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第10話 とある配信と廃ホテルの謎について

 N県S市 ホテルリゾート『マリアンヌ』とライブ配信に関するとあるライターの取材記録


 N県S市にある廃ホテル『マリアンヌ』。曰く付きの心霊スポットとして知られている。

 2025年8月、この廃ホテルにて、6人の高校生がライブ配信を行った。

 その配信内では、次々と彼らが行方不明になった。5時間半ほどの映像で、最後の1人がどうなったのかは不明である。


 その映像には明確に誰かが死ぬ様な場面は無く、あくまでも急に消えるだけ。

 一部何者かに連れ去られたと思われる映像も含まれるが、最後にどうなったのかがやはり分からない。

 彼らは何処かで生きているのか、それとも亡き者となったのか。

 それを確認する術が我々にはない。可哀想だとは思うが仕方がない。


 この『マリアンヌ』には、複数の噂がある。死んだ筈の支配人が徘徊している。

 支配人に見つかると、二度とホテルから出られない。そんな噂が色々と。

 それがこの配信を機に、真実だと言われる様になった。事実として当該の高校生達は、現在も行方不明者として捜索願が出されている。

 配信を観ていた者達が口を揃えて言う。支配人は今もあのホテルに居るのだと。

 あそこには踏み入ってはならないのだと。関わると向こうの世界に囚われる。そんな風に言われている。


 高校生達のライブ配信は、アーカイブが1週間で50万再生を超えた。

 相当な人々の目に触れたと思って良いだろう。しかし内容があまりにショッキングである為か、2週間が経つ前にサイト上から削除された。

 しかしデータを保存していた者達が相当数おり、切り抜きやノーカット版が次々とアップされた。

 消せば増える等とインターネットでは言われているが、まさにその状態が続いた。


 あまりにも話題になり過ぎて、海外のネットユーザーにも知られる事となった。

 騒ぎはどんどん拡大し、手の付けられない大騒ぎになった。

 SNSを中心に拡散され続け、遂にはS市の責任問題に発展。かねてより噂されていた、市も把握しておきながら、『マリアンヌ』を放置しているという話。

 かつて解体工事に関わった業者への週刊誌の取材が公開され、洗いざらい全て世間に晒された。


 S市への糾弾は激しさを増し、行方不明者は市の責任で生まれたのだと世論は白熱。

 当時の市長ではないのだが、現在の市長が謝罪会見を開かざるを得なくなった。

 糾弾は止まらず、N県にもネットの矛先は向く。県の管理不行き届きではないかと、指摘が多数寄せられる。

 県庁の電話は毎日の様に鳴り響き、しまいには県知事も謝罪会見を開いた。


 国も事態を重く受け止め、自衛隊と警察を派遣し『マリアンヌ』の本格的な調査を開始。

 しかし夜になっても、例のライブ配信と同じ様な展開にはならない。

 高校生達のライブ配信から半年が経過したが、同様の結果は出ないまま。

 それならと解体工事に入るなり、再び発生する死傷者を多発する事故が起きる。


 県知事と市長は頭を抱えるしかない。最終的に県知事の意向で、『マリアンヌ』の出入り口を全てコンクリートで塞ぐ処置を行う。

 念には念を入れ、3階の窓まで全て外からコンクリートで塞いだ。

 外側の工事なら事故は起きず、あっさりと『マリアンヌ』は封鎖された。


 これ以上の対処は難しいと、県から国へと報告が行く。丁度その頃に、与党議員の汚職が発覚。

 多額の脱税と裏金の問題であり、世論はそちらへと注目が移る。

 他にも芸能人の不倫や凶悪な殺人事件、様々な話題が世の注目を集めて行く。

 次第に『マリアンヌ』の話題は忘れられて行き、あの日ライブ配信を観たホラー好き意外は、あまり話題にしなくなって行った。


 誰も入れない様に、封鎖された廃ホテル。今も支配人が、ホテル内を徘徊しているのだろうか。

 それはもう、誰にも分からない。ただこれ以上、あのホテルで行方不明者が出ない事を願うばかりだ。



■最終更新日:2026年6月22日 12:22

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