表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
131/239

131 鳥の声に似せて語れ

  


 横になって直ぐまた起きる。


 起きて一声、放ちました。

 それが鳥の声とは思えませんでした。そりゃあ、人間ですし? 出た言葉はくるっくのこっこーな訳ですし。ですが、最初の「くるるう」ってのが口の中で含み転がす唸り声。どー聞いても威嚇音です。鳥も威嚇と警告にツンザク声を出すのでしょーが、獣の咆哮と言った方が合ってますがな。


 それにアナタ、あの人ってば放つ前に舌舐めずりをしたんですよ! ベロリと。 


 発声前に唇を湿らせただけかもしれませんが〜〜 寝転がって見上げる横顔とゆーか斜め顔といーますか、うっす〜〜く笑うイイ顔に凶悪入ってる。


 前も思いましたが、その手の顔が似合います。悪人面でないのが救いですが、悪人面でないのが凶悪な気もします。人は顔ではないと言いますが、やはり印象とゆー壁は人である以上どーやっても立ち塞がるのでしょう。目付き顔付き悪くならないよーに、ちゃんとマッサージしようと思います。忘れなかったら。



 それはさて置き、問題はその一声ですよ。

 空気が揺れたっつーのかぁ〜、そーゆーのを見た気がした。


 それに、「あ」と思った。キラキラの光るモンはなかったから、やっぱり気だけ。い〜い加減にはっきり見たい、セイルさんの時の様な輝きを見てみたいのだ!!


 …しかし、吠えただけなら見えるはずもなし。


 魔力を使ったか、使ってないのか。

 最初で躓くここら辺の感覚とゆーのがぁああ〜〜  まだわからんのだなー、問題点はわかってんのになー。マジックグローブに補充を貰いつつ頑張るしかないが、このもどかしさよ!

 

 時短を希望するがそれはならん。それだけはならん! 何をおもーておじいさんの薬を拒否ったと! あのお話を伺ったと!  忘れるな、自分!  どっかを間違えると老けるに直結しそーで怖い。 死ななくても、そっちは大いにアリだろう。  …誰かさんが消耗とか摩耗とかゆーから。そんで身体時短の超有名所、浦島さんちのタローさんが怖いわ〜。与えられた力を考えなく浴びるって怖いわー。あれ、優しさか苛めかわからんわー。でも、あれは罠でしょ。


 自分自身の失敗、訴える先が自分以外にあったら素晴らしい発見ですネ。







 見たと思った事は進展、だからナンかしたはずなんだ。


 それは、あ〜〜 魔眼じゃなくてぇえ〜 魔性の声を出したで良いんだろ?  んあ? 待て、始めっからそーゆー風にしよーとして出した声って魔性で合ってるか? …その前に魔性って魔力を含んだってゆー意味合いじゃなかったよな?  んじゃ、今のはナンてゆー? 魅惑の歌声? …威嚇が魅惑?  いにゃん、怖い。ドスの利いた魅惑なんて魅惑じゃねー。



 発声に込めた魔力ってぇのはあ〜。


 ………あ? もし見えたら、口からキラキラ発射だったとか? かいじゅーなら口から光線だろ? え?あれ? いや、口から出されるキラキラがげっろぱの場合はモザイク入ってる状態が普通でえ〜〜 うっわ、俺の思考アウトォ! はい、次。次行こ、次。もっと良い感じの思考で。


 え〜〜、ああ! どっかのガムのCMだ! お口スッキリ清涼感とかいーながら口からキララ〜〜と有りもしない光を吐いてたのを見たよーな気がすんよ! あーゆー感じで歌うとぉおおお!!



 ……映像的には「ぶぅうっ!」って吹くな。ダメだな。 ううむ、思考的には俺よゆー? よゆーに似てる思考で完結したら全て間違いで終わるな。早よ聞こ。 




 「あのさ、今のナンかした?」

 「ん?」


 「さっきの声」

 「ああ、あれは。 ん〜〜    こるぅうう るるぅうう  くるうぅうるる」


 「へ?」


 「るるううっ  こぅうううう〜  こっ」


 

 お鳥様のお出ましです。

 アンコールを求めてませんでしたが… さっきとは異なる鳥声です。かーんぜーんに違います。けこーっ!と怒る雰囲気でもござませんし、発音練習時と同じ感覚ですので威嚇も魔力も感じません。


 …そうか、比較して考えろか!   ビフォー・アフターじゃないけど、似た感じで!!



 しかしですね? 「るうるぅ」と言ってくれても何と言ってるのか不明です。これも勉強か? 聞く前に考えろか?  ううううう。




 「それじゃあ」

 「え? あ、はいはい」


 終わったよーでベッドに横になられます。ごそごそするんで気持ち体をズラします。そんで、一応毛布の端を差し出す。


 「あ、俺は無くて平気。ちゃんと自分で使って」

 「…お前にナンかあったら怖いから。そのまま引っ張れ、んで腹にだけでも」


 「え、あ〜。 ありがと」


 引っ張る事無く、また起きて丁寧に毛布を横に伸べられます。そして三度みたび横になる。ベッドの一方が沈みます。 …俺が起きたら良かったか? 持ち主として扱いがぞんざいだろーか? 反省をす、   いいや、違う! 毛布から出たくないよーな事を言いやがったこいつが悪い! 確認の名目で遊んでるこいつが悪い!! こいつ、絶対遊んでやがる!!


 起きません、毛布も半分はやりません。



 「で? 先ほどのお怒りのお声の意味は?」

 「ああ、次の侵入に対するこちらの言い分をちょっと強めに言っといただけです」


 「…まさか鳥言葉をご存知でいらっしゃる!?」

 「まっさかあ、そんな無理言わないで」


 「あはは、だよねー。ちょっとトキメキが溢れました」

 「俺は君の猫言語を履修したいです」


 「「 ……………  」」



 「一人で履修するのはどうやっても無理だから。わかるよね?  一緒にやってくれるよね、やるよね?  ね。 二人で勉強、 しようね?」


 

 話の途中からハージェストが体をこっちに向けたんで、互いにへらっと笑うのがよくわかる。一拍置いた最後の駄目押しが強い。ぬる〜〜くぬるく笑い、今度猫語のお勉強会を開く事で話は終了した。


 したがハージェストの課題は俺の課題でもあるのか。押し付けの逃げ思考では単位は取れそうにない。猫語を独学で履修すんのは… 普通に考えるだけ無駄だろ。その不可能な事をやってのけてるこいつはすごい。しかし俺は本当に翻訳とかしてない。不思議で謎だ。俺はお前が無意識にやってるんだと思うんだけどなー。


 ううむ…  教えるにあたっても、ちび猫せんせーはごっこのせんせーなのですが…   ごっこはぷれい、ぷれいはこっこでこっこのこのこのあ〜そびい〜、くーるるるー。  


 


 「それにしても… はぁ、本当にごめんよ。君の眠りを妨げさせたりしないなんて言っておきながら、この体たらくです。自分が情け無く」



 …そーいや寝る前に、そーゆー話をしてました。

 ココで根性が悪いといーますか、自分に都合の良いコトを考える人でしたら〜〜  今の言葉を言質に罵るんでしょーか? 


 『お前が言っただろーが、この約束破り!』


 言葉を盾に責めるか、それとも『一つ貸しな』とか言って平穏そーに終わらせるか?  …そうですね。貸しってぇのは、どーゆー状態で使うのが正しい貸し借りですか?


 俺に差し出してくれたのは優しさのはずです。向けてくれた好意を貸しに化けさせる、それってナンでしょ。思考回路としてはおかしくない? それとも正しい?

 

 上に立つ機を捉えて放さない。

 それは必要なスキルだと思う、あって良いスキルで大事なスキルだと思う。そして相手が下手に出たならそれは下、好意を遠慮なく踏んで上がっとく。当然ニャンと踏み締め、立ち位置(指定席)を確保・確定し安定した場所を自分で作ってリラックス。 


 …あえ? 思考がどっかでズレた?  ナンか既にやったよーな気もするな。少し前か?  はて?  まぁ、相手に気兼ねさせずに早く終わらせるっつーんなら、貸しにすんのが早いんでしょう。


 そうするとだ。



 にゃ〜〜あはははは! 人間性がほんと〜〜〜〜〜うに出ますなぁ!!  こーゆー罠でくっきりと映し出されるんですな!  


 地の自分(本性)と、 素の自分(お育ち)が。


 

 出た所で本人的には問題なさげ〜〜。 だって、それがナチュラルだからわかんねーだろ?  …問題とも認識しない、気を使わないって幸せだぁね。ストレスなさそう、あるなら自分の不平不満と違う?


 認識の上に成り立つなら〜〜  お・と・な。  なーんて言うんですかね? あっはー。 




 おばちゃんの一理にハージェストの一理、甘くてどっか抜けてんじゃねーかと思う俺の一理。それでも選ぶのは俺の自由なはずですし。


 何時か失敗したなぁ〜 と思うコトがあったら。それは俺が自分自身を伸ばす方向を〜 今、伸ばしたいと思ってる方向へと向け損なって失敗したか、それこそ運命に弄ばれてせーかく歪みきっちゃたんでしょう。きっとそーでしょう、他にもあるかも知れませんがソコまで落ちるよーに考えるとゆーのはやってられません。ええ、考えません。


 人の意見も参考にします、聞きます。しかしだ、聞いた結果に足元ぶれてゆ〜れてわからんなったら狙いが外れるではないか!


 『だああっ、俺は行きたい方向に行きたいのだ! 邪魔すんなぁああ!』


 …叫んでも、周りをドカドカ弾き飛ばす根性も力もございません。小心者の小動物ですしぃ〜。 対話と圧力。 圧は持ってないから対話選択ですなぁ。でも今回の手とか無理、行使した人とは〜〜  どうでしょう、わかりません。

 



 「情け無くないない、お前が情け無かったら俺どーしたら? 毛布様で助けてくれたろ?」

 「それはそうだけど、自分で言ったのに」


 「お前が動いてくれたんだろー?」

 「それはもちろん」

 

 「最善じゃなかったにしても助かってる。それで良いって、ありがとな」

 「…どう致しまして」


 よし、これで次へ行こー。そんな微妙にどーしよーなんて顔されても次へ行こー。置いて行くと俺が迷子になるかもしれんから引っ張って行こー。


 …早よ、ついてこいって。まだ寝ないぞー、ゴロゴロしつつ聞くぞー。




 「夢渡りって頻繁にあるもん?」

 「…それはないよ。突き詰めて言えば精神干渉、己に返る実害を考えずに行う無謀な者は少ない」


 「精神干渉… 普通に危険単語では?」

 「干渉には度合いもありますが、普通に危険は危険です。精神系の構築は自分を守る事が必須です。まぁ、実際どこまでやってるかは個人判断で…  俺はそっちに手を出してないんで少々の知識と〜 まぁちょっとしたアレで」


 「ん? 勉強しなかったんだ」

 「他でいっぱいでしたから」


 緩く笑うのに突っ込みドコロはココじゃないと流す。これに突っ込んだら、前に戻るをやってしまう。



 「知識だけでよく把握できましたね。俺は鈍くてわからない…  残念な人ですのに」

 「え? そんな決めつけしなくても。 言った通り感知対象である事と〜 何て言えばわかり易いかな? 夢渡りは特徴がある、だけど今回のはそれもどこか違ってた。それが惑いになった。


 あ〜〜のですねぇ… 隠すコトでもありませんが、あまり大っぴらでもない方向で言いますと。 え一、夢渡りは伝達手段の一つでありまして」


 「……はぁ? なにその夢が崩れてく現実性」

 「いやほら、長距離連絡には便利だから」

 

 「……危険性があるといーませんでしたぁ?」

 「始めから特定の契約をしておくと行使者にも負担が少なく、間違えてふーらふらなんてなく」


 「だからロマンスの消失をすんなぁ!」

 「え? 夢の中での密会っていーと思うけど? 嫌い? 内容漏れしないから良いんだよ。 …語れば夢から離れるものではありますが、ね。 あは」


 「…なんか気軽にゆーね」

 「うん、使ってるから」


 「なんですと!」

 「できる奴がいてね、偶に話をする。 あ、ごめん。誰とは聞かないでくれると嬉しい。俺がそういう相手を持ってる事も内緒にして欲しい。 うー… 本当はこんな話をする予定はなかった、話さない方が良いとも思ってる。だけど知識はあった方が良いし、知る者は知る話。術式に対する嫌悪も低い方が良い。この先、俺に渡りがない訳でもない。その時、変な心配させたくないし」


 「それは… もしやスパイ活動とゆーヤツですかっ!?」

 「ん? あっは、その質問には無回答であると回答します」



 あはー、と笑っとりますが… どーなんだ、これ? 家のコトか? なら、聞かない方が良かった気はする。しかし、この先と言われると〜〜  切らせたくないカードを俺が切らせたと…   うーむ、うーむ、知識の獲得にはナニかが付属するのですなあ〜。



 「あ、言っとくけど、少し勉強した程度で誰にでもできる術式じゃないから。術式は目安の一定量で終わらせるのが理想だけど、現実はまた違う。ごっそり使うと体力にもくる、受け手側が排除に動くとより負担」


 「…は、排除。いや、それはそーだ。今回みたいな押し掛けは要らんし全力で拒否して当然。 あ、そーか! それでセイルさんの結界は遮断じゃないんだ!」

 「うん、それもある」


 「…も?  他にどんな意味が?」

 「叩く爽快感と貪欲な知識技術の獲得と遊びに暇潰しと〜〜  張った罠に獲物が引っ掛かる楽しさとかが」



 ハージェスト、お前もすごく良い顔するな。



 「……何だろう? ナンかこーー  わかるよーで賛同したらいけないよーな。 ぬぅ。  え〜〜〜、普通の夢は忘れますか?」

 「はい、普通に忘れます。覚えているとしたら、覚えていたい・見ていたいと願ったモノでしょう。それも何時かは忘れていく。干渉が入ったと判断したのに、最初に見たって言う夢から全部話すからすごいと感心してた。それに判断を誤ったかとも思った」


 「え? そう? すごい?」

 「すごいよ、君がやったコトは力の証明だ。わかってないかもしれないけど相手を踏んでる」

 

 「…踏んでる?」

 「踏み締めてますねぇ、カッコイイです」


 「え? え、え、ええっ   俺、イケてたり?」

 「はい、素晴らしく」


 「……よーわからんが。 やりぃ」


 ハージェストから花丸貰ったよ。






 詳しく話してくれる夢渡りは。

 伝達の場合、本当に夢だと忘れると馬鹿。だから忘れないよーに思い出すよーにと、術式の残り香が強いんだそーだ。それがあって忘れるなら驚異だと。 …その場合は病気を疑いますな、年ならもっと疑える。


 んで、俺は術中に嵌まって泣いたけど〜〜 その一つ前を話せた。至る道筋を語れたって事がハージェストからすると、構築された術式の完成度を上回ってる証だそーだ。普通なら忘れさせないとする内容でいっぱいいっぱいだと〜〜。



 そう、ディープインパクト。

 間違いないインパクトでした、あれだけホラーは要らんと訴えてるのにな。


 嵌まって泣いてなーんもできんかった俺ですが、ええ、逃げ回ってただけですが、それでも俺は強いそうです。精神的にも参ってますが囚われてないとゆーんです。そーでしょーか?  ……思い出さないよーにはしてますがね?


 

 「毛布様のお蔭じゃね?」

 「術式を崩壊させたのは頷く。けど、君自身に何かした?」


 「 …ええまぁ、それはそーですがぁ〜」

 「君には君の力がある、掛かった時点で強いとは言えなくても。目に見えるわかり易いものでなくても、君は無力ではないよ。悪意と呼べる渡りに囚われてない、次への足掛かりを与えてない。それに毛布がある」


 「足掛かり?」

 「はい、最後に手を見ていたんでしょ?」


 「…見てた、気付いて止まって見て。そこから動かずに。  最後は気付いたら、えー 終わってたと言うか」

 「どんな感じで見てた?」


 「あ?」

 「笑ってた?」


 「まさかあ!  …こう、 多分 こんな感じで見てたはず で」

 「ほら、切ってる」


 「はえ?」

 「ん〜〜  言い方に視点を変えよう。下が見上げるその顔は、端然と佇み見届ける者(クールビューティー)でありまして。『やるだけ無駄だ(馬鹿め)』と相手を切った姿勢であると申します」


 「…嘘でしょ?  え、ナニその誤変換。 え?  表情カッチンしてただけですよ?」

 「だけって言われましても、思わせる事で相手を引かせるのはよくある手ですし。駱駝さんとゆー素晴らしい力の後押しもござますからねぇ…  それは全て君が為」





 言われた内容を考える。

 考える、考えて、気分が少し上がる。しかし、本当かと戒めて落とせば違う。

 

 駱駝さんと一緒に帰ろうとして立ち止まった。謎の怪光線が射し、  待て、違う!素晴らしく煌めく高貴な救いの手に似たお釈迦様が手ずから落とす蜘蛛の糸のよーな!   あ、違う? あれ?  俺ナニを…   まぁいいや。


 光と声。あの二つがあっての話でしょう。あれが俺の意識を変えました、あれがないと無理でした。カッコイイ自力帰還はしてねー。それにあれは駱駝さんではないと確信してる。 …なら、自分の力と考える方がアウト。



 『相手がしてくれて当然の現状を俺が作り出したのだ! これが俺の力だ!!』



 …なんかこー 嫌と言うか、良いと思えん。

 俺、違うの希望。そんなわかり難いの要らんて、もっと別なのがいーです。


 勘違い野郎になりたくないんで、やっぱりお前のお陰で言おうとしたら。 ら〜〜〜〜〜。 まじまじ見ると隣は寝落ちしてました。すかーーっと寝てる。


 「え、まだ話し終わってな… 」


 

 起きろよーと揺すろうとしてやめた。


 今日… ではない日を振り返ると反省。かなり疲れてると反省。反省して、そそそそっと毛布様を腹へ押し当てる。


 「お休み」


 小声で言っても返事はない。既に夢の国へと旅立ってる。 …こいつの精神力と体力を俺が削ってる気がしてならない。領内で色々あるのは確かでも、確実に削ったと思う。「お前が負担なんだよ!」と人に言われたら反論できない。



 寝顔と金の髪を、ぼーーーーっと見てるが眠気は遠い。遠いんで反省を込めて過程を脳内で再確認。逆に辿ってみる。



 声、光、伸びた黒い自分の影。

 影の事は笑うしか無いんで流す、自分の為にポイして進む。


 落ちていった小さな手、駱駝さんの歩み。無数にあった手、砕けて消えて。仄白い光に括られた手は 蓮。



 「 ……うげ」


 思い出すとムカついてくるんです。二重にあると、重なってると見た蓮。


 俺の思い違いでしたが〜〜 なんでだろね? ナンかムカつきますよ。蓮華座とゆーじゃない、清廉な雰囲気あるじゃない。あんなモンを蓮と同列に見た自分に腹が立ってんでしょね。きっとそうでしょう、なにゆーても根本を誤ってんのが最低です。根本がネジクレてんのをまともとは言わん。


 蓮が嫌いになれますよ、見る度ムカつきそーですよ。


 …うんにゃ、間違えるな俺。レンコンは美味しいし、見間違えた自分ののーみそがイマイチになってるだけだ。俺の落し物じゃないと気付いた時点で用心しなかったのがマズかったんだ。俺の記憶にある蓮と、見てしまったモンの落差が非道いからマズいんだ。最低なんだ。


 うむ。俺が俺であるのだから、このコトは考えねばならん。実質、考えた所でナンかがどーにかなる話でもないが、俺は考える。俺がそうと思うから。そして俺はこれを引き摺ってはならない、人がどーでも俺は引き摺らないのですよ。んですから!



 「蓮は蓮でもあの蓮だーけ、さよーならー。蓮モドキの似非なモンは踏んづけちょっきん、バラバラと。解体しぃてぇ〜 さよーならあ〜〜。 二度と生えてこないでぇ〜〜 要らないからねー。


 あー、ほーんとモドキでモブの蔓延りとかやってらんない。要りません。除草剤の一つも撒いとけっての。  にゃ〜はははんっと。  うむ、これでスッキリ。キラキラの息をふぅううっと吐いて俺がスーッとしましたよっと」



 小声で呟き、指ちょっきんポーズにその他で終わらせました。実に良いですね。単なる記憶でも嫌ならちょきちょきするのが正解ですよ、ほ〜んとに。  ハージェスト、起こして…  ないな、よしよし。



 「あ? …そーいや結局、くるるうに魔力がどーとの答えを  っ!」



 聞いてないではないか! と叫び掛けた。


 アゲアゲで声が上がってしまいそーになった…  眠る顔を伺うが起きる様子無し、セーフ! 起こさない様に離れようと思うがベッドの幅が…   連続攻撃はないと思うが、隣と離れ切るのもちょっと怖いからなー。




 「あ、電  …じゃない」


 最小に落とした灯りはまだ点いてる。ハージェストが寝落ちしても消えてない。もったいないお化けが出るから消しますか。



 隣に注意して起きる。

 起きて部屋を見回せば、テーブルに置いたネックレスと犬笛とお守りが見えた。


 二つ外すと首が軽いです。 …はうっ! 聞いてないがお守りあったら違ったとか言わねーだろな!? お守りだからしてたら夢でも平常心保てたとか言わんよな!? ……同じ室内にあるから効果あるんじゃね? 装備品ではあるが〜〜 on・offボタンなんてねーしなぁ。


 あ、効果… ないか。

 おにいさんのポリシー考えるとないわ。おじいさんも言ってたしな、逆に効果出たらアレなんかな? 鰯の頭も信心からみたいな〜、信じる心は救われるみたいな〜〜。


 あの人は甘くない。 ふ、残念。





 見回す室内に変化はない。

 眠気も訪れない、起きたら頭の回転が違うかもしれないから。


 あーんまり細部まで思い出したくないが隠されたメッセージがなかったか、思い出せる限り思い出そうと頑張ってみた。



 「 ………ねーな、そんなもん」


 どこにもねーでやんの〜〜。



 仕方ないんで更に突き詰める。水の夢を考える。


 水関係の夢の定番。  

 …子供なら、おねしょの前兆じゃねーの?  うっにゃーん。



 「ちゃぷとか、ぱちゃとか  …!」



 グーとパーの手を打ち合そうとしてストップ。ベッドの上で跳ねようとする自分の体ストップ! クールにクールにクールにぃ!


 エアーポンプ付き金魚鉢のキラキラ金魚ズ。あの水音に似てた気がする!  …うあああっ、キラキラ金魚が手に化けるとかっ!  やめれ、今のなし! なしなしなしぃいい!! ホラーは強制削除しろ!!


 …俺の阿呆、クロさんが危険物出すはずないって。 





 視点を変えたとしても手同士のバトルはなかった。


 一様にこっちに向かってだなあ…  俺、ナンかしたんだろか? とばっちりじゃないなら俺狙いってコトになる。俺は誰かにナンかした覚えはない、された覚えはある。なら、逆恨み〜〜   はぁ… 嫌な感じ。 どこが安全地帯かわからんなるが、こっから出る方が危険だ。これは疑心暗鬼を誘ってんのか? こっから出るのを待ってるってヤツか?


 ふははは! 誰がこの安全地帯から出るか、出たら負けだ! 我、罠を見破ったりぃいい!!  なーんて。



 「消そ」


 ベッドから降りてポチッとしに行く。


 offになって落ちてく中を窓へと向かい、カーテンを握る。音を立てないよーに静かに引いて隙間を作る。 うむ、俺の技術は向上している! 


 




 お星様が綺麗です。

 

 部屋が違うから見えるモンは多少違う。でも、そっから覗いた夜空には変わらない満天の星。本当に全面が煌めくので天の川認識ができません、極点星はどこでしょう。 


 …こんな時には不粋かな? 煌めく星々が見守る中での夢渡りならロマンチック、七つの夕べに比肩するね。





 窓に 夜空に 視線を向けて  子守唄を歌ってた。

 


 真似てみるのも悪くない。


 …歌詞がわからんし思い出せんし。そんでもって向こうの子守唄は〜〜 部分的には覚えてる。覚えてるけどさー。



 ちょいと振り向くが起きそーにない。

 今なら歌ってみるかと思いもするが、子守唄で起こすのは止めときたい。起きた理由が「音階ハズして、耳障り」だったら、確かに撃沈する。


 目を閉じて思う。





 「くるううっく  こ〜〜〜〜〜〜〜っ ぅ」



 吐息に変えて終わり。



 ナチュラルに笑いますよ。

 んじゃ、ベッドに戻って寝ましょーか。 …うむ、朝告げ鶏は二度寝するのだ。














 白む気配か定刻か。


 覚めた目に部屋の内装が映し出されば、夜中の一連から何から思い出した。僅かでも色彩を与えようとする明るさに、カーテンが少し開いているの見た。


 しっかり閉めたはずだがと訝しく思い、辿る記憶に欠如を覚える。アズサに「お休み」を言った覚えがない。考えている姿は覚えているが…  そうか、あのまま寝たか。安堵からキれて落ちたのか。


 スッと視線を向ければ寝ているはずの頭がない。黙って反対を見たがない。



 「… !」


 跳ね起きて周囲を確認しようとする自分に、急速停止を掛けて自制した。跳ね上げた足を斜めの角度でグッと止め、そろそろと静かに下ろす。あるらしい熱源に注意して、そろ〜〜〜っと毛布を捲ってみた。



 「…どーしてだ?」


 足があった。いや、無いと困る。

 どうやら足元にアズサの頭があるよーだ。足の向きに下半身の曲げ具合。体勢としては体を丸めて俺の方を向いて寝ている、はずだ。 …一体、俺が寝ている間に何があったのか? 何故にこの逆転現象が発生した?


 そろそろと毛布を引っ張れば、頭が出てくる。気持ち良く寝ている。


 頭から被って寝ている理由はナンだ? なんでわざわざ逆に寝る?  …俺が鼾を掻いたのか、歯軋りか、寝言でも言ったか?  それともナニか怖い事でもあったのか?  



 俺の膝の辺りにある頭…  顔面強打に至らずに良かったと思う、心底思う。足を抱き込んで寝ていたなら、どーなっていた事やら。ははは。 寝てる内に抱きツブすなんて冗談でもねえ。



 うーん…  見える足裏に、つつつい〜〜〜〜〜〜〜っと指を滑らせて遊んでみたい。 








 なぁ、アズサ。

 思い出した事があるんだ、とても良く似た衝撃の事で。


 あの時は勢いよく起きて蹴ったから…  転がして、一声、鳴かせてしまって。 それで 見たんだ。 うん、見た。 心臓が飛び跳ねたよ。


 あの頃は夢幻ゆめまぼろしでも忘れてなるかと真剣に脳裏に留める努力をした。その後は大事に大事な時に思い出すよーにしてた。  懐かしい。


 

 懐かしいと思える今に、君が居る今。


 覚えていたい・見ていたいと願ったモノ。覚えてる感情。 …それでも見た夢は薄れて忘れて。アーティスと一緒に転がればイシの角は取れるしさぁ。


 時を経て丸くなるのは弱さか強さか、どっちと取るか?  転がった程度では自砕しない強度を誇っているものだと自ずから気付けば最良ってものだね。



 そうありたいと 俺は願った。  



 願って 歩んだ。





 誇らしくあれる喜びが自然な笑みを誘うから、誘われるままに寝顔を見てたが。



 『抜かったあ!!』


 脳の叫びに、顔が引き攣る。 …聞いてない。夢渡りの中で手の甲がどうなっていたか聞いてない! あったかどーかで計らないといけなかったのに!!  


 体の無事を確認したから気が緩んだにしても! 確認前に寝るとかないわ!!  あーー、頭をもっと回せよ!  ぐ、あ〜〜。 


 今日もやる事は山だろうが、まずは兄さんに話を通してからだな。








 徐々に射し込む力が増してくるのに、顔を上げる。



 「こ〜〜〜  けこけこ こここ〜〜〜う」



 起こさない様に小さく告げて。


 一日を始めよう。






 …しまった、アズサという引力が睡魔を発している気がする。おかしいな、そんな力はわからないのに。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ