本編 2012年10月9日 其一
長らくお待たせしました。成績不振でパソコンの使用が制限されていましてですね・・・
ま、言い訳はさせてください。
今回ですが、戦闘機の戦闘描写は難しいっ。かなり下手です。
あと新しいジャンルをつけてみました。後悔はしていません。
ではどうぞ。
Side 草薙理雄
パシュッ!! パシュッ!! パシュッ!!
俺達の機体から発射された3基の04式空対空誘導弾は、赤外線シーカーを作動させると、まっすぐ中国機に向かい、多素子シーカーによる赤外線画像識別装置も作動させて、慌てて回避行動を取ろうとフレアを射出する殲20に容赦なく鉄槌を下す。
発射したミサイルは全基命中し、7機中3機が大小の破片となって日本海の荒波にのみこまれる。パイロットは2機分だけ脱出できたらしい。
赤城01・02号機のミサイルも4基中3基が命中し、中国機は炎に飲み込まれた。
残っている中国機は1機だが、まだ退散する気が無いらしい。こちらにバルカン砲を撃ってきた。推力偏向パドルを使った高機動でその弾丸の軌道から逃れると、中国機の真下で1転して上昇し・・・赤城04号機がとった機動と同じだ・・・真後ろを取る。そして、
「二度と来るな!!」
HMDのど真ん中にとらえた殲20に向けて、俺はJM61 20mmバルカン砲の射撃スイッチを押した。
機首に搭載されているバルカン砲が毎分3000発の速度で火を噴き、まっすぐ敵機体に向かった曳航弾混じりの20mm機関砲弾は機体エンジン部に被弾損傷を与えて機体を爆発四散させた。
「作戦終了。敵影無し。これより艦に帰投す」
『了解。戻ったらゆっくり休んでくれ』
中国軍機を撃墜するという日本の戦後初の出来事を終えた俺たちは十数分後、大和艦内の自室でこれからどうなるのかを考えていた。
全長250mを超えるこの艦では、航空要員、海上要員含めてすべての3曹以上の隊員に個室が与えられている。だが俺の部屋にはもう1人の人物がいた。いや、人物というのはおかしいかもしれない。なぜなら彼女はこの艦そのものなのだから。彼女の名前は「大和」。俗に言う艦魂というものである。昨日艦内で迷ってしまったとき、偶然見つけた彼女を乗艦している女性海上自衛官(WAVE)だと思って話しかけたのだが、なんで見えるの?、私はWAVEじゃないなどと話が噛み合わず、偶然通りかかった小野間に彼女の話をしたとこ
ろ、幽零を見るような目で、
「おまえ・・・ここにはお前しかいないぞ?」
という心霊まがいの言葉を頂いてしまい・・・こいつは艦魂か?との考えに至った。
小野間と彼女がグルでふざけている可能性もあったので、これまた偶然通りがかった艦長に小野間と同じこと尋ねたのだが、答えも小野間と同じであった。だが艦長はこう付け足してくれた。
「そうか、君は艦魂が見えるのか。だったら彼女に頼んでくれ。どんな攻撃からも乗員を守ってやってくれ、とな。」
その時彼女は大きくうなずいていた。艦長も彼女が見えるかのように目を彼女に向けていた。一応信じることにした俺は、なんとなく自室についてきた彼女とすっかりうちとけ、今日も部屋の中で待っていた彼女とダラダラと話していたのだった。
「撃墜なんてよくやったじゃないの」
「いや。歴史的に見ても政治的に見てもまためんどくさい世論がどうのとうるさいからな。もしかしたら殺人罪とかで裁かれるかも・・・。そしたら艦を離れて・・・うわぁ。いやだな・・・」
「確かにそれはいやね。命令されたから攻撃したのに後から責められるなんて」
「そうじゃないことを祈ろう。そういえばお前ここに来るまでどこで暮らしてたんだ?」
「ん~。第3甲板の下にやけに広い空間があるでしょ?」
「ああ。確かにあるな」
「そこのどこかに私の部屋の入り口があるわ」
「・・・どこだよ?」
「もうっ/// レディ―の部屋をそんな簡単に教えるわけないでしょ。ところであなた夏休みはどうするの?」
「俺の部屋は知ってるくせに・・・。ん? 夏季休業か。何も考えてないからな・・・。親ももういないし、別に会う予定のある人もいないし。このまま艦の中にいるかな」
「へ、へぇ~。じゃあ、退屈しなさそうね」
「あんま他の人がいるところで話しかけるなよ。返答できないから」
なぜかこの娘が見えるのは艦内で俺だけである。他の艦にも見える人はいるのだろうか。
「むー。分かったわよ。その代わり今日アイスおごってよね」
「・・・艦魂なんだから勝手に取ったってバレねぇだろ・・・」
「あんたねぇ。補給科の隊員を困らせたいの?」
「そういえばそうだな。・・・すんませんでした」
それから小一時間ほど彼女と駄弁っていると、中国軍機を撃墜したことで暗くなっていた心がゆっくりと明るくなっていった。
「あ、そろそろ明日の観艦式演習最終確認の時間じゃない?」
「うわ!! しまった、休みすぎた。じゃ、またあとでな」
時間を忘れていた俺はあわてて通路に出ると、後部飛行甲板まで全力で走って行ったのだった。
・・・小野間に睨まれたのは言うまでもない。
Side「大和」CIC PM17:30
「艦長、横須賀群司令部より入電」
「・・・読み上げてくれるか?」
「短いですよ? 発横須賀群司令部、宛観艦式演習中の全艦艇。中国との緊急会談が終了するまで現地点にて演習続行。帰投命令あるまで帰投を禁止する。なお、この命令は首相からの正式命令。 だそうです」
「わかった・・・。君はそろそろ上がりなさい。夕食がまだだろう」
「ありがとうございます。では」
艦長に電文を読みあげていた通信員は、もと来た道を戻ってCICからでていった。
「一体どういう意味なのでしょう。中国の脅威に備えて暗に戦闘待機を命じているのか、それともただ単に邪魔だから・・・?」
「いや。赤城首相はそんな人ではない。純粋に中国軍を警戒しているのだろう。幸い、海自全艦艇が集まっているから負けることはないはずだ」
「それ自分で言うことですか? 艦長」
「ハハハ。それだけ君たちを信用しているということだ。喜びなさい。海上自衛隊が世界に誇る海軍であることくらい分かっているだろう」
「まぁ、そうですね」
「さて。私はそろそろ艦橋に戻るよ。航海科の新米を見てやらなくちゃな」
だがこの時、大和の対水上レーダーでは異様なほどの日本船籍の漁船をとらえていた。
「艦長、戻るまでに少しよろしいですか?」
「なんだ?」
レーダーを監視するレーダー員が艦長にことわりを入れてから報告する。
「我々の艦隊の周囲を航行する漁船に不審な点が・・・」
「中国船籍か?」
「いいえ。日本船籍名のですが・・・」
そこでレーダー員は手元のキーボードを叩いて、ディスプレイに問題の漁船の識別番号と、ある資料を標示させ、照らしあわせた。
「これは・・・!! 全部行方不明の漁船じゃないか!!」
そう。レーダー上に写る漁船は、ここ十数年で急増した行方不明漁船の識別番号だったのだ。
「艦隊全艦に通達!! 周囲の漁船は皆不審船!! 対応急げ!! 総員配置!! 総員対水上戦闘用意!!」
「対水上戦闘用意!!」
艦内にアラームが鳴り響き、非番のものもすぐさま自分の配置につく。艦内がにわかに騒がしくなった。
「主砲、副砲及び高角砲、三式弾装填。トラックナンバ1688から1695に設定。SSM及び魚雷にも目標設定」
「首相官邸及び防衛省に連絡。詳細も逐一報告せよ」
「各兵装システムオールグリーン。三式弾装填よし。ミサイル、魚雷ともに目標設定入力完了。いつでも撃てます!」
「早まるなよ・・・。赤城に連絡。早期警戒機とF-2を上げろ」
「すでに上がった模様です」
「CICから艦橋へ。進路そのまま、最大戦速!!」
『よーそろー!!』
「ぎ、漁船より小型目標分離!! 高速で本艦隊に向かっています!!」
レーダー員から悲鳴のような報告が上がる。
「ミサイルか!?」
「断定はできませんが、対戦車ミサイルではないかと!」
「やむを得ん。1番主砲にて三式弾発射!! ただし目標は対戦車ミサイル」
「了解!! 主砲、撃ちぃ方…始めぇ!!」
「撃ちぃ方始めぇ!!」
砲雷員がコンソールの下に収納してあるトリガーを取り出し、引き金を引く。その瞬間、過去も現在も世界最大の主砲、12式45口径460mm3連装砲が吠え、艦全体に衝撃が走った。就役前に鹿児島沖で試射を済ませてはいたが、やはりこの衝撃は乗員の心に大きく響いていた。
「大和」の3つの主砲の内、一番艦首に近い砲塔から撃ち出された三式弾は、海面をなめるように進むと、あらかじめ設定された位置で爆発した。すると996個の焼夷粒子からなる火花が開き、その中に突っ込んだ対戦車ミサイルを爆発させた。
大和型以外の砲哮兵器では決してできない平面での迎撃兵器である。
「目標撃墜!!」
「敵船に第5艦隊、愛宕が接近し警告した模様」
「対空対水上警戒厳となせ!」
『ソナー室からCICへ。中国原潜と思われる音紋をキャッチ! 深度400、目下監視中です!!』
音紋とは潜水艦ひとつひとつ違うエンジン音である。同じタイプの同じ型の艦が同じ造船所でエンジンを積んでも違う紋になるため、潜水艦の指紋とも呼ばれている。
「艦種はわかるか?」
『音紋データに参照したところ晋級原子力潜水艦に近い音紋です』
晋級とはSLBM発射装置を12基そなえた弾道ミサイル潜水艦で、中国海軍の中では新しい部類に入る艦である。
「こんなとこまで入りこまれていたか・・・。対潜戦闘用意!! 使用兵器は07式投射魚雷」
「07アスロック、目標設定データ、入力完了。前部VLS第4セル、解放します」
「防衛省から入電!!」
「読みあげろ」
「はっ。発防衛大臣石田幸平、宛第1艦隊旗艦「大和」。日本の領域を侵し、艦隊に危害を加えるものに対し、断固とした攻撃の許可を与える。これは首相の意思でもある。目標を設定し次第、攻撃せよ。 です」
「会談は嵐のようだな。・・・07式投射魚雷、攻撃始め!!」
「撃てぇ!!」
水雷員がコンソールのタッチパネルに触れ、07アスロックを発射させた。
ロケットモータに点火して第1VLSから飛び出したアスロックは、超音速で水中に隠れる目標上空まで飛翔し、弾頭を切り離した。切り離された弾頭・・・97式短魚雷はパラシュートによって減速しながら着水し、ウォーターポンプジェットを起動させて目標まで高速で接近する。「大和」のソナー室では急速転舵を行い、デコイを作動させている晋級原潜が感知されていた。だが97式短魚雷は惑わされることなく133mの鯨の横腹にそのからだをぶち当て、深度400mで巨大な圧壊音を響かせた。
『目標に着弾。圧壊音を検知。撃沈しました』
「大和」CICでは静かな歓声が響いた。だがそれも長く続かない。
「領海内に新たな水上目標。距離1万2000。中国海軍の駆逐艦と思われます」
「まったく。この艦隊に駆逐艦1隻で来るとは・・・。こちらも攻撃しにくいではないか」
「愛宕、金剛が無線とスピーカーによる警告を行っていますが、応答はありません」
「駆逐艦より小型目標分離! あ、いえミサイルではなくて対潜ヘリかと思われます」
「対空対水上戦闘用意。手始めにヘリを叩き落とす。CIC指示の目標、高角砲撃ちぃ方始めぇ!!」
「撃ちぃ方始めぇ!!」
「大和」の高角砲は正式名称12式127mm連装速射砲で、射程27km、毎分80発の発射速度を誇る対空砲である。この高角砲が大和型戦艦には片舷3基づつ装備され、その他の対空機銃とともに航空機からの脅威から艦体を守っている。
右舷側の3基が火を噴き、その砲口から初速870m/sで6発の127mm対空砲弾が発射され、220km/hで飛行していた中国の哨戒ヘリ、Z-9Cは6発の砲弾に逃げ場を失い撃墜された。
「全主砲撃ち方用意。目標は中国駆逐艦・・・だが至近弾になるよう調整」
「脅しですか?」
「これで逃げるなら軍艦は要らないよ・・・」
「ですが460mm徹甲弾が一度に9発も迫ったら、駆逐艦もたまったものじゃないでしょう。効果はかなりあると思いますが?」
「そう願おう。これ以上刺激するのも得策とは言えないしな」
「1番から3番主砲、撃ち方用意よし」
「撃ちぃ方始めぇ!!」
「撃ちぃ方始めぇ!!」
艦が僅かに揺れた。「大和」が搭載する全9門の主砲が斉射されたのだ。むしろ僅かに揺れただけで済むのがおかしい。これも「大和」が巨大な戦艦だからこそできることであった。
そして十数秒後、駆逐艦の周りに砲弾が着弾し、それだけで転覆しそうなほどの大きな水柱ができた。その威力と射撃の正確さに驚いたのか、駆逐艦の進行はしばらく止まり、第5艦隊の護衛艦が再度退去の勧告をすると、すごすごとひきあげていった。だが例の漁船群は動く様子がない。「大和」の警戒は未だ解かれずにいるのだった。
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