side巻き込まれ薬師【66】
「その付与の効果のひとつに、大気中の魔力を取り込むというものがあるっていうのは本当か?」
「ああ、それハ読み取れたナ」
「それはエルフにとっては普通のことなのか? 俺は初めて聞いた。それに、それをサツキが……人間が使って問題はないのか?」
「エルフにとってハ呼吸をするのと同じようナことだ。オレもしていル。だが、人間は全くしていないかラ、今は隠すようにしていル。オレの父親ハ人間で、母親に教わっテ大気のマナを使っていたが体調に特ニ変わりはなかった」
「そうか……」
ヒースさんの答えを聞いて、ヴォルフィは考え込んでいる。
「オレが読み取れた付与ハ、こっちの剣ニ闇属性、こっちの剣に火属性ヲ与えるというもノ。それから、持ち主以外ガ触れると呪われルというもの。持ち主が死んだラ指定の場所ニ帰るというもの。大気中のマナを取り込ミ、それを持ち主が魔法としテ具現化するまでノ補助をするというもの。それぐらいだナ」
おお、私以外が触ると呪われるのか。それは本当に妖刀だな。
「そのエルフにまた会いに行くことはできなくはないが、今は時間がない。それにエルフと人間がどこまで同じか分からないから、大気中の魔力を取り込むなんてことをしてサツキに悪影響が会ったら大変だ。だからまずはお前に見せて意見を聞こうって話になった」
「ああ、そういうことカ。確かにオレはエルフの魔法の知識モ多少はあるからナ。ヴォルフが会ったエルフがオレの知っているイザベラ様と同一人物だと断定ハできないが、剣にそれほど危険ハ感じない。まあ、オレは鑑定の専門家でハないから最終判断はヴォルフとサツキがするしかないがナ」
「拾った武器を使う時はよ、いくら鑑定したつっても最終的には自己責任の世界だからなぁ」
ヒースさんの見解に伯爵も言葉を添える。
ヴォルフィが私の鑑定で全ての情報を見れているのか分からないと言ったことは、他の鑑定能力者にも当てはまるということだ。
「銀狼はもともと慎重な方ではあったけどよ、嫁さんのこととなるとここまでとはなぁ。まあ安全を確認するのは大事なことではあるからいけねぇとは言わねぇけど、銀狼の求める絶対な安全ってのはたぶん手に入らないぜ?」
伯爵が遠回しにヴォルフィに決断を迫る。
「はあ、わかったよ。サツキはその剣を使いたいってずっと言ってる。俺が気が進まないだけだし、それがきれいに解消することがないってのもわかってる。これ以上は俺の押し付けになるってのもわかってる。ここに滞在してる間、ヒースに力を貸してほしい。サツキもそれでいいか?」
「うん。ヴォルフィ、ありがとう」
どうにかヴォルフィが了承してくれて、本当によかった。
自分のことが自分で決められないというのは現代日本で成人だった私にはなかなか苦痛なのだけど、社会の構造が全然違う国だからどうしようもない部分もあるからね……。
「少なくとモ大気のマナを取り込むことができるようニなるよう協力しよウ。サツキの魔力量では魔剣を維持できないからナ。双剣ノ使い方もは基本的なことハ教えよう」
ヒースさんが腰に短めの剣を2本差しているのが気になっていたけど、やっぱり双剣使いなようだ。
お読みいただきありがとうございます。
体調が思わしくなく、遅くなった上に短くて申し訳ないです……。




