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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【171】

 応接室に案内されて待っていると、すぐにアルブレヒト義兄上がやってきた。


 しばらく会っていない間に少し痩せたような……?

 愛しの義姉上や子どもと一緒に暮らせてないから、やっぱり落ち込んでるのかな。それとも単純に激務だからなのか、もしくはその両方なのかもしれない。


「異世界の客人、よくぞ参られた。私はモンテス子爵アルブレヒト・アイゼルバウアーだ」

「ヤマモト アツシです。よろしくお願いします」

「楽にしてくれ。ヴォルフもサツキ殿もご苦労だった」

「いえ」


 私の呼び方に「殿」が付いていたのが気になってチラリとヴォルフィを見ると、小さく頷かれた。義兄上も一旦は私をただの薬師ということで、話を合わせてくれるようだ。

 お茶の用意がされて、くつろいだ雰囲気の中で話は進んでいく。


「ヤマモト殿とお呼びして構わないかな?」

「あ、はい」


「いきなり見知らぬ世界に来てしまい、さぞや困惑されていることと思う。また、ヤマモト殿は勇者であるとも知らせをもらっているから、できる限りの配慮をしたいと思っている。まずはこれまでの経緯を聞かせてもらえないだろうか」

「わかりました」


 勇者が日本で道を歩いていたら魔法陣のようなものが現れ、気づいたら森の中に倒れていた。そこから歩き回ってサイファ村を見つけ、私の存在を知った。そして、自分のステータスを見て「勇者」と書かれているのに気づいた。

 勇者の話の内容はだいたい聞いていた通りの内容だった。

 義兄上は相槌を打ちながら聞いている。


「なるほど。ヤマモト殿とサツキ殿は同じ世界から来たということで間違いないか?」


 義兄上が私の方に聞いてきた。


「間違いないです」

「わかった。サツキ殿のことはどこまで?」

「3年前にやって来て、今は薬師をしていることだけです」

「うむ」


 そういう設定でしか話してないことを伝えると、義兄上は頷いた。


「さて、ヤマモト殿。サツキ殿は3年前に我が領地内で、貴殿と同じような経緯で発見された。彼女の希望もあり、アイゼルバウアー侯爵家の庇護下で薬師などの仕事をしてもらっている。しかし、貴殿は勇者であるとのことゆえ、王城に報告し国王陛下の指示を仰がなければならない。おそらく、そのまま陛下の元で勇者として我が国のために力を振るってもらうことになるだろう。突然見知らぬ世界に来て、勝手な話だと思うだろうが」

「わかりました。日本に戻りたいとはそれほど強く思っていませんので、勇者としてできることをしたいと思います。王様のところにはすぐ向かいますか?」


「それはありがたい言葉だ。侯爵である父からの使者がこちらに向かっているため、その指示に従い王城へ向かうことになると思う。使者の到着は明日の予定で、このまま王都へ向かうか一旦侯爵領に向かうかわかるはずだ。今日はゆっくりと疲れを癒してもらいたい」

「わかりました。ありがとうございます」


 義兄上から今後の方針が伝えられると、勇者には特に不満もないようだった。勇者であることも拍子抜けするぐらいあっさりと受け入れている。

 そして、これで勇者を庇護するという責務は義兄上中心で果たすことになるので、私も安心して過ごせるようになったよ。


「サツキ殿とヴォルフも協力してもらいたいが、都合は付けられるか?」

「定例のポーション納品が一週間後となっています。持参しておりますので、少し早いですが直接納めることをお許しいただければ、あとはご指示に従います」


「それは助かる。騎士団の方に話は通しておくから、よろしく頼む。ヴォルフはどうだ?」

「俺も受けてる依頼はないんでどうとでもなりますよ、兄上」


 私とヴォルフィの白々しい返答に、義兄上が微かに笑っているのがわかった。

 と同時に、勇者がものすごく驚愕しているのが目に入った。

 あ、ヴォルフィの「兄上」を聞いたからかな?


「なんだお前、ヤマモト殿に話していなかったのか」


 義兄上が苦笑してるけど、それが演技なのかそうじゃないのか私にはもうわからなくなってきたよ……。

 ヴォルフィも「普段は冒険者なので」と肩をすくめていて、「違うだろ!」とツッコミを入れたくなってしまう。


 勇者はヴォルフィと義兄上をキョロキョロと見比べている。きっと頭の中ではあれこれ考えたり想像したりしているのだろう。


「では、フランツ。ヤマモト殿をお部屋にご案内するように。サツキ殿とヴォルフはいつもの部屋を用意させている」

「それでは皆様、こちらへどうぞ」


 部屋から出たところで、勇者と執事とは反対方向へ連れて行かれた。私は「いつもの部屋」というのに全く心当たりがないんだけど、ヴォルフィは迷いなく進んでいく。


「ねぇ、『いつもの部屋』ってなに?」

「ああ、俺が領地経営のことを習いに来て泊まっていくときに使ってる部屋のことだ」

「あ、そういうこと」

「……このまま部屋に向かっていいか?」

「ん? どういうこと?」

「……いや、いろいろ止まらなくなりそうだなって思って」

「…………」


 いろいろ、いろいろ……。まあ私も気が緩んで泣いちゃいそうだし、他にもまあ、確かにいろいろ……。


「えーと、じゃあ夕飯までどうしとく?」

「……設定通りにポーションの納品でもしておくか?」

「あはは、そうしようか。ついでに庭を散歩しよう」

「そうだな、そうしよう」


 私たちはそのまま方向転換して庭へ出ると、騎士の詰所へ向かった。

 ここの騎士団員は当然ながらヴォルフィのことは知っているし、受け取りをしてくれた責任者は現在のポーションの製作者が()()()()()()を知っていたので、ガチガチに緊張しているのが面白かった。いえ、お仕事の邪魔してごめんなさい。

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