序章 2010年9月7日 其弐
やっと書き終わりました。
今回は主に中国・・・政治家がらみの文章は書きづらかったのであまりうまくはありません。
っていうか国家主席おかしいです。
覚悟をもってどうぞ。
2010年9月7日 PM11:00 首相官邸
「どういうことだ!?」
此処は日本の東京都千代田区永田町。つまり首相官邸。
「ですから、中国側から海上保安庁が逮捕した漁船の乗組員を解放しろとの抗議があったんです。」
「そうでは無い。なぜ法に則った対処をしてるのに中国に抗議されなきゃならんのだ。」
「それは中国が尖閣諸島を自分の領土だと思っているからですよ。」
「やはり・・・。わかっちゃいたが此処で抗議されてもな。」
「どうします? 日本側の正式な回答で“嫌だ”って返しときますか?」
最近の内閣ではこのような事が起こった時、無視を通してうやむやにしてしまっているが、この時の内閣総理大臣、菅直健人もその中の一人だった。
「全く。海保も余計なことをしたな・・・。対応するこっちの身にもなってくれよ・・・。」
それを聞いて秘書官は驚きを通り越してあきれ果てていた。
密漁者の逮捕が余計な事だって? 巡視船に体当たりまでした奴らだぞ?
「そういうことをするのも総理の仕事です。早急に返事を返さないと政府の無策を疑われますよ。すでにこの件はマスコミに漏れていますし。」
「・・・一応こっちからは“此方の領内でおきた事件のため、此方の裁量で裁かせていただく”と返しておいてもらいたい。」
「分かりました。」
それだけ言うと、秘書官は外務大臣に連絡を取るため、官邸を後にした。
同日 PM11:00 中国国家主席執務室
「此方の文書の内容をそのまま日本に伝えましたがよろしかったでしょうか?」
執務室に入ってきた秘書官が話しかけた相手はこの国のトップである胡錦沌国家主席である。
「ああ、ありがとう。全く日本の沿岸警備隊にも困ったものだ。もともと日本には我々中国に対し領有を主張する権利などないというのに・・・。」
「なぜですか?」
「そりゃ君、日本は中国の属国に過ぎないからだろう? あんな小さな国が我々中国人民に楯突くなんて許せないとは思わないかい?」
それを聞いている秘書官、その実は親日派である。なので主席の言葉を聞いていてあまりいい気はしない。
「国民の中には主席と同じ意見を持つ人もたくさんいるでしょうが、そう思わない人も少なからずいると思いますよ。」
極端な反日思想を持つ主席とは絶対に釣り合わないような人たちがね・・・。
そう言いたい口を強引に抑え込み、秘書官は主席を柔軟にたしなめた。
「そんな国民は中国には必要ないな。戦争時には一番に前線に送ってやるか。」
もちろん冗談なのだろうが、こんな人間が国家主席の座に治まっていてだいじょうぶなのだろうか。・・・・・・・冗談なんだよな?
「主席、冗談ですよね?」
秘書官の頭に冷や汗が浮き出る・・・。
「もちろんそうだが、もしかしたら・・・かもしれんな。」
やばい。自分はこの国から逃げ出さなければならないかもしれない。
秘書官は自分が落とされてしまった不安の渦から逃れようとしたとき仲間から日本からの返事が届いたとの連絡が入った。
内容は・・・“此方の領内でおきた事件のため、此方の裁量で裁かせていただく”・・・だった。
実に簡潔でありながら主席の機嫌を数段階落とすのには十分だったようだ。
「中央軍事委員会を招集しろ。日本に対する抜本的軍事制裁について話し合いたい。」
「は、はい。」
秘書官は涙目である。
「早くしろ。」
秘書官はそう言われて執務室から走り出た。
「・・・主席が中央軍事委員会の招集を命令した。ただちに招集を。」
「・・・了解。・・・日本ですか?」
「ああ。」
仲間の秘書官も苦い顔をすると、招集対象者に連絡を取るため、事務室に行ってしまった。一人残った秘書官、琥詔征も諸手続きを済ませるため、その場を後にした。
そして3時間後・・・
「それでは日本に対し武力侵攻を行うというのですか!?」
「そんなわけないじゃないか。私が言っているのは尖閣諸島に日本を抑圧するために上陸訓練を行いたいということだ。」
「それではあまりにも・・・それにそんな事をしたら日本だってただじゃおかないのではないですか?」
至極もっともな意見ではあったがこれは日本にも非があった。
「いや、そうはならないかもしれないぞ。先月北方領土にロシアのメドベンジェラー大統領が視察した時に同行した80人の兵士に対して全く抗議しなかったじゃないか。それどころかまるで歓迎するようなセリフを言っていたぞ? あの国の総理は。」
そうなのである。8月にロシアの大統領が北方領土を視察に来た際、菅直首相は相手をなるべく刺激しないという方針で、“北方領土は日本の領土”という意見を最大限押さえつけて、完全武装のロシア陸・海軍含む87人の軍関係者とロシア大統領を歓迎してしまい、それに付け込んだロシアはその後も国防相や天然資源・環境省長官に北方領土を視察させ、ますますロシア領としての認識を進めようとしているのだ。
それを聞いた胡錦沌主席は我々も強行策を取ってみないかと委員会を招集したのである。
「しかし現有の装備ではもし、万が一日本の海上自衛隊が攻撃してきた場合、負けることはないまでも勝つことは難しいと思われます。」
「・・・我が国最初の航空母艦が就役するのはいつだったかな?」
「約2年後ですが・・・まさか!!」
「そう。2年後に日本に攻撃を開始することを前提にこの会議に参加してほしい。」
「「・・・・・・・」」
中国の空母開発は1998年に旧ソ連の航空母艦「ヴァリャーグ」を購入したことに始まり、その構造を徹底的に調べたのち、2009年から大連造船所の地下、第112中国軍事秘密施設、要するに地下ドックで建造がはじまり、現在30%まで完成している。
なんとこの建造費用の中には地震が起きた際の日本からの支援金までもが含まれているのだ。恩を仇で返すとはこういうことなのだろうか・・・。
「どうした?」
「いえ、分かりました。ですが具体的な内容に関しては明日以降日を改めてはいかがでしょう?」
驚きつかれた委員たちはとにかく休息を欲していた。
軍事委員とて戦争が好きなわけではないのだ。
「そうだな。では3日後の定例会議の後によろしく頼む。」
「「分かりました。」」
すると席を立とうとする委員を主席が引きとめた。
「君たち。ここで今行った会議は日本に拘束された漁船の乗組員の対策を練るための会議だ。いいね?」
委員たちはその言葉に含まれた意味を悟り顔をひきつらせた。
ぶっちゃけ“此処で話した事をしゃべったら銃殺刑だから、気をつけてちょーだい”と言われたのと同じだったからである。
委員はその状態のまま会議室を後にした。
残された胡錦沌国家主席はノートパソコンの画面に精巧にデザインされた航空母艦〈琥炎〉と今年試験配備が始まったばかりの戦闘機〈殲-20〉の画像をいつまでも見つめていた。
どうでしたか?
次回は主に日本側を書きたいと思います。
ではまた次回。
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