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初めての別視点wぁ~い


<クエス 視点>


私の世話係になっていたかもしれない八神流星が、私の乗っていた馬車から転落して二日が経った。


何故私が奴隷の中から八神を選んだかというと、奴を見た瞬間、私の中で何かが芽生えたからだ。


その感覚の赴くまま、私はコイツを世話係に任命しようと決めた。


あの時、あの場所で八神を見た時、私の中で芽生えたものは何か今でも分からない。


しかし、一つだけ分かることがある。


「アイツの事が心配だ…… 」


この一言だけは、しっかりと私の中で漂い続けている。


コンコン。


私が考えていると、私の部屋のドアからノック音が聞こえる。


どうせ、ゼバスチャンだろう。


「お嬢様、入ります」


入って来たのは、私の予想通り今現役、後引退のセバスチャンだった。


「セバス何か用か?」


私はセバスチャンに視線を合わせることなく、窓から空を眺めていた。


「お嬢様、本日はシリマム家代々から行われて来た、選別日でございます」


八神を除いて、家臣たちが選別してきた六人の奴隷が、私の世話係の試験を受ける日だ。


なんというか私はこの日は鬱だ。


受かった者は私の所で働き、裕福に暮らせるだろう。だが、受からなかった者は、奴隷に戻ってまた売られるだろう、だが中には奴隷ではなく意図的に仕組まれ、私の世話係になる者も居るだろう。


受からなかった奴隷達の末路を考えると、鬱になりそうになる。


「セバス…、私の選んだ八神は、選別に含まれていないのか?」


「いえ、残念ながら八神様は、含まれておりません」


あれから二日、盗賊達との乱戦の中落ちていった八神。


もう、生きている可能性は低い。運が良ければまた奴隷市場に居るだろうと思い、出掛けようとしたら父上に止められた。


どうやら父上は、八神の事が何故か嫌いらしい。


そんな理由で……。と言ったら父上に「盗賊が現れクエスを襲った、つまり我が財産を狙った犯行であることの可能性が高い。さらに賊共から逃げて来たと言うことは近くに潜伏しているかもしれないから駄目だ」と最もらしい事を言われた。


その為、外には出られず、私は選別の日を迎えてしまった。


「仕方ないか……。その選別何時に行うんだ?」


「今日の二十一時でございます」


何故そんな夜中にやるのか、不思議に思ったが、八神の事を考えるとどうでも良くなってきた。


「私も試験を見たいのだが良いか?」


「試験に関しては、主様に伺なければいけないので、私の一存では決められません。すみません、お嬢様」


「セバス、お前が謝ることじゃないだろ。後で私が父上に聞いてみる。勝手に決められるのは何か癪だからな」


そう言うと私は、足を屋敷のただ広い庭に向け歩きだした。


「本日は、何時頃にお帰りになりますか?」


職柄このセバスチャンはよく、私の行動を聞いてくる。


「選別前には帰ってくる」


そう言い残し、私はドアに手を掛け、屋敷の廊下に出た。


「ついでだから、父上に選別に関して聞いてくるか」


私は花壇に行く前に、父上の方に行くことにした。


廊下を歩いていると、いつも通り、メイド達が私に挨拶をしてくる。もう見慣れた光景なので特に何も思わない。


しばらく歩いていると、父上の部屋のドアの目の前に立っていた。



ノックをすると、中から父上が笑顔で迎えた。


「ん?どうしたんだクエス?」


普段は普通なのに、私関係になってくると人が変わるから困った人だ。


「父上に話があって来ました」


「そうか、ここで立ち話もなんだから中で聞く」


私は父の後に続き、ソファに腰掛けた。


「で?クエス、話はなんだ?」


「選別のことでお話があるのですが……」


私がその話を切り出すと、父上の表情が曇り掛かる。


「まだ、あの男の事気にしてるのか?」


父上の声のトーンは下がり、低い声で私に聞いてきた。


「気にしてないと言えば嘘になりますが、私の用は、選別に私も参加したいと、意思を伝えに来たかったからです」


「なるほど……。まぁ、良いか、クエスお前の参加を許可する」


「ありがとうございます!」


そう言うと、私は速攻で父上の部屋から出た。


「もっとゆっくりしていけば良いのにな……」


虚空の中一人呟いた。











今私は、花壇にあるコスモスに水をあげている。


「やはり、封鎖された空間よりも、外に少しでも出て、コスモスの生命力を感じた方が元気が出るな」


私は花が好きだ。コスモスは、花の中でも一番好きで、私の部屋によく飾ってある。


「さて、素振りでもやってるか」


実は私、自衛の為少しでも強くなろうと、家族にも秘密で剣術の練習をしている。剣術の練習と言っても素振りをするだけなので、大して強くもなんとも無い。


一度団長に稽古を付けて貰い怪我をしてしまった時、私の父上が団長を半殺しにしたのを、今でも鮮明に覚えている。



その為か、あまり人には頼れなくなってしまった。


居たとしたら、父上を超える力を持っているか、父上に認めさせるかになる。


私は、一心不乱に木刀で素振りをしていく。


私はいずれ一人でも戦える様になりたかった。


護られてばかりでは、自分が情けなく感じてしまうからだ。


私は生れつき、魔法が使えない。父上は、魔法も剣技も使えていくらか有名だか、その娘が魔法を父上と同じぐらい使えるという保証は、どこにもない。



才能というものは、努力で賄えると思っていた私は、魔法という突発的な才能の持ち主しか得られない力が、あまり好きではない。


腕に力を篭める。


気持ちいい汗が流れ、清々しい気分になる。


ガサ!!


どこからか物音がする。


その物音から出て来たのは、黒染の格好をした者達だった。


纏っているものが普通の人達とは違っていた。

そこにあるのは、私に向けられた殺意のみ。


「何者だ!」


そう私が言うと、頭らしき者が前に出て来た。


「我々は、貴方達を襲った奴らと少し利害関係を結んでいるものです」


どうやらコイツら、私の馬車を襲った盗賊と知り合いらしい。


奴らの纏う殺意に、私は精神を削りながらも強気でいた。


「それで何か用か?用が無いならさっさと帰ってもらいたいのだが」


右手にある木造の剣を、無意識に私は強く握っていた。


「用はありますよ、我々の聞きたいことは、『誰』があの数を倒したのか、気になりまして、その時の当事者に話を伺いたく来ました」


口調は丁寧だが、奥底では腹黒いこと考えそうな奴だと私は思う。


しかし……。


「倒した?あの盗賊もどき、誰かにやられたのか?」


私はてっきり追って来ないものだから、振り切ったと思っていたのだが、違ったか。


今思えばおかしいことだよな。

あそこまで追ってきたのなら逃がすハズないからな。

成る程、誰かが盗賊もどきを撃退してくれたのか、しかし一体誰が?


一瞬、八神のことを思い出したが、すぐにその考えを捨てた。


そんなハズないよな。


「おや?知らないのですか?」


「こっちから、教えてもらいたいぐらいだ」


ジリジリとアイツらが私に近付いてくる。


「残念でした、私の友の弔いが出来るかと思ったのですが……。仕方ありません……」


何かの重圧が、私を襲う。


身体は動かず、ゆいつの武器である、木造の剣は手から滑り落ちてしまった。


口は上手く動かず、喋りたくても喋れなくなってしまった。


「(ちっ!!魔導師だったか)」


しかし、何故魔導師が私の屋敷に入れたのか不思議だ。


対魔導師用の結界が屋敷全体を覆っているはずだ、何故侵入を許した。


「不思議そうにしてますね、でも教えません。貴方はこれから死ぬのですから」


絶対絶命。頭の手には暗器が握られており、それが私の命を奪うであろうことが分かった。


私は声も出せず身体も動かせず、涙が頬を伝った。


「(短い人生だった。意外に死ぬ時って冷静なんだな私……)」


瞳を閉じてふと、八神の笑い顔を思い出した。


「(もう一度ぐらい、逢いたかったな……)」


そして、私は気付いた時には死んでいるのだろう。


しかし、何時までたっても私は死なない。


「(どうしたんだ……)」


瞳を開くとそこには…… 。


「無念とか後悔とかだだ漏れだったぜ、クエスお嬢様」


魔導師達全員が地に付し、そこには笑いながら私の髪を撫でる八神がいた。


「八神!!」


私は八神に抱き着いた。いつもならプライドやら父上のetc……。などでしてなかったのだが、今はそんなことどうでも良くなってきた。


「今更報告だが、俺達を追ってきた盗賊共全員、撃退しておいたぜ」


アイツらの言っていた人物って、八神だったのか……。


「お帰り八神!!」


「ただいま?」


何故疑問形になる。


「色々、聞かせて貰うからな」


「了解」


八神はめんどくさそうに頭を掻いた。


それよりもなんだろう、この温かい気持ちは……。


私は八神の手を取り、私の部屋に向かって歩いて行った。



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