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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【173】

 翌朝、例のごとくバキバキの体をいつものように影月で回復し、動きやすいワンピースを身につけて朝食に向かった。

 勇者はまだ来ておらず、義兄上だけが書類に目を通しつつも優雅にお茶を飲んでいた。


「おはようございます、兄上。お待たせして申し訳ありません」

「ああ、おはよう。お前たちももっと遅いかと思っていたから、構わないよ」

「…………」


 義兄上、子爵領を任されてから若干キャラが変わりましたか??

 そんな皮肉混じりの冗談を言うのはベルンハルト義兄上の専売特許だと思っていたんだけど、さすが兄弟ということか……。

 義兄上は大好きな義姉上と離れて暮らしてるから、不満が溜まっているのかもしれないな。


「父上は今日の午後に到着予定だ。詳しい話はその後になるが、おそらくこのまま王都へ勇者殿を送り届けることになるだろう。父上と私と、それからヴォルフとサツキもということでいいな?」

「……はい」


 嫌ですよ。そりゃあ本音を言うなら嫌ですよ。行きたくないですよ。

 勇者と一緒も嫌だし、妹が来てたら会うかもしれないから嫌だし、私たちが献上した魔道具を無碍にした王様に会うかもしれないのも嫌だし、とにかく全部嫌ですよ。

 でも……はい、わかってます。

 この時のためにあらゆる準備をしてきたんだから、これは一家総出でやらないといけないことなのはわかってる。私が当事者であることも理解してる。だから、嫌でも断るつもりはない。もちろん。


「父上の方からオーディリッツ公爵にも勇者召喚の知らせは行っているはずだ。()()が同時であればなおいいのだが、そこまで揃うかどうかはわからんな」

「はい」


「ところで、お前たちは陛下の御前に出るマナーはどうなっている?」

「「えっ……!?」」


「王都まで同行すればまず間違いなく謁見だぞ」

「「…………」」


 無言で顔を見合わせる私とヴォルフィ。

 そういえば、だいぶ前の魔道具が完成するか否かって時には献上に向けて特訓したな……。

 一応、両公爵をお迎えする時にも復習はしたけど、それ以来必要がないから既に忘却の彼方だよ……。


「……恥をかかないようにしておきなさい」

「「はいっ!!」」


 義兄上の抑えた声から怒りが滲み出ているのを感じ取り、私とヴォルフィは機械仕掛けの人形のようにカクカクと頷いた。

 今日は父上が到着するまでずっと立居振る舞いの練習だな……。


 そんな会話をしていると勇者がやってきたので、朝食になった。


「ヤマモト殿、今日の午後には父が到着すると思う。すまないが、今日は屋敷の中にいてほしい。庭は自由に見てもらって構わないし、快適に過ごせるようできる限りのことはさせてもらう」

「わかりました」


 朝食後、勇者は部屋に戻っていったので私たちも楽しい楽しい練習タイムだよ……。

 この辺鄙な子爵領でパーティを催すことなんてまずないので、ここにはダンスホールみたいな場所はない。

 仕方がないので騎士団の屋内鍛錬場のひとつを使わせてもらうことになった。

 庭をテクテクと歩き騎士団の施設が集まっているあたりへ行くと、話は通っていたようですぐに案内される。

 ここには上級のマナーを知っている人もいないので、ひたすらふたりで練習するだけだ。正直、剣や魔法の鍛錬より疲れるんだよね……。


「ねえ、これでちゃんとできてる?」

「……うん。いや、たぶん……」


 私がやってるカーテシーに対して、なんとも心許ない返事が返ってくる。

 王都の屋敷には上級の使用人もいるはずだから、最後はそっちでチェックしてもらうしかないね……。



 そんなことをしていたらあっという間に昼食の時間が近づいていた。わざわざ昼食をどうするかクララが聞きにきてくれたので、庭でピクニックしたいとお願いした。

 室内でずっと窮屈な鍛錬をしてるから、外で開放的に食べたくてさ。それに、そうすれば勇者と顔を合わせなくて済むし。


 昼食後もまた鍛錬場で練習を続けていると、クララが慌てた様子で私たちを呼びにきた。

 義兄上が呼んでいるそうなので、急いで館内へ戻り執務室へ向かう。

 義兄上は難しい顔をしていた。


「父上の一行が魔獣に襲われたらしい。幸いなことに父上はご無事だが、その一帯を大きく迂回してこちらに向かわなければいけなくなったために、今日中の到着は絶望的だ。これは隠密からの報告で、後ほど父上からの使者が到着する見込みだ」

「そんな……!?」


 やはり着々と魔獣の数は増えているのか……。

 勇者が召喚されているのだから「災厄」が近づいてきているわけで、当然といえば当然なのだが気が滅入る。


「おそらく、我々だけで勇者を王都に送り届けることになるだろう。父上とは途中で合流できればいいが、王都に入ってからの合流と考えておくほうがいいだろう」

「……はい」


「兄上、俺とサツキは護衛に混じって馬で同行するのではいけませんか? サツキの魔法も上達していますし、俺が必ず守りますから」

「はぁ……、本来ならありえないんだけどな。もしも危険だと感じたら馬車への同乗を命じる。その際は必ず従うように」


 義兄上は疲れ切った雰囲気でため息をついてから、ヴォルフィの困った要望を聞き入れてくれた。勇者と狭い空間に同席したくない私にとっては大変ありがたい。


「ありがとうございます、義兄上」

「何事もないことを祈る……」


 義兄上がそう言って胃のあたりをさすっていると、義父上の使者が到着したと知らせが来た。


「すぐに向かう。ヴォルフとサツキも一緒に来なさい。一通り状況を確認してから勇者殿に来てもらうことにする」


 3人で執務室へ向かうと、使者は顔だけは見たことがある騎士のひとりだった。

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