side巻き込まれ薬師【170】
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再び馬車に乗り込んで門をくぐる。
さすがに街の案内をした方がいいと思ったので、私も荷台に乗っている。
街並みを見る勇者は瞳を輝かせていて、興奮しているのが一目瞭然だった。この国はラノベなんかでよくある「中世ヨーロッパ風」な国だから、その気持ちはよくわかる。
門を入ると石畳の大通りで、左右に店がひしめき合っている。全体的に煉瓦造りで似たような店構えのうえ、小さな窓ぐらいしかないので看板で見分けないとなんの店かわからないだろう。
「この辺りは冒険者向けのお店が多いです。あそこが冒険者ギルドで、あのへんは武器屋や道具屋ですね」
冒険者ギルドは門を入ってすぐにあり、その近くに冒険者向けの店が集まっている。
武器屋は大体は主に扱っている武器を象った看板を下げているのでわかりやすい。
「あっちに通りを何本か行くと、宿屋や食堂が集まったエリアです。道のこっち側に進むと、商業ギルドがあって商店街になってます。このまま大通りを進んでいくと領主館や行政の施設があります」
右に左に指を差しながら説明すると、勇者はやっぱり冒険者ギルドとか商業ギルドに大きく反応していた。実在するなら見たいよね、わかる。
「こっちの通りを城壁まで行くと西門があって、そこが1番ダンジョンに近いです。なので、西門あたりにも冒険者向けのお店がたくさんありますね。正門のあたりは森へ行く冒険者向けのお店ですね」
ダンジョンについてはほとんど知らないんだけど、ギルドと領主が連携して管理してるらしい。そして本当に、倒した敵がドロップ品ってものに変わるらしい。ゲームっぽいよね。
私にとって戦うことは生きるためなので、どうしても仮想空間という印象が拭えないダンジョンはあまり行く気にならない。
勇者は喜び勇んで行きそうだなぁ。
「そのダンジョンはあんまり大きくないんでしたっけ?」
「そうですね。10階層までで、ボスも中堅冒険者なら問題なく倒せるレベルです。冒険者のランクアップで、Cランクに上がる時の試験の一環でそこを踏破するということもあります」
「へー」
「だいたいの冒険者がダンジョン踏破を目標に滞在しているので、あんまり高ランクの冒険者はいないですね。踏破したら、より難易度の高いダンジョンを目指して離れていく人がほとんどです」
全部聞いた話だけど、間違ってはないはず。
私は一応Cランクをもらっているから、本来なら踏破できるはずなんだよねぇ。
「そういえばヴォルフガングさんはどれぐらいのレベルなんですか?」
「Aランクだ」
ヴォルフィが振り返らずに答えた。
「え、それってかなりすごいんじゃないんですか!?」
「すごいですよ。オーレンシア王国全体で、Aランク冒険者は3パーティとヴォルフィだけなので」
自分のことじゃないけど、ついつい誇らしげに言ってしまった。
Aランク冒険者の3パーティは王家が囲っているらしく、国王の命令であちこち巡りながら任務をこなしているらしい。
それ以外の実力者は大体がシュナイツァー伯爵のところで、低いレベルのまま高額の報酬をもらって魔獣退治に明け暮れているはず。
まあ、そこまでは話さなくていいでしょう。特にシュナイツァー伯爵領の内情はあまり公にしない方がよさそうだし。
勇者がヴォルフィを見る目が、怯えから憧憬に変わったような気がする。
「ちなみに冒険者レベルってどういう感じなんですか?最初は何ランクからです?」
「Gランクからのスタートですね。Dランクが多分1番人数が多くて、向いてない人はなかなかCランクに上がれないので、そこで諦める人も多いです。Cランクになると、怪我でもしない限りは冒険者として安定してくると思います。Bランクになると指名依頼が入るようになるので、ランクアップの条件も厳しくなってきます」
これも聞いたままの説明をすると、勇者は真剣に頷きながら聞いている。
冒険者になりたいのかな?
でも間違いなく勇者は勇者稼業をしないといけないだろうから、できるとしたら「災厄」が片付いてからになるだろうね。
「もう着くぞ」
そんな話をしていたら、あっという間に領主館に着いた。
門番はヴォルフィの姿を認めると敬礼した。きっと話が伝わっているのだろう。
「ヴォルフガング様、お待ちしておりました。馬車はこちらでお預かりします」
「ああ、頼む」
ヴォルフィが馬車を止め、3人とも降りる。
これは荷馬車だし、私とヴォルフィも領主の身内であることを前面に出してはないので館まで乗りつけることはしない。
それに、領主館の敷地はそんなに広くないので、門と館の入り口はすぐ近くだし。
館の前には執事が待っていた。
「ヴォルフガング様、サツキ様、異世界のお方、お待ちしておりました。私はモンテス子爵領主館の執事、フランツと申します。お疲れでしょう。まずは昼食をお召し上がりいただくよう、主より申しつかっております。さあどうぞ」
男女で別の部屋に案内されてお湯や着替えを渡される。私にはシンプルなデイドレスも用意されていたけど、もちろん断ってさっきまでと同じような服を着た。
昼食は私たち3人だけだった。おそらく義兄上は今もすごい勢いで仕事を片付けているんだろう。
美味しい食事に満たされてお茶を飲んでいると、執事が迎えにきた。




