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それぞれの異世界転移〜勇者と聖女と巻き込まれ薬師と巻き込まれ〇〇は、どう生きますか? みんな最後は幸せになりたいよね〜  作者: 紅葉月


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side巻き込まれ薬師【2】

 自分の中である程度の折り合いをつけたところで、私はふと思い出した。

 近くにいた妹も転移しているのではないだろうか。


「はい、あなたの妹様が『聖女』ですので、妹様もセラフィールドの世界に召喚されています」


 あー、やっぱりそうか。何となくそうだろうなとは思ってたけど。


 サーラ神のその言葉は私に複雑な感情をもたらした。

 あいつのせいで巻き込まれたという怒り、選ばれたのが自分ではないことの嫉妬、妹がいなくなったら両親は悲しむだろうなぁという冷めた感想、また一緒にいなきゃいけないのかという諦め、あんな性格の悪い奴が何で聖女なのかという疑問、などの感情が混ざりながら私の中で吹き荒れていく。


「勇者と聖女の召喚先は、『災厄』が近づいた年代のオーレンシア王国になると決まっています。でも、あなたはそこまで厳密に指定できないので、場所か年代にズレが生じる可能性が高いです」


 サーラ神が続けて告げた言葉が、私を負の感情の波から引き上げた。よくわからない単語がたくさんあったけど、大事なのはひとつだ。


「それは、妹と会わないかもしれないってことですか?」

「絶対会えないほどのズレではないと思います。違う地域や国、数年の誤差程度かと……」


 確かにそのぐらいなら「聖女召喚」の噂を頼りに再会することはできるだろう。

 でも私は……。


「いえ、会わなくていいです。私は誰も知らない世界でひとりでやり直したいです」


 キッパリと述べた私の言葉にサーラ神は驚いていたが、追及はされなかった。

 だって、妹と再会したら私は「聖女の姉」でしかなくなり、体よくお世話係にされてしまうだろう。そうなったら前と変わらない。


 妹は、正直なところ性格がいいとはいえない。

 ぶつかり合うことは少なかったが、そもそも趣味も違うので話すことが少なかった。

 たまに話した時も、私の友人や彼氏、好きなお店なんかのことをぽろっと言ってしまったが最後、「私、そういう人キライ」「つまらなそう」などと必ず貶してくる。

 それに私が傷ついた表情をすると、とても満足そうにしているのだ。

 そして、ふたりの間では私が労力を払うべきだと思っているようで、私がちょっとしたお願いをするのも嫌がるのだ。


 両親はそんな妹が私より大事なようで、何かと妹を優遇した上で私に「しっかりすること」ばっかり求めてくるため、私が妹からのお願いを断ることは許されなかった。

 それでも同じ家に住んでいるうちは波風を立てないようにどうにか飲み込んでいられたけど、離れられると感じた瞬間、蓋をしていたものが一気に解放されてしまった。


 私は、妹が、大嫌いだ。

 

 この時、私は初めて妹への気持ちを自覚し、そして訣別することを決めたのだ。


 密かに決意を固めた私はサーラ神に向き直った。

 新たな場所でやり直すためには、生きていくための術が必要だ。


「それで、そのセラフィールドの世界に行くとして、まさかこのまま放り出されませんよね?生きていけないと困ります」

「おっしゃる通りです。あなたにはセラフィールドの世界で使えるスキルを授けます。本来は生まれる際にランダムに付与されるものですが、あなたにはお好きなものを選んでもらいたいと思います。あとは言葉も通じるようにいたします。こんなことしかできなくて、本当に心苦しいのですが……」


 サーラ神が司る「神託」のなかにスキルが含まれるそうで、ある程度は自由になるそうだ。「勇者」や「聖女」固有のスキルを他の人に与えたりはできないらしいけどね。

 そして「伝令」に言葉を司る要素もあるらしく、翻訳機能みたいなものを私に授けてくれるそうだ。

 結果的にこの時にもらったスキルと翻訳機能は転移後の生活でめちゃくちゃ役に立ったので、出会ったのがサーラ神であったことは不幸中の幸いだった。


「わかりました。もらえるスキルというのはどんなものですか?あと、セラフィールドの世界のことも教えてください」


 そう言うとサーラ神は私の前に手をかざし、スキル一覧を出してくれた。

 灰色の板状の物体に「剣術」とか「回復魔法」とかのスキルがびっしりと書いてある、いかにもファンタジーなアイテムだ。パッと見たところ、スキルの種類はかなり豊富なようだった。


「そちらがスキルの一覧です。スキルというのは『才能』のようなもので、例えば『剣術』のスキルを持っていると、剣の上達が早いうえに高レベルにたどり着きやすいです。ただ、何もしなくても剣が使えるということはありませんので、それなりの修練は必要となります」

「なるほど」

「サツキさんがこれから行くセラフィールドの世界には魔法があり、科学はありません。衛生観念や文化水準は、サツキさんの世界とはかなり異なっているといえます。あとは、国にもよりますが、貴族と平民の身分がはっきり分かれています」


 ファンタジーによくある「中世っぽい世界」かな?


「『聖女』と『勇者』は必ずオーレンシア王国に召喚されることになっていますが、それは『災厄』がその国で起こるので、それに対抗するためです」


 そういえばさっきもそのワードが出てきていた。


「『災厄』って何ですか?」

「『災厄』は世界の膿出しのようなものです。それを定期的に行うことによって、世界の滅びを防いでいます。『災厄』はセラフィールドの世界の人々が生み出した負の面が凝縮したものといえますので、『災厄』と無関係な別世界の人の手を借りないと、自分たちの負の面に飲まれてしまって対抗できないんです」


 いやいや、ちょっと待って。


「……最高神が司ってる世界なら、その『災厄』のあり方を変えればいいんじゃないですか?そしたらわざわざ召喚なんてしなくて済みますよね」


 なにがおかしいって、召喚を前提にしているところだよ。召喚っていう呼び方をしていても、要するに異世界からの誘拐じゃないか。

 その世界の中で完結する試練みたいなものにするとか、「災厄」と違う形で膿出しするとか、召喚を無くそうということになぜならない?


 私の疑問を聞いたサーラ神はとても不思議そうな顔をしている。


「召喚をやめるということですか?どうしてでしょう?」

「どうしてって……」

「『聖女』と『勇者』はこの世界に必要です。これまでに召喚した方達も、それぞれの役目を受け入れて果たしてくださいましたよ」


 そうじゃないと言いかけて、私は口をつぐんだ。

 サーラ神の瞳にはなんの疑問も浮かばず、恐ろしいほどに澄んでいる。

 これまでに召喚された人達には、帰れないから泣く泣くその境遇を受け入れざるを得なかった人だってたくさんいると思うのに、そこには全く思い至らないようだ。

 私の境遇を憐んでいたから理解を得られるかと思ったけど、結局サーラ神も人ではなく神だから、人とは考え方が違うようだ。


 もういいや。

 私はため息をつくと頭を切り替えた。


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