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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【89】

「サツキ様がたくさんの魔道具を提示してくださったから、侯爵家で制作し始めたとお聞きしました。おかげでわたくしもそこに携わることができ、とても充実した日々を過ごしております。サツキ様には感謝のしようもございません」


 私の両手を包み込むように捕まえて、熱っぽくお礼を言われている。

 最初の知的な印象がだいぶ薄れて、どことなく好きなものについて語りまくるオタクを思わせる雰囲気になっている。

 コンスタンツェさんは魔道具オタクってことなのかなぁ?


 私が手を握られたまま微妙に引いているのを、とても面白そうに眺めているベルンハルトさん。

 ヴォルフィはお兄さんに遠慮しているようで、私とベルンハルトさんを交互に見ながら困った顔をしている。

 ベルンハルトさん、そろそろなんとかしてくれませんか。


「ははっ。コンスタンツェ、サツキが困っているよ。サツキは君の事情を知らないから、まずそこから教えてあげないと」

「あっ、そうでしたね。失礼しました」


 クスクス笑っているベルンハルトさんと、恥ずかしそうに赤くなっているコンスタンツェさん。このふたりも仲が良さそうだ。


「わたくしは子爵家の長女で、弟がひとりおります。ですので、爵位は弟が継ぎます。それ自体は納得していることなのですが、わたくしは学院で領地経営や商業について学んでおりましたので、それが生かせないことは残念に思っておりました」


「コンスタンツェのポラールシュテルン家は商売が盛んなんだ。南北の公爵領を結ぶ街道の、ちょうど中間地点にあるからね。他領や、場合によっては他国からも仕入れに多くの商人が訪れるんだ。あと、学院っていうのは貴族向けの学院が国内にいくつかあって、主に下位貴族の子どもが通って知識や人脈を得てる場所だよ」


 ベルンハルトさんがちょうど足りない部分を補足してくれるのでわかりやすい。


「ベルンハルト様をお支えするのに役立てばいいとは思っておりましたが、こうも早くその機会が訪れるとは思っておらず、まだ夢見心地です」

「喜んでいただけたなら私も嬉しいですが、そんなに気にしないでください」


「いや、そんなことはないよ。コンスタンツェからは言いにくい話だから僕が代わりに言うけど、魔道具の製作がなかったらコンスタンツェの能力を使う機会はない可能性の方が高かった。それをコンスタンツェも分かってるからこその、お礼だよ」

「はい……?」


「僕に求められているのは兄上の補佐であり、()()()があった際の兄上のスペアであることだ。補佐をさらに補佐する人間が必要かっていうのは微妙なところだから、コンスタンツェの役割は兄上の妻の補佐として社交をこなすことになってくるわけだ。それはまあ、コンスタンツェのやりたいこととは全然違うからね。仕方がないこととはいえ、残念に思う気持ちがあるのは当然の話だよね。学院でも主席だったんだから」

「ああ、なるほど。理解しました」


 貴族の女性は働くことをよしとしない。それは元の世界の歴史書でも読んだことがあるし、この世界でもそうなのだろう。


 領主の妻になれば領地経営に携われる可能性も出てくるだろうけど、ベルンハルトさんがどこかの領主になる可能性は低い。少なくともアルブレヒトさんが結婚して、その子どもがある程度育つまではお兄さんのそばに留め置かれるだろう。

 そうなると、コンスタンツェさんが望むような仕事をすることはとても難しい。


「魔道具製作の責任者は一応僕のままだけど、実務はほとんどコンスタンツェにやってもらうつもりなんだ。その方がやりやすいだろうし、僕は他の仕事もすることになるだろうから」

「サツキ様とはこれからご一緒することも多くなると思いますので、よろしくお願いしますね」

「こちらこそ別の世界から来た平民なので、コンスタンツェ様には教えていただくことも多々あると思います。よろしくお願いします」


 確か私がマナーなんかを習うのはコンスタンツェさんからになるはずだし、いい関係が築けそうでよかった。


「ねえヴォルフ、早く結婚したいよね」

「はい、すぐにでも」


 アルブレヒトさんの唐突な言葉に食い気味で同意するヴォルフィ。

 なんでいきなり?


「知っておいた方がいいと思うからこっそり君たちには教えるけど、兄上と婚約者の仲はそんなによくないよ」

「そうなんですか? 俺は遠目から1度見ただけなので、どんな方かもよく知りませんが」


「ものすごく年下っていうのは前にヴォルフとサツキに話したよね? 数字の上の年齢で兄上より年下ってだけじゃなくて内面が……要するに精神年齢が幼いように見えるんだよね」

「それはベルンハルト様やアルブレヒト様と年齢が離れているだけで、その方の年齢としては年相応なのではないんですか?」


 確か15歳ぐらいだったはず。

 でもベルンハルトさんは私の言葉に頭を振る。


「言葉で説明するのには限界があるけど、僕は違うと思う。元々の性質なのか育て方のせいなのかはわからないけど、年齢よりも幼い子どものように見える。あれでは侯爵夫人としての()()()()()()も果たせるかどうか不安だね」

「それは、婚約を継続していいものなのでしょうか?」


 コンスタンツェさんの疑問は尤もだ。私もそう思う。


「明確な瑕疵がないから現状では難しいね。父上は兄上の婚姻を急ぐために相手の家に打診してるけど、返事ははかばかしくないみたいだよ。もう少し待ってくれって言われてるらしいから」

「どうしてですかね?」

「困ったちゃんをなんとかしようとしてるんだと思うよ。そしてそれがうまくいってないと。多分今のままで嫁がせたら問題が起こるって向こうもわかってる状態なんだと思う」


 そんな人が義姉になるのかぁ。侯爵家の中にも不安要素があるんだなぁ。

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