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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【41】

 エルフだよ!エルフだよ!!エルフだよ!!!

 ドワーフに続いてエルフだよ!本物だ!すごいー!!


 なんて感想が真っ先に浮かんだ私は、いろんなことがありすぎて大混乱していたんだと思う。


「黒い髪に瞳。お主はカンと同じ世界の人間かえ?」

「カン?」


 私が呆けたまま聞き返すと、エルフの美女は刀に向かって顎をしゃくった。


「そのカタナを作った者に決まっておろう。あやつの名は呼びにくくて敵わぬゆえ、妾はカンと呼んでおる」

「……一貫斎さんは生きてるんですか?」


 エルフ美女の言い方がなんとなく今も生きてる人を指してるように感じられたので、思わず質問を無視して反応してしまった。生きているのならぜひ会いたい。


「そんなわけなかろう。カンと出会ったのは季節が数限りなく巡る前じゃ。あやつは病を得ておったが、そうでなくともとうに寿命は尽きておろう」


 やっぱり一貫斎さんは亡くなっていた。


「して、娘よ。名はなんという?お主はカンと同じ世界からやって来たのじゃろう?」


 娘という歳ではありませんと思ったけど、わざわざ話の腰を折る必要もないから飲み込んだ。それに、長命なエルフからすればアラサーだって小娘どころか幼女かもしれない。


「すみません、申し遅れました。私はサツキと言います。一貫斎さんと同じ世界、同じ国からやってきました。時代はだいぶ隔たっているようですけど」

「ほう、やはりか。妾の名はイザベラ。風の里の族長が娘である」

「………………!」


 イザベラ=ベラ=べら。

 この美女が一貫斎さんのメモに出てくる「べら」さんのようだ。


 エルフの社会は全然わからないけど、族長の娘ということはお姫様のようなものじゃないだろうか。

 なんでそんな偉いエルフが異世界人と一緒に刀なんて打ったんだ?

 というか、そもそもエルフは金属が嫌いなんじゃなかったっけ?

 いや、金属自体への好き嫌いじゃなくて、加工に使う燃料として森林が伐採されることを嫌ってるんだったっけ?

 もうどっちでもいいわ。ちょっと情報量が多すぎてついていけない。


「それでサツキとな。お主はカンと違う時代に生きておったというのに、カタナのことは知っておるのか」


 イザベラさんはマイペースに会話を続けてくるが、もともと私はそれどころではない。


「すみません。お話しする前にここから出してもらえませんか?山の中からいきなりここに来てしまったんですが、元の場所で恋人が魔獣と戦ってるんです!」

「恋人というのはこの銀色のことかえ?」


 イザベラさんがそう言って指をパチンと鳴らすと、空間に亀裂が入り、そこからヴォルフィがバランスを崩したように転がり出てきた。


 ヴォルフィはほんの一瞬驚いた表情をしていたけど、すぐに体勢を立て直して、イザベラさんを警戒しながら私の方へ駆け寄ってきた。

 あちこち傷だらけなのは、私が混乱を招いたせいだと思うと罪悪感でいっぱいになる。


「サツキ、なんともないか!?」

「私は大丈夫。ヴォルフィ、ケガしてる。みんなは?魔獣は?」

「ケガは大したことないし、みんな無事だ。どうにか魔獣を討伐し終えて、サツキを探そうとしたところで、いきなり空間が歪んで気づいたらここに出てきた」


 みんな無事と聞いてホッとした。


「私がパニックになったせいで、本当にごめんなさい」

「いや、大蛇が出たとライデンに聞いた。蛇の類は気配を感じ取りにくいが、それでも見落としたのはあいつの失態だ。サツキは気にしなくていい」

「………………」


 正直、全くそうは思えない。後でライデンさんにはしっかり謝ろうと思う。

 本当はそれだけじゃなく、私も戦力として1人前になりたい。少なくとも、放っておかれても自分の身は守れるようになりたい。


「サツキ、ここはどこであいつは誰だ?」


 ヴォルフィが私を庇いながら、イザベラさんを睨みつける。イザベラさんはそんな私たちを愉快そうに眺めている。


「ここがどこかはわかんない。あの人はイザベラ…様。東の里ってところの族長の娘だそうだよ」

「そんな奴が里の外でなにをしている?」

「ふふふ、そのように毛を逆立てんでも、妾はサツキに危害は加えぬ。それよりも、銀色。お主は己の心配をしたらどうじゃ?言うておるほど軽いケガではあるまいに」

「っ………!」

「えっ、そうなの!?ポーション出すから飲んで!」


 かすり傷なのかと思ってたら違うらしい。それに気づかなかったことにも、傷の大小に関わらずすぐに手当をしなかった自分にも腹が立つ。


「そのようなもの使わずとも、お主なら魔法で治せるであろう?」


 わたわたとポーションを取り出そうとしている私を、イザベラさんの涼やかな声が遮った。


「あ、確かに」


 自分では落ち着いているつもりでも混乱状態だった私は、言われるままにほぼ使ったことのない回復魔法を発動した。

 その直後に、ヴォルフィが「サツキ、ダメだ!」と言っているのを頭の片隅で聞きながら、魔力切れを起こして倒れ込んだ。



 何度経験しても慣れない気持ち悪さに朦朧としながらも、私を支えてくれてるヴォルフィの傷をどうにか確認する。見えていたかすり傷たちは治っているようだけど……。


「ひどいっていう傷は?」


 そう問いかけると辛そうに顔を歪めた。治ってないようだ。

 しかもそんなケガ人に倒れた自分を受け止めさせて、私は本当になにをやってるんだろう。大人しくポーションを渡せばよかったのに。自分の愚かさに涙が溢れて、唇を噛み締める。


「のう、なにゆえ人はそのような魔法の使い方をするのじゃ?」


 そこに呆れたようなイザベラさんの声が降ってきて、私は涙に濡れた瞳を上げた。


「治癒は闇に属する。影月を使えばよい」


 イザベラさんはよくわからないことを言いながら無造作に影月を取り上げ、私に柄を差し出した。

 これでどうしろと言うのだろうか……。


「なんじゃ。カタナを使いたいのかと思ったが、違うのかえ?カンと同じ世界から来たというお主になら、使わせてやってもよいと思ったのじゃがのう」

「……使いたいです」

「なら受け取らぬか」


 そう言われて伸ばしかけた手を、ヴォルフィに押さえられた。


「サツキ、不用意に変なものに触るな。それに、さっきからこのエルフはなにを言ってるんだ?」


 事情を全く知らないヴォルフィは私を強く抱き寄せ、いつでも魔法を発動できるように構えている。

 確かに、先にいろんなことをはっきりさせておくほうがよさそうだ。


「その剣は刀っていって、私がいた国のなんていうか伝統的な武器なの。カンっていうのはだいぶ前に私と同じ国からこの世界に来た人で、刀を作る職人だったらしいよ。それで、イザベラ様と一緒にその刀を作ったそうだよ。イザベラ様、合ってますか?」

「その通りじゃ。妾はカンからこのカタナを託され、使い手に相応しい者を待っておった。そこなサツキは、技術は未熟者じゃがカンと同じ世界から来てカタナのことを知っておる。それならば使わせてみてもいいかと思ったのじゃ」

「……それはただの剣なのか?魔力を感じるぞ」

「ああ、それは妾が付与を施しておるからじゃろう。呪いなんぞではないゆえ、心配はいらぬ」

「それが本当かどうかわからないだろうが」


 ヴォルフィとイザベラさんが言い争っているのを聞きながら、ようやく「鑑定」の存在を思い出した私は影月を鑑定した。

いつもお読みいただきありがとうございます。

申し訳ないですが、古傷になっている肩の痛みがひどく、更新が空いてしまう日があるかもしれません(近々、病院にも行きます)。その際には活動報告でお知らせいたします。

季節の変わり目、皆様もご自愛ください。

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