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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【81】

「そんなにポーションは不足しているんですか?」


 それもずっと不思議だったことだ。

 確かに日常的に怪我人が出るこの環境ではポーションはたくさん必要だとは思う。

 だけど、怪我したまま放置されている人を全く見ないので、「不足している」という印象はないのだ。そんな1日2日を押してまで急ぐ必要があるのだろうか?


「……夫は私のせいで、ポーションがトラウマなのです。私がこの怪我をした頃は、今よりポーションが不足していました。夫は怪我をした私を発見したとき、手持ちのポーションを全て使ってくれました。そのおかげで腕と目以外の怪我は治ったのですが、夫はそれからずっと『あの時にもっとポーションがあれば、目だけでも治ったのでは』、『もっと上質なポーションがあれば腕もくっついたのでは』という後悔が頭から離れないそうなのです。私がどれだけ気にしなくていいと言っても、感謝していると言っても効果はありません。夫がその罪滅ぼしで私と結婚し、伯爵位を継いでくれたこともわかっています。……話が逸れましたね。そのせいで夫はポーションと聞くと冷静さを欠いてしまうのです」


 その後に謝罪を続けたそうだったけど、ヴォルフィの視線に気づいて飲み込み、説明を続けた。


「サツキ様と契約を結んでいたことを私は聞いていませんでした。ユーディト殿はヒースクリフへの依頼で不思議には思ったようですが、厳密にはギルドと領主の仕事は分かれているので追求しませんでした。夫の失態は私のせいです。伯爵家直系として、侯爵様へはこの身を賭して償っていく所存です」

「……そうですか」


 ヒースさんの名前が出たときにヴォルフィがピクリと反応したので、手を握っておく。


 それにしても、トラウマというのは簡単には払拭できない上に、こうまで人を苦しめるのか、と改めて思う。

 伯爵の気持ちはわかるので個人的には責める気になれない。

 だけど、私を殺されかけたヴォルフィが怒るのも正当だと思うので、私はそっちの気持ちを優先する。よって、私が侯爵に減刑を願い出ることはない。

 それが私の決めた生き方。なんて苦くて重いんだろう。


「その、私を魔獣に襲わせるっていうのは、なんていうかとても不確実な気がするんですよ。私がうまく逃げられる可能性もありましたよね」

「その点に関しては、うまくいくまで手を替え品を替えやり続ければいいと考えていたようです。また、サツキ様が襲われることで精神的にダメージを受けたヴォルフガング様を、自分がお慰めしたいとも……」


 うーん、なんとも穴だらけでザルのような考えに思える。

 仮に私が魔獣に襲われて怪我をしたとしたら、ポーションとか影月で治るってのは置いといても、ヴォルフィは絶対に私のそばを離れないだろう。

 そんな「お慰めする」ような隙はないと思う。


 それに本当に好きな相手なら、わざと傷つけて取り入ろうとなんてしないよね……。

 というか、もともとあの女の態度は「ヴォルフは私と必ず結ばれる」って確信してるような不可思議なものだったなぁ……。


「あの女はずっとヴォルフィを気に入ってたんですよね? それにしては追いかけて行くでもないし、なのに婚約者を見つけたら排除しようとして、なんというか一貫性がないというか……」

「ああ、俺もそれは気になっていた。昔もやたらとまとわりつかれていたが、俺がここを出るという話を皆にした時には特別な反応はなかった。だからすっかり忘れていたんだが……」


「その点についても調べは済んでおります。フィリーネがヴォルフガング様に執着していたのは、幼い頃に受けた占いのせいだそうです」

「占い?? それは、あなたの運命の相手はこんな人ですよみたいなのに、ヴォルフィが当てはまったってことですか?」


「その通りです。正確には『銀と緑がお前の運命を変えるだろう』というものだそうです。それをずっと信じていたフィリーネは、ヴォルフガング様に出会った時にその相手に違いないと思ったそうです。しかし、ヴォルフガング様が自分に靡かず、結ばれることなくここを立ち去って行かれたので、この銀と緑ではないと思ったそうです」

「意味がわからん……」


 ヴォルフィは心底うんざりした表情をしている。まあ、男の人はそうだよね。

 私は日本で、うまくいかない恋愛を占ってもらったこともあるので、言ってることは分からんでもない。あの女のことを理解できるのが腹立たしいけど。


「しかし、他の銀と緑に出会う前にヴォルフガング様が再度自分の前に現れたので、やはりこの人だったと思ったそうです。別の女を連れていたので、その女の呪縛から解き放つことが自分の使命だと……」

「すまん、さっぱり分からん」


 ヴォルフィは頭痛を堪えるように額を押さえている。


「まあ、その占いは当たってると言えば当たってるよね。運命は変わったんだし、別にいい方に運命が変わるとは言われてないんだし、そもそも運命の相手とも言われてないんだし」


 冒険者として生きていく運命は変わって、死罪となることが確定したのだから占いは間違っていない。

 もしかしたら「銀と緑を避けろ」っていうニュアンスだったのかもしれないね。


「その通りです。それに、原因がなんであれ彼女が罪を犯したことには変わりありません」

「サツキを逆恨みしたら面倒だ。処刑まで絶対に逃げ出さないようにしてくれ」

「もちろんです」


 あの女についての話がひと段落したところで、フリーデグントさんは躊躇うような素振りを見せた。


「続いてはヒースクリフのことをお伝えしたいのですが……」


 ついにその話題か。

1/9追記

 体調を崩して寝込んでおり、1/9の更新はお休みいたします。お知らせも遅くなってしまい、申し訳ありません。

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