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召喚  作者: 黒龍藤
第三章   道行き  友達に会いに行こう
119/239

119 先生のご判断

 

 

 前回と同様に、瞬く光が現れて輝きの道を生む。


 風の流れもない室内で、小さく揺れ動く光の中へ飛び込む君を見送れば、何故だか安堵の息をいてしまう。綺麗なだけの光に見えないから、如何仕方ないのだろうけど。


 如何仕方ないと言えば、猫の君が「にゃあ、にゃん、にゃああ〜〜ん」と可愛い声で一生懸命説明してくれた内容が完全に聞き取れないのも…  そうだと思う。



 俺でわからないんだから、ロイズはもっとわからないって。


 でも可愛い。可愛い、可愛いから良いんだ! 

 それに君が一生懸命、話してくれているのは伝わる。口が悪い奴なら元に戻ってから言えと言うだろうが、そんな二度手間要るか。



 君の体は大丈夫だろうか?


 さっくり「着替える」と言うし、平気そうに見える。でも、それは本当かと疑ってしまう。



 自分で気付いてないだけじゃ? 


 そこに至ると心配になる。以前は成れなかった、原因すら特定できない。なら、もう少し慎重になる方が!と言いたくなるのは、回復したと思えないからだ。



 魔力の行使は負担を伴う。内なる力を行使する、それは目減りだ。

 目減りに対して正常値に戻ろうと体が活性増加する。この体内活動に一切の負担がないなら、それは巡りを持たない、生きていない体になる。


 兄さんであっても睡眠に食事は必要だ。



 …まぁ、普通そこまで細かく言わないけどな。そんなモノを気にし過ぎれば生きていけるか。しかしだ!その手の感知に鋭敏である事が、弱い・少ないの証拠だとか言われるのはなぁあ!  無神経と図太さだけが売りな奴を誰が買うかよ。


 まだ体調が戻ってない君に、何度もさせるのは論外。これでまたベッドに戻るで、暫く動けないとかなったら嫌過ぎる!!




 ……でも、本当に。


 本当に君の内なる力は何だろうか? 手を合わせ、感知したと思ったモノは。 ナンだか遊ぶ気のない火遊びで火傷しそうだ。


 ん〜、火遊びと称するだけで高揚を呼ぶな。 ははは。





 「ロイズ、今はどうだ?」

 「…特に変わりはなく」


 「良かったな、呼びに行ってくれたぞ」


 「愚考をお許し下さい。ハージェスト様、彼の者は…  本当に人なのですか?」



 あんな言い訳の仕方でも、と続けようとした所だった。


 

 振り向いた先に浮かぶ表情。

 あれだけ説明しても、無理なものは無理なのか。あの煌めきには、『仕方なし』で済ませて良いんだが。



 これから先、アズサには医者が要る。絶対要る。

 不必要に広める気はない。そうなれば人選は限られる。最初に託した時点で俺の意を汲み取っているし、頭が固くて使い物にならない奴じゃない。


 慣れる時間も必要で、性格も把握済みだから良しと決めたが…  こいつの方が難しいか? 前例のない常識は常識じゃないからな。ごり押しも手だが、頭を回さないと何の為の頭かわからない。



 「人でなければ何だと言う」

 「は!  あの、  猫であったと」


 「ははは、確かに猫であったなぁ。お前の目から見ても猫なら、確かに猫だろうよ。ならば、お前の目を上回る技術である事が確定しただけよ」


 「兄さん」

 「次期様」

 

 「ま、議論は後にしとけ」

 「……俺が言おうとする事を全部取る」


 「そうか?」

 「そうですよ、全く…  あのな、あちらが聞いていない、聞こえてないとは限らない。相手に力があるから、こうなっている。機嫌を損ねて良い現状でない事を理解しろ」


 「… 諾」



 親指で示した先の光を凝視する。目を伏せ、一礼するのに頷いて済ませるが…  やはり、これが現実。一番簡単で確実な、混乱を来さない方法。 



 君は 怒るだろうな。

 












 



 先生、急患でーーーーっっす!   とーーーーーーうっ!



 「にゃああん!    …じゃない! クロさん、ただいまです!  あれ?」



 


 シャイニングカーペットを駆け上り、ゆらゆら煌めきカーテンの中に飛び込んだ。



 部屋の中、カゴの隣。

 そこで待っていてくれるものだとばっかり思っていたクロさんは…  居なかった。



 「クロさん?   クロさーん、どこですかあ〜?」




 トテトテトテ。


 カゴを一周しても居られません。部屋の中を見回しても居ません。上を見れば、変わらない光の塊がシャンデリアとしてキラキラ輝いてます。



 カゴに手を掛けて〜  伸び〜〜〜〜〜〜  をしまして、発見しました。



 クロさん、マスコットモードから移行されてません。

 

 どーしてでしょうか!?




 「せーのっ  ぽん!」


 カゴの上、覆い布に華麗に着地。

 カゴの中、黒猫のマスコットを猫手でキャッチ。


 後ろ足で立ち上がり、猫手で挟んで目の前まで持ち上げるが〜〜  足場は服なんで、ぐらあ〜〜りと。そのまま横に倒れて、ぼふっとな。



 「クロさん、お願いにきたのですが…   このカッコで、お願いしても良いでしょうか?」


 猫手でぎゅ〜〜〜っと、マスコット・クロさんを抱き締めるが反応は無い。











 「それよりだ、お前はどう見立てた? これは治ると思うか?」

 「…非常に難しいです。これは何なのかと言うのが本音です」


 「わからんか」


 「いえ、形式は! 形は何とか読み取れます!」

 「ほう」


 「…読み取れるだけ意味がわからず。 ……加減に休息を挟みつつ、治療(試行)を重ねておりました。身体への癒しの効果は発揮されています。癒しが、これを活性させてはいない… はずですが…  その完全な見極めにも至れず、申し訳ありません」


 「兄さん、レイドリックでも同じでしょうか?」

 「変わらんだろうな」


 「クロさんが機嫌を直して、根(こそ)ぎ取り除いてくれる事を願うだけですか」

 「機嫌か、これは?」



 疑問と苦笑を返す兄さんに苦笑を返し、目を閉ざすロイズに目を移す。




 生殺与奪を握られた、そう考えても。


 ロイズは落ち着いている方だ。こいつが観念したとは思わない。けどなあ? 最後は兄さんが剥ぎ取ってくれると落ち着いているのなら、甘いよなあ。そりゃあ、お前は兄さんのモノだけどな? 自分の所有に手を出されるのは誰しも嫌う所だけどよ? 


 お前とアズサで比較になるか。比較する対象にすら、なれないというに。



 アズサが持ってきた原石。あれを単純な力とは捉えない。命の結晶と俺は見做す。この先、生まれて活きる命の結晶石。



 命の結晶は、小さく、軽く、  重い。

 

 命の鼓動を刻まぬ物が、無上の命と光輝を放つ。

 それは命で無い故に、どこまでも軽く。 命で有るが故に、どこまでも重い。



 重く扱える。だから、金に成る。


 



 同じ命でも、お前は劣るんだよ。だから、もし、選ぶ必要があるのなら、兄さんはアズサを選ぶさ。 …俺の命も兄さんに比べたら、比べ様もないけどな。


 足掻く事を笑いはしない、止めもしない。俺に自虐の気はない。想定をするだけだ。 …そうだな。兄さんなら、どちらにも手を伸ばして引っ掴むかな?  あーあ、できそうだよなあ。 できる力でソレを引き剥げば、お前の命も剥ぎ取れそうなのが目に浮かぶけどな。











 「それでですねー、ハズレを引く人じゃないかと思うんですよ!  でえ、ロイズさんが実際ナニをおもーてそーなったかはわからないままですが、それはそれでいーんじゃないかと。俺に実害出てません。セイルさんも言いました、腹の中で思う事はあると。それ、普通だよね〜って思います。


 なので、クロさん。ロイズさんのぺっちを取ってあげて下さい。俺、ちゃんとお留守番してますから」



 カゴの中、ごろーん状態でマスコットのクロさんに話し続けたが反応がない。お顔を見てもモードは変わらない。


 動いて下さい〜と猫手で軽く触れつつ、クロさんの手を確認した。



 やっぱり、この手です。

 赤の中の黒。その中心。腹にある赤黒い大きな跡はマスコットの手と重ならない。でも、マスコットの手も黒の中心にあるテガタとは重ならない。マスコットの手の大きさを縮小したモノで正解だ。



 何でかな? ピントが合ったんだ。


 切り取られた映像、次に拡大。そしたら、『あ』な感じで理解できた。 ……前に、こんなんした気がする。だから簡単にできたよーな気がする。はて、何時そんなんしたんかな? 




 しかし、反応しないクロさんが悲しい。

 ちょっとだけ、ほんとかる〜く甘噛みしてみる。カミカミしてみる。



 「いかん、涎が!」


 パッと離しても反応なし。

 ぱたんぱたんと尻尾で覆い布を叩きながら様子を伺うが、モードが変わる気配はない。



 これはもしや…  バレてんだろか? ちび猫先生が、できるかもしれない治療法。思い付いた、あの方法。アレを…  お試ししなかったのが…  ダメダメなんか?



 「だってクロさん、滑り台で俺は口一杯にですねぇ! アレとか部屋の光とか、クロさんも…  そーゆー意味では大体が同じだと俺は捉えています。違いもするけど元は同じ、そんな風に…   だから、怖くて!


 はい、猫舌で舐め取ればイケるんじゃないかと気が付きました!


 でも、同じなだけに『消す』ではなく、『移る・戻る』を強く連想したんです! 舐めとった後に噛み砕けばとも考えましたが…  でもでも、どーしてもできると思い切れないんです! 性質もそのままに、舌に移ってるとしか考えられなくて! そしたら体の中で蔦を飼うってゆーより、蔦が這い回ってるほーでしか!! 


 這い回る連想に!! イケナイ映像よりも子供の頃に読んだ話があああ! 


 あれは夏の話!主人公は男の子! ラスト、ボス猫の体を苗床に南瓜の蔓が伸びててぇえ!! 養分になっちゃったねの挿絵は変な白骨化じょーたいでぇえ!  生前の姿の比較までついてたあああ!!


 子供向けにしてはシュールな終わりで、すっきりどころか…  くぅうう!!



 くすん、くすん。あんな終わり。

 俺は嫌です、クロさん! ある意味正しい間違ってない命は巡るよのお話に、子供の冒険がくっついてたよーな話だったんですが〜〜  ん、あれ…? 逆か?   どっちでも、子供心に刻まれたのはラストの『怖い』だけだったんです! しかも、土台になったの俺と同じ猫だしいいいいいい!! 話の要所で意味深に出てきてたボス猫だったのにぃい!  それが…  それが、ぽっかり空いた眼窩から空に向かって蔓の先端があああああ!!!



 …くすん。

 怖い系の衝撃って尾を引くんです。あの頃は変に思い出して嫌でした。


 

 ……後ですね、冷静に考えると俺がロイズさんの腹を舐める事になります。ペロペロじゃなくて、ザリザリだと思います。舐めとるのに力を込めてのザーリザリだと思うんです。

 俺に腹を舐めたい願望なんてないんです。治療にしても考えものでしょう。どんだけ舐めても美味しい訳ないし、逆に垢擦りじゃないですか? ザリザリなんだから。 せめて、全面に生クリームでも塗りたくってくれないと。


 でもそしたら、今度こそナニかのプレイでしょ?  まぁ〜 完全に猫ではありますけどねぇぇ?  どっからどー見ても猫なんですけどねぇぇ?


 生クリームを腹に塗るなら誰が塗るんだとか、ロイズさんが自分で塗ってる姿を想像したらば妙に引くし。ソレに上がる人は上がるのかもしれませんけど〜〜 ねぇ?


 ごっこでも〜〜  やあっぱ、処置までした方が良かったですかあ?



 でもですね? 舐めれば、猫手も生クリームべっちょりしますって。もう自分の手まで舐めとる気力残ってないと思います。自分で舐めるよか、綺麗に洗って貰わないと! 大体ですね? 腹の上で間違ってクリーム塗れになったらですよ?  至上と呼べるだろう、こ・の・きれふわ感たあ〜〜っぷりのキラ艶なにゃんぐるみが汚れるじゃないですか!! 


 そしたらまーた、ハージェストに優しくソフトタッチで猫洗いして貰わないといけないんです! ええ、あれは乾燥込みで大変気持ち良く! また洗ってくれるのを希望してます。ですが手間な上に今のきれふわ・キラ艶が大変もったいないです!」



 マスコット・クロさんをぎゅうぎゅうしながら、「だから、黙って却下しました」と付け加えといた。






 それでも反応ないんで、猫手で高い高いをしてみる。


 

 「ていっ!」


 上へ、ポーンッだ!



 落ちてくる所を〜〜〜  キャーーッチ!    ひゃっほーう!  せい、こう!





 もっかい、上へ〜〜  ポーンッ!



 落ちてきた所を〜〜〜〜〜    ココでキャーーッチ!    よっしゃー!





 ぎゅうぎゅう抱き締めて、ごろんごろんと〜〜〜     む? ナニしてんの、俺?





 「………  ふ。  いや、にゃは?」



 マスコット・クロさんを口に咥えて〜   カゴから、とうっ!



 トン、トテテテテッッ!



 何事もなかったよーに、煌めきカーテン前に到着。丁寧に床へ置く。



 「ロイズさんを治してあげて下さい」


 猫手を揃えてマスコット・クロさんを、ずずいっと光のカーテンの向こうへ送ろうとした。




 「あや?  むう?」



 送ろうとした猫手を止めて考える。心に引っ掛かったのは何だと考える。今、もんのすごく重要な事に思い当たった気がしたぞ?


 クロさんは部屋の番猫です。

 前々回はちょい除外して〜〜  前回はモードが変わった状態で、俺に留守番を言い付けて出て行った。モードが変わってない。それは準備ができてないってコトでないか? それで俺が部屋から送り出す。



 『送り出す』


 送り出すって…  言うんか?  俺はそのつもりだが…    俺が、コレは、もう、要らねって、部屋からポイするとも言えるんじゃねーの?




 脳天から背筋に走り尻尾の先まで、びびんっと落雷です!


 猫口、大きく開けて固まりました!!


 ぶるぶる激しく震えそーです。震える猫手でマスコット・クロさんに触ったら、そんな気なくてもお外へポイしてしまいそーです!!


 マスコット状態で、部屋にどーやって戻ってくるんでしょう!?   いや、俺が咥えて戻れば!! 留守番でどーやれと!?




 ……………外へ出した時点で消滅しちゃったら? いや、返品の形で戻っちゃうとか?  いやいや、ないと思うけど? 思うけど!?  ええと。 ええと!  ええええとぉおおおおお!




 のーみそが色々激しく弾く。怖い。

 新しいのちょーだいなんて言えない、届かない。間違って捨てた、なんて言いたくない。


 いやいや、待て待て。クロさんはカゴにしっかり取り付けたと言ってくれたから。いやだから待て! 捨てる事が不可能とは言わなかった。聞いてないのに、わざわざ言う訳ないだろ? つか、捨てる前提ってなんじゃそら! ゴミは分別して出しましょう? だから、ゴミじゃないとゆーに!!


 うっかりミスは誰にでも…  安全の為のセーフティはきっとあると! ダメだ、思い込むな!  罠は…   罠はどこだ!?




 視線をクロさんから外さずに、そ〜ろりそろりと後退る。忍足を駆使して大きく迂回して、入り口を体で塞ぐ。


 そうっとマスコット・クロさんを口に咥えて〜〜〜   はい! カゴに向かって猛ダッシュ!!


 


 たたたたたんっで、 ちび猫   ぴょーーーーん!!



 ボフッ!


 猫スフィンクス!  さい、とう、じょう!!



 「クロさん、ごめんなさい! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい〜〜! 危うくロイズさんなんかの為に、大事な大事な俺の番猫のクロさんを放り出してしまうところでした!!」

 


 一気に捲し立て、マスコット・クロさんを猫手で挟んで『へへ〜〜〜〜〜っ』と掲げといた。んだけど〜 スフィンクスで猫手、ほとんど平行。そんなに上へは持ち上がりません。しかも猫手にそーゆー筋肉ないから、大変辛い。



 クロさんを腹に抱えて、ちび猫はまあるくなります。尻尾もくるりんします。


 ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅうして、甘くカミカミです!

 噛み跡は付けませんし、噛み千切りも致しません! 涎が付いても良いんです、むしろ俺のモンですから唾付けた!!



 「クロさん、ロイズさんとクロさんでは比較になりません! 比較する基準そのものが違い過ぎてするだけ無駄、検討の価値すらございません!


 これから先、無いと思います。有るはず無いです! ですが、もしも間違って部屋から転がしちゃったら自力帰還をお願いします! お願いしますぅう! 大事なクロさんをポイする非情さも無情さも阿呆さも魂胆も根性も気力も意力も死力もございません!! そんなん全くないですからあ〜〜」




 訴えながら、マスコット・クロさん抱えて右へ左へごろごろした。


 そしたら、きらりーんて。











 「それで、今朝は本当に良くなっていたのか?」

 「はい、朝も昼も食事はしっかり摂りました。回復に向かってるはずです。ナニかに引っ掛からない事を願ってます」

 「あ?」

 「兄さん、引っ掛けた」


 「…不可抗力に言うなよ」

 「…それはそうですけど。 あ、そうだ。庭を弄らせて下さい」


 「庭?」

 「ええ、アズサがですね」



 さっきの話をしたら、やっぱり兄さんも笑った。



 「ほ〜、気晴らしにそっちが出るか。そうかそうか、そいつは良い。 実に良い、好きなだけやらせてやれ。体力もできるだろ」 

 「ええ、本当に最善ですよね! 有り難う、兄さん」



 あ〜、和やかな話だよな〜。本当に忙しい合間の心の潤いだ。今はどっちを向いても殺伐とした内容の仕事しかないからな。




 「それとな、あの話はできそうか?」

 「話自体は問題ないかと。姉さん、良いと言いました?」


 「拒否するはずがないし、こればかりはさせん。 だが、全部は嫌だと」

 「そうでしょうね。くれたアズサにも悪いですが…  二、三珠はねぇ?」


 「見本に頼めると良いが、あれもこれもと言うのは本当になぁ。こんな予定なかったぞ、俺には」

 「あの場で聞いた方が良かったですか?」


 「ん?  …まぁ、お前が言った通りだ。この手にがっつくと碌な事にならん。しかし早いに越した事は無い、送っておきたいからな」

 「ですよね、兄さんが話しますか? それとも」


 「家に関わる、そして俺の方だ。俺が話すが筋よ。 …話を横取りしているか?」

 「いえ、問題なく」



 心の中で、しかけてると呟く俺は小さいのか。

 多少、躊躇う要素もあるが黙っているのも面倒で、アズサの口から先に語られるのも拙い。小さい自分を蹴る勢いで言ってしまえよ。



 「もう一つ報告を。あそこにあった石を半分くれると言われまして」

 

 固まった感じの兄さんは、初めて見る様で違う様な。そういう顔をさせる言葉を俺が発した。発せれた。  …こーゆー思考を回す時点で終わってないか?  終わってんな。




 苦笑を添えて視線を逸らし、宙に目をやる。

 そろそろ、クロさんのお出ましがないだろうかと願うのと。 今の自分から目を逸らしたい、そんな感じかな? 進まない自分に苛立ちも覚えてる。こんなに時間を掛ける口じゃないんだ。


 それでも君が居なければ、こんな思いを巡らすはずもない。



 …代替案が出てこない。だから、こうするしかないと思うが二の足を踏む。どうすれば良い? どんな状況下でどう話を持って行けば、内容がそれ程酷く聞こえなくなる? しかし、それで良いのか。


 


 片付かない現状が嫌になる。


 「ふっ 」



 光が煌めいた。

 




 

三分割しよう、そーしよう。するしかない。

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