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第二話


「華音って、ほんと単純だね。」

あのイケメン二人組――真鍋彰先輩と小山田慧先輩に声を掛けられた翌日の放課後。

私は友里恵と、付き添うだけだからね!と言った綾子と指定された教室に向かっていた。

「うるさい!いいのよ単純でも!思い立ったら即行動なのよ!」

ぼやく綾子に私は言い返す。

「だってあんなイケメン、テレビ以外で見たことないし!お近づきになってみたいと思うのが乙女の心情でしょ!」

「はいはい…まったく、華音のメンクイも困ったもんだ。」

「あはは、でも、華音ちゃんらしいじゃない。」

「ま、そーだけどさ。」

「イケメンならば、それでいいの!何だって許されるわ!あいつ以外ならね!」

そう力説すると、友里恵が不思議そうな顔をした。

「あいつって…?」

「ほら、前話した奴。入学早々華音と……」

「あぁ、あの人ね。」

私の代わりに綾子が答えた。

私と綾子は経済学部経済学科なのに対し、友里恵は文学部日本文学科。あの日のあの出来事を見ていない。まぁ、その日の帰り道、イライラMAXの私がその事を話したから知ってはいるけれども。

「あーーっ!思い出したらまた腹立ってきた!」

怒りでフツフツし始めた頭を冷ますように私は歩くスピードを上げた。



指定された教室はキャンパスの比較的端にある特別棟の三階、T302教室。数年前に造られたばかりなので、他の校舎よりも外観も内装もとてもきれいだ。

この特別棟は授業で使われることもあるけど、大抵の教室はサークルの部室として分け与えられていた筈。

怒りのあまり、スタスタと早足で歩いていた私は予定よりも早く教室に着いてしまった。

「かのちゃん…早い…」

「うちはともかく、友里恵のこともっと考えて歩きなよ。」

後からやってきた友里恵と綾子にそう言われた。六年以上、バスケをやり続けている綾子は息をあげる様子は微塵もないけど、ずっと文化部の友里恵は呼吸が荒い。

「う…ごめん。」

と、私は素直に謝った。

うん、でも早足で歩いたお陰でだいぶ落ち着いたかも。

教室を確認した後、私達はドアを開けた。

「「こんにちは〜」」

挨拶をしながら入ると、扉から割と近くにいた例のイケメン二人組が私達に気づき、近付いて来た。

「やあ、来てくれたんだね、嬉しいよ!」

にこやかに笑いながら真鍋先輩が手を差し出して来る。そして私の手を取ると、ギュッと握って上下に軽く振る。

私…もうこの手を洗えない……!

「絶対に、来てくれると思ってたんだ。どうぞ、こっちに来て座りなよ。」

そう言って小山田先輩は手近な椅子を三つ引き、私達を促した。

「三人共、名前は?」

ありがたく椅子に座った私達に小山田先輩は聞く。

「け、経済学部経済学科一年の島村華音です!」

「同じく一年の鳥居綾子です。」

「文学部日本文学科一年の三田友里恵です。」

「華音ちゃんに綾子ちゃんに友里恵ちゃん、ね。」

「ここではみんな、名前で呼ぶから、僕らのことも彰先輩、慧先輩でいいよ♪」

マジですか!いきなりファーストネームで呼んだり呼ばれたりしちゃっていいんですか!?

「華音、うるさい。」

「…何も言ってないわよ。」

「心の声が聞こえてきた。」

あなたはエスパーですか、綾子さん…

「どのくらい、一年生は入部するんですか?」

友里恵が聞くと、彰先輩はピンと右手の人差し指を立てた。

「15人。減りもしないし、増えもしないよ、決定事項だからね。」

意味深な言い方をする彰先輩から、慧先輩に私は視線を移した。

「あはは、彰の言っていることは、後でわかるから大丈夫だよ。それよりも、他の一年生とコミュニケーションでもとろうか?」

慧先輩は教室の中央に固まっている、三、四人の男子達を見た。

どうやらあれは一年生らしい。

そっちを見た私は、一つの後ろ姿を見て固まった。

もしかしなくても…あれは……

視線に気づいてこちらを見たその顔を見て、私は息を呑んだ。

きれいな茶色の艶やかな髪に、人目を惹きつけるような澄んだ目。そして、絶対に女子に人気であろう、甘いマスク―――

彰先輩達と同レベルのイケメンのそいつも私を見て固まり…

私と当時に、同じように相手を指して、叫んだ。

「「あーーーーっ!!!」」

私が今最も嫌いな相手…櫻井幸也。

なんでこいつがここにいるのよ!有り得ない!

「なんであんたがここにいるのよ!」

「それはこっちのセリフだ!」

睨み合う私と櫻井幸也を見比べて彰先輩は問う。

「華音ちゃんと幸也…知り合い?」

「全然!」

「赤の他人スよ!」

相変わらず腹の立つ表情、態度、物言い!せっかく頭冷やしたのに……!

また、あの日の出来事が頭に蘇る―――



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