはいないけど、夜中の赤光が恐ろしかったとの報告があちこちから上がってた。君のお守りが大本だってのも確認済み。ロベルトの報告でね」


 「え、あの人が見たんだ?」


 そんで続くハージェストとせんせーの交互説明により、俺のお守りが〜〜 人の意識を食ったんじゃねーのかとゆー恐ろしい疑惑が浮上していると告げられた… 




 『良いもんがあるぞ。コレ、飲まんか?』


 そんな言葉だったな…


 イイ顔を思い出す。ブツを差し出した時のあの、  あの正直さの中に隠しても無い言葉以上に心を示してた素敵な笑顔。




 のーみそが否定できなくて、ふらあ〜っとする。魂がゆうら〜〜〜っと揺れて出て行く気がする。


 意識が戻られない方の人生は? 薬代は? ご家族は? ご家族の生活費はあ〜〜!? なんて思うと心臓がドキドキして後ろに引っ繰り返りそうになる。ベッドの上だから引っ繰り返っても大丈夫。


 服から食み出てるお守りは赤くない。貰った時も今も緑色。透明感もある中に、ちょーっとしたキラキラがあるこのお守り。


 首から下げてるお守りに手を当て、重ねて、胸に当て。


 思った。



 『 やっちゃったぁああああっ!? 』








 「だからね? どうしてそんな事に至ったのか?を飛ばすと、君のお守りが可哀想ですよ?」

 「治療する時はな、大本はどこだ?を探すものだ」



 ぶるぶる震えながら慰謝料のお話なのかと聞いた返事です。


 そーでした。

 どこぞの僕が盗んだ結果、巡り巡ってこーなったと。牢にいらっしゃるのは犯罪者さんと。盗品保持以外の犯罪も有りってゆーからあ〜 ちょっとだけ気が楽に。


 ま〜、商品に犯罪歴のタグは付いてないんで見えませんが〜 盗品は盗品ですから返して貰わなくては。買った人が知らんとゆーても盗みの品ですから返して下さい。


 …狡っ辛く盗み取ったもんはぁ〜 ぐだぐだ言わずに早く返せってのねー♡  支払った金の返金でしたら盗んだヤツにゆーて下さい。



 そうだ、俺を精神不安に突き落とした罪で慰謝料を請求しても許されると思う。二回やられたしー。このお守りは不幸を呼ぶ呪いのお品とは違うのだ!! やっほー。



 「うん、そーでした。俺専用ってくれたんだった」

 「ほーんと構築がすごいよねー」


 「…桁が弾けて怖いですがね」


 

 せんせーがボソッと言う。

 んで、考えるだけ常識ではない(非常識な)威力だと話してくれた。その顔に不安になる。


 

 「そーゆー場合、所持者も危険人物としてマークされたり? 俺もそう…  なったり?」


 「は? …ばったり倒れて体力の無さに精神的脆さを露呈した君が危険?」

 「食事量は少ない、魔力はない、あっさり抑え込めるお前さんが危険?」



 沈黙で二人を見返しました。

 何気に二人が酷いです、息が合ってるのも真面目な顔も酷いです。回復中の人間に向かって言う言葉ではないと思いますが違うでしょうか?




 





 はい、昼ご飯〜。へい、昼ご飯〜。もう直ぐ美味しい昼ご飯〜。


 せんせーは仕事に戻られました。

 途中、厨房へご飯連絡入れてくれます。


 お昼は食堂に行かずに部屋で摂る事になりました。なので、ご飯待ちでーす。



 「でもさぁ、早く行った方が良くね? ご飯食べたら〜 やっぱり行こうか? だって人命が「だーめ、顔色も良くなったけど油断は禁物。あんな奴らの為に君が磨り減って堪るかっての」



 あんな奴ら。

 そー言った時に、ふんっと鼻で嗤ったこいつがねー。様になるのが嫌だねぇ、あっはっは。



 「牢から出す気はない。だから会うなら牢に行く事になる。あそこは冷える、体調が戻りかけなのに行くなんて絶対に却下。奴らに急変があってもなくても今日は駄目、絶対に駄目。君がまた寝込みそうだからぜぇっったいに却下」


 力強く否定しながら、俺の前に病人用テーブルを置く。

 出るな・行くなのバリケードと同じだが、口調と違って置くのは丁寧。ぬーう。


 大げさな気もするが、ほう〜っと息を吐くと体がずる〜〜っと沈む感覚もある。ぶっ倒れたいとは思わんから〜 今日は行かないのが正解だぁね。これ以上、ハージェストに心配させるのも良くないですねぇ。



 コココンッ



 あ、ご飯ですかね? 来ましたかね? 腹は鳴らんのですが食べたい気がしてまして〜 声が弾みます。


 「どうぞ〜」



 カチャッ…


 「お待たせを致しました」


 わーい、お待ちしておりました〜   あれ? どーされ…


 



 「ご無事で何よりです…! 話を聞いて朝食が合わなかったのかと! 違うとは聞きましたが…  くっ  本当に、本当にお顔を見るまで生きた心地がせず!」


 

 …すいません、すいません。料理長さん。本当に、すいませっ! 心臓潰すよーな感じにさせましてすいませーーーーーーっ!



 もう… どんだけ俺はこの人の心痛を招いているのだろーか?  タイミングわっる〜〜う。



 「茶に続き心配させまして、ほんとーに申し訳なく」

 「何を言われますか! 食べれないものでなくて良かったです…  心配や不安は食事で美味しく取り払っていきましょう」


 何と言う幸せ…


 りょーりちょーさん、やっさし〜い。

 おじさんの笑顔が輝いて見えるぅー、後光射してるー。あそこの屋台もおじさんだったなー。



 「体が冷えたと聞きました。羹にすべきかと思いましたが、気温を考慮すると熱過ぎても食べ辛く。増血には肉が良いのですが…  倒れて直ぐに食べれるかとも思いまして」



 一礼した後、料理を並べる手が早い。あっという間に素敵なご飯がご飯がご飯が〜〜   ハージェストのと違うんだ。



 ベッドの横に持ってきた小テーブルは、瀟洒な一本足さん。その上に並べられたハージェストのご飯。がっつり系です。


 

 「では、こちらも」


 簡単にご飯説明をくれた後、黒薬湯を忘れずに置いて下さった…


 しかぁ〜し!ホットミルクあるから昼食後でなくとも、おやつ時にお菓子と一緒に飲んでも良いんじゃないかとゆー素敵なご意見も下さいました。



 『水腹に注意』


 なんて素晴らしい大義名分!

 まぁ… もう一つご意見を頂いてますけどね…



 ご飯も並び、料理長さんも下がられた。

 二人して、にこちゃんやって一緒に頂きます。



 「あは、料理長も迷ったか。ん、臭みもない。イケる。  一口どうですか?」

 「おぉうっ!」


 ハージェストが肉食うの見てました。

 差し出された肉を遠慮なく、一口でいきました。


 もっぎゅもっぎゅと噛み締める肉は、肉汁ジューシーとは違いますがこれはこれで美味いです! 俺にベジタリアンは無理だ、ちび猫も肉食ですし。


 「これ、肝肉レバーだよ。貧血にはこの肉が良いんだ」

 「へ…  あ〜」


 「もう少し食べようか」


 始めから、ちょっと貰う事を想定してのハージェストのご飯でした。小皿に取ってくれます。取り皿があるんです、一人前のご飯に。心遣いとゆーのはぁああ〜  ね?



 それから自分のご飯を噛み締めて頂きます。

 普段より濃厚な豆スープはぬるくて飲み易く、ゆで卵がメイン(ミモザ)のサラダは綺麗。そしてスライスされた二口サイズのパンに、とろーーーりのチーズをですねーーーーっ! スープカップinチーズの海にですねーーーーっ!



 ん〜〜 チーズが濃い。これ以上濃いと胸焼けするかも。



 蓋を取ってホットミルクを飲めば膜がある。注意しながら舌先でぺろんちょ。持つカップもちょーど良い位にあったかい〜。


 「これ、何のミルクだろ?」

 「それ? 山羊のはずだよ」


 「おおぅっ!」

 「え、どうかした?」


 「いえ、山羊ミルクなんだと〜」


 

 へらっと笑って話をしながら食った。

 肉の代わりにチーズの海をシェアした。いいよ、って言ってもシェアした。このチーズの海にフライドポテト突っ込んでもいーのかも。






 「御馳走になりました。さて、ちょっくら起きる」

 「え? だから、今日は寝てる方が」


 手で制止してくる顔を見上げて言う。


 「お前、俺にココで漏らせとゆーのか? ええ?」

 「それは失礼。  …尿瓶使う?」


 「…な・か・す・ぞ」

 「うわ、怖い」


 けらっと笑う姿がもう。

 落ち着いたんで食器も片付けて出す。普通に動ける、へーき。んだから結局二人して、連れションに行った。序でに歯磨きもした。




 「はぁ〜  食べれて良かった。ちょっと昼寝しよう」

 「今日は行かなくてへーきなのか?」


 「もういーよ」

 「ごめんな」


 「何が?」


 ゴロッとベッドに転がるのに、俺も負けじと転がる。



 「あ〜〜  昼寝って久しぶり」

 「え?  あの、すいませ。よく寝てます」


 「それ、寝るの意味が違うから。あれは倒れる」



 目が怖いので話を逸らします。説教が始まりそーな気もするので先に逃げる。



 「今朝起きたらいなかった、一人だった」

 「あ、それは「俺も竜に会いに行きたいです! 間近で見たいです!」


 起きて近寄り、更に詰め寄る。迫る。

 会わせろ要求は難なく通った。


 

 「君を助けたから気にしてるし、まだかって待ってるし」

 「ほんとですかあ!」


 ベッドに座った状態で、意味なく手を組み宙を見る感激ポーズが出た。

 意志の疎通ができて会うのを楽しみにしてくれてる…! 会話は…   か・い・わ!


 「あの、あの会話できるのー!?」 

 「できるよ、口頭は無理だけど心話で返してくれる。これから会いに行こうかって言いたいけど、今日は駄目」


 「えー、なんでぇ! 盛り上がった時に行くのが正解だって、俺ならへーきだから行こー!」

 「却下しまーす」


 「えー、ほんとちょっとだけでも〜」

 「会う前に注意事項とか話したい。心話も受け取れない場合があるから」


 「え… まさか」

 「はい、俗に言います適性です。でーすーが〜 昼寝の後にはやる事があります」

 「何かあったっけ?」


 「手紙を書くの忘れてない?」

 「ぶっ!」


 

 泣きそうな感じで思い出した。


 「とりあえず、昼寝しよ。はい、毛布」

 「あ…  はい」



 あああああ…  うっかりしてなかったけどねー。どう書こうと思いながらも横になって目を閉じたら〜  その後は覚えてない。










 「くあ〜  気持ちよく寝たな〜。そろそろ起きるか」


 短時間の昼寝は良い。いや、長時間の昼寝になると調子が狂う。


 隣はと確認すれば口を開けて寝ている。すかーっと寝てる。 …これが苦悶の表情でぶるって唸ってるのを見た時にはぁああ    ほんっとによー。


 手を伸ばし額に触れて熱を診る。足先が冷えてないか確認したら起きそうだと思うが、起こしていーだろ。不安は払拭しないと。



 「ぬあ?」

 「起きた? 起きれる?」


 「あ…  起きる」

 「ん」



 すっきり爽やかな目覚めでないのが心配だが、先に自分の身支度をしてだ。



 「さてと、書く内容は思案済みですか?」

 「…はい、いいえ! 手紙の定型文を思い出そうとするんですが詰め込んだ記憶が薄くて入って無いんで出てくるはずもなく何となくでナンとかな感じですが!   どーにも〜  たはっ」



 

 …書きたい事はあるが、どう書けば良いか迷うで正解か。



 「にゃんぐるみの説明がですね」

 「説明に迷うなら書かなくていーよ」


 「へ?  あ〜  異世界の説明もですね」

 「省いちゃえ」


 「え?  …あの出自が定かでないから怪しさが爆発で」

 「兄さんの承認降りたから、端折って平気」


 「お土産の説明に要るでしょーがあああ?」

 「うん、要る。口頭での説明を避けてはいけない。けど、文書として残す絶対の必要性はない。残るモノでうざったくなるのは避けよう」


 「……あ、そか。  じゃなくて! それなら何を書けと!」

 「だから、ご機嫌如何がの文を」



 「………それだけでいーんだ?」

 「うん」


 「お前との関係性は? どこで知り合ったとか要らんの、本気で?」

 「俺との関係性なら大事な人と書いて下されば」


 「…ちょっと待て? それ、ナンか違わね?」

 「え、どーして? 一番使い回しが効く便利な言葉ですよ」


 「つかいまわし〜」



 開けてる口に何か入れてあげたいが薬湯流し込んだら怒るだろうな。心的負担を軽く軽く上げたなら、取り掛かるのは名前だ。こっちが重要だ、撤回を求む。






 「だから、ノイでいーだろ」

 「だから、何で自分の名前を省こうとするのですか?」


 沈黙と下がる目に、まだ早いのかと悩む。

 信頼がないから話さない・信頼があっても話さないの二択だろうが〜〜  どんな場合でも俺の理想は自白だ。 あ、言い間違えました。違います。脅しなぞこれっぽっちも! 言葉の綾がですね!


 はい、大真面目にやってます。

 



 「えー、こちらでは名前を変える事は疾しさや犯罪傾向がですね」

 「それはないから違うから!」


 「そこは理解してるつもりです。それは信じます。大体、そんな事をする理由がないし。だけど〜 後出しは、してやったりと笑えもするけど望ましいものじゃない。ましてそれが自分の名とくれば、もっと良くない」

 「だから使わないでですね」


 「文書に残すのは決定打なんですよ。最初の筋を間違えるのが一番面倒。名を秘す事に理解はあるし、その名で呼ばないでくれとする意向を通らせる為にも必要なんです」

 「詐称しようなんて思ってないって。俺の気持ちな訳で」


 「でもさ、当初は違ってたと言ってましたよね?」

 「はぁまぁ」


 「村ではナンて名乗りました?」

 「そりゃー…   あ?」


 「ああ、 やっぱり…(やっりぃ!)  エッツには派遣しました。その後の件で、村にも足を伸ばせと連絡を出してる。上がってくる調書には君の名前が記載されてるでしょう。それをぐい〜〜〜〜〜っと引っ張った場合の翻訳をしますと〜〜  『村民には正式名称を名乗っても、ランスグロリア伯爵には名乗らないと決めた』 これでよろしいでしょうか?」


 「ほわあああああああっ!?」



 驚愕の顔にもう一押し! 俺の希望の延命措置の為に駄目押しを!! 









 椅子に腰掛け、紙面に向かう姿に声を掛ける。

 

 「寒くない? もう一枚羽織る?」

 「へーきだ。 ふ〜〜〜  よし!」


 気合いを入れて書き始めるのを、隣に立って見守った。





 「…これで字は合ってるよな? 文章ヘンじゃない?」

 「変な事ないよ、初めましてから始まって名前で締め括る。どこもおかしくございません」


 「ん〜〜 清書しても下手な字だよなー…  書き直し…  無駄か」

 「丁寧に頑張って書いたってわかる字だよ。上手下手はあるけど、今できる精一杯で書いたものを自分で卑下する事はないよ。恥ずかしいと思うなら、そこから。 ね?」



 曖昧に頷いても、どこかで納得してない顔に言ってみる。

 

 「俺が代筆しようか? 名前だけ署名すれば良い。元々はそうしようと思ってたしさー」

 「…何ですと?」


 ギリギリと見上げてくるのに、に〜っこり笑う。

 俺と手紙を見比べる。そして目と口元が下がって微妙な顔をして。


 「これでいーです…」

 「君の努力の結晶を無にしなくて嬉しいです。これで出しましょう」



 やだなぁ、そーゆー目で見ないで下さい。俺の所為じゃないってー。 ま〜 俺の希望が儚く潰えなかったんで浮かれてますけど。希望を通す為なら頭を回します。譲らないけど、君に我を張り続ける気は無いよ。


 それと、だ。







 「え?」

 「時間が経ったから忘れたかな? 聞く前に寝た俺も悪いんだけど、思い出せない?」


 「……それは確か  そう、なかったはずだ。 そうだ、飛んだ時も走った時も気にしなかった。ある事を意識しなかった。気にならなかった、ヘンだとも思わなかった。  …なかった!!」


 「よっしゃあああっ!!」



 ダンッッ!


 片手上げに片足に思いっきり体重乗せて、床を踏んだ(ガッツポーズ)。嬉しさ全開!



 しかし一人喜びより二人喜びが正解! 分かち合え!


 手を取り合って、わーいと喜ぶ。

 アズサも嬉しさ全開だが嬉しさの中でも多分全ての意味はわかってない、話してないから仕方ない。不安を煽るだけの事を話せるかっての。



 「こーゆー言い方もアレだけど、本当に大丈夫! 深層には達してない!  普段の様子に構築の強さ、技術面からも達するはずがないと判断してたけど、見るだけの判断は曖昧で堪らなく不愉快で。調べるにも発動したら思うと手が出せなくて、すっごく腹が立ってた。だけど馬鹿もちっとは役に立つねーー!! あー、良かったああああ。不安が一つ払拭できたね! 後は力を纏って綺麗に隠す方向でいこう!!」


 「え、あ、うん!  うん、良かった!! これが酷くならないって事だろ!?」

 

 「そう! もう表層で済んでて本当に良かったーーーーっ!  奴隷印ってのは服従を強制するモノだから。それが中途半端に息衝き続けてる、人が構築した術式の効力()が未だに巡り続けてるとも言える。そんな状態は心身を病む元だから、もしもを疑うと怖かったんだ…


 まぁねー、上っ面の反省だけで同じ事を繰り返す馬鹿には自業自縛と人格ぶち壊して形成をやり直す程度に深層まで叩き込んで暫くナかせっ放しで放置しとくのが手っ取り早いんだけどねー♥ あはは〜。


 奴隷印と口にするのは容易いけど、術式における縛り(精神干渉)だからこそ誰にでもできたら困る。そんな気分だったとか言ってされたりしたらねー、ほんとにねー」


 


 嬉しさから内情の一部を軽くぺらっと喋ったら、カッチーンと凍結してしまった。夢渡りでも怖がらせたからなぁ…  でも時間的に良い頃合いだから、そのままベッドに戻して解凍に毛布を掛けてぎゅうぎゅうしといた。




 ま、常識で全部話すなんて事はしない。

 怖がらせて萎縮させてなーんーぼ〜なだけのやり方ってぇのは〜  有効ではあっても見通しが甘いよなぁ?   ふ、 あーははははははっ!






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