☆戦闘開始!!相手は魔導師!!
時間をかければなんとやら……。
現在俺は、クエムお嬢様のお屋敷に向かっている最中であり、奴隷として立場のせいか肩身が狭い思いをしている。
あれ?世話係は?とクエスお嬢様に聞いたところ、お屋敷で試験か何かをやって合格すれば、めでたく奴隷から世話係に位が上がるらしい。
俺、読み書きとか出来ないぞ。
だって、まだ来て日が浅いんだぜ。無理だって。
クエスお嬢様に、試験の内容を聞き出そうと話し掛けたら、周りにいる人達に睨まれた。
しかし、めげずクエスお嬢様に話し掛けた。
「なぁ、クエスお嬢様」
「ん?なんだ八神」
「試験って具体的になにやるんだ?」
クエスは考えるそぶりをして、顎を手に乗せた。
「そこら辺は、私の管轄外だからなんとも言えないが、父上が試験官をだということは分かるぞ」
「クエスお嬢様の親父って、今絶賛気絶中の野郎だよな?」
俺は隣で、ピクピク痙攣して気絶している人物を指した。
「ああ、そうだ。こんなに今は情けないが、本気だと強いんだぞ」
本当かよ……。
俺はその親父の方を見て溜息をついた。
「娘の手刀一発で、やられる奴が強いとは思わないのだが」
「父上は私に甘いからな」
ええ、そうですね。良く聞こえてくるよアンタの父上の喘ぎ声が!
ここまでくると、親子愛じゃないだろと思うんだが。そこんとこどうだろうな。
「私が父上から離れれば、自害しかけないからな」
クエスは、どこか慈悲深い視線を父親へ送った。
ドカーン!!
外の方から、何かが爆発したような音がした。
「敵襲!敵襲!盗賊らしき者達がこちらに向かって魔法を撃ってきています!」
さらに轟音。馬車は揺れ、クエスが態勢を崩した。
「畜生!魔導師を連れて来てなかったからこんなことになったんだ!」
乱戦の中一人の男が吐き捨てるかのようにして言った。
「そこの馬車止まれ!!」
外から盗賊達が、こちらに呼びかけているようだ。
しかし、こちらの馬車は止まらず、更に馬車の速度を上げた。
しかし、さっかの衝撃のせいか思うように速度が上がらない。
さらに盗賊達は、俺達の馬車に当たらないように牽制しながら魔法を撃ってくる。
「父上起きてください!」
クエスは父親の身体を揺さ振るが、一向に起きる気配が無い。
「(はぁ……。どうしたもんか……)」
俺はそんな襲われている中、冷静だ。
「オイ!奴隷、馬車から降りろ!」
クエスお嬢様の護衛をしているであろう人物に蹴り飛ばされ、俺は馬車から転げ落ち。
「八神!」
護衛の人物に蹴り飛ばされたことに気がついたのか、クエスお嬢様が俺の名を呼んだ。
「クエスお嬢様、ちょっくら賊をのめしてきます」
俺はどこか近所に行く様な気持ちで、馬車から落ちた。
「よっと!」
態勢を無理に変え、着地に無事成功した。
「さてと……」
真っ正面には、クエスお嬢様を追いかけて来た盗賊共の馬車がある。
「しかし、『紫電』『雷電』も無しの戦闘なんて初めてだな」
正面の馬車からは、魔導師達がこちらに向けて魔法を撃った。
「残念」
その魔法は、俺に当たることもなく霧散した。
その光景に驚いたのか、魔導師達の攻撃は、更に激しくなってきた。
しかし、その全ては俺の目の前で霧散しダメージらしきダメージも与えられなかった。
「刀無しってことは、純粋な体術か、魔術、どっちかだな」
別に、刀達(『紫電』、『雷電』)を呼び出すことも出来るが、神経を繋げるのめんどくさい。だからって体術じゃなぁ~、という訳で、魔術で倒す事にした。
「敵見必殺!サーチ&デストロイ!」
俺の出来る魔術の特製は『光』と『雷』。片手に雷を纏わせて後は飛ばす技、通称実に安直だと俺は思う。
閃光。雷を纏ったなにかが、閃光の如く敵に向かって進んでいく。そして衝突。この間に行われたは一瞬、まさに閃光。
衝突した盗賊達の馬車は、俺の《ライトニング・シュート》によって燃え尽きてしまった。
「あぁ、あ~。殺っちまったよ」
元馬車だった物を見て思った。
「絶対生きてないよな……」
念の為、燃えカスになってしまった馬車に近付いた。
「こりゃひどい」
馬車の材料になっていた金属を見た。完全に溶けていた。
「ご愁傷様。さて……」
気配を探ってみると、クエスお嬢様は上手く逃げられたようだ。
更に探ると、盗賊達の馬車が、こちらに近づいて来ていることが分かる。
「まだ在たんかよ。……めんど……」
クエスお嬢様の馬車は、速度が落ちてるし、このままではいずれ追いつかれるよな……。
「はぁ……」
思わず溜息が出てしまった。
「数三十か……」
盗賊としては、数が多いのか少ないのか微妙な数字だ。
「メガトン級が居れば別たがな」
数より質じゃないと俺には勝てないし、対多数は得意なんだよな俺。
「まぁどうでも良いや……。貴様ら断罪無償で処す」
パチン!
指を鳴らす。宙には魔力で出来た雷の塊が浮いていた。
「その輝き、一点の曇りも無しに……」
雷の塊からは超高流電圧の光が放出され、盗賊達の方へ向かって行った。
刹那、轟音。
光が向かった先から轟音が鳴り響き、生暖かい風が頬を過ぎる。
「数は零。殲滅完了ってね」
さて、盗賊達を仕留めたことだし、クエスお嬢様の馬車の後を着けて、屋敷に行きますか。
そうと決まれば、クエスお嬢様の気配を探り、辿って行くことにした。
「と、その前に……。『紫電』と『雷電』を呼び戻しとくか」
ライン形成、『紫電』のラインと同化。
ライン形成、『雷電』のラインと同化。
武器は本来あるべき所有者に渡される。
「来い!『紫電』、『雷電』!」
俺は愛武器を呼び、本来在るべき場所に収まった。
「お帰りな『紫電』『雷電』」
『紫電』を右腰に挿し、『雷電』を左腰に挿した。
「ごめんな『雷電』、この頃使ってやれなくって」
流星の使う刀『紫電』『雷電』は、昔から使う愛刀であり、これまで一緒に苦楽を共にしてきた相棒である。
しかし、武器は使われてこそ意味があり、ただの飾りなんて冒涜でしかない。長年刀を握ってきた流星には、それが感覚的に解っていた。
「だって、お前を使える相手、居ないんだもん」
流星の流派の戦型は、基本両手持ちによる『紫電』の剣術。
そして、流派でも亜種に入る『紫電』『雷電』による二刀流。
双方を使い分けている流星は異常だった。
本来、神を護る為の流派だったのにも関わらず、流星は二刀流を用いて本来あるべき『北星橘概念奥義』とは違う型を習得した。
何かを護る為の『北星橘概念奥義』ではなく、殺す事に躊躇しなくなる。つまり、暗殺術亜種。こう流星は呼んでいる。
二刀流になると本気の殺し合いになる。その為、本気で戦える相手が現れるまで、二刀流は使わない。
そのせいか、必然的に『雷電』の使用頻度が減ってしまうのだ。
「さて、行きますか」
俺はそう言うとクエスお嬢様の気配を辿り、歩きだした。
「家来は主の為にってね」
言いたいことだけ言ってみた。
主人公はなんとなく。~お嬢様と呼んでいるだけであり、あまり忠誠を誓っていなかったりしています。