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side勇者【6】

 昼寝もしてたのにぐっすり眠って、メイドさんに起こされた。もう朝か。お湯と洗面器を持ってきてくれるので、顔を洗う。

 俺の服は洗濯中とのことで、代わりの服を貸してもらう。

 シンプルな白シャツと茶色のズボンだが、この世界にはジッパーがないようでウエストを紐で締めて履くズボンだ。ずり落ちないかちょっと心配になって、思いっきり締めた(あとが苦しかった)。


 朝食の席に行くと、上品なワンピースをきたサツキさんと、シャツとズボン姿のヴォルフガングがいた。子爵も交えて朝食をとる。


「ヤマモト殿、今日の午後には父が到着すると思う。すまないが、今日は屋敷の中にいてほしい。庭は自由に見てもらって構わないし、快適に過ごせるようできる限りのことはさせてもらう」

「わかりました」


 街が見たいなってちょっと思ってたけど仕方ないな。庭の散歩でもするか。


 食後のお茶を飲んでいると、3人が領地の話を始めたので俺だけ先に退出した。部屋に戻ってもすることがないので、そのまま庭に出た。

 よく手入れされているようで、芝生も綺麗だし植え込みの形も整ってる。とはいえあまり広くないので、庭の端は見えている。俺は植え込みに沿ってぶらぶらと歩き始めた。

 木陰にベンチが置いてあったので座り、ぼんやりとする。


 俺はこれからどうなるんだろう。

 侯爵に会って、それから国王に会いに行くんだろうけど、どれくらい時間がかかるんだろう。勇者だから優先してくれるはずだけど、偉いさんの手続きには時間がかかるのが世の常だ。

 てか、お城はここから遠いのか?全く地理がわからないから、地図でも見せてもらった方がいいかもしれない。


 国王と対面したら、それからは勇者として活動することになるんだろう。

 何をするのかは災厄がなんなのかによって変わるんだろうけど、どうも魔獣の発生っぽいから討伐することになるんだろう。ってことは剣や魔法の訓練が主になるんだろうなぁ。スキルでどこまでカバーできるんだろう。あんまりにも過酷な訓練は嫌だな……。


 サツキさんとヴォルフガングも一緒に行動するみたいなのが面倒だが、子爵がそれを望んでるようだから仕方ない。って言っても、サツキさんは巻き込まれただけの転移者なんだから、別にいなくてもいいんだけどなぁ。元の世界のことなら自分で説明できるし、サツキさんが勇者について詳しいわけでもないんだし。

 俺だって自分の意志でやって来たわけじゃないんだから、八つ当たりされても困る。

 まあ、長くても国王に会うところまでだろう。


 あとはあれだ、聖女だ。

 勇者と聖女が召喚されるらしいから、聖女もどこかに転移してきてるはずだ。もしかしたらもう国王のところにいるかもしれない。

 おそらく聖女と一緒に活動することが多いだろうから、いい子だといいなぁ。聖女に選ばれるぐらいだし、きっと心優しい子なんだと思う。ついでにかわいい子だったらいいなぁ。一緒に異世界の生活改善もしていけたらいいと思うし。


 まだ見ぬ聖女に想いを馳せながら立ち上がり庭の散策を続けるが、それほど広くないし庭に興味があるわけでもないのですぐ飽きた。

 上着を羽織らずに出てきたので体も冷えてきたし、部屋に戻ってゴロゴロするかな。

 屋敷の中に戻るとき、遠目に寄り添って歩くサツキさんとヴォルフガングが見えて、なんだが無性にモヤっとした。


 部屋でウトウトしていると昼食の時間になったようで、メイドさんが呼びに来た。

 子爵は仕事をしながら執務室で食べるし、サツキさんとヴォルフガングは庭で食べるらしい。

 俺一人だから食堂か部屋かどちらに用意するか聞かれて、さらにモヤっとした。

 別にサツキさんとヴォルフガングと一緒に食べたいわけじゃないけど、どうしてここまで俺を蔑ろにするんだ。

 結局、部屋に用意してもらってダラダラと食べた。日本では動画を見ながら食べていたから、ひどくつまらなく感じた。


 その後も不機嫌なまま不貞寝していると、部屋の外が騒がしくなった。

 なんだろうと思っていると執事が部屋へやってきて、もう少しで侯爵の使者が到着すると教えてくれた。俺も子爵達と共に使者と会わないといけないから、日本の服に着替えておくように言われ、服が返却された。

 急いで着替えて待っていると到着の知らせが来たので、俺は玄関へ向かった。


 さあ、いよいよ俺の異世界生活が本格的にスタートだ。

区切りの関係で短めです。

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