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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
121/239

121 どうにかこうにか

  


 俺は現状にガクブルした!

 ガクブルの正解は、口を開けて固まっていた、だ!



 そこへハージェスト達が良い笑顔をくれたんだー。それでちょっぴり解凍したよ。



 「おかえりー」

 「あ、あ、あ、  うん」


 「行ってくれて、ありがと。小さくなった、薄れたよ」

 「え?」


 「ああ、なかなかに見応えがあったぞ」

 「は?」


 「さすがに治療としての見応えとは言えないけどさー、あはは」



 不穏に聞こえる言葉を爽やかに言いやがりますが、意味がわかりません。


 それでも手招きにそそそそそっと近寄って、お体を拝見致しましたならば。胸も太腿も二の腕の内側も… あっちもこっちも真っ赤になっておられまして首に絞められたよーうな跡が…  うああ、間近で見るとより怖いです。痛そうです、痛いでしょう。



 『誰がこんな酷い事を!!』


 そう叫びたいのですが、皆さんが落ち着いてまして…   つか、ありがとうですよ?  はい〜?  問題の腹は、確かに形はそのままに縮小してた。色も薄れてってか〜〜  ピンク色ですな。



 「…… はい、小さくなったよーで」


 


 ……あ〜〜 の ですね? 腹に痣、タトゥーがありました。

 一つが胸に向かって伸びてんのが印象的でした。赤黒さがダークなサイドのワイルドさを醸し出してもいたんです。 ええ、まあそーなんです。カッコイーと言うのもアリです。それが今や握り拳より小さなワンポイントになりまして、色はピンクでございます。ショッキングピンクではありません、可愛い系の淡いピンク。



 まぁ…  あの状態より、ずーーっと良いのは間違いございません。クロさんは俺の相手をしながら、ロイズさんを治してくれてたんですか。俺の願いを聞いてくれてた。


 自分で何とかすると決意しても、不安は残ってた。 




 心の中でじんわりと広がっていく、この気持ち。


 この気持ちを取り違え…  たくないですねぇ。優しさと思いやりを当たり前だと思うよーになったら…   クるもんがクるんでしょう。



 ごめんなさい、さよーなら。もう、一緒にいたくない。


 破局から始まるデッドとバッドとハッピーが歌って踊って自己主張する新たな未来。 光輝く夢見るNew road! 


 意味合いが違うから、クロさんと完全に離れる事はない。なったら、ちび猫の危機だ! 心がある以上、心が離れたら〜〜 わざわざ『やってあげよう』なんて思わんでしょ? 有り難うのお礼を言いたいです。言いましょう、はい。


 クロさん、有り難う。嬉しいです。




 晴れ晴れした気持ちになると、目にするロイズさんの体も……   いえ、あの、特に何が変わったとか全くないです。すいません。


 …後ですね。その、にゃんぐるみを脱いだので映像美はわからないのですが〜〜   なんつーかこー  絵的にハズレになっちゃった感を覚えるのはどーしてでしょうか? いえ、そんな事を思うのが一番駄目だと、他人事でスカしてる馬鹿だと思うんですけど〜〜   けど〜〜 ピンクが微妙な残念感を。 …その残念感を押し退ける全体の赤がやっぱし怖い。



 「外させて頂きます」



 セイルさんが頷かれ、ロイズさんは自由になります。 …俺の自由の表現、間違えつつあるよーな?  しかしですな、包帯外してるレフティさんの手首にも似たよーな赤さがあるのはどーゆーこったい!!?


 レフティさんの手伝いをしようと腕を伸ばすが、レフティさんのお顔に近寄るだけ邪魔っぽいみたいな雰囲気が漂ってるよーな…  ダメだ、下がるな! 前進だ! 


 腕を伸ばしたカッコでハサミを求めて、きょろりする。


 すれば今度はハージェストによっこらしょじゃないけど、引っ張られてそのカッコで後ろに一歩二歩散歩〜〜。あ、三歩だ。脳内、散歩。 あ、のーみそアウト。どーしよう?



 「あれが実体化してシバいた時にはすごかったよー」

 「え、ええええー」



 ジッタイカって、ナニがどーしてどーなってぇええええ!



 心の悲鳴と裏腹に、ハージェストが親指で差す先を想像できる自分ののーみそ。これは大変素晴らしい事ですネ!


 怖いもの見たさはありますが、多少であって多大ではありません。むしろ些少です。見なかったら見なかったでイケますが、聞きたくないとしたら逃げでしょうか? 目を逸らす事がアクだとかゆーて決めつけるナンかあったけど、それ、おかしいよねえ?   あ〜、逃げ癖って言われたらキッツ〜。  慣れゆかば、成りて慣れなる…  あれ? 慣れなんのほーがカッコいー? 




 なれゆかば〜〜  なりてなれなん〜  


 んあ〜、続きどーしよ。  慣れるべし?  うっわ、意味繋がらねーでやんの。こーゆーのに入れるなら自分の心がどーたらとかじゃない?   のーみそ、遊んで回さないと〜。  …遊ぶほーで回したいです。




 「出てこなかったのが残念だ。他にはどの様な事ができるのか、知っているか?」

 「すいません、セイルさん。知りません」


 「……そうか、それは実に残念。ノイの言葉は聞いてくれるのだな、助かる」

 「…すいません。それ、わかりません。思い込んだら負けのよーな」


 「は?」 「何がだ?」




 できる限り言葉を選びつつ説明を試みる。憶測は推測に及びません。


 一瞬さー、『ツンデレ』ってな単語も掠めた。でも、よく考えても違うっしょ。俺、クロさんにツンとかされてないし。ツンより、ふてマスコットされた気がしてる。


 感情を単語の一つに集約できんのは、便利で口に出し易いんだけどさ。自分の心の機微っちゅーかなんてーのかを単語の一つに纏められて終わりってのは〜〜  残念っぽいよーな? でも、皆と騒ぐとかならやっぱアリだしさー   それらを追い求めて人工知能に感情を持たせよーと頑張る人々が〜   あ〜〜 れ?   なんでこー、遠い場所の過去を思い出すんでしょーか?  そーゆーのやってませんでしたけど。   …ふぃ〜。




 説明してる俺ののーみその半分が残念で半分が頑張ってる間、レフティさんはロイズさんのお世話を甲斐甲斐しくされてた。だが、薬を塗るとかしなかった。癒しのポーズも取らないですよ。


 ロイズさんの首が動き、指先が動く。

 腕が動き、「う…」とか「つっ」とか小声で呻き声入りましたー。大きな呼吸に胸が膨らんで、吐き出されて元通り。それから、睫毛が震えて目が開かれた。



 「あ  、」

 「起きれるか?」



 すささっと、下がった分だけ前に出ます!



 『大丈夫ですか!』


 こう、聞こうとしまして〜〜   口を開いた所で急冷が入りました。


 変な顔してる気はします。

 してますが、それよか聞き方、間違えてる気がするよ! 一見しても大丈夫に見えねーっての! そーゆー事で揚げ足取る奴はいるんだから! いや、この部屋にはいなくても、そーゆーのがきっとデリカシーがどーのと。そーだ、クロさんがやったってゆーんだから。 


 あ・あ・あ、レフティさんの心境はどーなってえええ…   だから、行動を!! 誠実に、誠実に、せーいーじーつ〜〜にぃい〜〜。



 大丈夫? ペケ。 痛くない? ペケ。 平気? ペケ。 ご機嫌如何? 大でペケ。 お加減はどーですか? これまたペケ。 この度は大変申し訳なく    …違うからボツ。  


 うえーー!  のーみそフル回転させても上手な言い回しが出てこないんですけどーーーーー! こーゆーパターンで掛けていー言葉はナンですかーーーー!?



 自分が悪けりゃ謝罪はします。そりゃもう大急ぎで謝ります!


 謝罪が負けだとゆー人も居るんでしょーが、それは所詮、他人事ですから!  んでもクロさんの行動でスイマセンって謝罪したら、クロさんの心を潰すって事じゃないですか! でしょう!? 違いますか!?  心があるって! 間違いなくあるって思ってる俺の大事なクロさんですのに!  身内だから置いとけ?  ぬぅ…  それってさー、それこそ安易に無難に終わらせとけの考え無しじゃ、ね・え・の?

 

 後から、あの場を上手く纏める為に言ったんであって〜〜  とか何とか言い訳すんの?  それともどーでもいーと忘れるか、そのまんまポイ?  けっ、謝罪の意味も何もかもが違ってくるわ! あ〜〜〜。





 俺が言葉に詰まってる間に、ロイズさんは体を起こされました。

 

 これにささっと…  えー、お体で無事に…  見えるよーな…  よーな所を…  はい、肩と背中に手を添えて支えてみます。手首にも… 色の薄い赤がございますが、これは包帯の所為です! 


 言葉が出ないまま、ロイズさんの顔色を伺います。

 しかし、マジで言葉が出ないです。視線がうろうろさ迷えば! 何処も彼処も痛そうで。 出てない冷や汗がたらりします。



 「大丈夫です、お気遣いは不要です」



 至極あっさり言われました。


 「あ… はい。いえ! そんな事は!  あのその、痛いと思いますが早く良くなれと思っておりますので! ソコの所は本当に思ってますから、はい」


 うにゃらうにゃらと何とか答えられました。


 俺の返事に一度目を伏せ、静かな動作で手を上げられ、肩に置いた俺の手を、静かにそ〜〜〜っとご遠慮な感じで触れられましたたたたた。たー。  …これ、拒否られてますよねぇ? やっぱ、そーですよねぇ?


 嘘泣きぐっすん、する気もございませんが〜〜   ちょーーーっぴりナチュラルに出そーな感じもします。



 無理を… 押してはならんでしょう。背中からも手を下ろします。

 

 思い切りの良さもなーんもない、男らしさから遠い残念仕様で自分でもがっかりですが天秤は動かんのです!! 右を立てば左が立たず〜 左を立てば右はふて猫〜 に、なってしまうのだ! はぁ。  俺もと〜ひのごろ猫したい〜  せんけど。



 ……それにしても、言い難い事を相手の方から言ってくれるのは有り難いですね。らーく〜〜。この場合、相手の出方待ちで正解ですか? 


 んじゃまぁ、目は口ほどに物を言う方向で〜〜  ご本人にごめんなさいを。



 このやり方のマイナス点は、口にしてない言われたら反論できんトコだぁな。それに納得しない誰かが居たら、要求してくるんですよね? 謝罪謝罪謝罪ってえ。

 本人じゃないなら第三者。第三者、第三者、第三者の大変厳しい目と擁護者と意見者とその他の人達で〜〜   本人蹴ってでもヒートアップすんでしょ?  義憤とか何とか口実もーけて。 ま、そーゆーのはいろーんなパターンに嵌まんだろうけど〜〜  今の俺の話じゃないからポイッとね。



 声に出せない分、態度で示します。 へこ〜〜〜〜〜っときました。



 「本当に大丈夫です」

 「痛みはどうだ?」


 「痛み、は」


 

 説明されるには、昨晩から首を傾げる程度の違和感ってか異物感があったらしい。痛みの消えた腹を押しても擦っても消えない、わからない。力に起因するモノだと判断できても、打つ手無し。それが今は無いそーです。但し、他が痛くてそっちに過敏になって鈍くなっているかもとか言われると泣けてくるー!



 気分が落ちます。

 そしたら、腕に熱が触れます。


 熱の発生源は隣に立ってます。何も言わずに、ポンポンと。口程にモノを言う目は、気にすんなって言ってる。


 ちょい浮上。



 「これは…  お心に添わなかった故であると… 推察します。 申し訳なく」

 「え? いえ、あの、そのよーな! ええと…  ええと! すれ違いはあるものだと思いますので〜〜」



 お声に振り向き、お言葉に頷かず!

 へ、へらって感じで笑っといた。 んだけど、ロイズさんのお顔がですね?



 ロイズさんは無表情な人ではありません。言葉使いも至って普通だと思います。端的なブツ切れとは無縁です。短い場合もありましたが、単に仕事できる系なだけだと思っとります。喜怒哀楽のある人です、一度は笑顔見ましたよ。他にも所々で滲み出てたんで知ってます。


 それでも大口開けての笑顔は見た事ありません、今もされてません。安堵に微笑んだとかもないです。



 基本のノーマルモードです。


 でも、俺は知ってます。その顔、知ってます。

 そーゆー顔で最後に熱を測ってくれました。食事に、根気よく単語を。 繰り返して。


 義務でも何でも普通に普通に当たり前に。


 苦にしない、今と同じ顔で。




 思い出したら、ナンか俺の良心のよーなトコがズキズキします。まいるーむで、「ロイズさんなんかと!」な言を発したのがナンでか思い出されます。いえ、本当に比較対象にならないのですが! 胸に手を置くと妙に痛いです…


 ですが、『それはそれ、これはこれ』だと!  はっふー、独り善がってもいないはずですが…  上手い事言えない・できない自分のガキさを痛感するだけ心臓にキます。  …嫌ですね。




 「二、三日はその状態だ。使い物にならん、下がっていろ」

 「…申し訳ございません」



 は? その状態?  え? もしや、そのまんま?


 「あの、手当ては?」

 「え?」



 ハージェスト、なにその顔?






 ロイズさんに治療はしないそーです…  本気ですかい…



 「押された最初の原因が誤解であってもだ、これの意味を考えるとだな」

 「今、言ったよね? クロさんは君の願いを叶える・聞いてくれる為の存在じゃないって」



 「…はい、そーです。そのとーりです」



 あ、はははははは!  あう。


 怒ってのビシバシが良いかどーかはペイとしましょう、他に手の出し様が無いからご意志を示す為にしたとしましょう。そして、ビシバシの行為は反省を求めたモノであると確定してだ。

 終わった直後に人に治して貰って大体が治りましたとさ。でも、ビシバシ受けて終わったんだから治した所で問題ないわ。はい、これで終わり終わり〜〜。さ、今日も元気に頑張りましょう。



 えー、クールでドライなナニかなら〜〜  これに「はい、はい。良いですよ」と終われますかね?



 …俺の場合でしたら、クールでドライなナンかはピキピキピキッとひび割れて、ブシャーッと高温で蒸気を発しそーですよ? 上辺だけ神妙に取り繕って内心は舌べーって。な〜んも効かねーよって腹ん中で笑ってたとしたらねーーーーーー!?

 そっから腹立たしい延々のサイクルが回り出しそーな気がします。できんけど。でもムカつく。そんな気はする、絶対にする… そん時、痛くて悶絶してたのがほんとーでもねぇ…


 そっから始まるならアレでしょ?  あ〜、プロメテウスさんでしょ。たーしーか〜〜 助けて貰ったと思いますが〜〜  プロメテウスさんはアレされた代表格な人でしょう。  あ、人じゃないんだっけ。 あはははー、だから保つんだよね〜  ずーーーっと。




 「消えてない、これが全てを物語ってる。仕置き後にも続く観察処分とみた」

 「わああ〜」


 「まぁな、こちらとしても二度目はキツい。二度あれば、やった本人の馬鹿さよと放置で済ますが仕置きの仕方がなあ」

 「人目のある場所でアレをやられるのは、ちょっとねー」


 「あ、あはは」



 もう…   なんつーて良いのやら。


 誰かを何かをへこまして、ふんっと鼻息荒く笑うよーうな話じゃございません。我慢しろとか違うっしょー? でも、俺のせーじゃねーもんで終わらせていーんでしょーか?  いいよーな気もするんですけどーーーーーっ お!  痛い。


 自然治癒は自然なんで問題にならないが、問題があるから治療無し放置。んでも、俺の説明前からレフティさん治療してなかったのは? してたのは観察っちゅーか、触診だけだったと。


 もうナニをどー動けば最善になるのか、誰かわかるなら教えてほしい。  



 ええ、責任の所在はどこでしょう。

 誰にどーゆー感じで回るんでしょー。全責任を負うってのは、金で済ませて終わりますって話でいーわけ? 口にする程度には易しくないと本気で思えております。こーゆー時の逆ギレも逃げもガキのしょーこでしょ〜〜〜。



 …そーですね。 

 飲酒運転で事故って逃げる。アルコールが抜けた後に出頭してくる。

 

 ん、 じ・ぶ・ん・が、かわいーんだよね? てめぇの始末から上手に逃げんのが〜〜 大人ってったら笑えんねー。自分で育てた自分の価値を自ら公表して理解する絶好の機会だぁね〜、やっほ〜う。おめでとさん。自分で自分を擁護する自分だけがかわいーんなら他人は要らんでしょ? そんな奴なら、他人の方も要らんってゆーだろ。


 ああ、そーだよ。それで




 「ね、体は平気?」

 「へっ!?   あ、俺!?」


 「そうだよ、疲れた感じに見える。着替える事で掛かる負担は把握してる?」

 「え、負担?」



 俺を覗き込む蒼に、そんなんあったっけ?とか、こいつは全責任を負うってったとか、負うから引き取り行くゆった〜とか頭が弾く。


 何ての? 周囲の環境とか身分とかそんなんじゃなくてもだ、確実に俺より数歩先を歩いていると〜〜 思います、はい。 …数歩じゃない気もしてくんな。





 「は、あくはしてない。 あ、前は疲れた時   れ? 猫やってるほーが…  楽だと思ったよーな」

 「え?」


 考えてみれば…  

 いや、そーじゃないって!!   意識沈めてんじゃねーよ、ロイズさんどした!



 勢いよく顔上げた。


 ベッドに腰掛ける体勢は同じですが、何時の間にやら場所移動してますよ…  レフティさんが、ほんと忠実忠実しくロイズさんに病人服をですねぇ…  そーですね、ずっとパンツ一丁だったら寒いでしょう。



 「ああ、付き添って行け」

 「その後の経過はだな」



 二人がレフティさんに指示してる間に、こそ〜〜〜っとロイズさんに近寄り。


 「あの、俺も付き添いを」

 「 …お気持ちだけで」

 

 そーですか…


 「こちらで使わせて頂いている部屋は少々遠いので。  わかりますか?」



 この部屋から遠い。


 人に会う、人は語る。

 人に見られる。怪我人は注目。痛そうな怪我がちら見えしたら?  ドコで誰がどのよーに。何時、どーしてやった?  なんてヒドい!! 



 周辺の人間に聞き合わせ、人は逆算する。人の推測は止められない。そして事実と違っても、真実の説明はできない!   …俺? 俺なの? 俺が犯人?  もしかして、ロイズさんビシバシしたの俺になるんですかああ!?



 『責任(犯人)は、お前だ!』


 やあ〜〜〜めぇえ〜〜〜〜てぇええええ!!  俺、ビシバシしてないからあ!! 



 『まさかと思ったのだけど…』

 『無害に見えて違っていたと。 リリアラーゼ様、あまり言いたくはございませんが…』


 『お、お世話が怖い…  そうでなくても!  いやあ〜〜、お願い誰か変わってぇ! メイド長、せめて日替わりにしてくださーいっ!』



 幻聴に、泣くかも…

 俺はこのままフリーズドライしてくんだろーか…  




 はい、馬鹿考えてないで急速解凍! 即、行動!!


 ビシバシされたロイズさんの腕に、痛くないよーに注意しながら優しく手を添えます。早く良くなるよーにと祈ります。願いを込めます。口にも出します!!



 「早く治りますよーに」


 よくある癒しのポーズの一つです。ですが、俺の手があったか〜くなってぼんやり光るとか無いです。


 手を離した後も赤さは変わらず。

 赤い蚯蚓脹れは…  酷い状態のままでした…


 治らない。

 これが現実。

 

 そんなん始めからわかってるけどね。  …うん、わかってるよ。   ……泣きそー。





 「では、これにて御前を失礼します」

 

 二人は出て行かれました。

 ロイズさんを介添えするレフティさんが、静かにドアを閉めた音が耳に残ります。少しドアを見つめてしまいました。


 「そこはどうだ?」



 落ちててどーすると振り向けば、ハージェストはベッドの周辺をシャキシャキパッパと動いてた。セイルさんもしてた。



 「大丈夫です、ありません」

 「やはり上手いな」

 「全くです、見間違えそうになって」


 血痕がどーたら。

 感心する妙に怖い会話が聞こえました。 ……聞き取れなかった分は流しましょう、聞いた分も流れてまえ。



 「じゃ、メイドが来る前に部屋に戻ろうか」

 「ああ、疲れた顔してるしな。それが良かろ」


 「え、あ、そか。この部屋の掃除」



 行こう、行くぞと二人にポイッとされて廊下に出ます。

 人気の無い、しかしちょいとそこ迄の廊下を歩いて部屋に戻れば、入り口からナンかが違う感じする。 …何故だ、何があった? 誰か入った?  あ、もしや。



 「はい、読んでみよう」


 先を行くハージェストが入るから、寝室隣のごーせいな方の部屋に入る。そこのテーブルの上にあったメモを渡されました。



 メモと真剣に睨み合い。


 「読めた!!」


 書いてあったのは、メイド長のおばちゃんの名前だ!!

 

 

 「どれ、読んでみろ」

 「はい!」


 

 キリッと顔を引き締め、セイルさんに向かって読み上げました。


 間違えずにおばちゃんの名前を読み上げ、誉められました。しかし他はさっぱりだったので、花丸は貰えませんでした。


 普通に話せます。もう抜けません。特に意識しなくてもできるよーになった、なってる。完璧自覚、出ましたあ! すごいよ、言語の下地さん! 書き取りはアウトでもねー。


 ハージェストに渡して読んで貰う。

 メモには、おばちゃんが掃除したよ心配ないよの内容が書かれてた。 …ほんとに気を使わせてます。嬉しいです。これが責任の所在の現し方の一つですね。




 「それでな」


 セイルさんに来い来いと手招きされるので、隣へ行ってお座りします。ハージェストも座ります。


 そんで、手間を掛けさせたのお言葉を頂きました。

 怒られないトコに若干の申し訳なさを覚えたり、混同しない線引きがすごいと思ったり。線引きにクロさんの心を認めてるのか!と思い至って一人アガッてたり。




 「話を変えるが、石を送る際にだな」

 「…文面がまだです!! どーしよう!」


 ハージェストに目で縋ったが、それはちょっと置いといてと話は進んだ。 …よく置いとかれる。



 

 「真珠ですか?」

 「そうだ、幾つか頼みたい」


 

 説明を聞きました。


 えー、真珠ってたら丸いでしょ? あっちの世界でも俺が知ってんのは丸かったです。貰ってきたのも丸いです。


 「歪んだ真珠(バロックパール)が大半で、丸く大きく質が良いとくれば希少だ」



 だから、へ?と思いました。


 言われて考えればですねぇ、天然物が真ん丸いはずないじゃないですか。全く歪みの無い丸い球体に自然になるって…  それこそ状態異常じゃね? 養殖だからでしょ?   思い込めるってか、常識になってる常識って怖いやね〜。



 「水揚げしたばかりの時は汚くても当たり前って」

 「真水でなし、生きている。出すもの出して太らんとな」


 最初に汚れ落とし、洗浄が必要だそーです。

 取り出した時点で光輝くお宝状態! ナンて思うのは〜〜   ナンの所為? いや〜、思考を遮る有害であったんかい。 …違うか、最初から良いもんだけ見てたんか。



 「それでだ、子爵を冠するノイゼライン領は海に面していてな」

 「うん、港もあるよ」




 突然、脳裏に浮かびます!


 青い空、白い雲。 光り輝く太陽!

 波打ち際の貝殻、青い海に白い砂浜。白い帆船。人が賑わう雑多な港町。銅鑼が「ジャアアアン…!」と鳴って船が出港していきます。手を振り見送る人達に、別れを惜しむ声。


 桟橋から離れた場所では海で遊ぶ子供達に、漁をする大人。はしゃぐ声。そして、水着姿…


 

 ノイゼライン、もしやの避暑地でしょーか!? 友達か彼女と一緒に行く、サマーバケーション!!


 ……うっわ、ぼっちさんには高い壁。現地調達は主旨が違う。でも、行くって決めたら行きたいな。 …休暇自体はどーでもいーが、別の高い壁が見えてるう。




 「整備やら何やら重なると面倒くてなー」

 「現場は何時だって待った無しだから。それでも回らないなら、程度の放置を入れるしかないしさー」


 「だから、シューレを放置しとるわ」

 「そーでしたね、更なる右左は嫌ですから謹んでも謹まなくても遠慮しますから」

 「俺の可愛い弟は何か言ったのか? 兄には聞こえんが」

 「俺のできる兄の耳が遠いはず無いのにな」


 二人して、ナンか目が遠いんです。死んでるとは言いませんが、うざったそーです。避暑遊びから遠い雰囲気出してます。



 「あそこの事業の内でな」

 「姉さんへの首飾りもそうだけど」



 切り替えの息もピッタリなご兄弟です。ほんと仲の良い兄弟ですヨ。

 

 そっからお話は続きました。

 どーも、真珠の、養殖を、してみよう? なのでしょーか? 




 「立地… と、言うか」

 「あれには手が掛かった」


 

 ノイゼラインでも、ちびっちゃいの採れるそーです。

 今回の海のお宝詰め合わせセットを前にして考えてたそーです。


 「いやな、貰う土産に真珠を選んでも良かったが…   貰えばそれは俺の物、どう扱おうとも俺の自由に動かす財で良かろう? それでもな、始めから転売・換金・別途使用の目的で選ぶなど味気ない。何より品性に欠ける。大事と仕舞って忘れるのもなぁ。好みでなければ、あまり使わん。あれは俺に似合っていたろ」


 「はい、もうばっちり! 真珠よりお似合いでした!」

 「先に話したは比較の話。俺も自分に似合う物を持ちたい、有り難うな」

 「はい!」


 「兄さんが気に入るのは高価なのだけでしょ、目が肥えてるから」

 「わぁお」


 それでリリーさんは二つを手にしたんだから〜〜   ばらして二、三珠職人への見本にとかって…



 「だけど、散けさせるのもね。惜しくて心苦しい。第一、君がくれた物なのに」

 「別なの見本に出すから、そっち持ってけばいーよ」


 「本当に良いのか?」

 「はい、どーぞ〜」




 返事が軽過ぎたのか変に心配された。

 本当にわかってるか聞かれた。んで、聞き返した。



 説明に納得したんで問題ないです。納得したから、いーんだって。



 「ちょっと待ってて下さい」



 海のお宝詰め合わせセットを取ってきま〜す。ドア、ガッチャン、パッタン、トットット〜ですよ。


 








 「ハージェスト、本当に理解したと思うか?」

 「したと思いますよ…  聞く事は聞いてるし」


 「特に小難しい言い方をした覚えはない」

 「はい、その辺りは問題ないと」


 「うーむ…  即断は誉められる事でも、あの笑顔がなあ…   くれ、と話したのではないが… 気前が良過ぎるのが心配になるな」

 「ほんとに…  石をくれると話した時も最後は今と同じ良い笑顔で」



 見交わす兄弟の目はヌルいなりにも思案の光があった。結果、声に出さなくなった。



 『気を許しての行動ならば良し』

 『はい、そうでない場合は』


 『性格もありそうだが…  追求性がヌルいと危ない』

 『俺のアズサは「優しい」んです!  聞き返す時点で考えてる、全てを話させようとするのは違うでしょう? 俺は察していきたいんで。  …まぁ、情に訴えられると鈍くなりそうで不安はあります』


 『お前が情に訴えるんじゃないのか?』

 『うっわ、ヤな言い方』

 

 『落とし所だろうが』

 『はん、そんな程度の落とし方。俺はヤですよ、魅せれなくてもそれなりにってね』


 『とろいと俺が取るぞ』

 『がああっ!』





 『……面白い顔ができるな、お前』 

 『こ、こ、 こここっ… !』


 『話を戻すがな、この先、捲き上げられてもアレだ。注意が要るな』


 『 こ、んのっ!  どちくしょう!!     ええ、ええ、お・れ・の・ほ・う・で!気を付けますから!  あ〜〜〜〜 苛つく!   判断に困る事案にはザカリアを使いますよ!』


 『あ?』

 『使えるモノの活用に、ナニか問題でも?』


 『あ〜〜  ま、良かろ。 損なうなよ』

 『損なう? 冗談。  …だから下がってて下さいって!』



 兄弟の一人はゆるりと笑い、一人は渋面を無理にでも変えようと試みるが苛つきで失敗している。



 『お前がとろくなければ良いだけだ』

 『だーかーら! 前々から言ってんだろが!』


 『メダルもやるし、特に何もしとらんが半分こっち向いてるしな〜。ははははは』

 『糞兄貴があ!』


 『あ? 兄に向かって酷い言い草だな』

 『ヒドく言っとるわ!』


 

 『何だ? やるか、ん〜〜?』




 実に楽しそうな兄と渋面の弟と。

 続いた会話で弟の口は閉じられ、目は据わる。




 「察せれるのだろ?」



 揶揄が滲む声。


 渋面の上に凶悪が加わり視線で不服を唱え、怒りを込めた沈黙を盾と並び立てる。対する兄は慣れた風情で動じない。返す笑みを駒に盾を下げさせ、我を通した。






どうにかこうにか進みます。他に考えてた副題候補は「温度差」でした。



歪んだ = バロック = 仏語


真円真珠養殖法 

養殖真珠は「人の涙」あと、「これで絞める」の某言葉。  「これで〜」を背景付きで知った時は、すげぇ〜と思いました。

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