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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
127/239

127 至る流儀に

    


 「確証無しに決めつける事はしないよ」



 ございましたよ、推定無罪。


 反省しているのに伸びてくる手。これを躱そうと必死にのーみそ回しまして、話のチェンジに犯人として最初からエイミーさんは上がってたのかとか、他の人とどう違ってとか説明を求めてみました。痛い所を上手く突いたよーで逃げれましたあ〜。あっはっは!


 そしたら推定無罪の心がこの様に出てきたんですよ!


 

 「見落として虫が増殖したなんて冗談でも笑いたくないからねー、あっはっは」



 ……心意気は違ったよーですが、結果的には似たよーなもんじゃないかと?


 


 「結果として被害は無い。でも、あってはいけない過程だ。謝罪する、許して欲しい。本来は領主である兄からの謝罪が一番適切ですが、今回は俺の一存で止めました。筋は俺だと思っています」

 「へ? …待て待て、ちょっと待て! 俺が警備に納得してた以上、その謝罪は必要なくね?  大体、持ってかれても開けれない。偽物と掏り替えたって一発でわかる」


 「…燃やされたら?」

 「…うわぁお」


 「もしもあれらが焼失したかと思えば… ごめん。欲の皮がこうドンドン伸びて」

 「ごめん、鈍くてごめん。頭ん中でお金様がチャリンと鳴ったが最後、俺の欲の皮もこうビヨーンと伸びる。価値を知る前には戻れない」


 「それが当然です」


 二人で深く頷いたわ!





 エイミーさんは、ハージェストの防犯対策に触れて展開したナンかを確実に受けた。


 「術式同士の反動は見受けられない。行ったと判断するのは式で流したか、始めから用意していた器に流し込んだかになる。シューレのメイドに魔具の貸与はない、持っていれば私物。その私物もメイド長か執事に報告の義務がある。それは昔からある規則。怠れば没収、物に依っては館に対しての嫌疑となる。


 式を人へ流せば反発作用が出る。力を有する場合は押し付ける事への反発、力を有しない場合は身体への負担として顕著に現れる。あの手は反発作用とは違う、受け入れた結果だ。器であったと見るが早い。


 使う術式に依っては比較する事が愚かしい。今回の事は上位者と対峙した事がなく、己の力量を顧みない幸せな者(馬鹿)が陥る笑い話だよ」



 「…ぐる?」

 「そこが不明。結果として器になっただけなのか、それで色々変わりもする」



 受けて流した。すごいね、そーゆーコトってできんだ。それともエイミーさんが器用なお人?

 上手にやったつもりで知らん顔した。でも、ばれてた。ヘレンさんはどっちなんかな。俺に縋った目はほんとーに何が何だかわかんない系で助けてだったけどさ。



 『そんなつもりではなかった』 『そんな事は聞いてない』


 話が違う。

 そーゆー感じなお約束でもしてたんでしょうか? それすら忘れる程度の約束でしたでしょうか?





 

 責任問題が発生しています。


 行った事、行われた事、そこに関わる自分の行動に対する責任の所在です。責任能力は問われるでしょうか? 問われるならどの意味で問われるでしょう。



 オルト君は十三年です。

 リタちゃんには別にあり、オルト君に何かあれば刑期を引き継ぐ話になった。


 刑期を長いと思い、憐憫を覚えるのは今だから。まだまだ小さい子供な二人だから。それでもあの時のセイルさんの言葉に頷く、誰かが肩代わりする事に何の意味がある? もしも嫌みに罰として、俺の奴隷として仕えさせるとしたら。


 それは罰になるんか? ならない挙げ句に俺が見苦しくなれそうな仕様。小さい子なのに可哀想にッてねえ?



 …掘り下げると有り難い? 俺の奴隷なら、本来垣間見る事もできない場所での生活できんだろ? 奴隷と言っても体面ってなモンはあるだろうし? 奴隷でも普通な服着て、まぁわからんけどナンかの仕事して、隣で良い生活してるの見たら解放後の夢は見るでしょ。頭が良くなくても〜〜 普通なら態度改めるっしょ? 態度良好、刑期終了、解放されたら奴隷だったにしても領主館でのお勤めは経験でしょ? 活かしてそれなりのトコでそれなりに働けるんじゃない? 考え甘い? まぁオルト君はお家に帰るんだろーけど?


 それでイケたら更生成功例で良いってヤツ? ……碌に痛い思いしなくてすんでラッキー? それを良かったねと思ってやれない俺の性格歪んでる?



 …別ルート。

 イイもん見せびらかして、お前は下だと言って悦に入る。自分の奴隷だからと当たり散らす。俺が一番醜くなれる。それが心地いーから継続させようってんなら、今の俺はどこにいるでしょう? ま、いる訳ない。人格変わる。今までの価値観をその程度と放り出せないから、俺という存在があるとゆーに。


 本当に関わると罠みたいな。

 変化は悪いことでもなんでもない、訪れるだけだ。でも崩壊とか瓦解とか、俺は望んでないし。






 思う訳ですよ。


 此処で問われる責任は、向こうでは問われないんでしょうか。そんなに違いがありますかね? ええまぁ連鎖ね、負の連鎖。責任を問われた者の意見では断ち切る事のできない負のれ、ん、さー。 …代々引き継がれる事はないだろーけど? 一代か二代は言うだろうね、殺されたんだと。近所の人も言うんじゃない? あそこの家の子、殺されて可哀想にって。


 んで、他の人は〜〜  ニュースで判決が流れた時にまともな人なら、「そんな事件あったな、可哀想に」くらいは言ってくれんじゃない?


 俺の場合、姉ちゃんに子供ができたら甥っ子か姪っ子が言ってくれるかもしれない。「叔父さんは理不尽に殺されたんだ」って。


 …それ以上、進まなくて良いけどね。俺は進んで欲しくないな、鈍くなって欲しいんじゃないけどー。なんかな? 気分ごちゃごちゃすんね。





 不思議ですな、背中の一部が痛いですよ?


 ピリッてすんです。

 傷は無いんですがね? みょ〜うに痛いってーのは〜〜 トラウマですかね?


 …ほんの少し前、顔も見てないのがナンとかって自分で思ったけど?  振り向いて見てんだよなー。 目を見て「やべえ!」って逃げた訳よ、それで見てないはずないですよねー。思い出したくもないあの目、思い出せそーなんですわ。どす黒く広がれるナンかどーしてもどーしてもあるんですよ。


 ええ、憎ったらしいってな感情が。 どうしようもなく湧き上がる。


 見てないと思ったのは蓋したんでしょうか?






 この感情を。


 言葉で、 上手に、   慰めて、        諦めろよ。








 んな都合が良いだけのコト、誰がどの口で言いやがるよ?  あ?



 心身ソーシツと責任のーりょくがどーたらなったら無罪放免、お疲れさん。被害者の方に手を合わせて今後の人生を送りなさいとかゆーた所でどんだけすんよ? 大体、ヤッた奴が手ぇ合わせてナニ考えるよ? 自分満足? ナンかの失敗反省?  こっちなーんも満足しないですよ??


 前科者と連呼する気はなくても厚顔無恥はいるだろが。



 浮かばれると思えんわ。

 ま、そいつに浮かばせて貰おうなんて思いもしねーと思うけど。俺は死んでて生きてるけど。生きてるけど、よ? 


 ヤッた奴の手、綺麗かよ?

 綺麗でないのにどーして責任ございませんか? 闇なんて暗いから闇だろが。見れないから闇だろが。まぁねー、その一言で終えりゃ簡単過ぎて鼻で笑っちゃうけどねー。んでも全部見なけりゃイケナイんなら、そいつのシナプスでも取り出して顕微鏡で覗いてみりゃあいーんでないの? あっはー。

 





 「何が君にそんな顔をさせますか?」

 「ふぎゃっ!」



 俺の首をグイッとした先の蒼い目が蒼い。何度見ても蒼い目。その蒼さを空に見た。初めて見た此処の空の蒼さ。空は広くて大きくて、人なんてちっぽけ。 わーいしょ〜う。



 その蒼さに目を閉じたくなる。矮小な自分が映ってる。冷めた蒼が感情を急速に冷めさせて、目を閉ざしてもいない俺に「醒めろ」と告げる。


 声と表情と雰囲気が。自分との落差が。

 醒めた後の自分が。


 そこにあった鏡に映った自分。気付いたら自分が。  映った自分。見たくない。  汚らしい。   正面から見る自分が汚らしい。   鏡が映す。   目を閉ざし、他の事を考えて誤摩化したい。この思考すら無い物にしたい。 要らない。



 …蒼が冷静を促す鎮静なら、縁取る金は何になるだろう?




 「考える事は必要でも思い詰める事は不要。それでなくても危険なのに」

 「はい?」


 横になろうと言われて、素直にごろーんと。ぐだら〜っと。部屋の灯りを少し落として寝っ転がって、だべります。



 「いやさ、日数がね」

 「…日にち?」


 「聞いた話を纏めて逆算すると、君がこの世界に来て二月程だと踏んでいる」

 「へ?  あ、うん。そーかも、そん位じゃない… のかなあ?」


 「新しい生活を始めて慣れるまで。一月ひとつきを過ぎて長ければ三月、その頃に鬱々とする者はいる。君は此処を選んで来たと言った、それは嬉しい。俺が居た事が理由になった事実は嬉しい。でも、帰れないと言ったろ? 良しと切り捨てた者は帰れないとは言わない。事実帰れない状況でも言い回しは違ってくるもの。そこに至る状況を君が望んだとは思えない。  帰らない、帰れない、帰りたくない、帰りたい   …緊急性の有無は別でも、似た状況の者はいるものだから」


 落とした中では蒼さなんて不明。でもまぁそうだね、不幸だと思う事も思う人も結構いるよね?



 「無理を重ねたつもりはなくても蓄積はするもの。 ……ああ、そうか。 そうだな。 女神と呼べるヒトの選択は、この上ない思いやりで正しいと言えるのか。 俺の考えが浅はかなのか」

 「…ほぇ? なんのこったい」


 「いやほら、代筆で手紙をって言った件」


 ハージェストが横向きから仰向けになるから、ベッドの振動が伝わる。これで伝わらないとか不思議。



 「俺が受け取り損ねて間違えた自クエが何だと?」

 「…ジクエ?」


 「あいや、うにゃうにゃ」

 「……あは。代筆出して待ってたとして、俺がこっちに向かってなかった場合。他にあった案件を選んでいたら、連絡を受けるのは普通よりもっと遅くなる。火急でないと後に回す。そうなれば、あの村で過ごす事になる。待って過ごせるなら良い。でも、何時まで経っても連絡が来ないのは辛い。届いたか、まだか。どうして連絡来ないと鬱々する可能性は否定しない。事実、君は見切りをつけてシューレを出ようとした」


 「まぁねー」

 「新しく切り替える(旅立つ)のに待つ行為は相応しくない、疲れる。それよりも前に向かって歩いて行く方が気持ちが健全でいられる。


 『行かなければ始まらない』


 その意が含まれてあっても、行く事が当たり前だと受け止めれても、『行きなさい』としたのは君への優しさだと思える」




 …はて、優しさ?

 そんな事はこれっぽっちも。普通に聞く事聞いたら答えてくれまして、聞いたらナチュラルに自分クエストに変換したんで。

  


  『助言という言葉は… とても便利で優しくて、そして 』


 脳裏に浮かぶ言葉と声に考える。そして、の後に続く言葉は覚えてる。なんて言ったか覚えてる、その時の顔も思い出せる。だからこそ、暁に導きを。



 だから、自分クエストとして自己変換がスムーズにいったのか? 


 ……よー考えたら真逆な事やってんよ。 信条と反する事やってるよ、おねえさんは。 お勧めした手前でも、大体の場所の説明したら「後は自分でがんばるのよ〜」で終わって不思議じゃなかったな。そーゆー方向でよく言ってたな。残る二人もきっと何も言わない。一人は知らない可能性有りで、一人は自力推奨派だから。


 むしろ、あの時の力関係を考慮すれば〜〜  『行きなさい』を容認してくれた、んか? 自力って事は自分選択であって〜〜 人様からの『行きなさい』なんて言葉はペイッとするのが常識っぽく。自分希望を通すのなら、言わさないのが当たり前っぽく。力関係でいうなら黙らせるのが普通っぽく。



 ……聞いた時は当たり前に聞いてましてね? 話の裏にあるモノに俺は気付きもしなかった訳で。



 『その程度』と思えるコトは優しさに入りますか? 入らないなら、どーゆーコトが優しさですか? 気付けもしない程度の奴が言うんじゃない? 



 『そんな程度のもんが役に立つかよ』


 そーゆー事を言う、そんな程度の奴が本当になんか貰えんの? 貰えるの?  貰えるんならナンかのジッケンじゃないの? 




 何を以て優しいと? 


 …まぁねー、リアルに切羽詰まってる時はやっぱ現物だよねー? 貰って良かったと本気で思いましたし、ねぇ?

 



 「良かった、半分にするのが正解。知ってなくても自己選択、オッケー。俺、ハズレてなーい」

 「ん、何?」


 「お前は気付ける。気付けるお前だから、おねえさんのお気になんだ」

 「はあ?」



 思った事を素直に話せば沈黙が返る。照れてるのかと思った。


 「本当にそう思う?」

 「思う」


 「俺はそう思えない」

 「なんで」


 「貰ったモノが意味不明」

 「あ?」



 ……子供用銀色輪っかに悩んでるっぽい。喉の奥で唸るのはやめろや。



 「深く考え過ぎなんじゃ?」

 「…そうだろうか?  恐ろしい罠の気がしてならない」


 「が、がんばれー」


 そんなはずは無いと思ったが、なんとなーくの否定もできない。罠は怖いからな。無責任な発言を控える為に声援だけしといたが棒読みはしてない。



 「うっわ、頑張れが返ってきた。 あ〜あ。   …少しは落ち着いた?」


 

 言われてみれば、思考を占めてた感情が消えてる。


 なくなったとは思えんが、話が逸れたからだとも思えん。 ……これは慰めて貰ったでいーんだろ? こいつと此処に居ないおねえさんと。今と過去の二つの意志が俺に向かって語ってくれた結果に薄れてるんだと、そう思う。言ってた通り、俺もちゃんと好かれてたってゆーかぁ気にして貰ってたんだと。


 …しまった、言い間違い。三人と一人。 

 言って貰ってた事、言わなかった事実。その結果に俺の気持ちが変わっている、気付けたから変化する。こんな短時間でも変われるもんだね。変われるもんなんだ、すごいなー。


 他人に寄せて貰った気持ちがドコにあるか、ドコにあったか、気付けたらイイネ。  …俺は一人じゃダメだったけどな。なはははは!

 





 「落ち着いた、落ち着けてる」

 「そう、良かった。駆除が終わってないの言い訳は通らないし、したくもない。こんな事ばかりで君に負担を、心痛を掛けさせてる。安全である館内で心痛を覚えさせて、はぁ…   誠、申し訳なく」


 最後の言葉はわざわざ起きて言った。


 待て、お前が起きると俺も起きねーと締まりが着かないだろーが! 寝転がって、そんな謝罪っつーもんを受け入れてたら態度悪いだろーがぁああっ。



 いよっと起きる。起きながら自問する。


 ついさっきの出来事の所為だと、こいつは脳内変換してしまった。勘違いしてる事に訂正を入れるべきだろうか? …しかし、あれはあんま説明したない。そんで思い出した原因ではある。 ……原因が要因を膨らませたのであって嘘ではない、つまり的を外してないから勘違いではない。勘違いでないなら訂正を入れる必要はない。うむ、問題ない。



 「前も言った、やる事やってた訳だろ。やってなかったら違うけどさ、皆さん動いてらっしゃる訳で。俺だけごろーんとしてんだし、そこを謝る必要ないって」

 「ごろーんって…  休息が必要な時だからこそ、  ううぅー」




 癒しの水なんか飲んでない。そんなモン、一滴だって飲んでない。癒しの術式も受けてない。せんせーから受けたら死んでまう。


 それでも今の俺の状態は癒されたで良いんじゃね? 完治とは違うけど。


 都合の良いナニかなんてない、物理的なナニかでどーにかなったんじゃない。物理的なナニかなら精神薬でしょう、用量を間違えると危なそう。俺が貰った薬は大変高価で効果覿面で、金を出しても買えない薬だと思います。こちらは用量が少なくてもごっくんした自覚さえあればイケるでしょう。でも、どんな薬でも気を付けないと依存症とか薬物中毒になりそーです。 …耐性できたり? 難しそう。



 「ありがとー」

 「…そこでお礼が出ると逆に困るんだけどね?」


 「にゃははは」

 「うあー…   後、怖くなかった?」


 「な?」

 「いやそのだから、えー…   仕事中と言いますか…  交戦状態と言いますか、そーゆー時にはなんと言うかそーゆー顔になりまして。そーゆー顔で行かれるとツラいとか真顔で言われた事もありまして。状態もそうですが…  あの時の俺は怖くなかったでしょうか?」



 ベッドの上で胡座を掻いて向かい合う。ちょっと視線がうろちょろしてる。


 「えー…  注意した後の部屋へ移動する際、心なしか引いてませんでした?」

 「ああ、あれ」


 よー見てんな、こいつ。感心する。



 「怖く〜  もあった。けど、へーき」

 「…どうして?」


 「耐性あったし」

 「え?」



 話してみた。


 「…道端」

 「そう、ピーッて鳴いて。竜がダーーッと。アーティスはポーンと」


 「…西からの道、市が立って」

 「そうそう、隣の金髪さんと話してた」


 「あ、あ、あ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」



 そう頭を抱えるとベッドが揺らぎます。一人悶絶はやめて下さい。



 「あの時! あそこですれ違ってた!? 嘘だろーーーーーっ!!」

 「いや、俺その後をほてほて歩いて追い掛けてだ」


 「だああああああっっ!!  何でそこで気が付かない、俺ぇええええええっっ!!  すれ違い、すれ違いしてたってぇええええ!!」

 「すれ違いっつーより、瞬間の走り去りだから無理だろう」


 「ぎゃああああああっっ!! あったのかよぉおおおおおっ!!  そ・こ・で、気付いてたらぁあああぁぁあ  あ〜〜〜〜 」

 「そん時、俺はあんな茶髪は嫌だと思ったけどな。金髪の顔が見えなくて残念だと思っててな」


 「………………… 」

 「俺も運ないほーだと思ったけど、お前も無いよね。使い切ってんのかなあ?」


 「がああああっ!」

 「だあっ!」


 固まってた体が動いて、俺が押さえ込んでぎゅうぎゅうぎゅうぎゅうしながら右へ左へゴロゴロしようと、すんなああああっ!


 「俺に、俺に運は無いのかーーーーっ!!」

 「だから半端にあるんじゃねーの!?  俺もお前も半端にぃ!!」


 「そんなん嫌だあーーーーっ!」

 「だーーっ、あづーーーーーーっ!」



 ベッドの上でバシバシやりましたよ。ベッドがギシギシ泣きましたね。


 熱いし暑いし暑苦しかったんで逃げたかったんですが、さっき薬貰ったんで今度は俺がやれるもんならやろーかと。 …拘束がキツくて逃げれんかったのが本音。体格差と体力差と腕力差に、ちくしょうと思ってるとも!


 「あーそーこーでぇえええ〜〜〜」


 グズグズ言ってるこいつに、前に似たよーなコト俺も思ったなと過去を振り返る。あん時はマイナス感情がしっかりプラスされて恨み節になりそーだったけどな。


 今は出てこんね。鳴りを潜めた… よーな気はしない。どっぱん流れてさよーなら方向。


 変わるもんだ、ちゃんと知れば。

 意見要らねって、切ったまんまならこうならない。なれないねぇえ。 どっちにでも転べるってコトでしょう。



 「まーそー泣くなって。あの時気付いたかどーかが今との分かれ道なら、一緒にいる決定は何一つ無い」

 「…えー」


 

 「手のコトなかったら、俺もお前も対応違ってた思うよ。制限が無い分、どこでだって切れるよ」


 体を押えてた手が離れる。

 ベッドの上で仰向けに転がる俺、ちょーっっと ってかぁ ずいぶん楽。暑かった。


 俺の首横に片手を着いて上から覗く蒼い目が見てる。

 近づく。




 ドスッ!


 「ぐええっ!」

 「……あ」


 ベッドが揺れた。グィンって揺れた。ギシって鳴いた。

 俺の肺から空気が、胃から晩ご飯の消化物が口へと逆流したらどーする!!


 「げぼ、げほっ…  うげ、げふ、げふ、げぇええっふ!!」

 「ご、ごめ。つい、つい気が…  動転大回転でぐるぐる回って。  ほんとつい出来心でごめん!!」


 「ごほっ」

 「水! 水、取ってくるから!」


 ベッドから飛び降りたから、グインッてまた揺れた。床がダンッて返事した。






 ごきゅごきゅ…  ごっっきゅ!  ふはーーーーーっ!


 あー、部屋が明るい。

 電気ではございませんが部屋が明るいのは良いですねえ。顔がはっきり見えますよ。



 「あー、死ぬかと思った。んで、ハージェスト・ラングリアさん?  肘かっくんして全体重を一気に掛けるってぇ、どーゆー了見? 俺を押し潰そうとした理由はナンですか?」


 「…理由と言えるだけの事がなく。平気で切れていきそうなご様子にどうすれば良いか繋ぎ止めようと画策する前に思考がとりあえず押えとけと呟いたので全体で押えた方が早いと短絡思考が主張しましてそのまま実行した次第です。どっからか急げ急げと声が聞こえたのでいつも通りにしてしまい体重をがっつり乗せてしまいました。


 頭が空回りしたんです、悪意ありません。鍛錬時の抑え込みからのナニかが無意識に出たよーで… 頭がどーかしてたんです! 大事なものは大事だから失くす前にしまっとけと急いだ頭が最後簡潔に弾き出してしまったのにそれはそーだと頷いたのが主な敗因です!!」



 ベッドの縁に腰掛ける俺と、ピッチャー手にして屈んで俺を見てるこいつと。


 推定無罪の心意気は、この場合必要でしょうかね? うっかり有罪じゃありません、これ? つか、結構こいつ〜 うっかり有罪やってない? しそうにないと見せ掛けて妙にしてない?



 「…ぬぅ、以降はしないよーに」

 「もちろんです!」


 晴れやかな顔に、ほんとかよと思うが〜〜  ねぇ?



 「怖いにやばいと思う事はあるよ。けどそこに理由あったしさ、普段通りのお前であったんなら仕方ないじゃなくて〜〜  え〜〜…  仕方なくないから、まぁまぁまぁまぁいーんでない?  怖かったら怖い言う」


 「…そうして下さい。有り難う」

 「うむ」


 笑えたらいーんでない? つか、今は笑えないほーが痛いんでない?



 「ところで、一体何を話していたのか俺も聞きたいんですが?」

 「へ?  …ああ、おばちゃんとの話?」


 「そう」


 差し出すんでコップを渡し、ベッドにもそもそ上がり直す。ここのベッドは向こうと違って、ちょっと狭いのがナンですよ。

 ピッチャーとコップをテーブルに置いたら、ハージェストも戻ってくる。おばちゃんとの会話を思い出して〜〜  ふ。



 「結局、俺が聞こうとしたコト聞けてない」

 「え? ナニ話してたの?」


 「いや〜、俺を心配してくれたおばちゃんにあっさり主導権取られて」

 「取られたんだ」


 「うん」

 「…取られっ放し?」


 「うん、お蔭でいーコト聞いた」

 「そーなんだ」


 「聞かなくて良かったとも思ってる」

 「なんで?」


 「最初おもーた疑問は純粋に答えを知りたかったからですが、どー考えても嫌み。だからちょっと躊躇ってですね。んで、主導権取られておばちゃん意見ふんふん聞いて、今は言わんで良かったと思ってる。聞くに徹して良かったって。心境の推測ってのはある程度できるもんだろ? でもそれが合ってるかは別。上手い事できるかわからんけど聞き出せんかなーって」


 「ああ、指導監督してたメイド長としての意見?」

 「そう」

 

 少しだけ唇が持ち上がる顔はイイ顔、見間違えと取り違え無し。こーゆー顔を人はカッコイーと言うんでない?


 「俺達が問い質すより効果ありそうだね。で、どんな話になった訳?」

 

 説明が下手だが、おばちゃんから聞いた『下』な人の見極め方を話した。



 「えー…   うーわ〜、要らん事を」

 「え?」


 「いや、俺が言うよりはよっぽど良いのか? 良いと言えば良いが…  うー」


 肩ががっくり、顔も下に。

 片手髪に突っ込んで「うーっ」と頭掻く。  …お前も大丈夫だな、薄くないな。色目もゴージャスだし。しかし、あっちの確認はしてないな。



 「ナンかマズい事でもあるんか?」

 「うあー  聞いて良かった… んだよね?」


 「そー思ってるが?」

 「あいたー」


 チッ!



 舌打ちしたよ。ガラわるぅー? にゃははん。



 「心構えは無いより有った方が良い。でもさ、俺が居るっての。そりゃあ、おかしな話をした訳でもなし、本来なら有り難い話ではある。でもさ〜〜、それって先入観にならない? 自分で判断した考えの元に出た答えなら良いよ、自分意見だ。メイド長が話したのはメイド長の経験則から出た処世術であって、そのやり方が己にとって最善であるかは別物だ。そのやり方を素晴らしいとする者もいれば、首を傾げる者もいる。肝心なのは、それが処世術の一つでしかない事を理解しているかだ。


 ガキは力で魅せるとほんと馬鹿になれて。まぁね、ガキから勢い取ったら何も残らないとも言うけどね。後始末もしなければ考えない糞ガキ共が偉そうなツラしてさぁ、始まりも終わりも理解してないのに終わりの始まりだとかの程度の言葉だけは一人前に吐きやがってからに、うざってぇ。 あ、ごめん。ズレた」


 イイ顔すんねー。

 お前幾つ?って言いたくなるな。ほんとお前、俺と同い年か?



 続きを要約すると、色眼鏡なしに見て欲しいってな内容だった。先入観持って見たら、やっぱりそーゆー見方しかしなくなるって。


 「その助言はある意味で正しい、貴族社会で生きる者には有効だ。でも、君にそういったモノを押し付けたくはない。それに俺としては、処世術を知識とするより知識から己の処世術を選び取る方が好ましいと思う。 …経験がモノを言うとも言うけどねえ? どんな立場であっても、その者なりに積み重ねたモノはあるはずだから」 


 どこかで達観した顔に答えてみる。少し違う形で返答する。


 「メイド長のおばちゃんは〜 さすが男爵夫人ってコトか? そっちで呼ぶ方が良いんか?」

 「んー? 役職のメイド長で呼ぶ方が喜ぶよ。それに爵位付きで呼び表すのは混乱と増長… じゃなかった、錯覚を覚えさす。増長は錯覚の後。自負はあって良いモノなんだけどね。

  ああ、そうだ。メイド長と執事は疑わなくて良い。制圧に出る前に後顧の憂いを減らそうと誓約の見直しをしたから。まぁ… 助言については憂いから話した事であるから…   はぁ… 」



 親しみを込めてメイド長のおばちゃんとしてたので、続行okは嬉しいです。


 おばちゃんが話してくれた内容をありがたーく聞いてました。目から装着してないコンタクトレンズがあったの?的な感じで聞いてました。でも、ハージェストからすれば要らんお節介だったよーです。



 お言葉通り、助言から摘まれる『モノ』はありそうです。んで、ハージェストは助言から『モノ』を選ぶ方でいてくれと言ってるのではないかと。


 踏んで進んで立ち止まる。振り返って座って休んでまた歩く。 それがなんぼってもんですかね? どーだろ?  んでも俺、死んでないし。



 死んでないし。



 穢れるってぇ、どーゆー意味。

 それは汚らしいだと思考が返す。矮小よりも穢れる方が嫌だと叫ぶ。汚染の単語がものすごく嫌。嫌、嫌、嫌。


 思考の一つに染まれそうな自分が嫌だ。穢れと穢れていく事への自覚はある。泥の中に手を突っ込んでるこの感覚。この泥は美容に向いてない、絶対向いてないから気持ち良くない。しかし、自分から抜こうとしてるのか、してないのか。


 考える事こそ穢らわしくて ムカつく。





 一つが一つでしかない事を理解しろと言う、言ってる。


 目の前にいるこいつは。

 怖いコトを平気で語れるこいつが綺麗なのかと言えば、それは知らない。筋を通すタイプだとは知ってる。



 

 臭いものに蓋、じゃないけどさ。


 自分でも消化できてないのに人に話すなんてしたくない、そう思う程度には俺もプライド持ってんよ。それっくらいあるわ。




 「眠い?」

 「いんや。おばちゃんは気を使ってくれた、それだけ。お前が気にしてくれた上に足されたのは、お家のお蔭。家の名前、その重みの上に俺が乗ってるから。お前が置いたから。 うん、ありがとー」


 

 「家… 否定はしない。それでも、そこに至れるのは選ぶから。選んでくれたから」

 「それは俺だけに当て嵌まらないと思います」


 「いえ、それはないです」

 「え、そうですか?」


 「家の名前の前に俺の名前が入る、それはすごく嬉しいです」

 「それは普通にあなたのお名前です」



 苦笑に近い顔に笑う。

 探るよーな顔でないのが良いよね。


 さて、聞くコト聞かないとまだ寝れません。明日に持ち越しは無理です、したら生殺しって言うんですよ。




 

 

脳内で一話としていましたが127と128になってしまいました…  そんなもんですよネ。 ですが、一話予定だったので新たに適切な副題が浮かばず。上下にする気が起きず。


試みとして副題そのものを分割します。



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