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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
122/239

122 どうにもこうにも

試みとして先にやってしまいましょー。


問題。

次の単語の意味をお答え下さい。


・采色

・彩色


また、本文中に菜色に似てたり?と思われる場面はあるでしょうか?



それでは、どうぞ。




  

 急いで部屋に入ると、こちらも綺麗に…  なってました。



 「ああああああああああ… 」


 嘆きの声が漏れました。


 碌に私物はございませんので、散らかし放題の汚い部屋にはなりません。大事なブツは片付けてますが、綺麗に片付けきってもいませんでした。リュックに戻すのを止めた折り畳み敷布と、その上だからと適当に転がしてたブツは更に隅に整頓されて片付けられてた。お仕事をされただけですが、盛大に「アウト!」と言われましたあー。


 「あ」


 カコッ


 箪笥の引き出しを開けたら、洗濯済みの服が入ってた。パンツも入ってた。ちょっとハズかしー、おばちゃんでも。 …おばちゃん一人とは限らない〜。



 パタン…


 ナニかを悟った心境で、隅へ行ってブツ確認。


 「…だいじょーぶですね、はい。すんません、どーも慣れなくて。失くす・盗られるが心臓を直撃するもんで」


 

 ほっと安堵の息を吐きまして。

 振り向いた先の窓辺には椅子が置かれ、そこで毛布様が日光浴されてます。「確認、確認」言いつつ、居ないおばちゃんに謝っとく。


 「む?」


 毛布様の上にメモがあったんで、取り上げる。


 「うむ、同じ字ですな」


 読めないんで、これも後で読んで貰おう。







 「時間食ってしまったあ〜〜  こいつだ」


 海のお宝詰め合わせセットを取り出し、中をちらり。


 大きいのはあれこれそれ、大きさ別に出すんなら〜〜    ザッと見の判断でどれを出すか適当に決める。一応は決める。ご希望があれば変更もしましょう。 …もう、どーんと出すかあ? しかし、それはどーだろな。


 「ん、アウト」


 俺の欲の皮は健在だ、変に心配されんでも大丈夫だ。


 今回、説明を聞いて真珠を預ける事を決めました。そう、クロさん貯金の他にセイルさん貯金をするのです! キラリーンッ!!ですよ。 …あれ? 既に貯金してるか。自分で入金してないからあ〜〜  引き出し可能総額も知らんわ。


 ……んじゃあ、今回は別枠の新規作成だ! 箪笥貯金だけでは駄目でしょう、死に金だったと言ったのは皆だ。セイルさん貯金にしても銀行じゃないから金利は不明。しかし、真珠を預ける事に俺の利益をみたのだ!



 「現物を間近で見る事は財だ。それがやる気を生み、挫折を覚え、気骨を育てるとも言うんでな。 …育たんのは育たん。 それとな、内部()を見るのに割りもする」


 このお言葉で割った分はお買い上げ約束しました。ですが、基本は預けです。そんでそれらは文書にしてくれます。領主様の印が入る公的文書です! 私物でないから、ノイゼラインに居る領主代理の人にもその連絡はきっちり行きます。俺の名前と一緒に真珠が届くのですよ!


 これは無償のよーに見えて無償ではない。金利が付く付かないなんて、どーでもいーくらいの重大な事なのだあああ!!


 この真珠で職人さんが目安を立てて頑張り、養殖事業が成功し、領地発展の貢献に繋がったら!


 あっちもこっちも万歳で多少なりとも、いや絶対にノイゼラインで俺は大事にして貰えるだろう。粗末に扱おうとする奴が居るはずない!

 それに〜 二人がおとーさんの伯爵様にも言ってくれる、は〜ず〜〜。はずはずはず。あからさまなやってるよアピールを自分でするより、二人からの口添えの方が効くと踏んだ。だから手紙には書かない予定。


 常識で考えても、家の貢献に喜ばないなんて嘘でしょー。



 ランスグロリア(ホーム)に着いたら領内を動き回っても、暫くは外へ出なくていーって気分になってる。でも、何時かはノイゼラインに行きたい。なんつっても、『ノイ』ですよ! 名前の被りに愛着が湧きます!  にゃは。


 安全策の第一歩を今から始めるのだ!


 

 消えない要らんコレの安全は怠れない、手袋もまだまだ未完成。


 ハージェスト達が注意に言ってくれても、自分で築けるバリケードを自分で築かないでどーするよ! その為に使えるモンは使う。活用する。自分で貯めたモンでないからアレだけど、苦労して貯めたモンじゃないから惜しまない。惜しんでたら自分が残念過ぎると、ちゃんと思えてる。目的の為に使う以上、使い方は間違ってない。



 『手の問題がなかったら、出さなかったか?』


 きっと出した。


 この預けはとーしだ。先行投資。株式とーしじゃないけれど〜、これは絶対とーしです〜〜。成功の暁には、ちょっぴりでもいーから毎年はいとーきんが出ると良いなぁ♪  そーだ、そこんとこも聞いてみよー。欲の皮あるからあ〜。



 ……待て待て待て! 投資に失敗は付き物だ。夢を見るのは構わない。しかし、夢を見過ぎてのーみそ花畑で成功するかい!  …失礼しました、俺は現場で働きません。


 事業の全てが成功するなら誰も泣いたりしない。気付けば閉店なんて事も無い。そして詐欺もあったはず。パンフレットを作成しての用意周到投資詐欺。詐欺と言えば、おれおれ・特殊・お友達を誘ってご一緒(ねずみ講)に〜〜    どーしよーもないのに、キャンパスの入り口。女の子からの逆ナンか思ったら、言葉巧みに熱心に物売りつけられた先輩がどーと。契約成立翌日から音信不通の会えず終いでクーリングオフに持ち込むのも大変だったとか〜〜。しかし、高額だったからオフに持ち込めたが少額の手渡しなら戻りそーにない。ん、何がどっち向くかわかりゃしねえ。

 


 どれもコレも人間不信に向かっての第一歩?   ……でもそれで済めば、まだイーんじゃない?  死んでない。 詐欺にあって金を盗られた。それを家族に責められた。結果、苦にして自殺した。こーなった時、それ、誰の所為? 自殺は自殺。でも、発端は? 選んだのは自分。責め立てたのは家族。葬儀をするのも家族。残った家族の心境どーなん?  そんで騙して盗んだ奴は? 笑うだけ? 自殺を唆してないから無関係?  因果律は?



 ねぇ、裁く定義はなんでしょか? 


 定義は定義。規範は規範。それが感情で右へ左へ揺らぐ程度のもんなら意味ないでしょ。  んでも感情は?  生きてるでしょ?  裁くってーのは、ドコらヘンのナニを基準点に定めてみてんでしょー。 


 裁く。

 なにゆーても ちょー難関資格取ってても  それやんの  人 だっしょー?








 俺は、俺は、俺は。

 俺の場合は?



 あーあーあーあーあ〜〜〜〜〜〜〜  うりゃっ!  ペペペペペ一イッ!  二人を見習って綺麗な切り替えをだな!




 でも、俺のは刑事事件だろ? 裁判すんだろ? 違う?


 …………あやめ姉ちゃん、裁判所行ってんだろか。聞いて腹立ててんだろか? それとも「聞きたくない!」って切り捨てて、行ってない?   別に行ってなくてもいーんだけど〜〜〜 姉ちゃん、行ってそーだよなー…



 聞いて、姉ちゃん許すんだろか?






 ……あーいーたーあ〜〜  俺ってば、切り捨てに失敗してるかも。


 あそこで切り捨てた想いはほんと。今も思ってる。それが正しい。だってそれが自分の為で、何より無駄で。無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄。ほんとに無駄。顔を見てないのが救いな気がする程度には無駄。どーしよーもない、時間の無駄。



 んじゃあ、感情も無駄?





 だって、俺は生きてる。だって、俺は死んでる。

 だって、あれは俺。でも俺じゃない。あれは複製。俺が本体。でも、もう切れた。


 なら、俺は第三者?

 第三者、第三者、冷静な目で距離を置いて眺めるだーいさーんしゃ〜〜〜〜〜   な わけねーだろが、糞が。





 何も望めない、望んだ所でどーなるよ。何を望むよ。どうにも動かんだろが。




 「姉ちゃんが 痛いって、 言ってねーと…  いーんだ。   それだけでいーから」



 思い出す最後の後ろ姿。はっきりしてるよーで ぼやけてる。


 ぼやけるソレが胸の奥からイッタイもんを込み上げさせる。

 上がるソレに口を開ければ、これまた思い出す。先日、おねえさんに向かってうぎゃうぎゃ文句言いましたー。あっはっはっはっは〜。


 なんて都合の良いあーたーまぁ〜〜〜。





 「はい、人間やってます。 …ダメでも何でも成長途中でございますので〜  一つ寛大に、どーかよろしくお願いします〜〜」

 

 頭をゴンッとしときます。


 教訓になってもなくてもどーでも自衛の念にあっちもこっちも忘れずに。お財布もしっかりと。今度こそ切り替えましょう、はい! 息吸って〜〜〜  吐く!!


 「はふ〜〜〜〜〜う」




 元締めはセイルさんだから安心。安心じゃないのは成功の保証。 ……ダメだな、説明聞いてんのにふっつ〜に欲の皮が突っ張り出してんよ、あはは。


 宝くじの大当たりと似ていて違う入手だから〜  欲の皮は巻き取りましょー。くるくるりんしたら、さっさと行かねば。








 


 カチャッ…


 「すいません、お待たせしまし…   たああ!?」




 あ、んぎゃーーーーーーーーーーーっ!! ちょっ、なにこれーーーー!



 空気が読める俺には見える。

 見える見える見えるぅうう!! なにこの凍てつく波動!?


 空気が悪いを通り越して空気が痛い! スパスパ切れて凍てつかせる、きょーふスキルが発動してる! 大寒波が襲来してる!!  



 ちょっとー! そこの超急冷ポチしたの、だーれええええええっ!?  って、セイルさんでしょーーっ!




 「ああ、戻ったか」

 「…おかえり」



 笑顔の対比が痛くてヒドい。

 ハージェスト、どしたの!? ってか、お前その誤摩化しが俺に通用すると思ってんの? ポチったの(犯人)は、間違いなくセイルさんか!


 ちょっと席を外してる間に、イッタイ何を話してたんですかい!    …兄弟喧嘩の巻き添えはごめんだ。仕方ない、究極の対抗スキル『空気読みません。(スルー)』を発動しよーではないか! ふあははははは!





 「どれが良いですか?」


 テーブルの上にお宝袋を置き、口を広げ〜 持ってきたハンカチ(特大)も広げ〜  そこへ出します。



 「ああ、助かる。必要と考えているのはな」



 大・中・小と。采色と。

 割るかも?の分は形が劣っていて可だから〜。


 「割った後はどうするんです?」

 「ん? 半円として残せたなら形を整えて使う事もできる。だが、彩色もな」


 「へ?」

 「そのままで活かすより、彩色(化粧)を施す方が見映えは良い」


 「種類と用途。それに対しての」



 やっと口を開いたハージェストは…  ど〜〜〜にもなんねー。そのご機嫌斜めはどうすりゃ回復すんのかな?



 「ああ…   ごめんよ、ちょっと話してる内に煮詰まる内容振られてさ。その内容が頭にキた。 状況の変化から絶対条件緩和の指摘に再考の余地とか言われたとしても曲がり形にも一度は約した事実に対する責任の 「くぉら、俺が悪い様な言い方をするな。 全く…  最善を模索せんでどうする? 浮上する選択の可否そのものをお前一人で決めて良いと誰が決めたぞ?  お前だけが決定を持っているのではない。独り善がりと言われたいか?  俺はお前に、どこぞ(脱衣所)で相手を思いやれと言わんかったか」


 セイルさんの顔は、言い負かして悦に入る顔じゃなかった。上から押さえ込むよーな声でもなく、説教臭い顔もしてない。




 『あーちゃんったら、もう〜』


 表情も仕草も重ならない。それでも、セイルさんにあやめ姉ちゃんが重なる。うん、この顔は思い出せる。


 



 「おかしな事を言っているかな?」


 俺に振ってきたんで、にゃは〜と笑う。




 「内容わかりませんが、おかしくないと思います」


 

 仕事が大変そうです、ほんと扱き使われてるよーです。その現実を目の当たりにすると、ハージェストが可哀想に思えてくる。しかし同時にセイルさんの立場を考えると〜〜  一番大変な人への思いやりは必要だ。セイルさんの真っ当な言い分を打破すんのは厳しい。そして、俺がツッコミを入れるのは無理だ。よーわからんが家に関わる内容とみた。仕事の責任に嘴を突っ込める立場ではない! 


 『頑張れ〜』の気持ちだけを込めてヌルく笑えば、ハージェストの顔も少し緩んだ。


 三人でゆる〜く笑った。


 んで、終了できた。


 できて良かったが、笑って飲み込んだ。あれは絶対飲み込んだ。でも、笑った顔は無理してない。無理してないよーには見える。まぁ見える。 うあ〜…  こいつ、ずっとこんな感じでやってきたんだろーか? まさかね。しかし、あのガッコーの話とかなぁ。 


 …本当に大丈夫なのか、これ? 壊れないか?   続けりゃこれも何時かはゴーイングマイウエー?     …嫌なマイウエーだな。




 

 


 「じゃあ、これで良いです?」

 「十分だ、書き留めたな」


 「ええ、できました」



 字は読めないけど、復唱しつつ書いてくれてた。だから、内容は理解してる。数字だけはマスター済みだし!


 「このまま持って行く、ハンカチは後で返そう」

 「はい」


 「兄さん、こちらを」

 


 最後にサラッと書き付けてセイルさんに渡した。


 あれはハージェストの名前、の、はず…   待てや、俺! ハージェストの名前のスペルがあやしーって、のーみそどーしてる! 馬鹿かいっ!



 真珠を包んだハンカチを大事にお持ちのセイルさんをお見送りしました。大人の笑顔で行かれますので、自然反射な笑顔なれます。にこちゃんでーす。 …へーきとか思いつつ、お見送りで終える俺が居ますよ。


 ま、部屋に戻って残りを片付けてと。





 「は〜、一つ済んだ」

 「お疲れ。でも、本当に良かった? あれらは君の財だよ。無理に出す必要は無いよ?」


 「家の安定は俺の安定。違う?」

 「…それは否定しない」



 何てコト無いんで片手をぷらぷらした。ハージェストの顔に、『しまった、ハズした!』と思ったが後の祭りのフェスティバル〜。あ〜あ。



 「家の安定と言われると立つ瀬が無いなぁ…  有り難いとしか返せないよ」

 「あ、ははは。大丈夫、全部出したんじゃない」


 「家の方には俺も手紙を書く。馬鹿は諌めてくれと頼む。でも、煩わしい奴が出ないとは限らない。安易に見せたり出すのは止めて欲しい」

 「…内輪でタカり?」

 「形が違えばどうにでも」



 肩を竦めてしれっと答えるのに、そりゃそーだと頷いた。しかし、そーゆー仕草似合うね、お前って。



 「ところで、さっきの話だけど」

 「ん、どの分?」


 「えー、価値の」

 「石の代わりって話したアレ?」


 「結局、石の方が高いんだろ?」

 「そ、魔石の方が高い。だから値を上げる手立ての基本は後付け」

 


 真珠はお宝で、宝石です。

 ですが石じゃないんで、汗に対するお手入れは必須だそーです。


 「真珠で値が張る物は限られる。真珠は石じゃない、貝が内包する結晶。だからこそ、石には出せない魅力がある。宝飾としての価値は当然ある。でも、強度がね。別の観点から見ると耐久性が足りない。魔石ならできない傷も簡単にできるし、そこから砕けもする。真珠に削磨は難しい、傷ができた時点で商品価値無し」



 しかぁし!石でないから、染色ができるそーで彩色が上手くいったら素敵な値上がりって。


 「彩色もそうだけど、物の本質で言えば真珠の方が魔力に染まり易いんだ。力を籠め易い。でも、そうなると次は容量が問題。それは器としての性質の違いが大きい。それに下手な混ざりがあれば露骨に汚くなって、残念終了」


 一長一短ですねえ。


 「でも、籠め易く容量が少ない点が君に有利かと思ってる」

 「俺?」


 「俺の魔力を真珠に込める。それを咥える事で体内からの改善を図れるだろうかと」

 「はえ?」



 眉根を寄せて腕を組んで、真剣に悩む顔に俺も考える。

 


 真珠を咥えて、内から変化。


 む〜〜〜〜う、魔力の籠もった真珠を口にして飴のよーにもぐもぐする。口腔に魔力が広がる。唾液をごっくん。 ……うむ、確実に体内に広がるでしょう。そんで籠められる容量は少ない。最初は小さな珠から始めて徐々に珠を大きくしていけば〜〜 無理無く自然に魔力慣れするよーな? 大きくて顎が外れるよーなのは無し、あってもそんなんに使うのはもったいない。



 内服薬の方が効き目は早いと思います。


 そーなると真珠の主成分ってナンだっけ? あっちで昔、誰かが酢に溶かしてごっくんしたとか言わなかった? …カルシウムの塊じゃねぇ? 間違えてガリッとしても無害だろ。



 「問題は過剰摂取で君が苦しくなっても、和らげる鎮痛薬が無いってコトだ。それが一人の時だとより拙い」

 「うわあああ」


 「そうだ、今はどんな感じ?」

 「…へーき。今朝から外してない。 ヤバい?マズい? 昼に一度外したら良かった?  …今日はもう外した方が良いかなあ!?」


 「…油断禁物で」

 「ん、今日は終わりっと!」


 ハージェストの意見を聞いて、ペイッと手袋外します。やっぱ出歩くのは、まだ先だぁね〜。


 「本当に実践しか手が無いから」

 「あ、はははは!  急ぐ理由なし、慣れなくて苦しいって泣いてゲロっても終わらないのはもう勘弁。あれは却下!」


 「慣らしは時間を掛けてやろう、 ね?」

 

 真面目に言ってくれるのに、うんうん頷いた。アレルギー反応だしても、どーしよーもないのは辛いやね。



 「改善策の並行は危険性が高い。君の身が保たないと終わり。真珠での試しは持ち越しにするか…  いやでもなぁ…  手ではある。手袋しない日を決めて、真珠も試してみようか」

 「え?  あ〜、どーしよう。 うー、俺の限界値がわかれば簡単なのになぁ」


 「目に見える形でわかれば便利だけどね」

 「できないもんなー。あ、そーだ。真珠に魔力込めるのは、こう…   手で握ってやる?」


 「普通はそう。 他は…  負担軽減策を取るなら、それこそ口に咥えて込めるよ」

 「へ、そっちも!?」


 「咥内は舌の感知が絶対だから、無意識でも籠められるとナンかに書いてあったし」

 「うっわ、実践者いるんだ」



 舌をちろっと覗かせて、上唇を舐めて笑った。


 …その動きに触発されました。ってか、カッコイー感じに見えたんでえ〜 ちょこっと真似してみた。 ううむ、俺がやるとナンか違う感じが。


 そんな事した所為でしょーか? 飴が恋し(照れ臭)くなったんで、残ったお宝袋持って部屋移動します。

  



 甘さを求めるのは疲れてますかね?


 首に手を回して肩もコキコキやったら、お守りの紐の方が指に引っ掛かった。







 部屋に戻って飴玉さんを引っ張り出して、一つを口にポイ。ハージェストにはコロン。口の中でコロコロしながら、少なくなった海のお宝詰め合わせセットを片付ける。



 「ああ、できるできる。普通にイケる」



 直ぐに実践に移すこいつは本当にフットワークが軽い。んで、テーブルに置いたメモをちゃんと手にするのも素晴らしい!


 「毛布の洗濯が必要な時は言ってやって」

 「ああ、そっち。 …天気が良い時に自分で洗おうかな? 風呂場で洗っていーだろ?」


 「風呂場は良いけど、そーだねえ。本来ならメイドの仕事。任せるのが筋だけど〜 見てないけど〜 駱駝に成るそーだから〜。 あはは、任せるのは拙いかもね」


 

 二人して、口ん中モゴモゴしながら日光浴中の毛布様を見てみた。はい、駱駝ではありません。駱駝モードを見る時は何時でしょうか?





 

 片付け終わって座ろうにも毛布様がご使用中です。他にもありますが、俺のお気にはあれなんで。立ってんのもナンだからベッドにぼすん。したら、ハージェストも隣へぼすっと。



 「今回の件 は  技術面もあれば天候もある。生き物だし、実際成功するかは不明」

 「ん、わかってる。大丈夫」


 「くれた女神や 君が居た所では成功しても、ココで成功するとは 限らない」

 「まぁね」


 「兄さんが言った通り、確かに採れはする。俺もノイゼラインに顔見せに行った際、過去の事業の洗い出しをちょっとした。その中に 真珠養殖もあった、完全に読み込みはしなかった  けど当時の資料が残ってた。その時は成功してない」

 「うん」


 「君が言った『核』を入れる」

 「正確なトコが抜けててごめん。核を入れるんだよ〜ってのだけは  覚えてる」


 「そこら辺は気にしない」



 二人して飴舐めてる。喋るの不便。転がすと途中で言葉が止まります。単語で返す俺は有利。


 ガリッ



 あ、もう噛んでやんの。


 そう思って横を向けば、笑う顔がある。さっきと違って明るい。明るさに好かれと思う。そんで、こいつやセイルさんは頭が良い。本当にそう思う。理路整然と筋道を立て切って話す、それが一番すげーと思った。



 ナンかで見た、真珠の核入れしてるシーン『だけ』を俺は思い出した。


 これなら言っても良いかと思うが判断がつかない。発展と称する飛躍の危険性に迷いました。でも、ヒトゴロシの道具じゃないっしょ? なら良いかなって。 でもさー、授業で習わんかった? 急激な産業革命が軋轢と環境破壊に繋がったとかゆー話。温暖化も言ってたしー。


 そこへセイルさんが割るって言った。内側の形成層の何とかとおっしゃいました。


 それでピンときましたよ!!


 『もしや、自力到達迄あと一歩!? 最後の一押しで既に時間の問題!? 美味しいトコが残ってる状態なら早く食っちゃえ! 他に追い越されて「しまったああ!」なんて言う前に、先にウチで完璧取っちゃえええ!!』


 そう思ったから言った。

 大体、半端知識だし。そしたら前回同様ズルズルズルッと。



 「…やはり、そうよな。肉付けする過程に依っては意味がないかもしれんが」

 「それでも始めから抱くモノに添って肉付けするなら、その形にしとけば早い。当然だ」


 「なら、入れる核は球形で良し」

 「現物に歪みは生じても角は無し、なだらかな曲線を帯びている。ならば添うでしょう」


 「母体が安定して抱ける有害でない物」

 「性質が同じモノが最適なら、身を保護する殻で良いのでは?」


 「それなら、り貫いて丸く削るか」

 「母体となる貝が抱ける最適の大きさ」


 「貝の種類とその大きさで生育期間は変わる」

 「始めの核が小さければ最初から時間は必要」

 

 「ならばだ」



 こーゆー感じで俺を置いて話はポンポン進みました。間が無くて早かった、他にも言ってた。職人さんに指示する方針がサクッと決まってった。打てば響く・呼応する。気持ち良い位、途切れない応答。


 「待てよ、手を掛けずとも…」

 「は?」


 「手頃なモノがあるではないか」

 「…ああ、それ良いですね。その方が早いかも」  


 この二人が本気で養殖をすると決めて進んだら、人からのアドバイス無しでもイケるんじゃないかと思えた。問答する二人の姿はマジで似てる。同じだった。  …だから同じでないのは本当にアレだけっぽい。





 ガリリッ!

 

 更に口が動いて潰したよーです。前もガリガリ噛んでたなあ。



 「君の真珠の大きさを基本に事を始める。あの量と質を一度に見たから、俺も兄さんも欲が出た。欲が出て、今もっと考えてる。内包させる核に魔石が使えないだろうかと思ってる。内側から力が呼応すれば、帯びるだけではなくなる。石で無い事が許容に保有を変化させるかもしれない。上手くいけば化けさせられる」



 すぐ近くで見る顔は。

 完全にアガッてる、ちょっと見てないイイ顔で笑ってた。その顔に釣られて俺も「わーーーっ」な感じで顔が笑うのがわかるんだけどー。



 化ける = 爆弾


 どーしてでしょう。脳内変換、おかしくない? 真珠養殖がナンか変な方向に転がってない? 俺の考えてる方向と違ってません?  あれえ?  


 子供の頃に読んだ偉人伝がナンでか脳裏を掠める。ダイナマイトを発明した人の肖像画が浮かんだよーな、ブラック入って浮かばないよーな。



 「あああああのさ、真ん中に魔石入れたらどーやって首飾りにすんの?」

 「え?」


 「真ん中に穴開けて通すんじゃないの? 魔石、終了しない?」


 

 …やったあ、ハージェストの終了 モード(目、ぱちくり)見たあ!  いや〜、ほんと一瞬の怖い話でしたね〜。あっはっは。



 「大丈夫、基本の用途は売りじゃない」

 「え?」


 「記章バッジの形式採用するつもりだから!」

 「は?」


 「魔石は家の屑石使う予定で、一般売りは予定にない。ラングリア家が所有する領内の兵に記章の一つとして回せたら最良だと思っての事だから。魔石の報賞ボーナスも話したろ? でも、基本は金だから。金じゃないと下も使い難くて生活に困るから。

 魔石が核の真珠は売り出しじゃない対外向け。見映えと他家への見せつけを兼る官需! 財源の潤いにはならなくても力と技術の顕示は必要不可欠で、その分の予算は組んでるし!」



 ガッツポーズでの力説は、スカッと晴れ晴れしい笑顔でした。

 それはそれは良い笑顔でした。嬉しさいっぱいなのでしょう、勢いで隣に居た俺をぎゅうぎゅうハグした。


 「なぁっ!」

 「あはは」


 ぼすっ!


 その押しに負けて後ろへばったり倒れましたが、座ってたのベッドの上。この前の椅子とは違うからへーき〜〜。ちょっと喉にヤバかったのは飴玉さん。俺もガリガリしよーかな。



 えー、この場合は成功を祈っても良いもんでしょうか? 良いかな? イイ顔してっから。貝が魔石を腹に抱えて死なないとは限らない、成功と量産も別物。生き物だから全滅も有り得る。そーだよ、魔石入れしない方の成功だって不確定。


 成功を夢見る自由はあっていーよなあ。ベッドの上のごろごろもいーけどな。





 感激も理解したから、そろそろ起こしてくんないかな〜と片手を上げる。


 「あ、起きる? ごめん」



 グイッと引かれて、はい、引き上げ完了元通り。




 「それと文書。普段はロイズが仕上げてるけど、あれだから。今回、少し時間が掛かるかも」

 「うあああああ!そーだ! ロイズさん、本当に無事なんか!?」

 「え?」


 「あの状態どー考えても不安だって! それに介添えしてったけど、あんなに密着してったら! あれ、逆にイタそーじゃなかったあ!?  支え方、間違ってねぇの!?」



 俺の真剣な疑問にハージェストの視線が上がって下がって横向いてヌルくなった…  待てや、こら。



 「いやあれ、ほんとに上手だったからさあ」

 「上手って…」


 「あ〜…  あの手の仕置きを間近で見た事は?」

 「ない」



 スパッと返事した。


 






 即答に、『そうだろうな』としか思わない。


 これに適当な感じで返して終わらすのは〜〜 どうにも良くないか。納得しないか。


 この手の事に無縁だから、こーゆー優しい性格なんだと思うと本気で悪くない。それはちっとも悪くない。反面、そっちの思考で突き詰めた先には違いが待っている。そこで衝突が避けられないのも想定できる。

 前回の逮捕されたら?の質問で分岐を探し続けてた。そこに理解と不可解を見せたのは忘れてない。結論に引いたが納得してない部分はあった。

 それを棘として持ち続ける感情を危惧する。論議で済む内は構わないが感情を伴った結果、疎通を拒否されたのは忘れない。呼び掛けても、兄さんだけ見て俺の方は見もしなかった… 必死の説明にやっと向いてくれたのは忘れてない。部屋を出て行けの方がよっぽど良かった。


 どーもアズサには在り方を気にする傾向がみえる。流してくれない、流さない、そんな所が見え隠れする。終われずに心の内に根深く抱え持つのは怖い。この放置が全てを引っ繰り返して駄目にする、そんな予感がする。


 こっちを見てくれている現状を潰す気は無い、更々無い。取るに足らないと思う事で足を取られるのは断固拒否する! だからこそ、修正を掛けよう。 



 君の思考に。







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