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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【153】

 大変お待たせいたしました。更新を再開いたします。

 ただ、家庭の方でバタバタすることが発生しておりまして、また更新が飛ぶ時があるかもしれません。その時は改めてお知らせします。

 それから、イザベラと一貫斎の出会いの話『ある刀鍛冶の神隠し』も連載スタートしておりますので、こちらもお読みいいただけると嬉しいです。

「サツキ、顔をあげてくれ」

「はい」


 内心のあたふたをぎゅっと押さえ込み、顔をあげる。

 すると、公爵はとても穏やかな微笑みを湛えていた。


 頭の中を「?」でいっぱいにしながら公爵の言葉を待っていると、なぜか手を取られた。

 そしてそれを自分の口元まで持っていく公爵。


 へ??


 さすがに唇をつけるまではされなかったけど、その寸前と言える位置で固定される私の手。


「……喜んでくれないのだな」


 いやいや、何言ってるんですか!?

 確かに嬉しくはないですが、それよりも大混乱ですが、そしてそれを顔に出すまいと必死になりすぎての無表情ですが!!


「お、お戯れを……」


 時代劇で殿様に迫られた女性が言ってたようなセリフが急に浮かんできたので、考えるまもなくそのまま口に出していた。

 公爵はふっと笑うと、私の手を離した。


「其方が現れたのが我が領地であればよかったのだがな」

「……私が決められることではありませんでしたので」

「ああ、わかっている。別に責めるつもりはないのだ。つまらない独り言のようなものだ」


 あなたの場合は独り言で済まないかもしれないっていう、自分の影響力を自覚してくれ!


「其方の道行が光あるものであるように願おう。侯爵家とはこれからもよき隣人でありたいものだからな」

「ありがとうございます」


 私が改めて頭を下げると、公爵は馬車に乗り込み出発していった。


 完全に馬車が見えなくなってから、ようやくみんな頭を上げた。

 微妙に気まずい空気が漂う中、私の隣から立ち昇るどす黒い炎が見えた気がした。


 炎の源、言うまでもなくヴォルフィだけど、その表情は「無」だった。

 これは……わかりやすく怒ってるよりもヤバいやつな気がする……。


「ヴォルフもサツキも今日と明日は休みにしていい。疲れを癒やしなさい」


 状況を察した義父上が、やや苦笑しながらヴォルフィの肩をポンと軽く叩いて邸内に戻っていった。

 アルブレヒト義兄上も、同じように肩をポンっとして戻っていく。


 ベルンハルト義兄上はヴォルフィの耳に顔を近づけて、なにかひそひそ話をしてから戻っていった。

 ベルンハルト義兄上が何を言ったのかわからないけど、ちょっとだけヴォルフィのどす黒い炎が和らいだ気がする。……本当にちょっとだけど。


 この接待期間はヴォルフィのことを後回しにしてた自覚はあるから、後でフォローが必要だとは思ってたけど……。

 オーディリッツ公爵にあんなに気に入られるなんて予想してなかったんだよ!


 私は覚悟を決めると、何も言わず無表情で突っ立っているヴォルフィに近づき、玄関先であることを無視してそのまま抱きついた。

 抱き返してくれつつも困惑しているのが伝わってくるので、背中を撫でながら思ってることを言っておくことにした。


「ずっと私に協力してくれてありがとうね。高位貴族を迎えるのなんてヴォルフィもストレスだっただろうけど、おかげで無事に終わったし、私もこのまま一緒にいれるし、本当にホッとしたよ」

「……ああ」


「あのね、オーディリッツ公爵の態度が本気だとしても冗談でも、私には一切応じるつもりはないから。応じたいとも思わないから」

「…………」


「確かに能力を認められたのは嬉しいって思ったから、もし私に行き場がなかったら臣下として仕えることはあったかもしれないとは思うよ。でも、それ以外もそれ以上もないから」

「…………」


「私の気持ちを疑ってるなら、それは見当違いだって言うよ。あとは……あ、さっき最後にどうなってたかってわかってる?」

「……なんとなく気配でわかってる」

「じゃあさ、上書きして?」


 そう言って左手をヴォルフィの口元に持っていくと、すぐに唇を押し当てられた。

 指の一本一本から手の甲、手のひらの方まで執拗にキスしていく。


「……一応言っとくけど、手を口元に持っていかれただけだからね」

「でも、あいつの息はかかってただろ」

「…………」


 それがもうアウトらしいです。

 いやまあ、私も他の女がヴォルフィの手を取ってるだけでも嫌だから、そんなに変なことでもないか。


 舐め尽くす勢いで私の手にキスしまくり、ようやく落ち着いたようでどす黒い炎感は無くなった。たぶん、まだ消えてはないけど。燻ってはいると思うけど。


「あいつら全員、両目抉り出したい。サツキのこと変な目で見て」

「…………いや、それは」


 あなたの実力ならできると思うけど、したらダメだからね!?


「サツキには言わないってみんなで決めてたから気づいてないだろうけど、普通に狙われてたからな」

「……えっ、どういうこと?」


「サツキ用の飲み物とか食べ物に変な薬が混ざってたし、直接刺客が狙いにも来てたぞ」

「ええっ!?」


 いつどこで!? 全く気づかなかったんだけど!?


「食べ物飲み物はウドとメイヤが魔道具も使って判定して、大丈夫だったものだけが運ばれてたんだ。刺客は俺が手を出す前にザシャたちが片付けてたし、シュナイツァー伯爵が捕まえた奴もいるな」

「ええっ!?」


「寝室の天井裏とか、あとは伯爵の本を書き写してた時が多かった気がする。伯爵が何回も部屋からいなくなってただろ? 怪しい気配を感じては見に行ってたんだ」

「…………」


「たぶんジェンティセラム公爵の方だとは思うけど、あいつらは拷問しても雇い主を吐かないからオーディリッツ公爵の可能性だって残ってる。そう思うと、あいつがサツキに触れるのが我慢ならない」

「それは……そうだね」


 まさかそんなことになってたなんて、全然気づかなかった。すぐ近くまで危険が迫ってたんだと思うと、急に恐怖感がせり上がってきた。


「サツキにこれ以上負担をかけないように黙ってようってなったけど、サツキが自分を狙ってるかもしれないやつに好印象持ってるのが嫌でたまらなかった」

「そっか。なんにも知らなくてごめんね」


「いや、言ってなかったんだから仕方ない。それに、俺もオーディリッツ公爵は嫌いでも、その領地で出会った奴らのことは嫌いになれないし」

「うん、そだね。……守ってくれてありがとう」

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