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君と文通

                                                                                  私はちょっと早く起きた

なぜか気持ちがいい

こんなに目覚めがよいのはいつ以来だろうか。

そんなことを思いながら

顔を洗い、ポストを確認し、歯を磨き、ポストを確認する。

なぜ私はそんなすぐにポストを確認したがるのだろう

自分でも不思議であるが

思い当たることなら一番に思い浮かぶことがある・・・

まだ私が若い頃、

そうだな・・何歳ごろだろう・・・言い忘れていたが私は「黒田真一」今年で60歳である。

30年前ごろだろうか 18~20歳あたりであろうか。

その頃私が通っていた大学の窓から見た景色はきれいだった。

そんな男はひ弱で毛嫌いされるかもしれないが

そういう景色とか海とかそういったものが好きな男だ

いつものように景色を見ていたある日私はある女性ひとに見とれてしまった・・・

そのとき私は勉強ばかりでそのような・・・恋愛とかいうやつとは無縁だったため

恋愛に関しては本当に初心者である・・・・

その例の人は

いつも笑顔であった。いつもベンチで本を読んでいた。

毎日そこのベンチに座り静かに本を読む彼女は本当に輝いていた。           

いつも見るたび癒されていた。

私はある日思い切って声をかけてみようと思った。

しかし思うのはいいものの

なかなか行動に移せず

もやもやしていた・・

私は仲の良い友達にあの人は誰かと問うた。

やはり友達も知っていた。

というかいわゆる大学のマドンナ的な存在だというではないか・・・

私が声をかけるなど・・・どうかしていた・・・

と自分へ暗示をかけた。

しかし

景色を見れば彼女は私の目に映ってしまう・・・

5日ほどたったある日・・・

私と彼女は同じ学年であった。

合同授業というやつで一ヶ月の間 各クラスが集まって受けたい授業を受ける

というものがあった。

席は男女隣りあわせで座る。

先生が適当に埋めていった

「黒田そこ座れ」といわれすわった。

隣はクラスメイトの橋本さん

彼女はいないのか?あの輝いている彼女は?

気がつけば斜め前の席が空いている・・・

「ガラガラ・・・ガラガラ 遅れて申し訳ありません少し気分が悪かったもので・・」

そういって歩き出した・・

彼女である・・・

彼女は私の斜め前の席に座った。

すらっとした長い髪・・・

きれいな指先・・・

そしてあの美しい顔・・・

まさしくあの女性ひと

そのものである

まさか

こんな近くでお目にかかれるとは・・・

私は神様だの仏だの信じない男だがこのときばかりは神様に小声でお礼をいった。

「じゃあそうだな・・まず班になって自己紹介でもしてみろ」と先生が言う。

みんながガタガタと机の音を立てあわせていく

同じ班である・・・

まず僕からといおうとしたが

先にとられた

彼女の隣の席を獲得した男である・・

「俺の名前は柳田俊夫。 まあなかよくしようぜ?」といってしゃべったあとにガハハハと

笑い声を上げる。

なんてうるさい男だ・・・まあいい

「あ!!次は・・僕が・・」彼女が立ちそうになった瞬間

自分が立った。

「えっと僕の名前は黒田真一です。いろいろ・・その・・はいおわります。」

なんとも男気がないのだ・・・

そして橋本さんも終わり

彼女の番がやってきた

「わ・・私は・・私は倉崎美代子と申します。

あの・・えぇとおねがいします。」

そういってぺこりと頭を深く下げた。

美しい・・・倉崎美代子さんというのか・・

私はその放課後彼女に声をかけた・・・

「倉崎さん・・あの・・その・・」

「はい?・・・どうされました?・・・」

「あの・・僕とその友達になってくれないかな?と・・」

「・・・えぇ・・私でよければ・・いいですよ。喜んで」彼女は笑顔でそういった・・

やった・・コレで晴れてお友達になった・・・

はいいがどうしよう・・これからどうすればいい?・・・それから学校で話していって

考えた・・・そうだ・・文通をしよう

卒業の時期になったときに話した「その・・ぼ・・僕と文通していただけませんか?」

やはり彼女は優しかった。許可がおりた。

家に帰り早速送る文通の文章を考えた「どうも私黒田真一はあなた様と文通をできることを

本当に幸せに思っています。よろしくおねがいします。」

短すぎるか・・・

しかし送ってしまった・・

どうなるだろう

心配で心配で仕方なかった・・・

返事が来た

「はい。私もあなたとできることを幸せに思っています。これからよろしくお願いします」

なんともきれいな字をしていらっしゃる・・

返事を書いた

「卒業したらどうなさりますか?私はしばらくはこの地に残ろうと思います。」

「そうですか。よかったです。わたしもここに残ろうと思っていましたので・・

気が合いますね。」

「やはりこの町が一番いいです。この町もどんどん都会になって来ましたしね。」

「そうですね。ここもどんどん成長してくるでしょうね。」

そんな短いやり取りをし続けてあっという間に卒業した。

それから数ヶ月して文通は途絶えがちになっていた。

ある朝、新聞を見た。

ん?うわ!!また殺人かよ・・・物騒だな・・・この町も・・・都会になってきたからかな?

「新聞見ましたか?また殺人です。ひどいですよね。

しかも若い女性ばかり狙って・・・美代子さんも気をつけてくださいね?」

「ありがとうございます。気をつけますね。」

ある日ばったり彼女と会った。

「どうも。ご無沙汰です。お元気でしたか?この頃元気がないように感じますよ?

どうかされたんですか?」心配になった。少しやせたのではないのだろうか?

「い・・いえなんでも・・ちょっと気分が悪くてすぐ治りますよ」

そういっていつものように笑顔を見せた。

でもなにか悲しげに見えた。

少しそれから話して別れた。

「先日はどうも。気分は治りましたか?すごく心配です。お体には気をつけて・・」

「はい・・・ありがとうございます。」

なにか・・字が薄くなったというか

文章にも元気がなくなった・・・・

新聞を見た。この近くでも出たという・・・殺人者が・・・まさか・・・追い掛け回されているのか?そんなことを思っていた。

問うてみた。

「大丈夫ですか?ほんとに無理はしないでください。つらいなら返事もしなくていいですよ

今度電話します」

返事はこなかった・・・

異常だ・・・異常すぎる

でんわしてみるか・・

「トゥルルルル・・・・・もしもし・・・あ・・どうもどうかされたんですか?」

「あ!?誰だてめえ?うちの女になんかようか?

お前かいつもいつも文通文通送ってくるやつは!!」

えぇ!?まさかそんな彼氏がいたなんて・・・ん? 彼女の泣き声がする遠くから・・

どうしたんだ?いわゆる家庭内暴力というやつか?そんなことを思った。

「えぇ文通をしてるのは私です。

あなた彼氏さんですよね?彼女の鳴き声がするんですが・・・どうかされたんですか?」

「あ!?なんだおらぁ!!!うるせーー黙れお前は!!」ん?もめている様子だ・・それからドン!!という音がして彼女の声がなくなった・・・ん?・・・きえた?・・・電話が静かにぷつっときれた・・・

それから文通はしておらず気になった・・

あくる朝新聞を見た・・・・

「20代女性遺体で発見 凶器は灰皿か!!彼氏が殺害!!」

写真のかおはまさしくあの倉崎美代子さんだったそしてこともあろうに彼氏のほうは同じ班だった柳田俊夫・・・・・

私は静かに涙を流した・・・なぜ・・・・なぜ・・・・・・・

それから私はポストを見てばかりいる・・・

いつか彼女が天国から手紙を送ってこないかと・・・・







































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