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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【180】

「サツキ、心配するな。俺も父上も兄上たちもサツキの味方だ。どうしようもなくなったら俺とふたりで逃げたらいい」

「……うん、そうだね」


「いや、それは本当にどうしようもなくなった時だけにしれくれよ……。うちに益をもたらしている上に、オーディリッツ公爵様も目をかけている人間。客観的に見てもそうであるから、王城も下手なことはできないはずだからな。基本的には正当な手段を使ってサツキを保護するんだからな」


「わかっていますよ兄上。もっと弟を信用してください」

「弟だから信用できないんだ……。お前もうちの男なんだから」


 あれですね、執着強めで重めだっていうやつですね。

 義兄上は自覚してたんですね。……いや無自覚とどっちがタチ悪いんだろう。


「朝食後、すぐに父上の執務室に集まるように。今日は忙しくなるからしっかり食べておけ」

「はい」


 そんな感じで話していると、使用人に案内されて勇者がやってきた。勇者が席につくと、会話に困る間もなく義父上もやってきた。

 ヴォルフィは隣の勇者を視線は向けずに観察していて、その勇者は義父上の様子を窺っているようだった。


「勇者ヤマモト殿、侯爵位を賜っているフォルクハルト・イェルク・アイゼルバウアーだ。これまで不便な思いをさせてしまったことを申し訳なく思う。責任を持って王城へ送り届けるまで、今しばらく辛抱してもらいたい」


 義父上が微妙な空気を断ち切るように勇者に声をかけると、勇者は驚いた後にまたうんざりしたような表情になった。


「はあ、ありがとうございます」


 ものすごく適当な返事を勇者がするので、私もヴォルフィも義兄上もピリッとしたのに本人は全く気づかず朝食を食べ続けている。

 義父上も顔や態度には出していないものの気分を害しているのは確かで、その後はもう勇者に話しかけることはなかった。


 食堂を出るとその足で執務室へ向かう。

 4人揃ったところでざっと情報共有を行い、すぐに書簡の用意にとりかかった。


 書簡は別々に2通。

 片方は「勇者が領内に現れたので保護しているため、王城に案内したい」というもの。

 そしてもう片方が問題の、「当家は勇者と聖女に関わらない形でのみ『災厄』への対応を行う」というもの。

 義兄上の作った下書きを見ていた義父上が「ふむ」と言って顔を上げた。


「当家の人間が侮辱されたゆえであることも書いておこう。理由なく起こした行動ではなく、瑕疵はあちらにあると主張しておく」


 そう言って、下書きを直し始める義父上。


「多少調べれば、勇者が現れるより前から我らが根回しを行っていたのはすぐにわかるがな。とはいえ、その時点では念のために取っていた行動であり、決定的であったのは勇者による侮辱であるという体裁は整えておくべきだろう」


 サラサラと書き上げた下書きを見直し、義兄上へと手渡す義父上。受け取った義兄上はそれを家令に回し、清書させる。


「書簡ができればすぐに王城へ使者を出す。おそらくすぐに召喚されるだろうから、お前たちも用意をしておくように。勇者に付き添うのは私とアルビーで行い、ヴォルフとサツキは控室で待機しておきなさい。馬車も分ける」

「俺たちは謁見しなくていいということですか?」


「どうせすることにはなるだろうが、必要が生じて呼び出されてからでいい。わざわざこちらから、異界の客人であるサツキを見せるつもりはない」

「わかりました」


「……王城に潜ませてある隠密の報告では、おそらく聖女も召喚されている。サツキ、聖女との対面にもなるであろうことは覚悟しておきなさい」

「…………はい」


 私は自分の声も表情も強張っているのを自覚しながら、どうにか返事を絞り出した。


 わかっていたことだ。

 勇者が現れたのだから、同時期に聖女も現れるであろうことは。

 もしかしたら勇者よりも先に召喚されていたのかもしれないことは。


 それでもやっぱり、今日対面するのかもしれないと思うと激しく緊張するのを抑えられない。一瞬で身体中に変な汗をかいたのがわかる。


「だが、必要以上に恐れることはない。当家はお前を王城に渡すつもりはなく、領地までともに連れ帰る。それに、これも見なさい」


 そう言って手渡された手紙を見ると、それはオーディリッツ公爵から義父上に宛てたもので、なんと公爵も王都入りするという内容だった。


「到着されたら使者がやってくるだろうからまだなのだろうが、何かしら手は打ってくださっているだろう。これで少しは安心できるであろう?」

「……はい」


 しっかりしないと。

 これだけ大きな話になっているのだから、少なくとも私が自分を見失うことだけはないようにしなければ。

 いつの間にか私の肩に回されていたヴォルフィの腕から伝わる体温を感じながら、私は気合を入れ直したのだった。

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