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落ちこぼれの日常

 軋む体を引きずって、なんとか教室までたどり着くことができた。既に授業開始のチャイムが鳴り終わった後だ。


「スイメイル君」


 教室に入ってきた僕に対して、冷たげな声を掛ける女性教員、フィアス・クロウド先生だ。


「遅れてすいません……」


「授業が始まってからいったい何分経過したと思っているのですか?」


「すいません」


 僕がフィアス先生に向かって頭を下げると、教室の後ろの方からクスクスと、笑い声が聞こえてきた。リオル達だ。僕のことを痛めつけては、いつものように、こけにして楽しんでいるのだろう。


「なのに、あなたときたら……って、聞いているんですか?」


「あ、すいません。他の事に気を取られていました」


 笑い声に気を取られている間にどうやらフィアス先生からお叱りの言葉を受けていたようだ。


「まったく、これだからあなたはいつまでたっても『落ちこぼれ』と呼ばれているんですよ!」


 フィアス先生の言葉に、今度はクラス全体から笑い声が聞こえる。

 そう、この学院での僕の呼び名は『落ちこぼれ』、煉も使えなければ魔力のもない。ただのゴミクズにしか過ぎないのだ。


「また言われてるよ」


「ほんと、何しにここに来てるんだろうね?」


「早くいなくなっちまえばいいのに……」


「足手まといなんだよ」


 同じ学び舎の仲間とは思えないほどの陰口が、一斉に僕に襲い掛かる。もう、何年もこの生活だ。慣れている。今更やめてほしいなどとは思わない。


「ハァ……もういいです。席に座りなさい、スイメイル君」


「分かりました」


 一度、頭を下げてから、自分の席へと向かう。

 自分のイスを引いて、席に座る。その時。

 

 ガッ!と、背中に鈍い痛みが走った。


「ッ……!!」


「それでは、続きから……どうかしましたか、スイメイル君?」


「いえ、……なんでもありません」


 ここで騒ぎを大きくしては、また後で面倒くさいことになるのは、目に見えている。それに、犯人も分かっている。僕の後ろの席に座っている人物と言ったら、リオルしかいない。どうやら、背中に鋭いものを刺されたようだ。


「よう、落ちこぼれ。気分はどうだ?」


 表情こそ見えないが、おそらくいつものように、ニヤついていることだろう。


「ああ、最高だよ」


 周囲には気が付いている生徒もいるようだが、それでも見て見ぬふりをしている。つまり、僕はそういう存在ということだ。

 

 出来るだけ周りに悟られないように

 それが、僕という『落ちこぼれ』がこの学院で生き抜くための唯一の方法だ。


「そりゃあ良かったな――っと」


 ズッ! と、僕の背中から刺されていた物が引き抜かれる。

 ゆっくりと引き抜かれることによって、痛みがより増してくる。


「ぐッ……!」


 奥歯をかみしめながら必死に痛みをこらえる。

 おそらく僕のシャツは今血でシミが出来ているんだろうな……

 そんな僕の様子を、楽しんでいるのか後ろの席でリオルが笑い声を噛み殺した。

 

 これが僕の、『落ちこぼれ』日常だ


 こんな生活、いつまで続くんだろう……



すんごい久しぶりの投稿です。

忙しくて、小説の存在を忘れていました……

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