第二話 蛍火の華
「母さん!あの娘とんでもない呪いに!」
母親が起きている事を確認して部屋に押し入る。
「…やっと来ましたか」
母『瑞穂』はまるでそのことを察知していたかのように座っていた。
しかも今頃になって気付いた凛に少し溜息をつきながら、
「母さん…」
瑞穂は大学生の息子がいるとは思えないほど若い容姿をしている。
しかし『幼い』ではなく妖艶なイメージに近い。
元来退魔を生業とする者は体の代謝活性が亢進し実年齢よりも若く見られることが多い。
現に凛も童顔なため後輩から先輩扱いされないことが多いのだ。
「その話をするのはここでは不適切です。『残月の間』に来て下さい」
母親が息子に話す…というより客人をもてなすという感じで瑞穂は席を立つ。
スッ、
ふすまの奥に姿を消し、残り香が空間を支配する。
そして、
「な、なんだ…」
凛だけが沈痛な面持ちのままその場に動けないでいた。
『残月の間』
「それでは、どこからお話した方がいいですか?」
「…どこからっていわれても」
「貴方は、彼女のかかっている呪術に触れましたか?」
『まさかぁ…』といった感じで凛が首を振る。そしてその答えに瑞穂も安堵の表情を浮かべた。
「僕も透影家の次代当主、そんな軽はずみなことはしないよ」
「そうですよね。ごめんなさい」
瑞穂が軽く謝罪する。
呪いと一口にいっても効果はさまざまある。
1番多いのは呪術にかかった人間を不幸に陥れるというものだが中には親類縁者を巻きこむ物や、病気のように感染するのもまで存在する。
そのため呪いが発覚した場合、かかっている者のはどこか山奥に篭り即身仏となる。
そうすることによって自分の大切な人を命と引き換えに守るのだ。
そして呪いの感染は無闇に呪いと接触することによって起こる。
「彼女の呪いは彼女自身が被ったものではないの。望月の、よしなりさんが受けた呪い『数え年十六となったとき、陽炎の如き乙女の命に終止符が打たれる』貴方ならこの言葉の意味、解りますよね?」
「ああ、痛いくらいに」
握っていたこぶしに力が入る。
つまり、沙夜花はあと数ヶ月しか生きられない。そんな呪いということだった。
「彼女の誕生日は二月。つまりもう半年ほどしか生きられないということです」
「…」
あまりの過酷な運命に凛が絶句する。
「凛、貴方はこの彼女の運命に付き従うことが出来ますか?」
「そんなん出来るわけない!運命なんて言葉僕は信じん!」
母親の前ということを忘れ声を荒立てる。しかし瑞穂はそれにうろたえる事無く凛の手を取り、
「…それは、貴方が沙夜花さんのことを好きだと判断していいのですか?」
「…!」
いきなりそう聞かれ言葉に詰まる。
「そ、それは…その…」
「好きでもない人にそこまで肩入れする必要はありますか?ましてやそのような強力な呪いをかけられた人物に」
「…」
真剣な面持ちで凛を問い詰める瑞穂。
しかし、
「ごめんなさい。少し意地悪すぎましたね」
謝罪してお茶を啜る。
「…分からない」
考えた結果がそれだった。
「急な話しだしまだお互いの事を知らなすぎると思う。だから…」
はぁ・・・
凛の話を聞き、瑞穂は大きく溜息をついた。
「貴方も今の御時世に珍しい方ですね…」
「…はい?」
凛が素っ頓狂な声を上げる。
「人を好きになるのは時間ではありませんよ。会った時に相手をどう思うかです。好きになってからでも相手のことを知る事は出来ますし、むしろその方が新しい発見があるはずです。
そんなことを言っていたら一生結婚なんて出来ませんよ」
「…」
息子の不甲斐無さをここまで見抜く母親も母親だが、完全に当たっている息子も息子である。
「と、とにかく。僕もあのこの呪いが解ける方法を探してみる。あんまり時間ないけど…」
「もうすぐ夏休みでしょ?時間はありますよ」
「…」
涼しい顔で瑞穂がそう告げた。
ガッ
意味もなくギアを弄びながら車を走らせる。
『…あの娘は、知ってるのか?この事』
その問に瑞穂は首を振り、
『誰が好き好んで自分の娘に『お前は十六歳までしか生きられない』なんて言うんですか。貴方との許嫁も彼女が言い出した事です。それを拒む権利は誰にもないでしょう?』
『…僕の意思はどうなるん?』
その言葉にあっけらかんと
『貴方の性格はわかっています。たとえ誰であってもこの事を無下に断わらない事はわたしがよく知っていますから』
『…』
少し後に瑞穂が和服の裾を整え、
『とりあえず。絶対に彼女の呪術に触れない事。感染能力があるかどうかは判りませんが良い方に転ばない事は確かです。ですから…』
「だからあの娘にはなにも言うな…か」
確かに彼女に事実を告げるのはあまりにも酷すぎる。未来を夢見る少女にそんな現実を告げる権利など誰にもないはずだ。
しかし
「だからって黙って解決する問題だったら誰も苦労せん」
ぐっ、
思わずアクセルに力が入る。自分の制御できない感情がただ腹立たしかったが凛にはそれぐらいしか出来る事はなかった。
「クソ!助けてやる!助けてやる絶対に!」
今ここで『彼女が好きなのか?』と聞かれるとYESと答えるかもしれない。
しかし思いはそれだけではない。
家系柄死には否応無しに直面する。悪鬼を祓うことは魂を浄化するということ、
それはつまり『魂の消滅』を意味する。
悪鬼とはいえそれを行ったとは自分の存在意義に悩むことも多い。
それと共に凛に目覚めた思い。
それは
『理不尽な人の死』
それだけは絶対に避けたかった。
だから
「それだけは…嫌だ!」
そう呟くと家路を急いだ。
ピピピ、ピピピ…
「ん…朝か?っうわ!」
ガン!
大きく伸びをした瞬間バランスを崩してソファーから転げ落ちる。
「イッタ〜…なんでソファーで寝とんや?」
そう思って記憶を辿ってみる。
「確か…」
しかしすぐにはわけが分からなかった。
「あっ、おはようございます凛さん」
「…」
気がつくとそこには…
「…あんた?だれ」
ゆめうつつを完全にさまよっている凛にはちょっと酷なことだった。
「ごめん!ごめんって!な、さっきは完全に寝惚けとっただけで…」
「知りません!いくらわたしが昨日いきなり押しかけてきたとはいえ、あんな酷いこと言うなんて…」
「うっ…いや、ほんとに単なる事故なんだって…い、いやそんな拗ねんといて…」
『…あんた?だれ』
と言って一呼吸置かないうちに完全に意識が覚醒した。しかしショックのあまりお盆を取り落とす彼女の目はもう涙で溢れていた。
そして、この結果である。
「酷いです…凛さん」
「あああ…」
生まれてこのかた女性の涙に触れる機会などほとんどなかったため(妹はいるが歳が結構離れているため喧嘩したことなどない)こんな時ふさわしい言葉など何も出てこなかった。
「そう!今日なんかプレゼントする!沙夜花ちゃんがここに来た記念に!・・・どう?」
友達から聞いたプレゼント作戦のことを思い出してそれに切りかえる。
「…ほんとですか!」
一気に顔がほころぶ沙夜花。どうやら功を奏したらしい。
「じゃあわたしたちの新婚記念日ですね!」
「いや…そこまでは・・・」
思わずそうつっこむがあまりうれしそうにするので小声になってしまう。
「な、何がいいかなぁ…」
気を取りなおしてプレゼントに話題を移す。
しかし、
「えっ!凛さんが選んでいただいた物でしたらなんでも嬉しいです!」
「そ、そうか?…」
『一番嫌な答えが来た』
凛は心の中でそう思った。
女の子の涙に対する対処法を知らない=ほとんど女の子と付き合ったことがない、である。
つまり『プレゼントはなんでもいい』といわれた場合はっきりいって何を買ったらいいのか皆目見当もつかないのだ。
「わ、わかった…考えとく」
「はい♪楽しみにしてますね」
「はぁ…」
「どしたん凛?朝から溜息ばっかで」
ニ限目が終り食堂に向かう者やその場で弁当を広げる者がいる中、凛は今朝のことで頭を悩ませていた。
「ああ、雄介か」
「ああじゃなくてな…いつもの自作弁当はどうした?」
「ん?今日は忘れてきた」
「珍しいなぁ…あれで食費削ってるお前が…」
「いや…ちょっとな」
今朝のことを思いだしげんなりとする。
あれから時間がない事が発覚し朝食もほとんど取らずに家を出てきたのだ。もちろん朝ご飯を作った張本人である沙夜花は少々不満気味であったが、
「じゃあ購買に行くぞ。食堂はもう行き遅れたからな」
「おう」
ピタ、
とりあえず席を立って講義室を出ようとしたとき、なぜか嫌な予感がした。
「あっ!凛さん」
「なにぃ!」
セーラー服に身を包んだ小柄な少女が凛に駆け寄る。
もちろん沙夜花なのだが、
「はい、お弁当をお渡しするの忘れてました」
テヘッと舌をだす彼女に完全に硬直しながらなんとか弁当箱を受け取る。
「ちゃんとお母様に聞いて凛さんがキライな物は入れてませんから安心して食べて下さいね」
「は、はぁ…」
「あっ、すみません。もう学校に戻らないといけないので失礼します」
ペコッと頭を下げて何事もなかったかのように彼女は講義室を後にした。
「…凛」
「…なんだ?」
「なんだじゃね!あの娘は誰だ!」
「うぐ!お、落ちつけ!」
「これが落ちついておられるか!」
問答無用で首を締め上げる雄介と必死に抵抗する凛。
結局ほかのメンバーが止めには入るまでそれは収まらなかった。
「なるほど、その許嫁の女の子なわけだ」
「ああ、しかしリメディー学園だったとは…」
「まあな。けどそれならここにあっさり入って来たのも納得いく」
コクン
沙夜花は聖リメディー学園というところに通っている。そこはリメディー(治癒)の名が示すように医療を中心とした教育を行っていて日本の現代医療の中心を担っている。
そして凛の通う大学も医療系である。
つまりその最たる学校の生徒であれば実質上このような学校には顔パス(制服パス)で入れてしまうのだ。
しかもリメディーは凛の通っている大学から自転車ですぐのところにあるのでさらにたちが悪い。
「あの制服は高等部の看護科か…」
「だろうな。妹がいるから初等部と中等部の制服は腐るほどみてるし」
中学生扱いした事は伏せて説明する。
凛は三人の妹がおり、それぞれ初等部二人、中等部一人で同じくリメディー学園に通っている。歳が離れているので結構仲はいい。
「しかしそうなると妹も五月蝿いんじゃないのか?結構お前慕ってるんだろ?」
「うっ、考えもしなかったな…ま、まぁしばらくは大丈夫だろう」
午後、微生物学実習
スッ
手に持った針金状の器具(白金耳)をガスバーナーにかざし赤くなるまで焼く。
からからから…
キャップを外し試験管の中で軽く振って冷やした後、斜面状になっている培地から少し菌を採って、
カシャ
試験管を置きシャーレを開けてそちらの培地菌を移す。
カシャ、スー
塗った培地を横にスライドさせ同じ手順でさらに新しいシャーレに塗沫する。
「相変わらず手際がいいな」
後ろから雄介が声を掛ける。
「お前の手際が悪すぎるだけ」
手に握っている白金耳から一切目を外さずに答える。
「…うっさい!」
そう言い捨てて雄介が塗ったシャーレを孵卵器まで運ぶ。
ふと、
「…凛!ちょっと来い!」
「おい!無茶言うな!」
白金耳をガスバーナーで熱して菌を殺しながら答える。
「い、いや、やっぱ来んほうがええかも…」
カラン…
その言葉を聞いた瞬間白金耳が手から滑り落ちた。
「ま、まさか!」
「おい!凛!」
「…あ」
まだ菌がついているであろうそれが机の上に転がった。
「透影くん、健康とはいえ今回は病原性のある菌を使ってるから気をつけてね」
「はい…すみません」
机の上に消毒液を噴霧して助手の先生が去っていく。
こうなるとしばらく机は使えない。まぁ作業が全て終っていたのが不幸中の幸いだった。
「しかし…」
凛はふ卵器の陰から窓の外を見る。
格子状の網の向こうに小柄な少女が見える。それはもちろん…
「まだ一時間以上あるしな…」
時計の針は三時を少し回ったところにあった。最低でも四時十分までは実習があり、しかも他の実習とは違い大きくオーバーすることが多いのがこの実習の特徴である。下手をすれば七
時すぎまで伸びることも珍しくはない。
そんな時間まで女の子を待たすというのはあまりにも危険すぎる。
「ひとっ走り行ってくれば?まだみんな終ってないし」
同じ班の女の子がクスクスと笑ながらそう言ってくれる。
しかし実習中に席を外すというのはいささか無責任すぎるのではないかと考える。
すると、
「あの女の子、凛くんの知り合い?」
「ええ、まぁ」
先ほど消毒液を噴霧してくれた先生が傍らに立つ。
「二時半ぐらいから来てたわよ」
「マジで…」
その言葉に先生であることを忘れて思わず唸る。
「何かあったの?リメディーの娘が来るなんて滅多にないわよ」
「実は…」
このままでは埒があかんと感じ、かいつまんで説明しようとした瞬間、
「あの娘、コイツの許嫁なんですよ」
「おい!」
思いっきり核心だけをあっけらかーんと言い放つ雄介。
『えー!』
しかも驚いたのは助手の先生だけではなく回りにいた全員が声を上げ窓際に貼りつくかたちになる。
「馬鹿雄介!大声で言うやつがあるか!」
「気にすんな、いずればれることやし」
雄介は悪ぶれる様子など微塵も見せず大笑で再び窓の外に目をやる。
「ショック…あんな可愛い子だったら太刀打ちできんやん…」
「凛くん結構狙ってたのに…」
「童顔やのにやることやってるね…意外意外」
どこからともなく聞こえる男女の風評に頬をピクつかせながらそれでも何とか平静を装う。
「すみません、帰るように言ってきます」
ひとこと断わって部屋を出ようとすると、
「でももうほとんどの人が作業終ってるから進めないと。わたしがことづけとくわ」
そう止められて辺りを見渡す。
確かにほとんどの生徒は作業を終え窓際に集まっている。
「それに次は手技の説明だからわたしは時間あるし。任せといて」
凛にそれだけ告げると集まっていた生徒を着席させていく。凛も不承不承に席に着くため窓際を離れ、
「沙夜花ちゃん…」
誰にも気付かれないように小さく呟いて席に着いた。
午後四時五十分
「約一時間オーバー…まぁいい方か」
「微生物の実習としては上出来やな」
白衣をロッカーに入れ帰る準備を急ぐ。
「はやいとこ帰らんといかんもんなぁ。凛は可愛いお嫁さんがいるから」
「たのむからやめてくれ…」
悲痛な叫びで友達の肩を掴む。
「いいじゃん。減るもんでもないし」
「寿命が減ってる気がする」
しかしその言葉も誠也には馬耳東風。変な妄想まで始め…
「何をいっとる!お前が帰れば『ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?』なんて…この変態が!俺はお前をそんな風に育てた覚えはないぞ!」
「知るか!勝手に妄想始めてあまつさえそのまま怒り始めるな!第一お前に育ててもらった覚えはない!」
「まぁ冗談はさておいて…」
「ホントか?目が血走っとたぞ」
急に冷静になる誠也にジト目でツッコミをいれる。
「気にすんな。とにかく早いとこ帰ってやれや。浮気してないか心配しとるかもしれんよ?」
「アホか…」
「しかし早目に帰らなあかんのは事実やな…」
玄関で靴を整えながら呟くと、
「凛さん。お疲れ様でした」
「…へ?」
背後から声を掛けられビックリして振り向く。
もちろんただ呼ばれただけだったらここまで驚くこともなかっただろう。
しかし凛はその声が明かについ最近脳が覚えた声であることを知っていた。
「さ、沙夜花ちゃん?」
首をすくめ恐る恐る振り帰る。
実際できれば自分の聞き間違い、または幻聴であることを期待していた。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
「はい♪」
嬉しそうに凛に駆け寄ると左手に絡みつく。
「いや…あの…帰ったんでないん?」
「えっ、校庭で凛さんを待っていましたら助手の方が来られて、『実習が終るの遅いから待つんだったら…』ということで助手室の方で待たせてもらいました」
にこやかに言う沙夜花を尻目に凛は目眩を憶えた。
確かに助手の先生は『任せといて』といった。では何を任せるのか?
ここで出た答えはひとつである。
『待ってもらう場所は確保するから任せといて』
である。
日本語とは難しいものだと凛は再認識した。
「助手の先生に感謝しないといけませんね」
無邪気にそういう沙夜花に『まぁいいか』などと思ったりする。
しかし、そうは問屋がおろさなかった。
「へぇ…この子が凛の許嫁。やっぱ遠くから見るより近くで見た方が可愛いじゃん」
「そうだな。でも凛には勿体無いぞこれは」
口々に上がる友達の声にふと我に帰る。
凛たちがいるのは靴箱がある玄関。しかも終業時間は過ぎているため先輩後輩同年代など学生でごった返している。
そのうえ沙夜花はリメディーの制服を着ているのだ目立たない方がおかしい。
よって気付いた時には人垣ができていた。
「はは、ははは…」
「ヤバかった…」
「そうですね」
冷汗をかいた凛と、言葉とは裏腹に顔色ひとつ変わっていない沙夜花。
なんとかあの場をやり過ごし沙夜花を連れて車を止めている駐車場に走ってきたところだ。
「な、なんで学校終るん待ってたの?」
聞きたいことは数多くあったがまず質問はそこから入る。
「えっ、お迎えに来てはダメでしたか?」
凛の言葉に今朝の如くジワッと瞳に涙が浮かぶ。
「あっ、いや話によると二時半くらいからずっと待ってたってきいたから・・・二時半っていったらまだ学校も終ってない時間のはずやし?」
危機感を感じた凛が咄嗟に話の支点を切り替える。
「いえ、今日は終業式でしたのでお昼までです。ただ部活の集まりがありましたのでお昼はお弁当を渡すだけになってしまいましたが」
「だ、だけ?」
沙夜花が『だけ』のところにやけに力を込めていたので凛の脳裏に不安がよぎった。
『今日は学校があったから渡すだけ?だったら学校がない明日からは?』
妄想シーン
『はい凛さんあ〜んして下さい』
『い、いや…人前やし…』
『嫌ですか?どうしても嫌ですか?』
涙を浮かべ訴える沙夜花。四方八方から飛んでくる友人の視線(殺意も含む)
『あ、あ〜ん』
パク
『はいよくできました〜、美味しかったですか?』
『う、うん』
食べたら食べたでさらに高まる視線(殺意三割増)
『じゃあ次はタコさんウインナーにしましょうね』
妄想終了
『死ねる!間違いなく今度の病理解剖は僕になる!』
勝手に妄想し、爆走し、さらに自分を最悪の場面まで持っていく男。ある意味天才といえよう。
「…?」
もちろん沙夜花はそこまで凛が暴走しているとはつゆ知らず小首を傾げるだけだ。
「…凛さん!」
「…あっごめん!」
一向に帰ってこない凛に痺れを切らせて声を上げる。
「まぁ帰ろっか」
「はい♪」
一抹の不安を抱えながら凛が車のロックを外す。
そして、
『明日はちゃんとこの娘から弁当受けとって学校に来よう』
心にそう誓ったのであった。
とりあえず第二話
文字数統一してなくてサーセンw