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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【154】

 ブックマークいただき、ありがとうございます!

 次の8月4日(月)の更新は、おそらくお休みいただくことになると思います。(間に合えば更新します)

 家庭の事情により、しばらくこのように不安定になってしまいますのでご了承ください。

「それにしても、私を狙ってどうしようとしてたんだろうね……」


 攫おうとしたのか殺そうとしたのか。どっちも危険ではあるけど、どっちなのかで大きく違ってくる気がする。


「俺の予想だと、オーディリッツ公爵は攫う方で、ジェンティセラム公爵は殺す……までいかなくても怯えさせて嫌がらせするって感じだと思う」

「嫌がらせ……」


 そんなバカなと言いたいところだけど、あの親子ならやりそうな気がしてしまう。


「自分の思い通りに進まなかったから、その苛立ちをお前たちにも味わせたいってところじゃないか? オーディリッツ公爵がいなかったら、もっと直接的に怒りを表して……誰かの首が飛んでたかもしれないな」

「…………」


 それは文字通りの意味だろう。つまり、物理的に……。


「まあ、そうはならなかったし、もう気にしなくていい。気になるならシュナイツァー伯爵に礼だけ言っておけばいい」

「うん、そだね」


 人の心なんて考えてもわかるもんじゃないし、もう深掘りしないでおこう。

 オーディリッツ公爵が私を攫おうとしてたのが本当だとしたら、攫ってどうしたかったのかとか、もう考えないでおこう。


 オーディリッツ公爵とは協力関係を築けそうだし、ジェンティセラム公爵は自分の思いつきに夢中で私のことなんてもう無関心だと思う、たぶん。

 目的は果たせたと言っていいんじゃないかな。

 そう思うと、緊張の糸が切れたのかドッと疲労が押し寄せてきた。


「疲れた……」


 ヴォルフィの腕に頬を擦り寄せながらそう言うと、優しく頭を撫でられた。


「今日と明日は休みでいいって父上が言ってたし、ゆっくりしよう」

「うん」


「どうしたい? 寝たいなら寝てもいいし。あ、でも夜にちょっとだけ時間がほしい」

「ん? 別にいいけど……」


 夜だと言われると寝かしてくれないやつかと思ったけど、ちょっとだけ?

 なんなんだろう?

 まあいいや。疲れで考えるのがめんどくさい。


「眠気もあるけど、寝るよりも木陰でぼーっとしたい」

「じゃあそうしよう」


 すぐに人目につかない木陰に敷物、飲み物、軽食が用意された。

 私は冒険者服のズボンに着替えて完全に人払いをしてもらい、だらしなく敷物に寝そべっている。

 この世界の貴族女性には許されない格好をしているので、護衛してくれているヒースさんが義父上の了承を得て軽い認識阻害までかけてくれている。


 寝転んだままお菓子を摘んだりお茶を飲んだり、最高だよね。

 おまけに程よい気温の木陰でさやさやと風が吹いているので、気持ちよくうたた寝もしちゃった。


 日が翳り始めたあたりで邸内へ戻ると、お風呂が用意されるでもなくなぜかまたワンピースを着せられた。緩くだけど、髪も結いあげられる。


 ヴォルフィが言ってたやつかな?

 と思っていたら、案の定ヴォルフィが迎えに来た。

 手を取られて、薄暗くなりつつある庭に出る。


「どこ行くの?」

「庭からは出ない」


 それはわかってると思いつつ大人しくついていくと、辿り着いたのは花火の会場になるあたりだった。


「花火やらなかっただろ? そのまま置いといても使えなくなるから、兄上が俺たちで見ていいって」

「えっ、ほんとに!?」


 それはめちゃくちゃ嬉しい。見れなかったのは残念だと思ってたし、しかも接待抜きでヴォルフィとふたりで見られるなら尚更嬉しい。


「ふたりきりがよかったから歩いて回ることになるけど、大丈夫か?」

「うん、私もその方がいい」


 夜に染まる寸前の庭を、腕を絡めて歩き始める。

 すると、周りの木々にポワンと丸い灯りが浮かび上がった。

 バレーボール大の灯りがふわんふわんとあちらこちらに浮かんでは消えていく。色は様々だけど、どれも暖かみがあって優しい色彩だ。


 手を伸ばせば届きそうな気がするのに、触ろうとしても届かない不思議。

 もしも妖精のいる森に迷い込んだとしたら、こんな感じになるんじゃないかって思うような幻想的な光景だ。

 私が日本で見てたイルミネーションと全然違うけど、森の中で見るならこっちの方が格段に合っていると思う。


「きれい……」

「そうだな」


ふたりともすっかり幻想の世界の虜になってしまっていて、ほとんど言葉を交わすこともないけど、それも含めてどうしようもなく幸せだ。


「っと」


 上向き気味で歩いていると足元が疎かになって、しょっちゅう躓いてしまう。イルミネーションに足元を照らす効果は全くないから、私の目では地面のでこぼこは全く見えないし。


「わっ」


 見かねたヴォルフィが無言で私を抱き上げたので、見えてない私はちょっとびっくりしてしまった。

 いや、でもこの方が安心するからいいです。

 そういう思いを込めてぎゅっとしがみつくと、伝わったようで頭にキスされた。


 そのまま妖精の森を進んでいくと、急に妖精の数が増えて、そしてそれが一斉に消えてあたりが暗闇に飲まれた。

 さすがにヴォルフィも暗闇に目が慣れてないのか、立ち止まる。


 すると、木々の向こうで吹上花火が一気に上がり、暗闇に豪華絢爛に咲き誇った。


 私たちが立ち止まっていたのは花火のための広場に入る辺りだったみたい。妖精の灯りに惑わされて、目の前が広い空間になっているなんて全く気づいてなかった。

 だから、暗闇をいきなり花火が切り裂いたように見えたのだ。

 花火は色を変え形を変え、途切れなく上がっていく。


 広場に入っていくと椅子が用意されていたので、そこに並んで座る。

 すると、今まではひたすら派手さを求めるように上がっていた花火が止まり、また暗闇に飲まれる。


 そのまま座っていると、私たちの正面ではなく左右にパッと火でできた花びらが散った。

 正確に言うなら、線香花火を大きくしたような花火が両サイドで上がっている。

 これも一斉に上がるのではなく、あちらこちらで点いては消えていく。


 それに見入っていると、広場を取り囲むようにまた妖精の灯りがポワポワと光る。


 すっかり空間が幻想的な空気に染まったところで、また急に正面で激しく花火が吹き上がり始めた。

 それに合わせるように妖精の灯りも激しく明滅し始める。


 私たちの周囲をぐるっと囲むように、際高く花火が上がって、そして再び暗闇がやってきた。

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