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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【151】

 預言者エリアスというのは魔法をこの世界にもたらしたという人だ。

 私が転移してくるときにサーラ神にもらった短剣についていた名前でもある。というか、私にとってはその印象の方が強い。


「エリアスは王族だけど末端で、母親がうちの出身だったから生まれも育ちもうちなんだよ。そのせいなのか独特な考えを持っちまったみたいで、王家から追放されてるんだよ」

「……それなのに魔法を授かったから、腫れ物みたいな扱いなんでしたっけ?」


「おっ、よく知ってるな。そうだ。そんな奴を生み出しちまったからってことで、うちは王家に嫌われてるんだ。取り潰されなかったのは魔獣が多いハズレの領地を持ってるからだな」

「…………」


「ま、そんなわけでうちは長らく王家と仲がよろしくない。けど、それでもなんとかなってるんだ。だから大丈夫だろうよ」

「……はい」


「それに、嫁さんには銀狼も碧き風もついてるんだし、魔獣なら侯爵サマも対処はご存知だろう。あんまり考え込むな」

「……はい」


「だから俺が出張る必要もねぇだろうとは思いつつも、銀狼と嫁さんに俺が教えてやれることは教えてやりたくて非礼を承知で押しかけちまったんだ」

「????」


 伯爵は義父上に『災厄』の情報を見せるために来たのでは?


 疑問をくっきりと浮かべた私の表情を見て、伯爵は困ったように頬をポリポリと掻いた。ヴォルフィも不思議そうな顔をしている。


「いや、お前ら魔獣の多い土地を治めるんだろう?」

「「あっ」」


 私とヴォルフィの声が重なり、思わず顔を見合わせてしまう。

 そうでした、そうでした。


「余計なお世話かもしれねぇけど、まあほらなんだ、一応うちも年季入ってるからよ」

「それは心強いです」

「はい、ありがとうございます」


 伯爵はとても情に厚い人なんだね。それが暴走していろいろ起こっちゃったけど、でもこうしてヴォルフィのことを気にかけてわざわざ遠方から来てくれたというのは、本当にありがたいことだ。

 私を気遣ってくれたことも含めて、ジーンとしてしまう。


「うおっほん」


 そんな感動的なシーンを遮るように、義父上のわざとらしい咳払いが響き渡った。

 3人揃って義父上の方をみると、しかつめらしい顔で本を両手に掲げていた。


「まだこんなにあるんだが?」

「「「すいません!」」」


 慌てて3人とも机に戻ってペンを走らせ始める。

 たまに伯爵が部屋を出てはしばらく戻ってこないっていうのが気になりつつも、口を開く時間も惜しいので放っておいた。義父上も何も言わないし。


 結局、ジェンティセラム公爵に渡す分も含めて全部完成したのは明け方近くになってからだった。

 ほんの少しの仮眠を取って(私は影月で回復もした)、朝食のサンドイッチをみんなで齧りながら打ち合わせをして、身支度を整えたら今日は私が婚約をした格式の高い部屋に集合だ。


 適度に待たされオーディリッツ侯爵がやってきて、さらに同じくらい待ってからジェンティセラム公爵親子がやって来た。なぜだかより一層不機嫌に見える。


 オーディリッツ公爵は見た目は昨日までと変わらないけど、私たちと同じように書物に向き合っていたならきっと寝不足だろう。

 そのせいなのかわからないけど、待たされたことに対して何も言わなかった。


 それぞれの手元には夜なべして書き写した資料。

 ジェンティセラム公爵親子以外は書き写しながら読んでいたから、大体内容が頭に入っている。公爵親子はペラペラとめくって眺めている。


「魔獣に疫病なぁ。どっちにしてもうちには関係のない話だ」


 ジェンティセラム公爵が耳を疑う発言をした。

 魔獣は出る場所と出ない場所があるから、確かに出ない場所には関係ないかもしれないけど……。

 でも疫病は違うでしょう? 疫病に領地の境なんて関係ないと思うんだけど。


「おい、異界の女。お前がこれ以外に付け足せることはあるのか?」


 不機嫌そうなまま、こっちへ話を振ってくるジェンティセラム公爵。

 正直なところ、シュナイツァー伯爵が持ってきた情報量に比べたら、私が言えることなんて大したことじゃないんだよね……。

 とはいえ何も言わないわけにはいかないから、私はオーディリッツ公爵には既に話してしまっていたことを改めて話した。


 聖女が身内であり、数年以内に召喚されるだろう。それはすなわち数年以内に災厄が起こるということを示す、ということだ。

 聖女に関わりたくないってことは伏せておいた。なんとなくその情報を悪用されそうな気がしたから。

 神様に会ったってことも言わないでおいた。情報源を聞かれたら困るところだったけど、それにも興味がなさそうで聞かれなかった。


「聖女なぁ。ああ、しかしそうか。それなら……」


 ジェンティセラム公爵は急に何かを思いついたようで、不機嫌さが一瞬で掻き消えた。代わりにその顔に浮かぶのは、野心、のように感じられた。

 アンリは父親の思いつきについていけてないようで、やや困惑している。


「これはすぐに領地に戻って対策を打たねばならん。フォルク、疾く出立の準備をせよ」

「承知いたしました」


 さっきまで自分には関係ないと言っていたのに、いきなり180度転換した発言をするジェンティセラム公爵。

 しかも今すぐ帰るという。


 公爵の考えてることが全くわからなくて本当に怖いんだけど、隣にいたヴォルフィがそっと腕に触れて来たので体の強張りを解く。

 なぜだか、私以外はあまり疑問に思ってないみたい。不思議だけどきっと後で教えてもらえるだろうから、今はとっととお帰りいただくことだけを考えておこう。

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