表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/203

side巻き込まれ薬師【51】

 草原に出ると見慣れた馬車の周りにいた4人が私たちに気付き、頭を下げた。

 野営の道具なんかはもう全て片付けてあり、いつでも出発できる状態だった。


「昨夜は何事もなかったか?」

「はい、何も問題なく夜を明かせました」


 ヴォルフィがマルクスさんが簡単に様子を尋ね終えると、全員でイザベラさんに向き直る。


「イザベラ様、本当にありがとうございました。また、()()()()()()()()()()()お会いしましょうね」

「うむ、そうじゃな」


 フレンドリーな挨拶をする私の後ろで、騎士達とメアリは正式な礼をとっている。

 私はイザベラさんと友人になると決めたので、公式の場じゃなければ砕けた態度をすることにしたのだ。


「さて、まずその馬車に魔獣除けを施しておこうかの」


 そう言ってイザベラさんが馬車の車体に指を這わせると、付与の魔法陣のような光が浮かび上がって消えた。


「これでそこらにいる程度の魔獣であれば寄ってこぬわ。まあ1ヶ月程度はもつじゃろう。それからスピードじゃが、それはここから出てからじゃ」


 イザベラさんが指をパチンと鳴らすと、一瞬で周囲が鬱蒼とした森に変わった。


「シルフや、風の乙女や。願いを聞いてくれぬかの」


 イザベラさんが空中に向かって話しかけると、応えるようにふわっと風が吹いた。


「この馬車と馬達を早く走らせてやってくれんかの。行き先は人間達が知っておるでの」


 呪文を唱えて精霊の力を使うのかと思っていたら、普通に話しかけている。

 もちろん私にはシルフの姿は見えないので、美女エルフであるイザベラさんが独り言を言っているように見えるのがちょっとシュールだわ……。


「夜まで手を貸してくれるそうじゃ。普段通りに馬車を走らせればシルフ達が後押ししてくれるゆえ、昨日の分も取り返せよう」


 みんな半信半疑という表情をしながら、それぞれ馬車と馬に乗っていく。御者は今回もマルクスさん。


「お主が御者か。止まる、進む、右へ曲がる、左へ曲がるといったことは口に出してシルフに伝えてやるのじゃぞ。そうすれば彼女達もやりやすいでの」

「は、はい」


 空中に向かって独り言を言わないといけなくなったマルクスさん、ちょっとかわいそう。


「サツキ、達者でな。銀色もまあ、達者である方がサツキが喜ぶでの」

「イザベラ様もお元気で」

「……あんたに何かあったらサツキが悲しむから元気でいろよ」


 うーん、このふたりは似たもの同士だよね。ツンデレ属性ってやつになるのかな。


 ヴォルフィの手を借りて馬車に乗り込み、小窓を開ける。

 マルクスさんが馬車を走らせ始めたので、私は身を乗り出してイザベラさんが見えなくなるまで手を振っていた。


 私は相変わらずヴォルフィの膝の上に乗せられてるんだけど、今日はいつもより振動が少ない気がする。それもシルフのおかげなんだろうか。

 開けたままの小窓から見える景色は流れるように通り過ぎていて、日本で乗っていた自動車を思わせるスピード感だ。


 しばらく走って休憩した時に騎士3人に聞いたら、馬の動きはいつも通りなんだって。なのにいつも以上に進むから馬も最初は不思議そうにしてたらしい。


 ちなみに、休憩場所に着く直前に「と、止まります!」と恥ずかしそうにマルクスさんが言っていたのが面白かったそうだ。

 でもその直後に滑らかな動きで減速しだしたので、本当に言葉を聞いてる存在がいるのを感じて背筋が伸びたと、全然そうは見えない調子でツヴァイさんが語ってくれた。


 その日の馬車の中では、ヴォルフィから「ニギリメシとはなんだ?」「オマンマとはどういうものか?」という質問攻めにあって、説明するのが大変だったよ……。お米とご飯について一生分語り尽くした気がする。

 自分だけが全然知らないっていうのがよっぽど嫌だったみたいだね。

 まあでも、ヴォルフィが侯爵に探してもらうよう頼んでくれるらしいから結果オーライかな。こういう時こそ権力のありがたみを感じるよね!


 夕焼けで空が染まる頃には、当初の到着予定だった街の城壁が見えてきた。


 一旦馬車を道の端に停め、シルフにお帰りいただくことになった。みんなで馬車と馬から降りて、なんとなく馬車の上の空中に向かってお礼を言ったら、今回もふわっと風が吹いた。

 その後はいつも通りのスピードに戻っていた。


 街の中へはスムーズに入り、またまた1番高級な宿に泊まった。貴族用なのでここも使用人のための続きの間がいくつかある作りだ。

 先にお風呂を済ませ、部屋に運ばれてきた食事を終えた後に、イザベラさんに渡された刀の解説を取り出して読むことにした。

 ソファに座って、うっすくうっすく割った果実酒をテーブルに置き、収納から紙の束を取り出したところでヴォルフィが隣に座ってきた。


「俺も見たい」

「うん、いいよ」


 1枚目に書いてあったのは影月と櫻月のざっくりした説明だった。


 二振りの刀が属性を持ったいわゆる「魔剣」になったのはイザベラさんの付与魔術の力だけど、元々魔剣になる素質のようなものがあったらしい。

 付与を施す時に、属性はイザベラさんが決めたわけじゃなくて刀がそれぞれ闇と火を望んでいる感覚があったそうだ。


「剣に意思があるってことか?」


 ヴォルフィは不思議そうにしてるけど、私の脳裏には「妖刀」という言葉が浮かんでいた。

 正確な定義は知らないので昔読んだマンガのイメージしかないけど、そのマンガではとある刀が意思を持っていた。それは刀を使っていた人の怨念みたいなもので、その刀に触れた人は体を乗っ取られてしまうという設定だった。

 しかもその未練が「人を斬りたい」だったため、乗っ取られると人を斬ろうとしてしまうので最終的に悪霊として除霊されていた。


 だから、刀が意思を持つっていうのはなんとなく納得できる話に感じる。ましてこれは一貫斎さんが最後に打った刀なのだから、強い思いが込められていてもおかしくないと思う。

 でもこの話をヴォルフィにしたら心配して「使うな」って言いそうだから黙っておこう。妖刀ってどっちかいうと呪いみたいなイメージだもんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ