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第四話


「うん、15人全員いるね。じゃあ話を始めようか。」

「あの、他の先輩方はいないんですか?」

一年生15人と彰先輩と慧先輩以外いない教室を見て、私は聞いた。

「今日は僕と慧と一年生だけだよ。他の人達は今日はお休み。」

にっこりと彰先輩は笑って言った。相変わらず、惚れ惚れするような素敵な笑顔だ。

「まず、僕達の誘いを断らずにここに来て、うちの実行委員会に入ってくれてどうもありがとう。」

「毎年、うちはこのサークル勧誘期間中にも、他のサークルと違ってブースを出していないんだ。」

「じゃあ、どのようにして勧誘をしているのか、だけど。みんなにした通りさ。毎年、委員長・副委員長が一定の条件を設けて、新入生を勧誘してるんだ。」

「で、選ばれたのが君達ってわけだ。」

彰先輩と慧先輩は交互に流れるように話す。

やっぱりイケメンが並ぶと絵になるなぁ…なんてぼんやり考えていた私は、二人以外の声が耳に入ってきて、我にかえった。

「一定の条件ってなんですか〜?」

声の方に顔を向けると、少しふっくらした女の子が片方の頬を少し膨らましながら先輩達の事を見ていた。

飴…舐めてるのかな?

そう思って女の子の手元に目を落とすと案の定、机の上に飴の袋がある。そればかりではなく、チョコやらクッキーやらの袋も。

「それはまだ内緒。多分そのうちわかるよ。」

そのお菓子少女(名前わからない)に答えながら彰先輩は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

一定の条件ねぇ…確かに気になるけど。

頭のレベルじゃないと思う。だって補欠合格の私と、推薦で入った友里恵や余裕で合格した綾子と一緒だから。あと不本意だけど新入生代表もいるし。

顔のレベルでもないだろうし。私の顔はかなり普通だ。かわいいなんてお情け程度にしか言われたことがない。比較対象は……虚しくなるからあげるのを止めておく。

だとしたら、何だろう?みんな学科も学部もバラバラだろうし、住んでる地域も違うだろうし……

って、私の頭で考えたってきっとわからないわよね。私がわかったら、他の人達はもっと簡単にわかるはずだし。

そう思い、私は再び先輩達を見た。

「詳しい説明は追って説明することにして」

「あの、すみません。」

突然、私の隣に座っていた綾子が彰先輩を遮って声を発する。

「どうしたの、綾子ちゃん?」

「私、付き添いで来たんでここに入るつもりないんですけど。それに、入りたいサークル、他にありますし。」

相変わらず物事をはっきり言うな、綾子は。先輩に対しても発言に躊躇いがない。

「それは困るな。君にはいてもらわなくちゃならないよ?僕達実行委員に君は必要だ。」

「その入りたいサークルとうち、掛け持ちでも全然構わないけど。」

「や、掛け持ちとか両立大変なんで。」

綾子のきっぱりした口調に少し考えるような仕草をした後、彰先輩と慧先輩は顔を見合わせ、頷き合う。

「じゃあ、こういうのはどうだい?綾子ちゃんがここに入るならこのチケットを僕からプレゼントするっていうのは。」

どこからともなく、彰先輩は一枚のチケットを取り出し、綾子に渡す。

綾子と共に私もそれを覗き込む。

「…昼の学食フリーパス(一年間有効)…?」

「これは去年の桜海祭のミスターコンの優勝者に渡された副賞なんだけど、他の人に譲渡も可能なんだ。まぁ、有効期限は今年の文化祭の前日までなんだけど。」

随分豪華な副賞だな…。ん?副賞ってことは…

「彰先輩、去年のミスターコン、優勝したんですか!?」

「そうだよ。」

にっこり優雅に笑って彰先輩は言う。

………先輩のイケメン具合なら、確かにあり得る。ってかこの大学に彰先輩以上のイケメンの先輩はいない気がする…から当たり前か。唯一張れるとしたら慧先輩かな。

「これ、くれるんですか?」

「うん、あげるよ。綾子ちゃんが入ってくれるならね?」

「掛け持ちになるんで、毎回出れるとは限らないですよ?」

「全然構わないよ。」

綾子は数秒逡巡したように見えたけど、その後にしっかり彰先輩の目を見て言う。

「わかりました、入ります。」

「じゃあ今日からそのチケットは君の物だね。」

満足そうに彰先輩は笑った。綾子は綾子でチケットを眺めて嬉しそうな顔をしている。

まだまだ食べ盛りで伸び盛りらしい綾子は感心するほどよく食べる。鞄にパンが二、三個入っているのが通常装備。

だから学食のタダ券、というのは非常にありがたいのかもしれない。

まぁ私でも飛びついたかもしれないけど。ちょっぴり羨ましい。多分、教室にいる殆どの人がそう思っただろう。

「他のみんなも入るってことで、いいんだよね?」

慧先輩が確認するために問うと綾子を除く全員が頷いた。

「それじゃ、話を戻そうか。詳しい活動内容や今年の桜海祭については後日実行委員が全員が集まった時に説明するよ。今日は一年生同士、自己紹介をしようか。」

「まずは俺達からするべきじゃないか?」

慧先輩は横に立つ彰先輩に視線を向けた。

「それもそうだね。僕は文学部国際文学科三年で、桜海祭実行委員長の真鍋彰。好きなことは女の子を「えーと、俺は小山田慧。理工学部生物学科で、桜海祭実行委員会副委員長をやってる。わからないことがあったら、どんどん俺達に聞いていいからね。」

慧先輩に話を遮られて彰先輩は不満そうな顔をしている。

…かわいい。とか思ってたら、また綾子に苦笑いをされた。

でも、女の子――の後、なんて言おうとしてたんだろ?

「慧〜。」

「そんな顔をするな。お前の趣味は言わなくてもそのうちわかるだろ?今ここで言って、微妙な空気にする気か?」

「……それもそうだね。」

ますます気になるんですけど…

と、私達は全員思ったに違いないが、誰もそれを口に出さない。

「じゃ、次は一年生ね。」

「名前と学部学科と何か一言。」

彰先輩と慧先輩はそう言って、教室の隅の席に座る。傍観するだけ、ということらしい。

誰からいくのだろう、というような空気が漂う中で、端の方に座っていた男子が立ち上がった。


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