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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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85/202

side巻き込まれ薬師【75】

 更新がお昼頃に間に合わず申し訳ありません。

 そして、タイトルを少し変更しました。

 試作したポーションたちは、材料と分量をまとめたメモと一緒に伯爵に提出した。

 伯爵は相当このポーション作成プロジェクトに期待しているようで、明日にはまた採取に行けるように騎士を派遣してくれるそうだ。

 なんなら今日でもいいと言われたけど、森に行くことはヴォルフィには伝えておきたかったので明日でお願いした。

 採取の場所は前回と違うところになるらしい。

 


 その日の午後は剣の型を教わって、魔法の練習はせずに終わった。

 夕方になって帰ってきたヴォルフィに明日も森に行くことを伝えると、渋い顔になった。


「なにかあったの?」

「明日は数が増えてる魔獣の巣穴を叩く予定なんだ。離れてるから大丈夫だって判断なんだろうけど、心配だ……。俺もサツキの護衛に回りたい……」


 それは確かに不安ではある。

 でもその作戦を伯爵が知らないわけはないから、その上で私が行っても問題ないってことなんだろう。というか、そうでないと困る。


「うーん、今の伯爵は若干ポーションに目が眩んでる気がするから心配なんだよなぁ」


 そう伝えても、ヴォルフィの懸念は晴れないようだった。


「期待されてるのは感じるけど、そこまでかな?」

「伯爵からしたらポーションを安定して確保することは悲願だからな。今は100パーセントを商人から仕入れてるだろ。作ってるところでなにかあって仕入れができなくなったら、この領地では死活問題だからな」

「そっか……」


 確かに、日本でも輸入に頼り切った食品は、輸出元で不作でも起こった日にはものすごく高騰してたもんね。できるだけ近いところで安定的に作れるか、生産者を分散できる方がいいに決まってる。

 だからといって、私を危険とわかってる場所に放り込むほどではないと思いたい。私になにかあったらプロジェクト自体が止まっちゃうんだし。


「この間と同じところで採取するんだろ?」

「ううん、違う場所らしいよ。どこかははっきり聞いてないけど」

「……余計に心配だ。せめて明後日にならないのか?」

「うーん、一応聞いてみるね」



 待ち合わせ場所にいた騎士たちにヴォルフィの言っていたことを伝えると、討伐隊が駆除予定の巣穴とはだいぶ離れた位置での採取だから大丈夫だろうという返事だった。

 一応騎士の人数も5人に増やされていたし。

 ヒースさんはなにか言いたそうではあったけど、数が多い騎士たちに押し切られる形になって黙っていた。


 今日の採取場所は、前回よりも東寄りだそうだ。通用口のようになっている場所ではないので、下草を払いながら進むそうだ。騎士の増員はそのためでもあるらしい。


 入り口あたりの下草刈りが始まったのを眺めていると、ヒースさんにベルトを差し出された。


「オレの予備のだ。今日ハいつでも剣ヲ抜けるようにしておく方ガいい」

「……やっぱり危ないってことですか?」


「勘ガ働くのはギルド長だけではなイ。ヴォルフもオレも、長く危険ノ側に身を置いているトそうなる。いや、そうなっタ者が生き延びテいるのかもしれないガ。オレは今日ハ剣が必要ナ気がしていル」

「……わかりました」


 私のウエストに合わせて手早く調整してくれたものを装着し、収納から影月と櫻月を出して差す。

 鞘からは抜いていないので、騎士たちに日本刀の刀身は見られていないからセーフだろう。

 抜かなきゃいけない状況になったとしたら、見られるとかそんなことを気にしてられる状況じゃないだろうし。


 そういえば、ヴォルフィと出会ったばかりの頃に「嘘がわかる」と言っていたのを思い出した。それは嘘発見器のような能力というより、ヒースさんの言うように違和感に対して働く勘なのかもしれない。


「サツキ様、この近辺の下草は刈りましたので大森林の中へ入ります。準備はよろしいですか?」

「はい、お願いします」


 今日は騎士のうち新顔の2名が大鎌を持って、下草刈りや枝払いをしながら先頭に立つ。デニスさんとヒースさんが私を挟むようにして、更にその後ろにテオさんとヤンさんという並びだ。

 今日の採取地は距離としては前回より近いけど、さっさと進めないので同じくらい時間がかかるという見通しらしい。


 今日もまた、森に拒絶されているような感覚に抗いながら足を踏み入れる。拒絶感が前回よりも強い気がするのは私の気のせいだろうか……。



 覚悟はしてたけどやっぱり足元はものすごく悪くて、何度も転びそうになるのをヒースさんに支えてもらいながら進んでいった。


 辿り着いた群生地は……前回よりだいぶ規模が小さいような?

 後ろのヒースさんを振り返ると、彼もまた困惑した表情を浮かべていた。


「サツキ様、ここは開けておらず魔法が使いづらいので、大鎌で枝を刈らせます。最後にまとめて収納してください」

「それはわかりましたが、レイルの木が前回のところよりかなり少ないですよね。本当にここですか?」


「……実は我々も初めて来る場所なのです。冒険者の中から、討伐中に群生地を発見したと情報提供があったそうで」

「危険ダ! すぐに引き返スべきダ!」


 デニスさんの説明に強烈な違和感を覚えると同時に、ヒースさんが初めて聞くきつい口調で撤退を提案した。


 その瞬間、森の奥の方から「ブモォーーーーーー!!!!!!」という獣の雄叫びと、木々がバキバキと薙ぎ倒される音が聞こえた。

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