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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【37】

 人が動く気配で、私は眠りから引き起こされた。

 体がだるいと思いながら目を開けると、ヴォルフィがベッドから降りようとしているところだった。私が身じろぎした気配に気付き、振り返ってとろけるような笑顔を浮かべる。


「おはよう、サツキ」

「……おはよう」


 喉が痛くて声が掠れてる。風邪じゃなくて、カラオケで歌いすぎた後のような状態。

 ヴォルフィはそんな私の頭を優しく撫でてから、コップに水を汲んできてくれた。起きるのにも手を貸してもらい、水を一気に飲み干す。


「もっといる?」

「ううん、大丈夫」


 自分も水を飲んでコップを置くと、私を抱き寄せて労るように体を撫でる。


「体は辛くない?」

「……だるい」

「ごめん、つい夢中になって無理させたな。朝食は遅めの時間にお願いしてくるから、サツキはまだ寝ていろ」

「うん」


 そう言いつつ、まだ離れたくないので肩口に頬を擦り寄せる。素肌が触れ合う感触に、昨夜のことを思い出して急に恥ずかしくなり顔が赤くなってきた。

 いつまでもくっついていたら軽くキスされて、肩を押された。ぽすんとベッドに転がってしまう。


「すぐ戻ってくるから心配するな」


 そう言って手早く服を身につけると、寝室を出ていってしまった。寂しい。

 でも体はだるいので、言われた通りもう少し寝ることにする。

 バフっと枕に顔を押し付けると、あっという間に眠ってしまった。


「サツキ、起きて」


 優しく体を揺さぶられて、意識が浮上する。

 目を開けると、何より愛しい銀色と緑色がすぐそばにあった。無意識に手を伸ばしてしまう。


「嬉しいけど、そろそろ起きないと」


 私の手を取って困ったように笑いながら、起きるのに手を貸してくれる。


「だるいのはマシになった?」

「微妙……」

「疲労に使うのはあんまり良くないんだけど、今日だけはポーション飲んどく?」

「うん……」


 差し出された小瓶には薄水色の液体が入っていた。ぐいっと飲み干すとミントのような味がし、すぐに効果が現れて体が軽くなった。あちこちが軋むようにこわばっていたのも、喉の痛みも一瞬で回復した。

 しかしなんですな。初めてポーション飲むのが怪我でもなんでもなく、夜通し抱かれた疲労だというのは複雑な気分でございますよ……。


「服も選んでもらったから持ってきた。メアリ呼ぶか?」

「いい!ひとりで着る!」


 いくら身支度を手伝ってもらうのに慣れたとはいっても、こんな()()()気配が濃厚に漂うところに他人を入れるなんて絶対に嫌だ。


「貴族は、気にしないの?その、こういう時にでも使用人を呼ぶことに」

「ん?ああ。日頃から風呂も着替えも手伝わせていたら、いつもと同じように手伝わせるだろ?それに、使用人を人と思ってないやつもそれなりにいるからな」

「……それってまさか、()()()使用人がいても平気ってこと!?」

「まあ、そういうやつもいるだろうな」


 絶対ムリ!!絶対イヤ!!貴族おかしい!!


「俺はそんなことはしないから心配するな」

「絶対そうして!!」


 よかった。市井を知ってる婚約者で本当によかった。


 そんな話をしつつヴォルフィの手を借りて、服を着終わった。


「じゃあ飯にしよう」


 そう言って差し出された手を取り寝室から出ると、ダイニングテーブルにはすでに料理が並べられていた。メアリの姿はない。


「いただきます」


 食べながら窓の外を見ると、雨はだいぶマシになっているようだが黒雲が立ち込めてまだ薄暗い。


「明日には出発できるんだっけ?」

「ああ。今日のうちに天気は回復するという話だし、多少降っていても明日には出る。メアリと騎士たちに用意しておくよう言ってあるから、サツキは心配しなくていい」

「うん、ありがと」


 私のための旅じゃないのに1番なにもしていないことに気が引ける。でも、旅のリーダーはヴォルフィだし、使用人の仕事に手を出すのは侯爵家の体面を傷つけるというのもわかっている。そうすると、結局おとなしくしていることしかすることがない。


 この世界に転移してからずっと忙しかったし、休みだということにさせてもらおう。

 そう思うと急に気が抜けたので、朝食を味わうのに集中することにした。

 スープもサンドイッチもおいしい。


 そういえば、昨夜は結構汗もかいた気がするのに全然ベタベタしてない。起きた時のシーツもサラッとしていた気がする。


「ねえ、私が寝てる間にシーツ替えたりした?」

「いや、魔法で浄化した」

「ええっ!?」


 なんですって。そんな便利な魔法があるならぜひ覚えたい。野営とかでお風呂も入れず洗濯もできない時に絶対使いたい。

 私の期待に満ちた眼差しを見て、ヴォルフィは苦笑した。


「そんなに魔力は消費しないから教えるよ」

「やったぁ!」


 ワクワクしながら朝食を終えると、また手を差し出された。


「この後はどうするの?」

「ん?今日はこのまま待機だろ?」

「うん?」


 よくわからないままヴォルフィの手を取ると、そのまま寝室に逆戻りし、そしてその後ずっと離してもらえなかった……。


 ちなみに、合間に浄化の魔法を教えてもらって試したら大失敗して床を水浸しにしてしまったので、室内での練習は禁止された。……魔法のスキルさん、お願いだから仕事してよ。

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