side巻き込まれ薬師【152】
〈2025.7.23追記〉大変申し訳ありませんが、明日24日の更新もお休みいたします。来週から通常通り更新いたしますので、よろしくお願いします。
イザベラと一貫斎の出会いの話『ある刀鍛冶の神隠し』の更新がスタートしておりますので、こちらもお読みいただけると嬉しいです。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
申し訳ありませんが、17日と21日の更新をお休みさせていただきます。
現在、イザベラと一貫斎の話を執筆中なのが佳境でして、そちらの完成を優先させていただきます。
待ってたよという方はご期待ください。興味ないという方には本当に申し訳ないですが、24日の更新をお待ちいただきますようお願いいたします。
ジェンティセラム公爵を送り出す用意はほぼほぼできていたので、それほど待たせることもなくお見送りをすることができた。
やたらと上機嫌な公爵は、「これほど早く準備が整うとは、よほど我らの出立が嬉しいようだな」と笑いながら言っていた。
冗談のつもりなんだろうけど、言われている側の私たちは格下でもあるので冗談で済まなくなるからやめてほしい。機嫌の乱高下といい、本当に苦手なタイプだわ……。
早く帰ってほしいと思ってたのは本当だしね。
うちの領地を出るところまではうちの騎士たちも護衛としてつけるので、大人数の騎士を従えたやたらと物々しい馬車の一団が土煙をあげて走り去っていった。
結局成功だったのかどうかよくわからないけど、とにかく何事もなくお帰りいただけたので失敗ではなかったと思いたい。
「あっ。そういえばジェンティセラム公爵にはカメラをお渡ししてませんね」
公爵一行の姿が見えなくなったあたりで急に思い出した。
「まあ、それはもういいだろう」
返事をした義父上も義兄上ふたりもヴォルフィも、なぜだか微妙な表情をしている。
なんだろう、ちょっと前から感じているこの疎外感。
「……あとできちんと説明するから、そのような不安げな顔をするでない」
思いっきり顔に出ていたらしく、義父上が取りなすように言った。
気になるけど、仕方ないので待ちますよ。
オーディリッツ公爵も昼食後に出立することになった。
馬車とか徒歩が移動手段の世界の旅って、早朝とか夜明け前から出発してできるだけ距離を稼ぐものじゃないんだろうか。私たちがシュナイツァー伯爵のところに向かってた時もそうだったし。
ってのをヴォルフィに聞いたら、「そりゃあ庶民は節約のためにそうするけど、あの人たちは何泊したって痛くも痒くもないからな。たどり着ける距離に宿があるなら何時に出発したっていいし、急いでないなら何日かけてもいいってことだ」だそうだ。確かにそうだね。
昼食は最後なので……ということで、オーディリッツ公爵とご一緒することになった。
公爵の希望で庭の一角に席を用意しての昼食。
公爵が寛いだ雰囲気なので、私たちもそこまで気を張らず和やかに過ごせている。
「そういえば、この庭で別の魔道具による見世物があるはずであったな。それは少しだけでも今見れぬのか?」
花火が流れてしまっていることを公爵が急に思い出したようだ。
「夜でないと美しく見えませんので、ここで中途半端にご覧いただくのは逆にお目汚しになるかと……」
ベルンハルト義兄上が丁寧に説明する。
どうしても見せろって言われたら花火をいくつか見せることはできるけど、やっぱり昼間の明るいところでは様にならないからね……。
「ふむ、そうか。それは魔道具でありながら『作品』でもあるのだからな。作者の意志は汲む方がよかろう」
「ありがとうございます」
芸術への寛大な理解を持つ公爵が引いてくれて助かった。
「それは次に発表する予定は決まっているのか?」
「いえ、閣下にお見せする以外には何も決まっておりません」
「そうか。ならば我が居城に正式に招くゆえ、その時まで初披露をとっておくことはできるか?」
「!? それは、光栄です。閣下のお望みのままに。ただ、火を使いますので安全を確保できる場所でないとお見せできないという難点はございますが」
「それは考慮しよう。侯爵もよいか?」
「もちろんです」
もちろん承諾以外の選択肢なんてないのでね。
「すぐにでも……と申したいところだが、互いに先に手をつけねばならぬことがあるな。初披露が数年先になってもよいか?」
「はい。その時までに最高の完成度を追求いたします」
「うむ、期待しておるぞ」
「ありがたき幸せ」
まあ、「災厄」への対処が最優先ではあるし、他にも魔道具も事業もてんこ盛りだから花火は後回しでもいいけど、やっぱり権力者はワガママだなぁとは改めて思った。
だってさ、無事に披露できた後は「オーディリッツ公爵のお墨付き」ってことで注目されるだろうけど、それまで花火で収入を得ることはできなくなるわけだからね。ギリギリの状態でこれに賭けてる芸術家だったら食い詰めるんじゃないだろうか。あ、その時はパトロンとして支援するのかな? それならまあいいか。
魔道具の取引は公爵が領地に戻り次第、使者をやり取りして詳細を詰めることになった。
これで魔道具はそれなりに売れるようになるだろうし、私が侯爵家に大損させる事態は免れそうでホッとしたよ。
多分、紙とか書籍の事業にも興味を持ってもらえそうだし、ここで繋がりを作れたのはとても大きいと思う。
数年後になるだろうけど正式にお招きいただけることになってるし、私とヴォルフィは個人的にもお誘いいただいてるから、関係は続いていく予定だしね。
昼食後、お茶を飲みながら談笑していると出立の準備が整ったと知らせが来た。
公爵自身の準備もできて、みんなでお見送りに出る。
本日2度目だけど、やっぱり雰囲気は全然違う。
1度目は、とにかく感情を表に出さないように、何も見咎められないように、そしてとっとと帰ってくださいませって感じだった。
今回はそれよりも素直に別れを惜しむ気持ちがある。まあ、本当にもっと長期で滞在ってなったら神経をすり減らしそうだけど。
「侯爵、そしてその子息たちにも世話になったな」
「とんでもございません」
みんなで頭を下げる。
そうしていると、公爵が近づいてくる気配があって、そしてそれは私の前で止まった。
え、なんでしょうか!?




