本編 2012年10月19日
更新せずにすみませんでした・・・
でも、もう更新ができない可能性がございます・・・
携帯を解約し、ネット環境も親に管理されるこのパソコンしかないので、受験勉強をしなければならないこの身としては非常にやりにくい状況になってしまったのです。
ま、目を盗んでやれるときはやりますけど。
では注目の回、どうぞ!!
「監視員接近中!!」
「射撃許可!! 撃ちまくれ!!」
各々が持つM4の銃口から火焔が飛び散り、拳銃や短機関銃を持つ中国人を蹴散らしていく。
「偵察ヘリからの情報では後数キロ先に戦車を含む増援が迫っているらしい。名簿に載っていた全被害者は確保した。だから富岡は部隊を率いてもう行け!!」
「了解!! 撤退します!!」
北朝鮮からわざわざ北進して中国国内に潜入した特殊作戦群は速やかに中国吉林省沿岸の収容施設を発見し、首相に報告をしていた。その翌日すぐさま中国領内まで第一護衛艦隊及び第1輸送艦隊が急行し、その支援第1波としてOH-1A改の航空支援、及びCH-47JAによる救出者の輸送支援が行われている。もうしばらくすれば支援第2波として海自のLCACや『ゆら』型輸送艦などを使い、10式戦車や装甲戦闘車を含む一時的な地域的占領も可能な増援が到着するはずだ。ただ今回の任務は拉致被害者の救出のため、作戦が終了すれば占領は放棄されて帰途に付くだろう。護衛艦隊の侵入に関しては、周囲の哨戒艦を潜水艦で引きつけておくことによって可能となっている。
海岸から30mの位置に戦車を含む陸上自衛隊の部隊は、第1輸送艦隊の『大隅』のLCACのピストン輸送によって簡易的な防御陣を構築している。そこまで逃げ切れればあとは仲間がどうにかしてくれる。
「行くぞ美樹!! 掴まってろ!!」
修次は美樹を背負うと閉じ込められていた独房を飛び出し、9mm機関拳銃で弾幕を張りながら出口を目指した。しかし間の悪いことに次の角を曲がれば出口と言うところで正面から来た4名の中国軍人と鉢合わせしてしまう。
「クソッ!!」
「う、撃て!!」
だが怯んだのは中国軍も同じだった。見つかってから引き金を引かれる前に修次は脚を蹴りあげ、軍人から03式自動歩槍を取り落とさせると、弾倉が弾切れになった9mm機関拳銃を放り投げ、レッグホルスターのUSP自動拳銃を引き抜き1発ずつ計4発の9mm弾を正確に脳天に撃ち込んだ。
「こちら特戦群、溝内!! 他の隊員は収容したか!?」
『先程回収した。後は君たちだけだ!! 急いでくれ!』
「了解!」
収容所から砂浜までは約700m。そこまでの道は無いに等しく、攻撃されながらの移動は、困難を極める。長い10分間が始まった。
『OH-1Aより全隊員へ! 敵戦車が砂浜に侵入を開始!!』
『まだS群隊員と被害者が残されている!! 収容まで時間を稼ぐぞ!! 10式戦車隊には前衛を命ずる!! 攻撃開始!!』
「まったく・・・人使い荒いぜ。F1からF8までをロック。こちらで付けたマーカーの指示に従いプロトコル1、2連続射撃で敵戦車を黙らせる。プロトコル2、分かったか?」
『了解した』
「南東より赤外線反応多数確認! 敵歩兵および戦車です!! ありゃ99式だな」
「データは少ないが新型APFSDSさえ使えば撃破できるはずだ。M1A2の正面装甲さえ撃破できるらしいからな。だが発砲にはちと近すぎやしないか?」
「気付かれなければ十分です。射撃準備は万端ですよ」
現在この10式戦車は砂漠迷彩に準じた塗装をされたモジュール装甲を装備している。特に薄暗い今は存分に威力を発揮し、10m先からでも視認が困難なほどの効果が得られている。こういった迷彩をすぐさま取り替えられる点もモジュール装甲の1つの利点である。
「そうか。ならばペイバックタイムだ。目標F1からF4。第1射、連続2射、撃テェ!!」
直後、火薬による推進力を得たAPFSDS弾は10式戦車2両による連続射撃で吸い込まれるように99式戦車に命中し、一気に半数を撃破することに成功した。
『敵戦車2両を撃破、及び2両を中破! 残りはこちらに気づいた模様!』
「射撃続行!! 行進間射撃に移行する!」
「任せろ!!」
操縦士が自信たっぷりに10式戦車を動かし、それに合わせて砲塔は組込まれたセンサーに従い砲身の照準を合わせたまま回転する。
「第3射、撃テェ!!」
砲塔と車体のつなぎ目を狙って放たれた砲弾はまたもや命中し、新たに2両の敵戦車撃破に成功した。だがこちらも無傷ではいられなかった。
『車体側面に被弾!! FCS全停止!!』
プロトコル2の正面装甲に99式戦車の120mm砲弾が直撃し、衝撃で危機がフリーズしたのだ。
「大丈夫か!? 復旧は可能か?」
『只今復旧しました! 被害軽微、攻撃続行します!』
「頼むぞ! 敵歩兵接近! 機銃掃射!!」
「発射!」
砲身と同軸に組込まれた7.62mm機関銃が火を噴き、敵戦車前面に出てきた歩兵をなぎ倒す。敵戦車の装甲に当たった弾丸がはじけて火花を散らした。その中で歩兵が構えた筒状の兵器から誘導弾が飛び出した。
「対戦車ミサイル接近!!」
後部のレーザー検知器が反応し、車内にけたたましい警報が鳴り響く。
「煙幕弾射出!!」
車体後部の架台から2発の煙幕弾が射出され、視界を塞いだ。更に赤外線領域にまでその効果を発揮する煙幕は、ミサイルの誘導装置を麻痺させる。
「停車!! 後進いっぱい!!」
ミサイルの最終手段として残される車輌速度を計算した上での未来位置予測による運頼みの突撃を防ぐため、10式戦車を停止させ、更に敵戦車の照準を狂わせるため全速で後退する。戦車を完全に見失ったミサイルは、前方の地面に激突して果てた。
だが誘導弾のトップアタックを避けたはずの戦車に衝撃がかかった。一斉に周囲のモニターが赤く点灯し、車体の被害が表示される。
「何があった!?」
「敵戦車が乱射した戦車砲が直撃!! 衝撃により射撃管制装置沈黙、復旧不能です!」
「射撃管制をプロトコル2からの物に切り替え!」
いくつかの操作を経て自車の管制から切り替えられたのはC4Iを生かしたデータリンクによる画面上の管制である。
「接続!!」
「目標F7、F8。第4射、撃テェ!!」
「・・・弾着!! 全戦車を撃破!! 歩兵掃討に移行!!」
既に普通科の自衛官が小銃で応戦をしているため、残りは少ない。
撤退してくれればこちらも反撃する必要も無いため、それを望んでいたが、最後までそれはなかった。
「全兵力の無力化に成功。状況を終了する。周囲を警戒しながらLCACへ戸の搭載準備をせよ」
『了解』
遠くから砲撃音が聞こえる。敵戦車のものか、味方なのか。それを確認する術は無い。
「ハァ・・・ハァ・・・」
背中に居る美樹から苦しそうな呼吸音が聞こえる。特殊作戦群と言わず一般の隊員でも普段から40キロ以上の装備に身を固めているのだから、美樹一人くらい担ぎながらの移動など自身にとってはたやすいことだった。
美樹の容体がおかしいのである。額に脂汗を滲ませ、顔色は蒼く震えている。全体的に熱っぽい。
(急いで『大隅』に収容しないと・・・)
『大隅』型輸送艦や『日向』型ヘリ搭載護衛艦、『赤城』型航空機搭載護衛艦には災害派遣などで活用するべく、集中治療室が設置されている。今回は拉致被害者の治療をすることのできるように数人の専門医官が乗り込んでいるはずだ。
「もうすぐだ美樹!! しっかりしろ!!」
「・・・・分かってる・・・わ。早く・・日本でご飯・・を・・・食べたいも・・の」
(クソッ、せっかく助けることができたのに!!)
溝内が彼女が拉致されたことを知ったのは先週のことだった。彼女の両親に一切の接触を禁じられていた彼はほとんど家に帰る事もせずひたすら北朝鮮への潜入任務を遂行し続けていたのだ。
「・・・!!」
後ろから足音が近づいてくる。
この音は自衛隊じゃない・・・。
「後少しだってのに・・・!!」
美樹を抱えたままでは非常に撃ちにくいM4カービンを肩に回し、9mm機関拳銃を左手に持つ。フラッシュライトの光線の数から敵は複数のようだ。
9mm機関拳銃は集弾性が低く弾をばら撒くくらいでしか使えないといわれ、事実現場からの信頼は到底高い物ではないが、実は集弾性は良い物の一つで、銃身を固定すると、50mの距離で40×40(cm)の的に70パーセントの命中率を持っている。ただ銃床が無く銃口の跳ね上がりが抑えにくいため使いにくいのだ。なので強靭な筋肉で反動を抑えられれば命中率は十分に上がる。
ベストから20発入りの箱弾倉をとり出し、空の弾倉と取り替える。
「こちら溝内。敵につけられている。コブラで引きつけてくれ!!」
『・・・・・・』
「おい! 聞こえてるのか!?」
『・・・・・・』
クソ、通信システムが破壊されたか?
ここはなんとしてでも一人で戦わなくてはならないのか・・・
「いたぞ!!」
「包囲しろ!!」
眩しいフラッシュライトを銃身に取り付けた軍人が次々と周りに現れ、銃口を向けられた。後ろに軍人は居ないが銃口を向けられているのに動ける訳が無いだろう。
「動くな!! 女を降ろして武器を捨てろ!! おとなしく従えば命だけは助ける」
俺はどうすればいいか必死に考えながらM4を地面に置いた。
「武器がまだ残っているだろう!! それと女を降ろせと言ったはずだ!!」
「彼女に危害を加えるな。それだけは約束しろ」
「・・・それは分からない。助かるのは君だけだ。所詮彼女はただの救出者。軍人である君にとっては赤の他人だろう」
「それは本気で言っているのか?」
もしそうなら俺を侮辱しているに他ならない。
「そうだ」
「そうか・・・。なら仕方ない」
無理をさせたくは無いがこれしかない。小声で美樹に尋ねる。
「・・・走れるか?」
コクリ。
確かに肯定の意志が見えた。
「なら、仕方ない」
美樹を地面に立たせ、ズボンにUSP自動拳銃をこっそりねじ込んでやると、
「走れッ!!!!」
M4を蹴りあげ9mm機関拳銃と両方を持ち、すぐに引き金を引いた。
「早く逃げろ!!」
辺りにオレンジ色のマズルフラッシュがほとばしり、辺りを照らす。
半球状にしか軍人が展開していなかったおかげで美樹に流れ弾が当たるような事は無かった。弾丸は2人の中国軍人の体を撃ち抜き、3人の脚を撃ち抜いた。だが残る2人は即座に伏せ反撃を開始する。
カチリと音を立てて弾切れになった銃をそのまま担ぎ、左のレッグホルスターに入った9mm拳銃を取り出し逃げる。既に肩や腹部を撃たれ血がドクドクと流れている。
「絶対に・・・帰ってやる」
だが傷を負った人間と傷を負わない健全な人間では足並みは全く違う。すぐに追いつかれて拘束された。
「馬鹿な奴め。すぐに頭を飛ばしてやる」
更に音を立てて十数人の軍人がやってきて逃げ場をなくしてしまった。
「これまでのようだな日本人」
「女だけは逃がせたんだ。俺は良くやったと思うぜ」
「じゃあな」
俺の目の前に立った男が拳銃を抜き、眉間に銃口を当てて引き金を引いた。
パン!
撃たれた・・・
・・・・・・・だけど痛くは無い。耳元で発砲されたはずなのに音も少し離れた所から聞こえた。
ゆっくり目を開けると目の前にいた男が頭から血を流し、倒れるところだった。
横の少し離れた所には銃、俺のUSP自動拳銃を構えた美樹がいて、崩れるように倒れた。ただ撃たれた訳ではなさそうだ。
「こ、この小娘がァ!!」
あっけにとられていた中国軍人が銃を握りなおし、今度こそ2人とも撃たれそうになった。
「美樹!!」
意識が遠ざかりながらも取り上げられた9mm拳銃を奪い返し、周囲の敵に乱射する。弾が切れるとすぐに弾倉を交換し、撃ち続けながら美樹の近くに移動する。
幸い呼吸はしていた。だが額には玉のような汗を浮かべ、苦しそうにうめいている。
俺は必死になって通信機を口元に当て、救助を求めた。しかし壊れているのか返答は一切なく、叙々に視界が白くぼやけてきた。
「俺・・・結局・・・誰も救えないのかよ・・・」
遠くから雷鳴が聞こえる。土を踏みしめ近付く中国軍人を感じる。雷鳴も近づく。
「もう・・・」
『あきらめるな!! 発射!!』
メインローターを轟かせながら突如上空に現れたOH-1A改が機首のM197ガトリング砲を叩き付け、更に両翼からヘルファイア対戦車ミサイルを撃ち、いつの間にかすぐそばに来ていた装甲兵員輸送車を粉々に破壊した。
30秒後、辺りは胴体がバラバラになった死体が散乱し、破壊された車輌が燃える血の海となった。
俺の視界も暗転し、それが最後の記憶だった。
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