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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【25】

 私がぼんやり契約書を眺めていると、ヴォルフィさんが侯爵に話しかけていた。さっき届いたシュナイツァー伯爵の手紙のことのようだ。


「ふむ、伯爵直々の誘いとあっては無下に扱うわけにもいくまい。伯爵の元で冒険者資格を返却してこればいいだろう」


 手紙の中身を確認して侯爵はあっさり許可を出した。


「お前だけが行くならサツキ殿のスキルの訓練の手配をしておく必要があるし、連れて行くならベルンとも相談して魔道具開発に支障がないようにしなさい」


 えっ、一緒に行っていいの!?

 私は留守番でヴォルフィさんが帰ってくるまで離れ離れだと思ってたから、一緒にいられるのはうれしい。それにシュナイツァー伯爵にも会ってみたいと思ってたから、それもうれしい。


「父上、ありがとうございます。サツキさん、どうしま」

「一緒に行きます!」


 食い気味で答えるとヴォルフィさんもうれしそうに笑った。


「じゃあ兄上にも相談して、とりあえず手紙の返事も出して……。あ、俺に指名依頼が入ってしまったらどうしましょうか?」

「ふむ、なら先に侯爵家から指名依頼を出しておこう。客人の護衛ということにしておけばいいだろう」

「ありがとうございます」

 

 退室してすぐに、さっき作った魔道具の資料を取りに行き、「別件で話したいことがある」という伝言とともにベルンハルトさんへ渡してもらうよう執事さんに託した。


 夕食はいつの間にかふたりで食べれるようにヴォルフィさんが命じていたようで、ガラス張りのサンルームのようなところに連れて行かれた。

 もちろん外は真っ暗なので何も見えないけど、広めの部屋のあちこちに蝋燭の炎が揺らめいて、さらに色ガラスでできた照明の魔道具も置いてあってとても幻想的だった。

 思わず見入ってしまっているとヴォルフィさんに手を取られ、顔を向けると思っていたよりも至近距離に緑の瞳があった。蝋燭の炎が映り込んでいる瞳はとても綺麗で、魅入られてしまう。無意識に反対の手も伸ばして、縋り付くように距離を縮めた。


「っっ、サツキさん」


 気づいたらヴォルフィさんの腕の中にいたので、体重を預けるようにして私も腕を背中に回した。


「俺と婚約してくれてありがとうございます。サツキさんがこの世界で幸せに暮らせるように、俺が必ず守ります」


 耳元で低い声で囁かれ、ゾクゾクしながら頷くとさらに強く抱きしめられた。


「もう婚約者になったから、サツキって呼んでもいいですか?」

「はい、もちろん。敬語もいらないです」

「……サツキ、愛してる」

「ヴォルフィ、私も……」


 体を離されて、熱を孕んだ緑の瞳で見つめられると、また魅了されたように何も考えられなくなった。

 この世で最も美しい緑色で視界がいっぱいになったところで目を閉じると、唇にそっと柔らかいものが押し当てられた。幸せでどうかなってしまいそう。


 本当に好きな人の前では、過去の恋愛経験なんてものはなんの意味も持たないのだと、触れるだけの淡いキスをしながら私は知ったのだった。



 そのあと、全く空気を読まない私のお腹が盛大に自己主張したので、せっかくのロマンチックな雰囲気は霧散して夕食になった。

 ずっと部屋の外で給仕の使用人さんは待っていたようで、すぐに用意された。

 お待たせしてあんなことしててすみません……。


「サツキのいたところでは、婚約ってどうやってするの?」

「うーんと、男性が女性に婚約指輪を渡すかな」

「……へえ」

「結婚式の時に結婚指輪の交換もするから、普段つけてるのは結婚指輪の方が多いんじゃないかな。婚約指輪はそれよりも豪華なイメージだし、宝石ついてたりして。結婚指輪は左手の薬指につけるって決まってるの」


 この国では指輪の交換はしないのかな?というか結婚式ってするのかな?


「この国では結婚はどうやってするの?」


 端的に言うと、決まった形はないらしい。

 平民は基本的に事実婚だから、本当に当人たち次第だそうだ。何もしなくてもいいし、友人知人に祝ってもらうこともあるし、記念の装飾品を揃いで作ることもあるようだ。


 貴族は公式には貴族院への届出が必要だから、今日みたいな書類の作成は絶対する。

 あとは決まってないけど、後継者の結婚の時は慣習的に領民へのお披露目をして、お酒や食事の振る舞いをするらしい。次男以下はケースバイケース。

 神殿との関係が深い地域では、神殿で儀式を執り行うこともあるらしい。


「俺たちの場合は身内だけでお披露目する程度じゃないかな」


 それぐらいでちょうどいいです。領民へのお披露目なんて恥ずかしすぎて絶対やだもの。


「サツキは指輪したい?」

「憧れはあるっちゃあるけど、剣握るのに邪魔にならないかな?」


 ヴォルフィは思いっきり剣で戦うし、私も練習していくつもりだ。それに私は調薬もある。ふたりともつけられないのならなんの意味もない。


「ああ、確かに気になるな。でもなにか揃いのものを身につけるのはいいかもしれない」


 それから何がいいかを話し合って、ピアスを作ることになった。

 この世界にもピアスはあるそうです。護符として魔道具を身につけるのに、ピアスが1番邪魔にならないからなんだって。

 ただ、ピアスをつけてない時に回復魔法を受けたりポーションを飲むと、ピアスホールが塞がるから要注意らしい。……ケガ扱いになるのか。

 シュナイツァー伯爵のところに出発するまでに注文しようってことになった。


 私の部屋まで送ってもらい、また触れるだけのキスをしてお別れした。名残惜しいけど、一応それ以上はダメだもんね。

 お風呂を済ませた私は、今日1日のことを思い出してベッドの上でジタバタしているうちに眠っていた。

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